GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~   作:フォレス・ノースウッド

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 やっと原作第三話分消化しました。

 執筆の関係上、原作を何度も見返しているのですが、改めて金子さん、美少女だろうとキャラに試練を貸しますが特に響にはドSです。
 試練一つ乗り越えたと思ったらすぐさまそれ以上に高い試練課すし、GとGXだと、響が装者としてと言うかヒーローとして好調なのは一話で、二話目から十話過ぎた辺りまでは剣序盤のダディ並みに不調の足かせにずっと引っ張られてますし、実は好調期はむしろアニメ本編の合間の時期と言う(汗

 まあそういう私も、今回の話で残酷な対比を描いているので人のこと言えませんが(大汗

 ニコ動の公式配信では、三話での暴走の理由がしょぼいなんて(リアルタイム放送当時)コメあったけど、今後確実に〝卒業イベント〟がある筈のあの二人の愛の重さを踏まえると、実に納得と言いますか(苦笑

 ちなみに今作での響の断腸の想いでドタキャンは一応面と向かってに変えてます。緊急事態とは言え、いきなりいなくなってちょっと時間経ってから電話はさすがに響鈍くさ過ぎるし、余計未来にショック与えるだろと、あの場面見た時せつなくなりつつもそう突っ込みたくなったもので。


#15 - 暴走の片鱗

〝Balwisyall Nescell gungnir tron (喪失へのカウントダウン)〟

 

 響が〝聖詠〟を唱えると、彼女の心臓部にあるガングニールの欠片が呼び起こされ、フォニックゲイン「を糧に実体化させたオレンジと黒を主体としたスーツとアーマーが装着。

 ギアを起動させた響は、市内の地下鉄駅構内に繋がる階段を跳び下りる。

 

『朱音君は別地点で交戦中だが、翼がそっちに向かっている、それまではどうにか持ちこたえてくれ』

「分かりました!」

『くれぐれも無茶はするなよ』

 

 駅の改札口周辺は、とうにノイズたちによって占拠されている有様と化していた。

 いつも目にしている筈の日常の背景すら、不気味で異様な光景に変えてしまう………〝特異災害〟の恐るべき一面の一つ。

 彼らと対峙する響は、構えを取った。

 邪念などとは無縁そうなまるまるとした響の双眸に、今は〝怒り〟が彩られ、特異災害をばら撒く主たちを睨み付けていた。

 新たな人間(えもの)たる響を捉えたノイズは、接触して炭素化させようと向かってくる。

 

「―――――♪」

 

 歌い出した響は、突進してきた先頭の一体を正拳で迎え撃つ。

 突き出された拳がノイズと衝突し、そのまま炭素化されて打ち砕き、続けざまに振るわれた回し蹴りでもう一体を撃破する。

 まだ響には、アームドギアを実体化させるどころか、それに必要なエネルギーを集めることすらままならない。

 ゆえに彼女は、徒手空拳による肉弾戦(インファイト)しか戦う〝手段〟がなかった。

 しかし、朱音からのこのひと月の特訓のお陰で、どうにか響は人型、蛙型のノイズには複数が相手でも立ち回れるようになっていた。

 目はちゃんと開かれ、腰にも力を入れ、腕または脚だけでなく全身の筋肉を使って拳打や蹴りを繰り出し、迎え撃つ。

 歌に関しても、極度に音痴と言うわけでもなく、特別上手いわけでもない、平均的だが朱音や翼たちのような実力者を前では聞き劣りしてしまうのは否めなかった歌唱力と、不安定な声量は、

身体の鍛錬と同時に行われたボイストレーニングで、ギアの出力をある程度安定させることができるようになっていた。

 ただ………今回が実質的〝初陣〟な響の攻勢を続かせるほど、敵も攻められるばかりではない。

 以前、ベイブリッジで朱音と交戦し、彼女に串刺しされた紫色の人型が、背中に抱えた機雷の球体を飛ばして暴発させた。

 

「あっ!」

 

