Fate/strange fake Prototype -Another Player-   作:縦一乙

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 スノーフィールドにおける“偽りの聖杯戦争”、その八日目。

 既にこの段階で今回の聖杯戦争は完全に破綻寸前――否、破綻同然の状態にあった。

 連日のテロ騒ぎに一般市民への影響は限界に達していたのに加え、昨夜の《ロバの竪琴聴き(オノスリューリラ)》による極秘情報の広域拡散。通常であればもはやなり振り構わぬ形で協会と教会が全力で乗り込んでいることだろうが、そうならない理由は“上”の情報操作とライフラインの物理的寸断、そして宝具《笛吹き男(ハーメルン)》による住民の強制睡眠・退去のおかげである。

 この内のどれか一つでも失敗していれば今頃世界中からスノーフィールドに注目が集まり、この戦争が露見していたことだろう。破綻寸前でありながらその屋台骨はまだ折れてはいないのである。

 しかし、ことが終わればその全てを誤魔化すことはもはや不可能だろう。昨夜の戦闘で市内の一割は完全に廃墟と化している。人がいないことで街としての機能が麻痺しているし、何よりラスベガスからの送電が完全にストップしているためこの異常は短期間では終わらない。いかに陸の孤島と化したとしても、外の人間に気付かれるのも時間の問題だった。

 これらの事態に対して住民を《笛吹き男(ハーメルン)》で操り復興作業をさせることも可能だが、八〇万人を同時に操作するような莫大な魔力や処理能力を割く余裕などどこにもない。せいぜい住民を複数箇所に集め被害を少なくすることで精一杯である。どちらにしろ専門知識を持たぬ者が操ったところでどうにかなるものでもない。

 そんなわけで、現在スノーフィールドの街はゴーストタウンと化していた。

 現在このスノーフィールド全域で動ける人間は約二千人。その内の八割は北部渓谷地帯の砦で籠城していた原住民で、あとの二割はスノーフィールドに未だ潜み《笛吹き男(ハーメルン)》にも抗った魔術師達とファルデウスが合流した《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》である。

 数の利だけで語るなれば原住民に分があるが、残念ながら非戦闘員も多く有利というわけではない。それに原住民は族長の言葉を守り迂闊に動き隙を作ることもしていない。何より、街中に至る所に設置されているカメラの内蔵バッテリーと無線機能は未だ健在である。街中に出て行くにはリスクが高すぎる。

 そう。

 だから、こんな真っ昼間に堂々と街中を歩く存在を見れば、殺されても全く不思議ではない。むしろ、情報が大事であると痛感させられた全陣営においてこうも無頓着な人間がいるなど、一体誰が思うだろうか。

 スノーフィールド市の中心近くにある片側三車線の幹線道路のスクランブル交差点。大通りにも面しているこの中心部でその人物はサンドイッチを片手に食べながら困った表情で右へ左へ視線を動かしていた。

「……誰もいないね、ライダー」

 椿の言葉に左手が反応し「そうですね、椿」と携帯電話のメモ機能によって反応が返ってくる。

 椿がこのスノーフィールドの現状を知らなくて当然である。街を離れていたことが災いし、椿とライダーは街中での戦闘についてはまるで気付くことはなかった。《笛吹き男(ハーメルン)》の強制睡眠もライダーによって弾かれたため気付かなかったし、いくら待ってもフラットもティーネも迎えに来る気配がない。

 フラットから貰った食糧も尽きて街へ出る決意をしたのは陽が昇った後。ほんの少しだけと街へと出てきたが、このゴーストタウンと化した街の様子に椿が落ち着いていられるはずもなかった。また夢の世界に入ってしまったのではないかと不安に駆られ、途中のスーパーで食べ物を失敬しつつライダーに励まされながら探索へと乗り出したのだった。

「やっぱり、これは現実?」

 頬張るサンドイッチは新鮮野菜とウインナーの肉汁の染みこんだ実に美味しいものだった。状況こそ似てはいるが匂いや香りに包まれたこの世界は現実なのだと徐々に実感しつつあった。ライダーの感想も同じようで「現実世界かと思われます。しかし確実に何かが起こっています」と助言もしてくる。

 ここで、この様子を見る者がいたとしたら、彼女は一体どういう風に見られることだろうか。

 この非常事態以上の異常事態の状況下で携帯電話を片手にあちこち探るように動いている少女。無防備そうに見えてその実、動きは実に淀みなく不自然なまでに自然過ぎていた。目を凝らしてみれば少女の頭上には魔力の煙とも思える渦が発生しており、直射日光から少女を守ってすらいる。

 ネタをばらせばその全てはライダーが椿を慮ってやっていることだ。肉体になるたけ負担をかけぬよう動かそうとすればそれは無駄を省いた綺麗な歩き方となり、身体の軸はぶれず腰の位置も上下しない。端から見ればどう見ても訓練されたような歩き方になってしまう。

