――まさか…早速アーチャーさんの<親>に会うとは…。
テイマーは、唖然としていた。
確かにアーチャーからは、機会があれば紹介すると聞いていたが、こんな早くとは予想していなかった。
「いや、アーチャーからお前の事を聞いて、気になったから来てみたんだ。
それが…インストールしてから1ヶ月経ってるのに、まだLv2なのか!」
最初は、小さい声だったが、終盤は声を荒げて怒鳴る。
「す…すいません…。
中々勝てなくて…ポイント安全圏までポイントが溜まるのにも時間がかかりまして…」
しょぼん、と、若干テンションが下がりながらも説明するテイマー。
「…ふん、そんななら、すぐに全損するぞ」
ラビットは、冷たくそう言うと、素早くテイマーから離れた。
そして、拳ではなく脚を構える。
「…さぁ来い。 私が、お前の戦闘を見てやる」
「…え?」
テイマーがキョトンとしていると、再びラビットが怒鳴った。
「え、じゃない! お前は何をしに加速しているんだ!
来ないなら私から行くぞ!」
そう言うと、脚に力を込め、尋常じゃない動きで蹴りかかってくる。
「わわっ…」
テイマーは、何とかその攻撃を避ける。
ラビットはそのまま、テイマーの背後の建物に脚をつけ、思いっきり跳ぶ。 そして、また蹴りかかってきた。
テイマーは、今度は焦らずラビットを見つめる。
――相手の動きを…。
「<セジール・フウェ>!」
――利用する!
彼は、Lv2で覚えた必殺技を、ラビットに放った。
鞭はラビットの腕へと伸び、肩辺りに巻きつく。
「てやぁ!」
テイマーは、必死に踏ん張ると、鞭に繋がったラビットを、思いっきり地面に叩きつけた。
「よしっ!」
テイマーは小さくガッツポーズをする。
――かなりのスピードだったし、結構削れたろ…。
そう思って、ラビットのHPゲージを確認する。
「え…!?」
何と、ラビットのHPは一割も減っていなかった。
「発想は面白い。 しかし、私の脚をなめるな」
気がつけば、ラビットはテイマーの目の前に居た。
「ぶ…」
ラビットの脚がテイマーのマスクを蹴る。
その攻撃で、テイマーのHPは0となり、勝負は終わった…。
△▼△▼△
「うわっ!」
現実世界に戻った光馬は、歩いていたことを忘れていて、転ける。
「光馬君、大丈夫か?」
健人が、心配そうにこちらを覗き込む。
「あ…だ、大丈夫です。
ちょっとボーっとしてて…」
光馬は、苦笑いしながらそう言うと、立ち上がった。
「ふぅ」
加速世界から戻ったラビット――――
「ふぅ…って…容赦無さ過ぎだよ、藍」
彼女の溜め息を聞いていた真治が、そう指摘する。「手加減しても為にならないだろう、
彼女は、そう言って立ち上がる。
「まぁでも、私にダメージを与えられた点は良かったんじゃないか?
一割にも満たなかったけどな」
彼女は微笑みながら、一口チョコレートを取り出す。
「あの子がどう成長するか、楽しみだ」
そう言って、チョコレートを口に放り込む。
「“あの子”って…。
お前の方が年下なんだよ…?」
「歳はそうだが、経験で言ったら私が上だ。 それににいにも、私よりは経験が少ないんだぞ?」
「まぁ、そうだけど…」
真治は、呆れたように藍を見ると、小さく溜め息を吐いた。
△▼△▼△
「Lv上げ…ですか?」
「そうだ」
翌日、学校が終わった後、光馬は真治に呼び出され、またあのファストフード店に来ていた。
光馬を待っていたのは、真治と、見知らぬ少女。 驚くことに、彼女は真治の妹であり、昨日光馬が戦い、敗北した真治の<親>だった。
彼女――藍から告げられたのは、Lv上げの誘いだった。
「今日で、Lvを2、上げようと思う」
「はぁ…」
光馬は、本当にそんなことが出来るのか、と半信半疑で返事をする。
「勿論、お前だけでは勝率は微妙、下手したらポイントが余計に減るかもしれない」
藍は、光馬にとってかなり心に来る言葉を普通に言う。
「だから、私の<子>である…にいにとタッグで戦って貰おうと思う」
「よろしく」
真治が微笑んで、そう言う。
「あ…はい、宜しくお願いします…」
光馬は、小さくお辞儀をする。
「これ以上言うことはないな。 それでは二人とも、行ってこい!」
「え、え、もうですか?」
「…今やらなくていつやる」
「いや…」
――ちょっといきなり過ぎないか。
光馬がそう思っていると、藍がイライラした様子で口を開く。
「つべこべ言わずに行ってこい! そして早くLv4になれ! Lv4になったらちょっとした特典が待ってるんだ!」
「はい…」
光馬は、藍の声に耳を塞ぎながら、そう返事をする。
そして光馬と真治は、半ば無理矢理に、加速世界へと行くのであった…。