アクセル・ワールド レジェンド・ドントゥール   作:四つ葉

3 / 9
2.鞭と鋼

「うぉぉぉぉ!」

「くっ…」

 

 スティールが鋼を纏いテイマーに突進する。

 テイマーは、それを見ると大きく横っ飛びして突進を回避する。

 

 ごろんと転がったテイマーは、そのまま学校の中へと入っていった。

 

 障害物が欲しい…。 鞭を自由自在に扱う事はできないけど、でも障害物があればスティールの攻撃を防ぎつつ鞭で攻撃も可能だ。

 さっきは確認しなかったが、今相手のHPを見てみると、少し減っていた。 残りは95%ぐらいだろうか。

 とにかく、手応えはなくともダメージは入る。 更に鋼を纏ってない箇所だったり、鋼を纏ってない時にうまく攻撃を仕掛ければ、そのままダメージが入る。 それを狙うしかないな…。

 テイマーはそう考え、教室に入った。

 教卓の陰に隠れ、スティールの足音が来ないか耳をすます。

 

「ゼェハァ…。 くそ、どこ行きやがった…」

 

 しばらくして、何故か息が物凄く切れているスティールが廊下に現れた。

 こちらからはスティールが見えているが、あちらはテイマーに気付かないようだ。 そして今、スティールは鋼を纏ってない。

 

 ――――今だ!

 

「<アソー・フウェ>!」

 

 テイマーは、必殺技を放った。

 鞭は、一直線にスティールの脇腹へと突撃し、吹っ飛ばす。

 

「ぐおあっ!?」

 

 スティールの身体は、窓枠にぶつかり、外へは行かず廊下に留まる。

 

「く…」

 

 外に出れば落下ダメージも与えられたのに。

 

 テイマーは悔しがりながら、素早く教卓から違う机の陰に隠れる。

 スティールのHPは残り約8割。 テイマーのHPと並んでいる。

 しかし、テイマーの必殺技ゲージは二度の必殺技により尽きてしまった。 対してスティールは、先程の攻撃によりそれなりに溜まっている。

 

 オブジェクトを破壊し必殺技ゲージを溜めなければ――――。

 

「おらぁっ!!」

 

 突然、脳天に激痛が走った。 次に、今まで座っていた床にひびが入り、壊れる。

「な…」

 

 落下しながらかつて自分が居た場所を見ると、そこには小手に鋼を纏ったスティールが立っていた。

 

「行くぜぇぇ!!」

 

 スティールも、床に出来た穴からこちらにダイブしてくる。 そして、両手を絡め、テイマーの腹部を殴りつけるとそのままテイマーに乗っかる形で落下する。

 

「ぐぁぁ!!」

 

 重力によって更に重くなった一撃に、思わずテイマーは悲鳴を上げた。

 

「く…そ…」

 

 現在、更にもう一つの床を突き破り、一階の床へと落下している。

 と、テイマーは鞭を二階の穴に引っかけると、一瞬空中で止まり、身体を縦にした。

「うぉっ?」

 

 テイマーに全体重をかけていたスティールは、突然体重をかける対象が居なくなり、一人で落下し始める。 同時に、テイマーの鞭が穴から離れ、テイマーも再び落下し始める。

 今、二人の位置関係は逆にある。

 

 テイマーは、鞭をスティールの身体に絡めつけると、スティールを蹴飛ばした。

 鞭は無限に伸びるため、鞭ごとスティールは吹き飛ばされる。

 

「むぐっ…!」

 

 床に激突するスティール。 これだけでもかなりのダメージだが、テイマーは追撃を仕掛ける。

 鞭を縮め、高速で落下する。 その流れでスティールの無防備な頭に蹴りを入れた。 若干、テイマーにも落下ダメージが入るが、それでもスティールのダメージよりは小さい。

 

「ぐぁぁぁっ!?」

 

 よほど痛かったのか、スティールは甲高い悲鳴を上げた。

 テイマーは、スティールから離れると、鞭を解く。

 

 

 現在の二人のHPは、テイマーは残り4割。 スティールは残り3割になっていた。

 

 