 携帯電話も持ってはいるが、これは椿がライダーと会話するためのもので電波を発信や受信するものではない。

 だがはっきりいってその姿は何かを探る強力な魔術師にしか見えないだろう。《ロバの竪琴聴き(オノスリューリラ)》のことを何一つしらない椿とライダーではあったが、まるで情報を整理し確認しながら余裕綽々で歩いているようにしか見えないのである。可愛らしい少女の外見もこうなってしまえば敵を油断させるものと判断されても仕方なかろう。

 だから。

 次の瞬間には、彼女は十字砲火に晒されていた。

「わわ、わわわわわっ、何かなっ? 何なのかなっ!?」

 慌てふためき何が起こったのかすらも分からぬ椿をよそにライダーはこの状況を余裕すら感じさせながら軽く凌いでみせる。

 そう、これは戦闘である。

 今現在スノーフィールドが完全異常事態に陥っていることは誰の目にも明らかである。それでいて無関係の人間は排除され、お互いの情報もすべて筒抜け。こうした状況で優位に立つためには交通の要所を押さえることである。

 この場は街の大通り。NYやシカゴと比肩しうるこの場所が街の大動脈であるのは間違いなく、だからこそ、下手なサーヴァント相手であっても容易に突破できぬだけの戦力を整えてこの場に配置されている。

 だが、情報が漏れ出た今であっても彼らは決して博識というわけではない。ライダーという存在については未だに不明な点も多く、その消滅の有無さえも直接確認できているわけではないのだ。

 ここに至って、椿も彼らも、無知でしかなかった。

 唯一の違いは椿とライダーは自らの無知を知っていたが、この場にいた《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》は自らの無知を知らなかった。

 無知とは、時に災いを呼び起こす罪になるのである。

 椿の左手がこの状況にあっても高速で打鍵する。

『一分程お待ちください』

「傷つけるのはダメだよ!」

 そんな場合ではないというのに椿は己の危険すら認識もせず、悠長に携帯電話を見ながらライダーに注意すらした。

『了解しておりますよ、マイマスター』

 椿の返事を待つことなくライダーは己の魔力を総動員して椿の身体を操ってみせる。

 まずは椿の身体を無理矢理跳躍させて軽く後方一回転、その間に椿の視界に映った射手の居場所を特定する。マズルフラッシュから特定するに、火線は全部で三本。左右のビルと背後のビルのY字に配置された火器は第一次世界大戦から教本に載せられているような典型的な攻略困難な戦法である。

 射手同士の連携も取れており、どうしても椿の視界を頼りに動くと死角からの対応には遅れてしまう。避けられぬ弾丸は張り巡らせた障壁で防いで見せるが、一息つくにはいくら何でも頼りない。何とか遮蔽物に隠れたいところだが、ここはスクランブル交差点のど真ん中。アクロバティックな機動と障壁で何とか避け続けてはいるが、無傷のままでいられるのにも限界がある。

 ならば、やるべきことはひとつであろう。

 椿の左手が高速で打鍵する。

「跳びますって何っ!?」

 一応椿にはこれから何をするかをライダーは報告したが、残念ながらその意図は通じなかったようである。令呪によって椿の思考はライダーに筒抜けだが、その逆はない。人外の存在であるライダーからの思念が人間に適合しない可能性があったため、ライダーの思考を椿は受け取ることができないのである。

 サンドイッチの袋を大きく火線の元へと投げつけることで一瞬の隙を作り出す。椿の両足がアスファルトの大地を踏みしめ、その膝が撓んで力を蓄える。この瞬間を三人の射手が見逃す筈もないが、それも一瞬のこと。次の瞬間には射手は全員椿の姿を見失うことになる。

 人間には決してあり得ぬ跳躍力。一〇……いや、二〇メートルを超える大ジャンプはまさしく想定外。なまじ事前に人間で行えるレベルのアクロバティック機動をしていただけにその落差はうまい具合に虚を突く結果となっていた。

 そして着地点は三カ所の射撃ポイントで一番高い場所である。夢の中で下の階から上の階へと攻め込んだことのあるライダーだ。相手の高所を取ることの利点は身をもって知っている。そして制圧の仕方も慣れたもの。

「はふんっ!?」

 強烈な加重に目を回しそうな椿であるが、血流を調整し筋肉を操作して無理矢理にその体勢を整える。ブラックアウト寸前の視界を無理矢理確保して見れば銃火器を持って未だ椿の姿を探す間抜けな射手と観測手。そして彼らの護衛役と思しき兵士と目が合った。

 ライダーはこの戦闘において初めて焦りを感じ取る。何せ、護衛役はその両手にロッド式の棒状の武器――トンファーを装着している。攻守ともに優れた近接戦闘特化武器なのは認めるが、まさか魔力が込められた弾丸を撃ち込んでくるような連中ががただのマイナー武器を趣味嗜好だけで装備させているわけもない。

