アクセル・ワールド レジェンド・ドントゥール   作:四つ葉

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遅れました! すみません…。
ネタ切れでして、これからも遅れるかもしれないです…。


8.鞭と鋼 再び

 時は、少し遡る――。

 

 アーチャーとディフェンダーが戦いを繰り広げているなか、テイマーは、早速ピンチに陥っていた。

 

「う…ぐ…」

「どうした? 弱くなったんじゃねぇか?」

 

 テイマーのHPは既に、半分より下だった。 対して、スティールは8割。

 理由は、スティールのLvと、アビリティにある。

 テイマーに敗北してからの1ヶ月、スティールは毎日何度も連戦し、経験を積んでいった。 そして、気がつけばLvは5。

 既にテイマーとは、Lv差が2もあったのだ。

 それに加え、スティールがLv3で会得したアビリティ、<鋼鉄強化(スティールマイト)>によって、鋼鉄にした身体の部分の攻撃力、防御力を共に1.5倍にするという、かなり強いものによって、彼の勝率はかなりあがっていた。

「この前みたいな、いい試合が出来ると思ったのに…出来なさそうだな」

 

 言いながら、飛びかかってくるテイマーの攻撃を避け、腰の部分を掴むと、軽く投げた。

 

「がぁっ!」

 

 破壊不能の、堅い地面に打ちつけられ、悲鳴を上げる。

 

「でぇぇい!」

 

 再び拳を銀色に染め、倒れているテイマーに飛びかかると、腹部に強烈な一撃を与える。

 

「ぐふぅ!?」

 

 ――ダメだ…このままじゃ何もできずに負ける。 それだけは嫌だ。

 

 そんな思いが、テイマーの頭をよぎった。

 

 そして、その思いこそが、テイマーのボロボロの体を突き動かした。

 

 再び、眼前に拳が迫ってくる。

 テイマーは、左手でその手首を掴んだ。

 

「う…ぐ…」

 

 ――お、重い…。

 スティールの力は、この前とは比べ物にならないぐらい上がっていた。 ましてや、Lv差もある。

 

「お前…こんぐらいで…俺、を…」

「でぇぇやぁぁ!」

 

 スティールの声を遮り、彼の股間を蹴飛ばした。

 

「うごっ!?」

 

 緑色のアバターが、テイマーからようやく離れる。

 そのチャンスを逃さずに、テイマーは急いで起き上がった。

 

「…ふ…ふぅ…効くなぁ…」

 

 仮想空間でも、やはり痛いものは痛いらしい。

 蹴られたところを抑え、マスクの下で冷や汗を流しながら、立ち上がる。

 

「負けてたまるか…このままじゃ終わらせないぞ!」

 

 鞭をバシンと地面に打ちつけ、そう叫ぶ。

 

 テイマーの必殺技ゲージは、満タンだ。

 

「行くぞ!

<アソー・フウェ>ぇ!」

 

 何のフェイントもかけず、そのまま、正面からスティールに必殺技を放つ。

 スティールは避けもせず、小手を銀色に染め、鞭を正面から殴った。

 

 鞭と鋼が激突する。

 

「このぐらいで、俺にダメージが入るとでも…?」

 

 スティールが、鞭を弾き飛ば――――――せなかった。

「<セジール・フウェ>!」

「な!?」

 

 テイマーは鞭と鋼が激突する瞬間、別の必殺技を発動し、スティールの腕をがっちりと絡め取っていた。

 

「うぅ…りゃぁぁぁ!」

 

 雄叫びを上げながら、地面に踏ん張る。

 自分のありったけの力を両腕に込め、鞭を思いっきり降った。

 

「うぉぉっ!」

 

 スティールの足が地面から離れる。

 と、次の瞬間には、彼は近くのビルに衝突していた。

 

「ぐっ…」

 

 HPはあまり減っていない。 危険を察知し、即座に身体を鋼で固めたんだろう。

 しかし、身体を鋼にすることは、ずっとは出来ないはずだ。

 テイマーはそう考え、鞭を地面に叩きつけた。

 その動きは、少し遅れて鞭の先にも伝わり、スティールも地面に叩きつけられる。 続けて鞭を反対側の地面に叩きつける。 スティールも叩きつけられる。

 

