ネタ切れでして、これからも遅れるかもしれないです…。
時は、少し遡る――。
アーチャーとディフェンダーが戦いを繰り広げているなか、テイマーは、早速ピンチに陥っていた。
「う…ぐ…」
「どうした? 弱くなったんじゃねぇか?」
テイマーのHPは既に、半分より下だった。 対して、スティールは8割。
理由は、スティールのLvと、アビリティにある。
テイマーに敗北してからの1ヶ月、スティールは毎日何度も連戦し、経験を積んでいった。 そして、気がつけばLvは5。
既にテイマーとは、Lv差が2もあったのだ。
それに加え、スティールがLv3で会得したアビリティ、<
「この前みたいな、いい試合が出来ると思ったのに…出来なさそうだな」
言いながら、飛びかかってくるテイマーの攻撃を避け、腰の部分を掴むと、軽く投げた。
「がぁっ!」
破壊不能の、堅い地面に打ちつけられ、悲鳴を上げる。
「でぇぇい!」
再び拳を銀色に染め、倒れているテイマーに飛びかかると、腹部に強烈な一撃を与える。
「ぐふぅ!?」
――ダメだ…このままじゃ何もできずに負ける。 それだけは嫌だ。
そんな思いが、テイマーの頭をよぎった。
そして、その思いこそが、テイマーのボロボロの体を突き動かした。
再び、眼前に拳が迫ってくる。
テイマーは、左手でその手首を掴んだ。
「う…ぐ…」
――お、重い…。
スティールの力は、この前とは比べ物にならないぐらい上がっていた。 ましてや、Lv差もある。
「お前…こんぐらいで…俺、を…」
「でぇぇやぁぁ!」
スティールの声を遮り、彼の股間を蹴飛ばした。
「うごっ!?」
緑色のアバターが、テイマーからようやく離れる。
そのチャンスを逃さずに、テイマーは急いで起き上がった。
「…ふ…ふぅ…効くなぁ…」
仮想空間でも、やはり痛いものは痛いらしい。
蹴られたところを抑え、マスクの下で冷や汗を流しながら、立ち上がる。
「負けてたまるか…このままじゃ終わらせないぞ!」
鞭をバシンと地面に打ちつけ、そう叫ぶ。
テイマーの必殺技ゲージは、満タンだ。
「行くぞ!
<アソー・フウェ>ぇ!」
何のフェイントもかけず、そのまま、正面からスティールに必殺技を放つ。
スティールは避けもせず、小手を銀色に染め、鞭を正面から殴った。
鞭と鋼が激突する。
「このぐらいで、俺にダメージが入るとでも…?」
スティールが、鞭を弾き飛ば――――――せなかった。
「<セジール・フウェ>!」
「な!?」
テイマーは鞭と鋼が激突する瞬間、別の必殺技を発動し、スティールの腕をがっちりと絡め取っていた。
「うぅ…りゃぁぁぁ!」
雄叫びを上げながら、地面に踏ん張る。
自分のありったけの力を両腕に込め、鞭を思いっきり降った。
「うぉぉっ!」
スティールの足が地面から離れる。
と、次の瞬間には、彼は近くのビルに衝突していた。
「ぐっ…」
HPはあまり減っていない。 危険を察知し、即座に身体を鋼で固めたんだろう。
しかし、身体を鋼にすることは、ずっとは出来ないはずだ。
テイマーはそう考え、鞭を地面に叩きつけた。
その動きは、少し遅れて鞭の先にも伝わり、スティールも地面に叩きつけられる。 続けて鞭を反対側の地面に叩きつける。 スティールも叩きつけられる。
アニメとかでよくある、往復で地面に叩きつける技だ。 ありがちだが、効果は高い。
――まさか、この攻撃を僕がやることになるとは…。
「ぐっ、がっ、ぐふっ…」
身体に衝撃が走る。 それも何度も。
必殺技ゲージも足りなくなってきて、鋼で身を守ることも、もうすぐ出来なくなる。
「この…野郎…!」
スティールは、空中でなんとかもう一つの手で鞭を解こうとする。
「させない!」
もう一度スティールを地面に叩きつけ、再び反対側に鞭を叩きつける動作をする。
そうして、スティールがテイマーの丁度真上に来た頃、<セジール・フウェ>を解除した。
「えっ…」
空中で、鞭の拘束がなくなったスティールは、自由の身になる。 が、かなりの速度だったため、そのままスティールはどこかに吹っ飛んでしま――――わなかった。
「ぐへぇっ!」
スティールは電柱にぶつかり、速度が軽減される。 次にビルを崩し、大きな音を立てながら、地面に落ちた。
「ハァ…ハァ……。 疲れるな…」
あるはずのない心臓をバクバク鳴らし、肩を上下させる。
やはり、仮想空間上のアバターとはいえ、人一人分の重さは普通にあるのだ。 持ち上げ、振り回すのに体力がいる。
スティールのHPも、半分近くになった。 それに、今は完全にテイマーのペースだ。 このまま押し切れば、勝てるかもしれない。
そう考えた矢先、テイマーの視界に、信じがたい事が表示された。
――アーチャーのHPが、0となった。
「な…」
目を見開き、アーチャーのHPゲージを見つめる。
「ゴホッ、ぐ……どうやら、お前の相方はやられたみたいだな」
瓦礫をどけて、スティールが立ち上がった。
「例え、今ここで俺を倒しても、続けてディフェンダーを倒せるかねぇ?」
ディフェンダーのHPは、まだ七割ほど残っている。 無傷でスティールに勝ったとしても、その後HP差で押し切られてしまう可能性が高い。 スティールは、その事を言っているのだろう。
「…だとしても、君には負けないぞ!」
テイマーは、鞭を地面に叩きつけると、叫びながらスティールに向かっていった。
まだ、必殺技を一回使うぐらいのゲージは残っている。 問題は、いつ使うかだ。
テイマーは、とりあえず普通に鞭を振るった。
勿論、スティールがそれを普通に受けるはずもなく、左腕を鋼にすると、鞭の攻撃を防御した。 そして、テイマーの膝を蹴りつける。
「うぐっ…!」
関節は、どのアバターも装甲が薄い。 そのため、受けるダメージがもろに来る。
おまけに全力の蹴りが、本来膝が曲がる向きではない所から。
あまりの痛さに、鞭を手放し座り込んでしまう。
「だらぁっ!」
スティールがその隙を見逃すはずも無く、鋼にしたままの左腕で、テイマーの脳天を殴りつけた。
「が…」
衝撃で、倒れ込む。 既にテイマーのHPは一割をきっている。 だが、スティールのHPもそこまで多い方ではない。
テイマーは、倒れたあと、落ちていた鞭を握りしめた。
「これで…とどめだ!」
スティールが、再び拳を振り下ろしてくる。
――今だ!
「<アソー・フウェ>!」
くるっ、と仰向けになり、スティールの胸に必殺技を打ち込んだ。
――決まった!
直感でそう思った。 これは大ダメージを与えたに違いない、と。
「……え?」
しかし、テイマーの鞭は、スティールの胸に届いていなかった。 その鞭は、スティールの硬化された右腕によってしっかりと防御されていた。
「まさか、お前が鞭を手にした事を俺が気付いてないと思った…なんて言わないよな?」
スティールのこの言葉を最後に、テイマーの意識は闇に呑まれた。