 一瞬で目前にまで近寄り攻撃してくる護衛役を寸でのところで椿の身体は避けてみせる。身体が小さいことを活かし倒れ込むようにしてその両足に絡みつく。通常であればこんなことで護衛役の巨体を倒すことなどできはしないが、ライダーが強化した椿の身体は通常の一〇〇倍以上。護衛役も魔術師であろうが、まさに桁違いの出力に為す術もなく転がされ、

「はい、タッチ」

 椿の指先が転がされた護衛役の口内へと軽く侵入する。その指には予め椿の唾液、もっと端的にいえばライダーの端末そのものが塗られている。粘膜接触によって体内の免疫機構が即座に反応するが、そのショック反応に護衛役は耐えきれずあっけないほど簡単に意識を手放した。

 そして遅まきながら、背後に現れ護衛役を倒した椿に射撃手と観測手は大いに慌てるが、しかしそこの判断はプロであった。即座に手に構えた銃ではなくナイフを構えたあたり、二人ともそこそこ腕に自信があるのだろう。ナイフには何らかの呪印も刻みこまれ魔力も通っている。当たりどころが悪ければライダーが張り巡らせた障壁ごと椿の身体を傷つけかねない攻撃力である。

「え? 五月蠅いでしょうから聴覚を遮断します?」

 そんなあからさまな殺気を前にライダーはもう終わったとばかりに椿へ報告した。

 襲いかかる二人を前に、椿は慌てない。ライダーが動かないということはもう戦闘は終わっているということだと彼女は知っている。

 左右同時に襲いかかるナイフは、かなり余裕を持って止まっていた。最初こそ自らに起こった事態を飲み込めずにいた二人も、すぐにその瞳から意思の光が抜け落ちる。それもその筈、この場に椿が乗り込んで数秒経っているのである。この距離で数秒もあれば、“感染”させるのは非常に容易い。

 ライダーの“感染”は無敵の盾と矛となり椿を守る。

 魔術師ならば常に魔力を体内に循環して対処することも可能だろうが、先の護衛役の通り口内などの粘膜に直接接触されれば一瞬で“感染”するだろうし、油断していれば傍を少し通り過ぎるだけで椿の勝利は確定する。

 さすがに向かいのビルにいる敵兵を昏倒し操るレベルの“感染”は不可能ではあるが、ライダーが無策にこの三カ所の中から一番高所を潰したわけではない。

 “感染”させられた射撃兵はいくらか抵抗はしたようであるが数秒もすればナイフを落としてふらふらと椿を狙った機関銃を手に取り他二カ所に設置してある機関銃を狙ってその弾丸を容赦なくぶち込んだ。

 無線機から聞こえる仲間と思しき抗議の声に応じることなく虚ろな顔をした射撃兵は役目を果たすとそのまま倒れ伏していった。

 人を傷つけるな、という令呪を受けたライダーではあるが、この“感染”についてはその命令の範囲外という認識を持っている。そもそも怪我と病気ではその意味が異なっているので、ライダーが気をつけるべき点は“感染”によって人の体組織を傷つけないようにするだけだったりする。

「なんだったんだろうね、ライダー?」

 機関銃の爆音を間近に受け椿は鼓膜を痛めたが即座に修復。椿の認識の追いつかぬ戦闘に椿自身は白昼夢を見たような気分である。

 幸いだったのは椿自身がこの事態を正確に飲み込めておらず、自らの命の危機を自覚していないことか。そうだったら宥めるのは大変だっただろうとライダーは思いながら打鍵をしつつ――

 ふと、違和感に気付いた。

 敵が、余りに弱すぎる。

 椿の身体を借りて周囲の様子を眺め見る。周囲三六〇度開けたこのビルの屋上は周辺観測にうってつけであり、恐らく椿の存在もとうの昔に把握されていたことだろう。無線機を用意しておきながら連絡を取っていないということはあり得ない。

「どうしたの?」

 ライダーの行動に訝しんだのか椿が問いかけるが「何でもありません」と打鍵することはできなかった。

 確かに、この陣形は攻略しがたいものだ。対人戦闘は無論のこと、対サーヴァントとしても機能するだろう。ライダーについて相性が悪かったとしかいいようがないが、これが噂に聞くアーチャーや、実際に戦ってみたランサーであれば何の障害にもならない。

 情報に疎いライダーでさえそれくらいのことに気付けるのだ、何故宝具すら持って待ち構えていたような部隊がそんなことに気がつかないのか。

 ライダーは考える。そしてその結果、ライダーの、椿の身体の動きは止まった。

 それこそが、敵の狙いだった。

 例えどれだけ強固な守りをしていようと、その守りに絶対の二文字はあり得ない。

 絶対防御の一例たるランサーの《天の創造(ガイア・オブ・アルル)》一つとってもライダーがやったように凝縮した魔力で抉り削ればその質量を奪われいつかは綻びも生まれてくるように、何らかの弱点は存在する。ランサーの気配感知スキルや形状変化による高速飛翔は個々にただ存在するだけのスキルではなく弱点を補うための必然としてのスキルなのである。

