<GAME SET!!>
<YOU WIN!!>
「やっ…たぁぁぁ!!」
視界に踊る字を見て、テイマーは大きくガッツポーズをした。
――――やった! 勝った! デビュー戦でまさかの勝利だ!
興奮が収まらないなか、98あったバーストポイントが、108に上がる。
「…いや、まさか、やられちまうとはなぁ」
と、スティールが寝転がったまま、テイマーに話しかける。
「なかなか器用にその鞭を使うもんだから、動きづらいったらありゃしねぇ」
「ははは…そんな器用だった?」
「あぁ!
…ったく、ほんと、最後の攻撃なんか、いやらしいのなんのって。 全く…ムカつくぜ」
そうは言うが、スティールの声からは一切の怒りが感じられない。 それどころか、少し笑っているように思える。
「ま、次戦うときは負けはしねぇ。
もっと強くなってリベンジするからな」
「…あぁ、楽しみにしてるよ」
「楽しみ、って…。 変な奴だな、お前」
そうスティールは笑うと、バーストアウトして、加速世界から立ち去った。
「…さて、僕も帰ろう」
彼は、いつもより口数が多くなってきている事に気付きながら、スティールを追って加速世界から立ち去った。
△▼△▼△
「早速、戦ってきたみたいだね」
放課後。
光馬がいざ帰ろうとしたとき、真治が話しかけてきた。
戦ってきた、というのは、ブレインバーストの事だろう。
「はい、勝てました」
「おめでとう。 僕は見てなかったけど、友達から聞いたよ」
友達…加速世界で聞いたのだろうが、いつの間に…。
「…で、どうだい? このゲームは楽しいかい?」
「はい。 とても」
「それは良かった」
真治は嬉しそうに微笑む。
「それじゃ僕も一戦してこようかな。
君は休むと良い。 加速は、意外と疲れるからね」
そう言うと、彼は教室を出ていってしまった。
△▼△▼△
2043年 12月24日。
光馬がブレインバーストをダウンロードしてから、1ヶ月が経とうとしていた。
彼はつい先日、Lv2に上がり、残りバーストポイントは50。
あれからなかなか勝つことが出来ず、ようやくLvを上げることが出来ていた。
Lvが2になったことで、彼は一つの必殺技を覚えた。
――――<セジール・フウェ>。
対象一つを鞭で掴むことができる必殺技だった。
これで重いものを掴めば、鈍器として使うことが可能、また、相手を掴むことで、地面に叩きつけたりしてダメージを与える事が可能だ。
彼は、攻撃技が増えたと、心底喜んだ。
一方、現実世界では、光馬に転機が訪れた。
彼は、なんと父親から離れる事が出来たのだ。
きっかけ、父親が連れてきた新しい女性。
彼女自身は今までの女性とほとんど同じだったが、彼女の妹が、とても真面目、というか、正義感が強かった。
姉が悪い男に捕まったのではないかと、ときたま姉について来ていたのだった。
そして、光馬の存在、それに対する父親達の対処を目にし、彼女は光馬にこう語りかけた。
「光馬君、君、私と一緒に来ない?」
彼女の言葉に、光馬は驚いた。
当然戸惑ったが、しかし、光馬にとって、断る理由はなかった。
「……はい」
そうして、光馬は現在、彼女――
「へぇ…。 そんな突飛なことがあるもんなんだね」
大通りに面するファーストフード店で、光馬の向かいに座る真治はそう呟いた。
「…はい。
ドラマでもないような話ですよね…」
苦笑いをしながら、しかし嬉しそうに、光馬はサイダーを吸い上げる。
「…それにしても、その…お父さんは、君を手放す事をあっさりと許したの?」
「…まぁ、最初は反対してましたけど…健人さんが…詳しくは僕も知らないですけど…大企業の偉い人と聞いて…その…」
「ははぁ~ん。 成る程。 態度が変わったんだ」
「まぁ…はい、そうです」
サイダーを全て吸い上げ、氷同士がぶつかる音を鳴らす。
真治は、フライドポテトを一本手に取ると、思い出したように光馬に問いかけた。
「そうだ。 その引っ越し先っていうのは、どこなの?」
意外な質問。