 他の個体との相手に気を取られていた響は爆発に巻き込まれ、その衝撃でホームの天井が崩れて落下。

 響はそのまま瓦礫の下敷きになってしまった。

 反撃を成功させた紫の人型は、ホームの方へと走っていった。朱音と戦った別個体はあっさりと倒されてはいたが、相手が悪かっただけで位相差障壁と炭素分解以外に強力な攻撃手段がある点は、厄介なタイプである。

 他の人型と蛙型の個体たちは、ゆっくりと瓦礫の山に近づいていく。

 

「見たかった……」

 

 山の中から、響の声が発したかと思うと、瓦礫から響が破片と白煙と一緒に飛び出してきた。

 

「流れ星―――見たかったッ!」

 

 その勢いのまま、周りにいたノイズを攻撃。

 先程対峙した時点で、響の心に〝怒り〟は少なからず込み上げていたのだが、先の機雷の爆発によって油を注がれ、怒れる感情の炎が強まってしまったらしい。

 

「未来と一緒に――――流れ星を見たかったのにッ!」

 

 段々と、響の攻撃は荒々しく、〝技〟とは程遠い力任せで、八つ当たりに拳を、蹴りをノイズにぶつけていった。

 犬歯を剥き出しにし、声にドスを利かせ、双眸の周りを憤怒の皺で歪める彼女の攻撃で突き飛ばされたノイズは、構内の壁や天井に叩き付けられる。

 

「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

 親友との〝約束〟を破ってしまう原因を作った者たちへの〝怒り〟に呑まれ、獣に似た呻き声すら上げる響に………戦闘で生じる二次的被害を抑えるのはおろか、考慮するだけの思考すら、全くなかった。

 それどころか、ノイズを追走する道中にて、理不尽にも駅の壁面に拳を叩きつけ、亀裂だらけのクレーターを作り上げてしまった。

 

 

 

 なんで―――現れたッ!

 なんで今日、この日に、現れたんだッ!

 なんであんたたちは、未来と大事な〝約束〟を交わしたこの日に―――どうして現れたんだ――――ノイズッ!

 ずっと前から………一緒に流れ星を見ようって、二人で楽しもうって……約束してたのに!

 私も楽しみにしてたけど………私以上に心待ちにしてたんだ―――未来はッ!

 

〝お待たせっ………どうしたの? 響〟

〝ごめん未来………急に用事できちゃって………一緒には……〟

〝また………大事なよう?〟

〝うん………〟

 

 約束を破るのに………本当はいけないのに………断らなきゃいけなかったあの時、未来の顔、とてもじゃないのけど、見れなかった。

 

〝じゃあ……仕方ないね〟

 

 なのに未来は、理由も話さない、顔すら合わせない私を、責めなかった。

 

〝あんまり遅くならないでね……部屋の鍵、開けておくから〟

 

 何も言わない私を……約束を踏みにじった私を……気遣ってくれた。

 

〝ありがとう………ごめんね〟

 

 けど……辛い気持ちを、我慢して……押し込めてるのは、私でも、顔を見ていなくても、分かった。

 

〝あんだけ人を殺しておいて、よく生きていられるよね?〟

〝しかもパパとママの税金で補償受けてるんでしょ? そりゃすぐ元気になるわけだ〟

〝この税金泥棒な人殺し!〟

〝なんであの人が死んで―――あんたみたいのが生き残ってんのよ!〟

 

 自分の〝一生懸命〟であんなことになったのに………それでも未来は傍にいてくれた。

 

〝どうしてそんな酷いこと平気で言えるの!? ただ生き残っただけで!〟

 

 一緒に耐えて、我慢してくれた。

 ずっと………〝親友〟でいてくれた。

 未来があんなに頑張ってた陸上部を止めたのも……未来自身は〝記録が伸び悩んだから〟と言ってたし……それも本当なんだけど、私にだって分かってるんだ………どうして未来がスプリンターのユニフォームを脱いだのか。

 

 いつも………いつもいつもいつも私は―――未来を辛い目に遭わせて……辛い気持ちを我慢させて。

 

 だからせめて………未来との大事な約束は、ちゃんと果たしたかったのに。

 

 それを………ソレヲオマエタチハ―――フミニジッタッ!