 では、ライダーの場合はどうであろうか。

 ライダーには以前のような莫大な魔力はない。しかし、消滅を免れていたということは未だに八万人との感染接続は消滅しておらず、そこから微弱ながら魔力供給は行われ続けている。

 それらの魔力を用いてライダーは周囲数十メートルに魔力を帯びた粒子を浮遊させ即席の警戒網を構築させている。飛び散った粒子も感知と同時に急速凝固させ即席の盾となり敵の攻撃を受け止め逸らすことだってできる。

 継続的防御能力に難はあるが、バーサーカーの《暗黒霧都(ザ・ミスト)》同様に、この方法であればよほどのことがない限り大抵のことは対応できる。

 だが残念ながら、よほどのこと、というのは大抵の場合、戦争ではよくあることなのである。

 その宝具には、名前はつけられていない。

 理由は簡単で、宝具と呼べる威力はあってもいつも使用される特殊処理された銃弾と運用方法が何ら変わらないからである。注意点としては通常ハードプライマーよりも衝撃が大きいこと。そしてその強大な威力故に通常の弾道計算ソフトもあまり当てにすることはできない。

 だから、その弾丸が椿の頭部数センチ横を掠っただけなのは単純な幸運によるものだった。

 ライダーの違和感は正しかった。

 サーヴァントは人間には持ち得ぬ高い機動力を持つが故に、まず高所を狙う傾向にある。場所的優位を確保する意味もそこにはあるが、英雄ならではの性格によるところも大きい。実際、アーチャーは人を見下せる高所を好んでいるし、ランサーも警察署を根拠もなく上から攻めている。ライダーも、この程度ならあっさり倒せると踏んだからこそ、ここを最初に攻めたのではなかったか。

 元よりこの陣取りゲームのように配置された部隊こそ、最初から罠でしかない。わざと高低差をつけた三カ所に兵を配置したのも囮。遠距離からの狙撃を可能とする、遮蔽物も存在しないこの場所へと誘導される。

 極超距離からサーヴァントを仕留める威力の精密狙撃。視線すらも曖昧、殺気すらも届かず、その息遣いに気付くこともない。これなら、直撃すればサーヴァントを屠るに十分すぎる。

 一撃目が外れたことは単純な幸運ではあるが、それは同時に狙撃手が弾丸の性質を理解したことに他ならない。

 狙撃手の位置はおおよそ二〇〇〇メートルの位置にあるビルの上階のどこか。そして椿の姿は狙撃手には丸見えであり、例えこの場から飛び降りても恐らく弾丸から逃れることはできない。

 防御しようにもあの威力の弾丸を防ぐことはライダーの全魔力を一点集中させても無理であろう。そらすことだって難しい。“感染”させた敵兵三名を盾にすることも考えるが、防げる保証もなければ自由に操るだけの浸食もまだできていない。

 と、そこまで思考してみたがそれよりも重大な事実に遅まきながらライダーは気付いた。

『椿、大丈夫ですか?』

 ライダーが打鍵してみるものの、焦点のぼやけた椿の視界を見れば大丈夫でないことは明白だった。サーヴァントをも一撃で粉砕しうる威力の弾丸である。数センチ横を横切ったその衝撃だけで椿の脳は完全に揺さぶられ、急いで衝撃を緩和したくらいでは即座に動ける状態にはない。

 椿の脳の代わりにライダーが直接椿の身体を動かしてはみるものの、身体は明らかに重い。サブシステムとしてフラットから調整を受けたライダーはメインシステムである椿の許可なく身体を動かすことはできない。それは当然の安全装置ともいえたが、この場においてそれは無視できぬ隙であった。

 この場において椿を助けるためにはその機動性を発揮して狙撃手を攪乱させるくらい。周囲に撒き散らした粒子を濃くして視界を悪くさせてはみるが、狙撃手が熱源探知でもしていれば何の意味もない。

 あの威力であれば次撃まで通常よりも時間がかかるのが救いだろうが、そんなもの多少の域をでるものではない。

 人を傷つけぬというライダーに命じられた令呪の力がフラットのプロテクトを驚異的な速度で解除していくが、あののほほんとした男はその天才性をこんな状況で発揮してみせる。

 到底、間に合わない。

 椿の同意がなければ魔力によるアシストにも限界がある。何とかふらつく足取りで少しでも遠くに逃げだそうとするが、そんな行動は悪足掻きにすらならない。そして案の定、三歩も歩けば無様に転げて時間稼ぎもできはしなかった。こうなってしまえば、ライダーにできることはもはやただ一つだけ。

 祈ること、のみ。

 ライダーという存在すらあやふやな神域の悪霊が“祈る”などとは笑い話でしかないが、しかし奇跡とは“祈り”から発せられるものである。ライダーであっても椿の“祈り”によって誕生した存在であり、そのライダーが“祈る”ということには笑うことのできぬ意味がある。