 ――――凄い。

 テイマーは、興奮していた。 今までこんな体験をしたことはなかった。 したくても、出来なかった。

 テイマーは我ながら、今の攻撃が凄いと感じた。 これがベテランのバーストリンカーなら当たり前かもしれない。 しかし自分は、初心者(ニュービー)…しかも、今回は初戦なのだ。 ひょっとしたら自分は戦闘の天才なのかもしれない。 そこまで、テイマーは思ってしまう。

 

 

「くっ、そぉぉぉ…」

 

 ここで、テイマーの自画自賛はスティールの唸りによって止まる。

 

「なかなか強ぇじゃんか…」

 

 スティールは立ち上がると、そう言った。

 アバターのマスクで顔は見えないが、声には仲間を認めるような、そんな感情が表れていた。

 

「…でも、負けねぇぞ!」

 

 スティールは、再び小手に鋼を纏わせると、飛びかかってくる。

 テイマーの前まで来て、拳を大きく振りかぶる。 当たれば致命傷だろう。 しかし、彼の動きは余りにも鈍すぎた。

 

「…って、うぉ?」

 

 テイマーは、大きく後退した。

 攻撃対象を失った拳は、むなしく空を駆け抜ける。

 そして、スティールは、拳にかなりの体重をかけていたのか、よろめいた。

 

 テイマーは、この隙を逃さない。

 素早くスティールの頭を掴むと、床に叩きつけた。

 

「うがぁ…」

 

 スティールの頭は、床にめり込み、そのHPを一割削った。

 

 後はゴリ押しすれば勝てる!

 

 そう思ったテイマーは、残っている必殺技ゲージを確認すると、<アソー・フウェ>をスティールの後頭部に放った。 近距離からの必殺技。 防げる訳がない。

 …しかし、スティールはテイマーの予想を覆した。

 

「<鋼核(スティール・コア)>!」

 

 スティールの身体全体が銀色に染まり、徐々にその銀色が後頭部に集まっていく。 完全に後頭部に鋼が集結した時丁度、鞭が直撃した。

 …が、スティールのHPは一向に減らない。 変わりに彼の満タンだった必殺技ゲージが全て無くなっていた。

 

「え…何で…?」

 

 テイマーは、目を見開いてそうつぶやく。

 勝利を確信した彼にとって、攻撃が通らなかった事はかなりのショックだった。

 確かに鋼を纏えば多少のダメージを減らせる。 が、それでもダメージ無効という訳ではないはずだ。 実際、最初の攻撃の時はHPを削っていた。

 なのに…どうして…。

 

 頭が真っ白になっていくテイマーを見て、面白がるようにスティールは起き上がり、口を開いた。

 

「<鋼核(スティール・コア)>……。 鋼を一箇所に集め、同レベルかそれ以下の、あらゆる攻撃を無効化する技だ。

 …ったく、お前は攻撃する場所が固まりすぎだろ…ずっと頭じゃねぇか」

 

 一箇所しか防御出来ないその技を今使ったことは、彼にとってかなりの賭けだっただろう。 ただ全身に鋼を纏うだけでも、敗北は免れた…。 しかし彼は、わざわざこの技を使い、負けの可能性があってでも頂点にまで達していたテイマーの闘志を、一気に下げようとしていた。

「…くそ…。 まんまと引っかかった、のか…」

 

 テイマーは、その場に座り込んだ。 そして俯くと、鞭を地面に置く。

 

「(よっしゃ! 倒せる!) へへっ、次戦うときは、気をつけた方が良いぜ」

 

 スティールはテイマーの前に立つと、拳を握りしめる。 頭上で構え、そのままテイマーの脳天へ――――

 

「ッ!? ぶぐっ!?」

 

 瞬間、テイマーは鞭を再度とり、なぎ払った。 鞭はスティールのわき腹にヒットし、彼を少し吹っ飛ばす。

 

「くらえ! <アソー・フウェ>!」

 

 テイマーはその隙を見逃さずに、必殺技を放った。

 鞭はスティールの腹に直撃し、HPを残りわずかまで削る。

 

 …そして、スティールは後ろの壁にぶつかり、そのHPを0にした…。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。