 

 ソウヤッテ……ヤクソクヲオカシ………ウソノナイコトバモ………アラソイノナイセカイモ………ナンデモナイニチジョウモ―――ウバウノカッ!?

 

 

 

 

 唸り声を響の全身が、禍々しさを覚えさせるオーラに包まれ、顔は黒く塗りつぶされ、双眸は暗色な赤い光が怪しく放っていた。

 

「Guhaaaaaaaaーーーーーーーー!!!」

 

〝破壊衝動〟

 言葉にするならそれに呑まれて歌唱すら放棄した響は、ケダモノとしか言い様のない咆哮を上げて、ノイズたちを襲う。

 蛙型を両腕で力任せに引き裂き。

 人型を押し倒して馬乗り、頭部を握力で潰してそのまま引き千切り。

 一体の胴体を右腕で突き貫いたまま、もう一体をホームの床に叩き付け、狂った笑いを浮かべながら足蹴にし、ヒールを押し付けてノイズの顔を抉った。

 知性も理性も、良心の欠片すら感じさせない、残虐なる猛威。

 これは最早戦闘ですらない、本来はこの少女が忌み嫌っている筈の、一方的な〝虐殺〟だった。

 

 人類を虐殺する〝特異災害〟が逆に虐殺される、そんな逆転現象が起きる中、紫の人型が機雷を多数、暴走する響に放つ。

 他のノイズへの加虐にご執心だった響は、またしても機雷の爆発を諸に受け、ホーム一帯は爆煙に一時支配された。

 煙の天下はそう長く続かず、何秒かするとホームの濃度は薄まっていき、完全に晴れる頃には、物理的衝撃にも強いアンチノイズプロテクターの効能により間近で爆発の猛攻に晒されながらも無傷な響がそこにいた。

 

「ま、待ちなさい!」

 

 先程までの残虐なる様は、幻だったのかと思わされるほどに、響の姿と意識から〝凶暴性〟が失せていた。

 皮肉にも、特異災害が響の……体内のガングニールと彼女の感情(こころ)が生み出した〝暴走〟を食い止めた格好となった。

 響は自身の暴走に無自覚なまま、紫の人型を再び追いかける。

 ノイズは線路の頭上に機雷を幾つもぶつけ、地上に繋がる大穴を爆発でこじ開けて、そのままよじ登って地下より脱していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Don't hit my friend!! 」

 

 聖詠を唱えてシンフォギア――ガメラを纏い、未来を抱きかかえ、彼女に襲い掛かろうとしていたノイズの突進を右手の噴射口から発した炎のバリアで防ぎ、そのまま燃やし尽した朱音は、夜の高台公園の森に位相転移してきた〝災いの影〟に――

 

〝私の友達に手を出すなッ!〟

 

 と、苛烈かつ凛と、日本人にしてアメリカ人でもあるバイリンガルな彼女らしくネイティブな響きの英語で、ノイズたちに啖呵を切った。

 

「…………」

 

 間一髪朱音に助けられた未来は、現況を理解し切れずに閉口している。

 いきなり級友が、彼女からしたらどこのものか分からない言語で歌い出し、アニメのヒロインのよう、紅緋色のアーマーを纏って〝変身〟した状況に放り込まれたのだ、未来の反応は当然で無理からぬものである。

 

「ノイズ……」

 

 ほんの僅かな放心状態から、未来はノイズに囲まれている現在の事態を理解した。

 幸か不幸か、ここ最近の律唱市での異常な出現率を前にしても、未来はこの瞬間までノイズを実際に目の当たりにしたことがなかったが………その特異災害の恐ろしさ、おぞましさ、惨さは、かの〝二年間〟痛いほど思い知らされていた。

 

「…………」

 

 そのノイズが今、目の前にいる。

 本能が恐怖を感知し、体は震えていると言うのに目はノイズたちに釘づけとなっていた。

 スノーノイズの如きざらつきに塗れた異形から発せられる、無機質でありながら禍々しい〝殺意〟は、彼女の〝理性〟を切り崩そうと、少しづつ忍び寄る中。

 