 祈る。ただそれだけで、ライダーは、この窮地を脱してみせる。

 太陽は直上にあった。陽光を遮るものなど何もない場所だというのに、ライダーの視界には影があった。

 黒いマントに身を包んだ細身の女性。それはライダーが“祈り”の先に見た幻影か、それとも現実であるのか判断は付かなかった。

 ただ、

「安心して。もう、あなたを傷つける者は誰もいない」

 着弾する瞬間にそんな悠長な言葉を聞ける筈もない。だというのに、ライダーは確かにその女性の言葉を聞いたような気がした。

 

【……伝想逆鎖……】

 

 そしてここで奉じられた奇跡を前に、椿を守らんと全力を尽くしたライダーは、奇跡の目撃者となった。

 

 

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 世界に可能性は無限に広く公平に分散している。

 歴史に「もし」などはありえないが、未来に「もし」は溢れている。それは可能性という言葉で一括りにされているが、しかし果たしてどれくらいの人間がその可能性を認識しているのか甚だ疑問であろう。

 署長は甚だ遺憾ながらも魔術師や元軍人の肩書きを持ってはいるが本職は警察官であり、警察官のつもりでもある。そして警察官は名探偵ではないので容疑者のちょっとした仕草からインスピレーションを発揮して犯人を特定するようなことはほとんどしない。警察がするべきは地道で綿密な捜査であり、例えどれほど怪しくとも容疑者の全員の行動を調べ上げアリバイを調査する。だから、全てが判明するのは大抵は事件後のことであり、そこで辿り着きようやく「あの時の行動はそのためだったのか!」と手を打つのである。

 つまりは、何が言いたいかというと。

「お前の嘘が役に立つとは思いもしなかった」

「こんなこともあろうかと思ってな」

 署長の皮肉にキャスターは大まじめに大嘘をついてみせた。

 スノーフィールド市内にある誰もいなくなったビル、その地下で署長はモニター中の漏れ出た情報のデータ整理を行っていた。

 《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》の情報はほとんど除外してある。計画中枢近くにいた署長が知らぬ情報の方が少ないだろうし、問題はこちら側の情報が一体どれほど相手に流れたかを確認したかったのである。

 予想通り、こちらで用意した計画は全て流れ出ていることが確認された。ただし、その九割以上はキャスターが適当にでっち上げていた嘘であり、ダミー情報である。中には“上”の誰々とキャスターは実は繋がっており、全ては計画の内、などというものもある。相手を揺さぶるにはほどよい策であろう。

 特に署長が逃走中に令呪を使い切り、キャスターが一時的とはいえ令呪に従い消滅したことで、マスター、キャスター共に脱落したという疑いを持たせることにも成功している。これがどれ程通用するかは不明だが、これで一応のアドバンテージを持つことはできた。後はこれをどう活かすかが問題だ。

「やはり、ジャック――いや、もうバーサーカーと呼ぶべきか。あいつの情報が漏れ出たのは致命的だな」

「しかも当人も戻ってこないしなぁ」

 キャスターの言葉に自分で入れた不味いコーヒーをすすりながら署長は別に指定席でもないのに空けられている空席を眺め見る。

 あの《ロバの竪琴聴き(オノスリューリラ)》による情報漏洩以来、公共の通信網は完全に沈黙。《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》が密かに張り巡らせておいた非常時の通信網を暗号変換させて何とか連絡を取ろうとしているのだが、それでもバーサーカーから応答はない。

「端末から時折反応だけは返ってきているんだがなぁ」

「案外本人は既に消滅していて、端末は誰かに奪われたか」

 何とはなしに言った言葉が正解であるなどと、神ならぬ署長に分かる筈もない。

「……そんで? これからどうすんだよ、マスター?」

「そうだ、なぁ」

 キャスターの軽い口調の割と真摯な質問にマスター権を失ったマスターは頭の後ろで手を組みながら天井を眺め見る。

 情報の整理はある程度検討がついているのでおおよそ終わっている。

 その情報によると目下のところ最大勢力は潤沢な宝具を装備した戦闘経験豊富な人員を持つ古巣たる《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》。そして人員こそ最大であるが装備に劣り非戦闘員も多く抱える北部丘陵地帯で専守防衛とばかりに沈黙を守っている原住民の二派閥に別れている。強いていうなれば、そこに無理矢理第三極として署長達サーヴァント同盟を加えても良いかもしれないが、組織として戦うには残念ながら話にすらならない。少しヘマをしただけで全滅必至なのが現状である。

 そして何より、アーチャーとランサーという二大英霊がここには含まれていない。それが故に圧倒的優位な《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》が迂闊に動けない現実がある。つけ込む隙があるとすれば、今しかない。

