アクセル・ワールド レジェンド・ドントゥール   作:四つ葉

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3.転機

<GAME SET!!>

<YOU WIN!!>

 

「やっ…たぁぁぁ!!」

 

 視界に踊る字を見て、テイマーは大きくガッツポーズをした。

 

 ――――やった! 勝った! デビュー戦でまさかの勝利だ!

 

 興奮が収まらないなか、98あったバーストポイントが、108に上がる。

 

「…いや、まさか、やられちまうとはなぁ」

 

 と、スティールが寝転がったまま、テイマーに話しかける。

 

「なかなか器用にその鞭を使うもんだから、動きづらいったらありゃしねぇ」

「ははは…そんな器用だった?」

「あぁ!

…ったく、ほんと、最後の攻撃なんか、いやらしいのなんのって。 全く…ムカつくぜ」

 

 そうは言うが、スティールの声からは一切の怒りが感じられない。 それどころか、少し笑っているように思える。

 

「ま、次戦うときは負けはしねぇ。

もっと強くなってリベンジするからな」

「…あぁ、楽しみにしてるよ」

「楽しみ、って…。 変な奴だな、お前」

 

 そうスティールは笑うと、バーストアウトして、加速世界から立ち去った。

 

「…さて、僕も帰ろう」

 

 彼は、いつもより口数が多くなってきている事に気付きながら、スティールを追って加速世界から立ち去った。

 

△▼△▼△

 

「早速、戦ってきたみたいだね」

 

 放課後。

 光馬がいざ帰ろうとしたとき、真治が話しかけてきた。

 戦ってきた、というのは、ブレインバーストの事だろう。

 

「はい、勝てました」

「おめでとう。 僕は見てなかったけど、友達から聞いたよ」

 

 友達…加速世界で聞いたのだろうが、いつの間に…。

 

「…で、どうだい? このゲームは楽しいかい?」

「はい。 とても」

「それは良かった」

 

 真治は嬉しそうに微笑む。

 

「それじゃ僕も一戦してこようかな。

君は休むと良い。 加速は、意外と疲れるからね」

 そう言うと、彼は教室を出ていってしまった。

 

△▼△▼△

 

 2043年 12月24日。

 光馬がブレインバーストをダウンロードしてから、1ヶ月が経とうとしていた。

 彼はつい先日、Lv2に上がり、残りバーストポイントは50。

 あれからなかなか勝つことが出来ず、ようやくLvを上げることが出来ていた。

 

 Lvが2になったことで、彼は一つの必殺技を覚えた。

 

 ――――<セジール・フウェ>。

 対象一つを鞭で掴むことができる必殺技だった。

 これで重いものを掴めば、鈍器として使うことが可能、また、相手を掴むことで、地面に叩きつけたりしてダメージを与える事が可能だ。

 彼は、攻撃技が増えたと、心底喜んだ。

 

 

 

 一方、現実世界では、光馬に転機が訪れた。

 彼は、なんと父親から離れる事が出来たのだ。

 

 きっかけ、父親が連れてきた新しい女性。

 彼女自身は今までの女性とほとんど同じだったが、彼女の妹が、とても真面目、というか、正義感が強かった。

 姉が悪い男に捕まったのではないかと、ときたま姉について来ていたのだった。

 

 そして、光馬の存在、それに対する父親達の対処を目にし、彼女は光馬にこう語りかけた。

 

「光馬君、君、私と一緒に来ない?」

 

 彼女の言葉に、光馬は驚いた。

 当然戸惑ったが、しかし、光馬にとって、断る理由はなかった。

 

「……はい」

 

 

 

 そうして、光馬は現在、彼女――由香理(ユカリ)と、その彼氏――健人(ケント)が住んでいる一軒家に、養子として引っ越す準備をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ…。 そんな突飛なことがあるもんなんだね」

 

 大通りに面するファーストフード店で、光馬の向かいに座る真治はそう呟いた。

「…はい。

ドラマでもないような話ですよね…」

 

 苦笑いをしながら、しかし嬉しそうに、光馬はサイダーを吸い上げる。

 

「…それにしても、その…お父さんは、君を手放す事をあっさりと許したの?」

「…まぁ、最初は反対してましたけど…健人さんが…詳しくは僕も知らないですけど…大企業の偉い人と聞いて…その…」

「ははぁ~ん。 成る程。 態度が変わったんだ」

「まぁ…はい、そうです」

 

 サイダーを全て吸い上げ、氷同士がぶつかる音を鳴らす。

 真治は、フライドポテトを一本手に取ると、思い出したように光馬に問いかけた。

 

「そうだ。 その引っ越し先っていうのは、どこなの?」

 意外な質問。

 光馬は、思井だそうと、視線を空中に泳がせる。

 