「未来」

「あっ……」

 

 崩されそうになる精神を、鎧を纏った級友――朱音の凛とした声が繋ぎ止めた。

 未来は、自身を左腕で包み込んでいる、同い年ながら一回り以上背の高い朱音を見上げた。

 プロのモデル相手にも見劣りしないどころか勝り、〝クールビューティ〟と表されてもそん色ない大人びた美貌な横顔は、一層引き立たせるほど鋭く研ぎ澄まされ、物理的な覇気(あつりょく)を秘めた〝眼光〟を異形たちにぶつけていた。

 

「話は後、くれぐれも、私の傍から離れないでくれ」

 

 首を乱れたリズムで小刻みに、頷き返す未来。

 戸惑いがないわけじゃない………未来の〝意識〟は未だ恐怖と混乱でぐらつきがある。

 ノイズが目の前にいるだけでも乱されていると言うのに、彼女からしたら正体不明の風体で、震えも恐れも見せずに勇ましくノイズと正面から対峙している朱音は、未来の目から見ても〝歴戦の戦士〟と言う印象を見受けさせていた。

 リディアンに進学して、久方振りにできた響以外の〝友〟の隠された戦士としての一面は、この瞬間まで知らなかった未来を困惑させるには充分であった………が、朱音が眼光に帯びる闘気は、彼女を戸惑わせると同時に不思議と安心感も招き、金属質な鎧に覆われていると言うのに、左腕を中心とした彼女の体の温もりは、未来の皮膚感覚へくっきりと伝わってくる。

 なぜか? 今の未来にそれを見い出せる余裕はない。

 とにかく今は取り乱すより、朱音の言う通り、彼女の傍から離れない方がいいのだと、未来の思考は狼狽が尾を引きながらも、そう結論づけた。

 

 

 

 こんな可燃物が密集している場所、森の中では、迂闊に〝炎〟は使えない。

 私の――ガメラのプラズマの火は――強力過ぎる。

 規模は本物より遥かに小規模とは言え、地上に〝太陽〟を出現させるようなものだ。

 木々や緑たちの身と命を弁えず振るえば………こちらが災害を生み出してしまう。

 かと言って離れようににも、この森林公園は人の街に囲まれている………園内から出てしまえば、事態を知らない民間人を巻き込んでしまう。

 既に友達一人、巻き込まれてしまっているし、色々難題が待ち構えているが、今は戦闘と、未来に降りかかる火の粉を払うのを優先する時。

 

 まあ幸い、こんな状況下における最適な戦法は―――とうに見出している!

 

 

 

 

 

 

〝くらいなさいッ!〟

 

 先手を仕掛けたのは、朱音の方からだった。

 右手の噴射口から発せられた炎は、オートマチックの拳銃に形作られ、それを素早く構えると同時に朱音は発砲、銃口から飛び出した〝弾丸〟は攻撃しようとしていたノイズの一体のざらついた表皮を容易く破り、肉体に食い込むと、弾はプラズマ化して膨張、一瞬で敵を炭素に変えて火花混じりに四散させた。

 続けざまに、もう三発を電光石火の如き素早さで連射して排莢音を鳴らし、そのいずれもノイズの肉体に当て、炭素分解に至らしめる。

 右手が握り、構える〝拳銃(ハンドガン)〟は、朱音がこの一月の間の実戦にて新たに編み出したアームドギアの形態だった。

 モデルは、あらゆる国家の軍または警察の特殊部隊で採用されているシグザウエル社製の銃器、SIGシリーズの一つであるシグザウエルP226であり、黒を基調した色合いに、紅緋色のカラーラインが走り、六インチある銃身には発射時の反動と跳ねあがりを抑えるコンペンセイターが装着されている。

 朱音がP226をモデルにしたのは、SIGシリーズの高い信頼性を考慮してのことだったが、何の因果か、同じSIGシリーズで陸自の制式拳銃でもあるP220は、かのレギオンの〝働きアリ〟の一体を撃破せしめた実績もあった。

