「うぉぉぉぉ!」
「くっ…」
スティールが鋼を纏いテイマーに突進する。
テイマーは、それを見ると大きく横っ飛びして突進を回避する。
ごろんと転がったテイマーは、そのまま学校の中へと入っていった。
障害物が欲しい…。 鞭を自由自在に扱う事はできないけど、でも障害物があればスティールの攻撃を防ぎつつ鞭で攻撃も可能だ。
さっきは確認しなかったが、今相手のHPを見てみると、少し減っていた。 残りは95%ぐらいだろうか。
とにかく、手応えはなくともダメージは入る。 更に鋼を纏ってない箇所だったり、鋼を纏ってない時にうまく攻撃を仕掛ければ、そのままダメージが入る。 それを狙うしかないな…。
テイマーはそう考え、教室に入った。
教卓の陰に隠れ、スティールの足音が来ないか耳をすます。
「ゼェハァ…。 くそ、どこ行きやがった…」
しばらくして、何故か息が物凄く切れているスティールが廊下に現れた。
こちらからはスティールが見えているが、あちらはテイマーに気付かないようだ。 そして今、スティールは鋼を纏ってない。
――――今だ!
「<アソー・フウェ>!」
テイマーは、必殺技を放った。
鞭は、一直線にスティールの脇腹へと突撃し、吹っ飛ばす。
「ぐおあっ!?」
スティールの身体は、窓枠にぶつかり、外へは行かず廊下に留まる。
「く…」
外に出れば落下ダメージも与えられたのに。
テイマーは悔しがりながら、素早く教卓から違う机の陰に隠れる。
スティールのHPは残り約8割。 テイマーのHPと並んでいる。
しかし、テイマーの必殺技ゲージは二度の必殺技により尽きてしまった。 対してスティールは、先程の攻撃によりそれなりに溜まっている。
オブジェクトを破壊し必殺技ゲージを溜めなければ――――。
「おらぁっ!!」
突然、脳天に激痛が走った。 次に、今まで座っていた床にひびが入り、壊れる。
「な…」
落下しながらかつて自分が居た場所を見ると、そこには小手に鋼を纏ったスティールが立っていた。
「行くぜぇぇ!!」
スティールも、床に出来た穴からこちらにダイブしてくる。 そして、両手を絡め、テイマーの腹部を殴りつけるとそのままテイマーに乗っかる形で落下する。
「ぐぁぁ!!」
重力によって更に重くなった一撃に、思わずテイマーは悲鳴を上げた。
「く…そ…」
現在、更にもう一つの床を突き破り、一階の床へと落下している。
と、テイマーは鞭を二階の穴に引っかけると、一瞬空中で止まり、身体を縦にした。
「うぉっ?」
テイマーに全体重をかけていたスティールは、突然体重をかける対象が居なくなり、一人で落下し始める。 同時に、テイマーの鞭が穴から離れ、テイマーも再び落下し始める。
今、二人の位置関係は逆にある。
テイマーは、鞭をスティールの身体に絡めつけると、スティールを蹴飛ばした。
鞭は無限に伸びるため、鞭ごとスティールは吹き飛ばされる。
「むぐっ…!」
床に激突するスティール。 これだけでもかなりのダメージだが、テイマーは追撃を仕掛ける。
鞭を縮め、高速で落下する。 その流れでスティールの無防備な頭に蹴りを入れた。 若干、テイマーにも落下ダメージが入るが、それでもスティールのダメージよりは小さい。
「ぐぁぁぁっ!?」
よほど痛かったのか、スティールは甲高い悲鳴を上げた。
テイマーは、スティールから離れると、鞭を解く。
現在の二人のHPは、テイマーは残り4割。 スティールは残り3割になっていた。
――――凄い。
テイマーは、興奮していた。 今までこんな体験をしたことはなかった。 したくても、出来なかった。
テイマーは我ながら、今の攻撃が凄いと感じた。 これがベテランのバーストリンカーなら当たり前かもしれない。 しかし自分は、
「くっ、そぉぉぉ…」
ここで、テイマーの自画自賛はスティールの唸りによって止まる。
「なかなか強ぇじゃんか…」
スティールは立ち上がると、そう言った。
アバターのマスクで顔は見えないが、声には仲間を認めるような、そんな感情が表れていた。
「…でも、負けねぇぞ!」
スティールは、再び小手に鋼を纏わせると、飛びかかってくる。
テイマーの前まで来て、拳を大きく振りかぶる。 当たれば致命傷だろう。 しかし、彼の動きは余りにも鈍すぎた。
「…って、うぉ?」
テイマーは、大きく後退した。
攻撃対象を失った拳は、むなしく空を駆け抜ける。
そして、スティールは、拳にかなりの体重をかけていたのか、よろめいた。
テイマーは、この隙を逃さない。
素早くスティールの頭を掴むと、床に叩きつけた。
「うがぁ…」
スティールの頭は、床にめり込み、そのHPを一割削った。
後はゴリ押しすれば勝てる!
そう思ったテイマーは、残っている必殺技ゲージを確認すると、<アソー・フウェ>をスティールの後頭部に放った。 近距離からの必殺技。 防げる訳がない。
…しかし、スティールはテイマーの予想を覆した。
「<
スティールの身体全体が銀色に染まり、徐々にその銀色が後頭部に集まっていく。 完全に後頭部に鋼が集結した時丁度、鞭が直撃した。
…が、スティールのHPは一向に減らない。 変わりに彼の満タンだった必殺技ゲージが全て無くなっていた。
「え…何で…?」
テイマーは、目を見開いてそうつぶやく。
勝利を確信した彼にとって、攻撃が通らなかった事はかなりのショックだった。
確かに鋼を纏えば多少のダメージを減らせる。 が、それでもダメージ無効という訳ではないはずだ。 実際、最初の攻撃の時はHPを削っていた。
なのに…どうして…。
頭が真っ白になっていくテイマーを見て、面白がるようにスティールは起き上がり、口を開いた。
「<
…ったく、お前は攻撃する場所が固まりすぎだろ…ずっと頭じゃねぇか」
一箇所しか防御出来ないその技を今使ったことは、彼にとってかなりの賭けだっただろう。 ただ全身に鋼を纏うだけでも、敗北は免れた…。 しかし彼は、わざわざこの技を使い、負けの可能性があってでも頂点にまで達していたテイマーの闘志を、一気に下げようとしていた。
「…くそ…。 まんまと引っかかった、のか…」
テイマーは、その場に座り込んだ。 そして俯くと、鞭を地面に置く。
「(よっしゃ! 倒せる!) へへっ、次戦うときは、気をつけた方が良いぜ」
スティールはテイマーの前に立つと、拳を握りしめる。 頭上で構え、そのままテイマーの脳天へ――――
「ッ!? ぶぐっ!?」
瞬間、テイマーは鞭を再度とり、なぎ払った。 鞭はスティールのわき腹にヒットし、彼を少し吹っ飛ばす。
「くらえ! <アソー・フウェ>!」
テイマーはその隙を見逃さずに、必殺技を放った。
鞭はスティールの腹に直撃し、HPを残りわずかまで削る。
…そして、スティールは後ろの壁にぶつかり、そのHPを0にした…。