光馬は、思井だそうと、視線を空中に泳がせる。
「え~っと、確か…。 あ、そうだそうだ、千代田区の神田です、確か」
そう言うと、真治は目を見開いた。
「おぉ! これは…偶然だな…」
「ん? 偶然…?」
光馬が問いかけると、真治は無言でケーブルを差し出した。
直結…つまり、ブレインバーストに関する話なんだろう。
光馬は、無言でケーブルを受け取ると、ニューロリンカーに挿した。
と、同時に、真治の言葉が頭に流れ込んできた。
『実は千代田区はね、僕の<親>が居るところなんだ』
<親>。
それは、ブレインバーストのゲームデータをコピーし、提供する者が呼ばれる名。
光馬で言うと、真治が<親>にあたる。
対し、<親>からブレインバーストのデータを渡され、インストールした者を、その<親>の<子>と言う。
『…<親>? 真治さんの?』
『あぁ』
『Lvは…』
『7だよ』
『7!?』
――Lv1の差が勝敗を決めると言っても過言ではないこのゲームで、Lv8って…。
『確か、真治さんは…』
『Lv4だね。 といっても、もうすぐ上がるけど』
――真治さんと4レベルの差…。 一回真治さんとはタッグを組んだ事はあったけど、あれ以上に強いってことか…。
『それにね、僕の親は、<第一世代>…オリジネーターなんだよ』
<第一世代>、オリジネーター。
それは、4年前、ブレインバーストを運営から受け取った、100人の小学一年生達。
有名な者としたら、<レギオン>という、バーストリンカー達のチームのリーダー…<レギオンマスター>であり、<
『…てことは、真治さんは<第二世代>だったんですか?』
『あぁ。
今度、機会があれば僕の<親>を紹介するよ』
『…はい、宜しく…お願いします』
△▼△▼△
「光馬君…。 水曜日から君は、
日曜日。
光馬は、既に由香理と健人のもとに引っ越して来ていた。
「はい。 宜しくお願いします…健人さん」
「ちょ…健人さんって…。 せっかくなら『お父さん』って呼んでよ。 それに、そんな敬語じゃなくても…」
「あぁ…分かりました」
「だから!」
二人の会話を聞いて、ずっと黙っていた由香理が吹き出す。
「フフフ、何か、コントしてるみたい。
…光馬くん、少しずつ、慣れていこう。 無理しなくていいからね」
「はい…」
苦笑いしながら返答する光馬。
「じゃあ、近所にご挨拶に行こうか。 しなくていいかもしれないけど、一応ね」
「はい!」
光馬は、外へ出ようと玄関に向かう二人について行こうと、一歩、足を踏み出した。
そして、世界は青く染まった。
△▼△▼△
<HERE COMES A NEW CHALLENGER!!>
光馬――――テイマーの視界で、字幕がおどる。
急の挑戦で、少し驚いてしまったが、そういえばブレインバーストとはそういうものだ、と思うと、心を落ち着かせ、ガイドカーソルを見た。
…って、ない。
「遅い」
「うげぇ!?」
壁が破れる音、そして頭にとても重い衝撃が入り、次の瞬間には窓を突き破って地面に叩きつけられていた。
「うぐ…」
――な…。
自分のHPを見ると、なんと6割が削られていた。
――え…。 強過ぎ…。
「…手加減はしたつもりだったけど……そこまで減っちゃうか」
その声の音源、そしてかつて自分が居た場所を見ると、そこには、このステージ――――<月光>ステージ――――の月の光を浴びて美しく浮き上がる、蒼きアバターが立っていた。
「ラビ…。 Lv1にいきなりは無いって…」
と、近くの建物の上に立っていたアバター…つまり、ギャラリーから、声が上がった。
とても聞き慣れた声、まさかとは思いながらも音源を見ると…。
「アーチャーさん!?」
ギャラリー用のアバターではなく、デュエルアバターで観戦している者…それは、紛れもなく、テイマーの<親>であるアーチャーであった。
と、ここでアーチャーに<ラビ>と呼ばれた対戦相手――<
「…私は、アーチャーの<親>だ」
「……え?」
何だか引っ越しは無理やり感が否めない…。
なんかすみません…。