 

「――――♪」

 

 プラズマエネルギーで生成したカスタムガンで先制攻撃を成功させた朱音は、力強く歌唱しながら両足のスラスターを吹かして、ホバリング移動で森の中を〝バック〟で後退し、ノイズたちは逃がさぬとばかり追走を開始する。

 行く手を阻む木々が多数そびえ立つ森の中、そこを高速な上に進行方向に背を向けて突き進むなど、常識的に考えれば危険だった。

 現に未来は目を開けている余裕すらなく、必死にギアを纏った朱音の体にしがみついていた。

 当然――〝歌いながら戦う〟と言う、シンフォギアの特性を知らぬ者からすれば不可解極まりないやり方で朱音の行う戦闘に構ってなどいられない。

 反対に朱音は、まるで背中にも目を持っているのかと思わすほど、衝突どころかかすりもせず、高速で森をバックで掻い潜っていた。

 ノイズどもはと言えば、その動きはおぼつかなく、どこか惑ってもいる様子で移動速度も一定していない。

 位相差障壁で、目の前にどれほど大きく、頑強な物体があろうと擦り抜けてしまうノイズだが、

奴らには物体を透視する千里眼を有してはいない。

 しかも奴らの思考は基本的に至極単純であり、視界内に人間がいれば我先に襲い掛かり、逆に人の姿が映らなくなると、一転して何もしなくなる。

 

「―――――♪」

 

 しかも朱音の歌で、彼らはこちらの物理法則に縛られている為、頼みの位相差障壁も使えず、障害にならない筈の眼前の物体――木々が障害となって進行を邪魔されていた。

 猛スピードでのホバリングでじぐざくに軌道を描き後退しながら、死角の多く作る樹たちを隠れ蓑に姿を消したり現れたりを繰り返し、敵に攻撃どころか移動すら支障を来させて翻弄している朱音は、未来を離すまいと左腕で抱き、右手が持つP226モデルのハンドガンから連射されるプラズマエネルギー製の.40S&W弾を、一発も撃ち漏らさず正確に撃ち込み、ノイズの体に食い込んだ弾丸はプラズマの炎に戻って内側から体組織を破壊した。

 さらに周囲に、三日月型なプラズマの刃をいくつも形成、それらを高速回転して飛ばす。

 

 ホーミングプラズマの派生技、烈火刃――《ローリングプラズマ》。

 

 回転し飛び回るプラズマの刃は、ノイズたちの肉体を焼き切り、傷口から彼らを炭素化させていった。

 二列(ダブルカラム)の弾倉(マガジン)内の弾丸を撃ち尽くし、ホバリングを停止させる朱音、その時には数十体いたノイズは粗方狩り尽されていた。

 朱音は左腕で抱きかかえていた未来を地面に下ろす。

 

「大丈夫か?」

「うん……」

 

 ノイズが目の前に存在する戦闘の真っただ中にいた為、未だ意識と呼吸に乱れがあるのは否めず、両脚に全く力が入らない状態ながら、未来はアーマー姿の級友の問いに応じた。

 未来の無事を確認すると、ハンドガンからマガジンを排出させる―――

 

「あ、危ない!」

 

 未来の叫びが森の中にて響く、まだこの場にノイズが残っていたのだ。

 飛行型が五体、突撃形態で斜線上に降下していた。

 しかも五体は融合して、大型化して大気を打ち破りながら、朱音の背後を取って彼女を突き刺そうとしていた。

 

 が、螺旋の刃を突き立てられようとしている朱音は、左手の噴射口から発した炎を弾丸の入った新たなマガジンにへと固形化し、素早く装填、振り向きざまにスライドを引き、猛禽の如く鋭利な眼光で狙い、両手で構え。

 

「――――♪」

 

 奏でながら、連射。

 先陣を切る一発目が螺旋の先端に食いつき、風穴を開け。

 後続の弾たちは、いずれも一発目を押し上げ、風穴へと深く食い込んでいきプラズマ化して炸裂………朱音の精密射撃(ピンホールショット)を前に、融合体は敢え無く爆破されて炭を飛び散らされた。