 今しかない、のだが。

「戦力増強……するしかないだろ」

「一体誰を?」

 実に真っ当すぎる方策に対してキャスターは至極真っ当な意見を返した。それで簡単に答えが出るのであれば、最初から悩みなどするわけもない。

 ここにバーサーカーがいたのであれば、ひとまずマスターであるフラット・エスカルドスと同盟もできたであろう。更に、夢の中で共闘したらしいティーネ・チェルク、繰丘椿、銀狼との交渉も考えることもできた。だが、そのいずれも今はどこにいるのかようと知れない。

 つまるところ、即時戦力増強は絶望的という結論だけが出た。

「……そういえば、あの二人はどうした?」

 結論が出てしまったところで話題をかえようと署長は広さだけは無駄にある部屋の中を眺め見る。

「なんだ、あの錯乱状態を見ていなかったのか?」

「何のことだ?」

 やるべきことが多すぎてこの建物内を調査していた署長はその間にあった悶着については何か騒ぎがあったぐらいの認識でしかない。

「何でも、この建物には入れないらしい」

「……何を言っているんだ?」

 前後の会話とキャスターの言葉の繋がりが署長にはよく理解できなかった。

「俺にも分からん。しかし症状だけ見るとありゃ呪いの類にしか見えないな。もしくは悪魔が憑いている。とにかくこの建物には入らないと一点張りだ。仕方なく隣の平屋に入ってる」

 肩を竦めて説明をするキャスターではあるが、戦略拠点として自家発電施設があり、逃走ルートも確保でき、適度な物見もできる高さのこの建物は非常に優良物件である。一体何が不満なのか教えて欲しいくらいである。

 以前にも何か見たくない幻影を見たとかで酷く怯えていたこともあり、キャスターとしてもこれ以上の不安材料は抱えたくないのが本音ではある。

「一応聞いておくが、その呪いとやらは解呪できるか?」

「いや、残念ながらあの令呪の魔力が強すぎて判別ができなくてな」

 言葉を濁してキャスターは署長に報告してはみるが、ただの精神疾患という可能性もある。そして残念ながら、現状ではそうである可能性が非常に高いと言わざるを得ない。それを報告したところで改善する見込みがないのなら、ここは黙っておいた方が得策であろう。

 一応、精神安定効果に特化した宝具《安心毛布(ライナス)》を与えてはみたが、静脈注射ほどの効果も期待できなかった。選んだ逸話が微妙だったのか、それともそこらへんの犬小屋にあった毛布を材料にしたのが悪かったのか。もしくは両方か。無駄な魔力を使ってしまったと反省するキャスターである(ちなみに、この即興宝具《安心毛布(ライナス)》はノミがいるという理由で即時アサシンに焼かれてしまった)。

「まあいいさ。ならアサシンは東洋人に付き合って隣へ行ったのか?」

 キャスターが何かしら隠しているのに気付かぬ署長ではないが、令呪を持たぬ署長とキャスターの関係は同等だ。無駄な追及は不和を招きかねないと考え、署長は露骨に話を切り替える。元より署長が気がかりなのはアサシンの方である。

「いいや。アサシンなら周囲を偵察してくるってよ」

 キャスターと接触する以前から二人で行動していたと聞いていたので勝手な推測をしたが、署長の予想に反してアサシンは単独行動をしているらしかった。何となくではあるが、あのアサシンは常に誰かと共にいるイメージが署長の中にはある。

「殊勝なことだな。だがこの辺りのクリーニングは終わっているだろう?」

 市内に仕掛けられたカメラにはどうしても死角があるし、一連の戦闘行為でダメになったものも多い。特に内蔵バッテリーを持たぬカメラは停電になった段階で死んだも同然である。それについては既に確認済みの筈だ。

「ああ、だからちょっと遠出してもらって、どうせなら中央通りに構えている《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》に隙があれば突っ込んでみろとアドバイスしといた」

「……それは全然大丈夫とはいえないような気がするのだが?」

 それ以前に一応は同盟なのだからそういうことは早めに連絡して欲しい。そして、それは偵察とはいわない。

 署長の非難の視線の意味くらいはわかるのか露骨に視線を逸らせるキャスター。だが別に面白いから頼んでみたというだけでもない。

 アサシンは実を言えば非常に優秀なサーヴァントだ。アサシンというクラスでありながらそのパラメーターは異常な程高く、聞けば宝具の種類も数多く応用力もあるという。歴代のアサシンと比肩しうる者のいない破格のサーヴァントなのは間違いなかった。

 だというのに、明らかに格下であるバーサーカーに一度ならず敗北したとも聞いているし、先だってのアーチャー戦においても同等以上の戦力を持ちながら歯牙にも掛けられなかった不遇っぷりである。

 そしてその原因は明かな経験値不足に他ならない。

 今、アサシンに必要なのはそこらへんに散らばる雑兵でも、ラスボス級のアーチャーでもない。適度に強く歯応えのある中ボス級の敵である。

 その意味では、拠点防衛をしている《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》は難易度は明らかに高いが試験対象としては相応しい……とキャスターは思っている。端的にいって負けるだろうが逃げるくらいはできるだろう、くらいには。