 アニメとかでよくある、往復で地面に叩きつける技だ。 ありがちだが、効果は高い。

 

 ――まさか、この攻撃を僕がやることになるとは…。

 

「ぐっ、がっ、ぐふっ…」

 

 身体に衝撃が走る。 それも何度も。

 必殺技ゲージも足りなくなってきて、鋼で身を守ることも、もうすぐ出来なくなる。

 

「この…野郎…!」

 

 スティールは、空中でなんとかもう一つの手で鞭を解こうとする。

「させない!」

 

 もう一度スティールを地面に叩きつけ、再び反対側に鞭を叩きつける動作をする。

 そうして、スティールがテイマーの丁度真上に来た頃、<セジール・フウェ>を解除した。

 

「えっ…」

 

 空中で、鞭の拘束がなくなったスティールは、自由の身になる。 が、かなりの速度だったため、そのままスティールはどこかに吹っ飛んでしま――――わなかった。

 

「ぐへぇっ!」

 

 スティールは電柱にぶつかり、速度が軽減される。 次にビルを崩し、大きな音を立てながら、地面に落ちた。

 

「ハァ…ハァ……。 疲れるな…」

 あるはずのない心臓をバクバク鳴らし、肩を上下させる。

 やはり、仮想空間上のアバターとはいえ、人一人分の重さは普通にあるのだ。 持ち上げ、振り回すのに体力がいる。

 

 スティールのHPも、半分近くになった。 それに、今は完全にテイマーのペースだ。 このまま押し切れば、勝てるかもしれない。

 

 そう考えた矢先、テイマーの視界に、信じがたい事が表示された。

 

 ――アーチャーのHPが、0となった。

 

「な…」

 

 目を見開き、アーチャーのHPゲージを見つめる。

 

「ゴホッ、ぐ……どうやら、お前の相方はやられたみたいだな」

 瓦礫をどけて、スティールが立ち上がった。

 

「例え、今ここで俺を倒しても、続けてディフェンダーを倒せるかねぇ?」

 

 ディフェンダーのHPは、まだ七割ほど残っている。 無傷でスティールに勝ったとしても、その後HP差で押し切られてしまう可能性が高い。 スティールは、その事を言っているのだろう。

 

「…だとしても、君には負けないぞ!」

 

 テイマーは、鞭を地面に叩きつけると、叫びながらスティールに向かっていった。

 

 まだ、必殺技を一回使うぐらいのゲージは残っている。 問題は、いつ使うかだ。

 

 テイマーは、とりあえず普通に鞭を振るった。

 勿論、スティールがそれを普通に受けるはずもなく、左腕を鋼にすると、鞭の攻撃を防御した。 そして、テイマーの膝を蹴りつける。

 

「うぐっ…!」

 

 関節は、どのアバターも装甲が薄い。 そのため、受けるダメージがもろに来る。

 おまけに全力の蹴りが、本来膝が曲がる向きではない所から。

 

 あまりの痛さに、鞭を手放し座り込んでしまう。

 

「だらぁっ!」

 

 スティールがその隙を見逃すはずも無く、鋼にしたままの左腕で、テイマーの脳天を殴りつけた。

 

「が…」

 

 衝撃で、倒れ込む。 既にテイマーのHPは一割をきっている。 だが、スティールのHPもそこまで多い方ではない。

 テイマーは、倒れたあと、落ちていた鞭を握りしめた。

 

「これで…とどめだ!」

 

 スティールが、再び拳を振り下ろしてくる。

 

 ――今だ!

 

「<アソー・フウェ>!」

 

 くるっ、と仰向けになり、スティールの胸に必殺技を打ち込んだ。

 

 ――決まった!

 

 直感でそう思った。 これは大ダメージを与えたに違いない、と。

 

「……え?」

 

 しかし、テイマーの鞭は、スティールの胸に届いていなかった。 その鞭は、スティールの硬化された右腕によってしっかりと防御されていた。

 

「まさか、お前が鞭を手にした事を俺が気付いてないと思った…なんて言わないよな?」

 

 スティールのこの言葉を最後に、テイマーの意識は闇に呑まれた。

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