「え~っと、確か…。 あ、そうだそうだ、千代田区の神田です、確か」

 

 そう言うと、真治は目を見開いた。

 

「おぉ! これは…偶然だな…」

「ん? 偶然…?」

 

 光馬が問いかけると、真治は無言でケーブルを差し出した。

 直結…つまり、ブレインバーストに関する話なんだろう。

 

 光馬は、無言でケーブルを受け取ると、ニューロリンカーに挿した。

 

 と、同時に、真治の言葉が頭に流れ込んできた。

 

『実は千代田区はね、僕の<親>が居るところなんだ』

 <親>。

 それは、ブレインバーストのゲームデータをコピーし、提供する者が呼ばれる名。

 光馬で言うと、真治が<親>にあたる。

 対し、<親>からブレインバーストのデータを渡され、インストールした者を、その<親>の<子>と言う。

 

『…<親>? 真治さんの?』

『あぁ』

『Lvは…』

『7だよ』

『7!?』

 

 ――Lv1の差が勝敗を決めると言っても過言ではないこのゲームで、Lv8って…。

 

『確か、真治さんは…』

『Lv4だね。 といっても、もうすぐ上がるけど』

 ――真治さんと4レベルの差…。 一回真治さんとはタッグを組んだ事はあったけど、あれ以上に強いってことか…。

 

『それにね、僕の親は、<第一世代>…オリジネーターなんだよ』

 

 <第一世代>、オリジネーター。

 それは、4年前、ブレインバーストを運営から受け取った、100人の小学一年生達。

 有名な者としたら、<レギオン>という、バーストリンカー達のチームのリーダー…<レギオンマスター>であり、<純粋色(ピュアカラーズ)>でもある<ブルー・ナイト>や、<グリーン・グランデ>などだ。

『…てことは、真治さんは<第二世代>だったんですか?』

『あぁ。

今度、機会があれば僕の<親>を紹介するよ』

『…はい、宜しく…お願いします』

 

△▼△▼△

 

「光馬君…。 水曜日から君は、佐々木(ササキ)光馬くんだ」

 

 日曜日。

 光馬は、既に由香理と健人のもとに引っ越して来ていた。

 

「はい。 宜しくお願いします…健人さん」

「ちょ…健人さんって…。 せっかくなら『お父さん』って呼んでよ。 それに、そんな敬語じゃなくても…」

「あぁ…分かりました」

「だから!」

 

 二人の会話を聞いて、ずっと黙っていた由香理が吹き出す。

 

「フフフ、何か、コントしてるみたい。

…光馬くん、少しずつ、慣れていこう。 無理しなくていいからね」

「はい…」

 

 苦笑いしながら返答する光馬。

 

「じゃあ、近所にご挨拶に行こうか。 しなくていいかもしれないけど、一応ね」

「はい!」

 

 光馬は、外へ出ようと玄関に向かう二人について行こうと、一歩、足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 そして、世界は青く染まった。

 

△▼△▼△

 

<HERE COMES A NEW CHALLENGER!!>

 

 光馬――――テイマーの視界で、字幕がおどる。

 急の挑戦で、少し驚いてしまったが、そういえばブレインバーストとはそういうものだ、と思うと、心を落ち着かせ、ガイドカーソルを見た。

 …って、ない。

 

「遅い」

「うげぇ!?」

 

 壁が破れる音、そして頭にとても重い衝撃が入り、次の瞬間には窓を突き破って地面に叩きつけられていた。

 

「うぐ…」

 

 ――な…。

 

 自分のHPを見ると、なんと6割が削られていた。

 ――え…。 強過ぎ…。

 

「…手加減はしたつもりだったけど……そこまで減っちゃうか」

 

 その声の音源、そしてかつて自分が居た場所を見ると、そこには、このステージ――――<月光>ステージ――――の月の光を浴びて美しく浮き上がる、蒼きアバターが立っていた。

 

「ラビ…。 Lv1にいきなりは無いって…」

 

 と、近くの建物の上に立っていたアバター…つまり、ギャラリーから、声が上がった。

 

 とても聞き慣れた声、まさかとは思いながらも音源を見ると…。

 

「アーチャーさん!?」

 

 ギャラリー用のアバターではなく、デュエルアバターで観戦している者…それは、紛れもなく、テイマーの<親>であるアーチャーであった。

 と、ここでアーチャーに<ラビ>と呼ばれた対戦相手――<ULTRAMARINE(ウルトラマリン)RABBIT(ラビット)>が近付いてきて、こう耳打ちした。

 

「…私は、アーチャーの<親>だ」

 

 

「……え?」




何だか引っ越しは無理やり感が否めない…。
なんかすみません…。
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