「いや、無理だろ」

 キャスターのその考えに真っ向から首を振って署長は否定するが、その気持ちは分からなくもない。

 情報漏洩以前の問題として、こうした現状ともなればあの場所は真っ先に占拠対象となる地点だ。となれば別に署長やキャスターでなくともどういう陣形となるのかは簡単に予測がつく。

 遠目でしか確認していないが、あの兵数からしてアーチャーやランサーといったサーヴァントに対応できるとも思えない。となれば、あそこに配置された兵は捨て駒だ。本命はどこか遠くで構える超遠距離からの狙撃に違いない。

「一応、どういう陣形と作戦かは教えておいたぜ? 狙撃があるとも言い含めておいたし」

「使うとしたら《忠実なる七発の悪魔(ザミエル)》の試作品である宝具まがいの銃弾だろう。あの弾速を躱せるのか?」

 事前に分かっていたとしても、恐らくは無理だと署長は判断する。

 狙撃である以上、狙撃手がどこにいるのか判断するには最初の一発を撃たせる必要がある。そしてよしんば撃たせて場所が分かったところで、数キロ先にいる狙撃手を仕留める手段がなければ意味がない。

 制圧だけならアサシンでもなんとかこなせるだろうが、その後の狙撃は無理だろう。防御・回避・反撃、その全てにおいてベストな行動を取らねば攻略は不可能だ。アサシンにそれを可能とするスキルやスペックはあろうとも、到底こなせるとは思わない。

 キャスターにしても、その結論は同じ筈だ。

「実戦経験を積ませてレベルアップ、というつもりか?」

「無駄……にはならないと思いたいねぇ」

 署長とキャスターとの一番の違いは、キャスターにはこの戦争を盛り上げたいという意志があるというところだ。そのためには無理・無駄・無謀であろうとなかろうと、アサシンに活躍の場を設けたいところなのである。

 署長としてはこれでアサシンという手札がなくなる方がよっぽど恐ろしいのだが。

「せめて、前線に出られる兵士が数人いればいいんだがな」

「俺に期待するなよ?」

「お前を出すくらいなら私が出た方がよっぽどマシだな」

 軽く笑いはするがその声は乾いている。実際、最悪の事態に陥ればそうした状況もあり得るのだ。

 戦力増強。それが最優先課題となっているのは間違いない。

「仕方ない。私はバーサーカーの情報を少しでも集めることにしよう。キャスターは《二十八人の怪物(クラン・カラティン)》と原住民以外で戦力になりそうな人物を探してくれ」

 初日の武蔵戦で魔術師が大量に行方不明になってもいる。前線に出張るくらいの魔術師だ。もしかすると上手く生き残り地下に潜伏している可能性もある。

「そうそううまくいくかねぇ」

「いかせるんだよ。っと、噂をすればアサシンが帰ってきたようだな」

 署長のノートパソコンにはエレベーターが起動したことを示す表示が点滅している。電源は完全に落ちているように見せかけてはいるが、実際には自家発電によって稼働できるように細工をしているのである。これが特殊部隊なら閉じ込められる可能性のあるエレベーターなど使わず階段を使って突入してくる筈だ。

 だが署長の言葉にキャスターは珍しく怪訝な顔をしてみせた。

「どうした?」

「……帰るのが早すぎる」

 署長はキャスターからアサシンが出かけた正確な時間を聞いてはいない。だが、あの拠点を偵察するには数時間は要するだろうし、攻略をするのならばもっと時間はかかる筈である。

 エレベーターにカメラは設置されていない。この建物は防音対策もされているので足音なども聞こえない。

 腰のホルスターから署長は静かに拳銃を抜き放ち、キャスターも壁に立てかけてあったソードオフショットガンを手にする。誰にも当たらぬキャスター本来の宝具ではあるが、己の魔力を込めねば普通に銃としても使用できる。

 使っていたテーブルを蹴飛ばして即席の盾を用意する。

「なあ兄弟。ひとつ賭けをしようぜ」

「誰が兄弟だ。それで、どんな賭けだ?」

 いつも通りの軽口を叩いてみせるが、これから現れる人間が誰かによって、二人の運命は大きく変わってくる。

「これから現れるのは、男か、女か、だ」

「敵か味方じゃないのか」

「それじゃつまんねえだろ」

「じゃあ、私は女にしておくぞ。若い女性だ。というかもうアサシンでいい」

「何だとっ!? 俺に男を選べというのか!? イヤだ。俺も女が良い!」

 割と本気で抗議するキャスターに呆れながら署長はノートパソコンに表示されたエレベーターが地下に降りたことを確認。テーブルの端から顔を覗かせてその時を待つ。キャスターも逆側から同じ事をする。