 

「…………」

 

 未来は、月光の恵みで艶を帯びたさらりと伸びる黒髪が、爆風でなびく朱音の横顔を見上げている。

 美しくも勇壮なる学友の勇姿は、彼女の纏う〝鎧〟や振るわれた〝力〟と言った疑問を忘れさせ、困惑をも通り越させて、未来を見惚れさせていた。

 同時刻に、親友も〝シンフォギア〟を纏ってノイズを戦っている事実を、この時はまだ知らぬまま。

 

 

 

 

 紫の人型が地下鉄よりこじ開けた穴は、市内の森林公園の一つだった。

 地上に出たノイズは、その足で新たな獲物を探そうとしていただろう。

 公園の緑の上を走っていたところへ、コーラスを端に発せられる歌声が響く上空から、水色の三日月の刃が肉薄。

 空からの奇襲を前に、ノイズは何の対応もできぬまま両断され、爆音を夜の公園に轟かせて四散した。

 この個体も、相手が悪かったとしか表しようのない。

 遅れて地上に出た響は、夜空を見上げて、降下しながら歌い、月の光を刀身で反射させるアームドギアの大剣から、《蒼ノ一閃》を撃ち放った翼の姿を目にした。

 陸自のヘリで現場に急行して飛びおり、ギアを装着と同時に紫の人型を撃破した翼は両足に装着されている推進器付きのブレードの噴射で落下速度を抑えて園内の、響が立つ地点から約十メートルの場所に着地する。

 

「…………」

 

 決して穏やかからは遥か遠い、両者に流れる沈黙。

 しかも今回は、間に立ってくれる朱音が、この場にはいない。

 かの装者同士の私闘が起きてしまった時のより、重苦しい空気が、園内に流れる。

 不穏さを煽ろうとしているのか、月が夜天を流れる雲に隠れて闇が深まった。

 

「私だって………私にだって〝守りたいもの〟があるんですッ!」

 

 響は、何も言葉を口にしない、目どころか体の向きも合わせず背を向ける翼へ必死に思いをぶつける。

 自分だって、今は中途半端に、甘い気持ちでのこのこと戦場に出て来てはいない――ノイズと戦っているのではないと。

 

「だから―――」

 

 背を向けていた翼は、無表情な面持ちで横に向いた。

 だが二人の〝視線〟はぶつかりすらもしない。

 そのくせ翼の瞳は………〝ノイズ一体に手を焼かされ、踊らされている半人前の身で、何を一丁前なことを言っている?〟とでも言いたげに、冷めたものであった。

 相棒の愛機に対する強すぎる拘りも然りだが、初陣から、心身ともに〝守護者〟、翼の表現を借りるなら〝防人〟に相応しい獅子奮迅の活躍を見せた朱音の勇姿を直に目に焼きつけられていたのもあり、それが余計に響が〝未熟〟過ぎると映ってしまっていた。

 これで先の響の〝暴走〟を目の当たりにしていたら………どうなっていたか。

 あの瞬間の響の顔は、少なくとも〝人を守る者〟がしていい形相では、断じてなかった。

 

 

 

「〝だから〟なんだ? 早くその先を言えよノロマ」

 

 未だに噛みあうことも、向き合うこともできずにいる二人の装者の前に、一人の闖入者。

 遮っていた雲が過ぎ去り、月光が闖入者の姿を照らす。

 

「そんな……あれは……」

 

 目を大きく開かされた翼の面持ちは、〝信じられない〟と言う彼女の心境を、如実に表していた。

 闖入者は、あの銀色の髪の少女。

 そして彼女が身に纏っている蛇の鱗を象った白銀の〝鎧〟こそ。

 

「ネフシュタンの………鎧」

 

 二年前のツヴァイウイングの〝ラストライブ〟の裏で行われた起動実験で失われた筈だった〝完全聖遺物〟―――《ネフシュタンの鎧》であった。

 

つづく。


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