 そういえば女癖の悪さもこの英霊の特徴の一つだった、と今更ながら署長は思い出していた。そして革命を経験している分、戦闘経験もそれなりに豊富だったことも思い出す。

「じゃあ、俺はもっと幼い可憐な美少女に賭けよう! ボーナスチャンスで一気に倍率ドンだッ!」

 何がボーナスで何がチャンスで何が倍率ドンッ、なのかは知らないが、署長とキャスターはそうした言葉の応酬の最中であっても油断はしていない。自らの装備をチェックして、退路を確認する。データ解析の途中であるノートパソコンを持ち逃げたいところだが、そこは邪魔にしかならなさそうなのですっぱりと諦める。

 この部屋の入り口は三カ所ある。前方に一カ所、後方に一カ所、後は地下の下水道へと通じる隠し扉が一つある。数年前までとある犯罪組織が使用してきた曰く付きの秘密基地である。こうした時の備えは万全だ。

 まあ、その組織を壊滅し全員検挙したのは他でもない署長であるのだが。

 玄関が開く音がした。廊下に敷き詰められた厚手の絨毯は廊下を歩む音を消し去る。今更ではあるが、攻められたときの備えを完全に怠っていた。わずか数時間で行えというのも無理からぬ話ではあるが、少なくとも絨毯は取り払っても良かったかも知れない。そうすれば人数くらいは把握できただろう。

 そして、ドアノブが回り、二人がいる部屋へと侵入者が現れ出でる。

「……何を、しているのですか?」

 一目見てこの状況を看破したアサシンの呆れたような一言に二人はどっと疲れた顔をしてみせた。額の汗を拭い取り、拳銃をホルスターへと戻しておく。緊張の糸が切れれば、喉が渇き腹が減ったことにも気付くものだ。

「……ほらな、私の勝ちだ。夕飯はキャスターが作るんだな」

「いや、勝ったら何かするか決めて――」

 ほぼ同時に、二人の視線は一点に収束される。

 疲れているのだろう、と二人は思った。

 何せ、こちらは潜伏中のお尋ね者。この地にいる以上袋の鼠に違いはなく、このままだと追い込まれるのは間違いない。自らの力で状況の打破は難しく、蜘蛛の糸より細い希望に頼るより他はない。ろくな睡眠どころか休息すら取れぬ中、ストレスは今がまさにバブル期真っ盛り。

 大抵の薬物には軍人時代に耐性をつけていたりする署長であったが、時折ドラッグの後遺症とも思える症状にうなされることもある。これまた大抵の悦楽を金の力で叶えてきたキャスターであるが、こうした禁欲生活に慣れている筈もない。

 両者の結論は同じだった。

 やはりストレスには勝てなかったようである。

「そういや以前健康診断とかいう名目でサーヴァントの脳内を調査してたけどさ、俺の視覚野と聴覚野がともに高い活動レベルにあったらしいんだよ。リアルな夢を見たり幻視や幻聴があってもおかしくないってよ」

「ふむ。しかしリアルな感触がある。視覚連合野に送り込まれる映像、体勢感覚野によって得られる感触、それら脳内ハイウェイのどこかに直接実在し得ない筈の疑似情報が送り込まれてるみたいだな」

「おお。集団幻想とかいうやつだな。本当に手触りがあるような感触がくる。しかし惜しいな。せっかくなら絶世の美女を願ってればよかったぜ」

 現実主義者の署長と快楽主義者のキャスターに頭をごしごし撫でられながら怯えて何も言えずにいる椿を見ながら、アサシンはやはりここに連れてくるべきではなかったと少しばかり後悔していた。

 

 

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ライダー無双。
魔力さえ在れば無敵のライダー(ランサーには通じなかったが)。けどこのままだと強すぎるので弱点もあるぞ、ということを伝えたかった。この時点でライダーの会話方法は模索中だった。結局携帯のテキスト機能を使ったのは、それが一番無難だし、周囲に勘違いを起こさせるというメリットがあったから。イメージは寄生獣のミギー。

「こんなこともあろうかと」
元ネタは宇宙戦艦ヤマト。予想の斜め上の展開を狙っていたので、かねてよりキャスターの嘘を役立たせたかった。

バーサーカーの呼び方。
基本的に各サーヴァントの呼び方はクラス名にしている。そうでないとややこしくなるからなのだが、そういう意味ではバーサーカーは非常に厄介だった。ここで呼び方を改めるのはある意味著者の都合である。

東洋人の錯乱。
プレイヤーのエレベーターのある建物に入れない、女の子の幻覚を見る、というルール。群像劇だと東洋人の存在感が薄くなり、おまけにルールがあることを忘れている人も多いと思う。著者もすっかり忘れていた。なのでここで一応ルールが顕在であることをアピールしつつ、端から見ると精神疾患にしか見えないことを伝えたかった。

宝具《安心毛布(ライナス)》。
スヌーピーで有名なマンガ、ピーナッツに登場するライナス少年が持つ毛布が原典。彼は作中この毛布を拠り所として始終持ち歩き、手放すと体が震えたり、ヒステリーになったりする。
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