がっこうぐらし!-妄想の中の自分-   作:名あり

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ゾンビのように活動再開しました


-10- 妄想の遠足(前編)

 夢を見る。

 現実のような夢で、しかし、もう元には戻らない夢。

 夢の中のはずなのになぜ気づけたかといえば、夢の中ではまだ私の隣に圭がいたからだ。

 夢の中でも私達は、ショッピングモールで生活をしている。

 助からないかもしれない恐怖があったが、まだ隣に圭がいたから安心できた。

 ……しかし、夢は長くは続かない。

 

「生きていればそれでいいの?」

 

 夢の中でも、やはり圭は最後にそう言い残してどこかへ行く。

 夢の中で、孤独と不安に押しつぶされそうになる。

 だから私は、自分に言い聞かせるように、しっかりと口にする。

 

「私は、負けない」

 

*****

 

「見えた! 見えたよ!」

 

「元気だなおまえ……遠足で熱出すタイプだろ」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

 そんな由紀のテンションに、やや呆れたような物言いでくるみが言う。

 学校を出てから2日目、途中、りーさんに運転席を変わるなどをして、俺達(由紀達)はなんとかショッピングモールにたどり着くことが出来た。

 

「わ、暗い。休みかな?」

 

「リバーシティトロン・旅行案内……今日はイベントみたいね」

 

 りーさんが、由紀に疑われないように嘘をついた。

 

「イベント? お祭りみたいなの?」

 

「イベント中だからあまり大きな声は出さないようにしましょう」

 

「はーい」

 

 そう言いながら由紀達の足音は、ショッピングモールの方へと遠のいていった――

 

*****

 

「――そろそろいいか」

 

 由紀達がショッピングモールに入ってから数分、俺は車のトランクから抜け出した。

 

「ここにあいつらが入っていったのか」

 

 ショッピングモールの方を見ると、入り口のガラスが割れている。

 見た目からして、避難者がまだ生き延びているとは思えそうにない。

 

「入ってみなくちゃわかんねえか」

 

 俺はそう思い、由紀達の後を追うようにショッピングモールに入っていく――

 

「思ってたよりひどいな……」

 

 俺がショッピングモールに入って目にしたのは、無数のゾンビだった。

 各階にいることから、恐らく逃げ遅れた人たちだったのだろう。

 ゾンビになってるため顔はよくわからないが、体格から見て老人や親子連れの人たちまでいる。

 こんなことになっていなければ、今も変わらずに生活をしてたのだと思うと、悔しさを感じる。

 

「……いつまでもここにいても意味ないな」

 

 早く生存者を見つけなければならない。

 俺はそう思い、由紀達が向かった方に向かって、走っていく。

 

「…………」

 

 当たり前だが俺がいくら走っても、ショッピングモール内のゾンビ達は俺の方を振り返らない。

 そこに居るはずのない存在を認識することなんてできない。

 そんな当たり前を、再認識するたびに、頭に痛みが走った――

 

*****

 

「この中にはいないみたい」

 

「さんきゅう、りーさん」

 

 ガシャンという音をたてながら、くるみがフロアのシャッターを下ろす。

 由紀達が入ったフロアは音楽売り場のようだ。

 

「ね、これ買っていい?」

 

 そう言いながら由紀はりーさんにCDを持ってくる。

 そんな光景を遠目で見ながら俺は周囲の様子を見渡す。

 所々に落ちて破片が飛んでいるCDのケース。

 1枚を除いて既に下ろされていたシャッター。

 床や壁にこびりついた血。

 それを見るたび、ここに避難した人達の末路を容易に想像することができる。

 入り口にもいたゾンビ達のことを考えれば決してよくは言えない末路。

 

(それでも……)

 

 それでも、ここに避難した人達は生きていたのだとすると、今の俺なんかよりずっと……

 

 「――――!?」

 

 そんなことを考えていると、不意に音楽がなり始めた。

 俺は慌てて音楽が鳴った方を見ると、由紀がくるみに怒られている光景が見えた。

 どうやら由紀がCDプレイヤーで音楽を聞いていたようだ。

 

(全く由紀は……)

 

 そんな光景を見て俺は、多少呆れながらも変わらない由紀の様子を見て、どこか安心した――

 

*****

 

「さて、いるなら……ここだよな」

 

 りーさんが手に入れたケミカルライトを使ったゾンビのおびき寄せにより、俺達(由紀達)は何とか最上階まで来ることが出来た。

 途中、食料などを確保することができたが、生存者は今の所見つかっていない。

 なので、今から行く場所に誰もいないなら、もうこのショッピングモールに生存者はいないのだろう。

 

 俺がそんな事を考えていると、最前線にいたくるみの足が止まった。

 くるみが止まった先を見てみると、そこにはダンボールを積み上げてできたバリケードがあった。

 崩れたりしてない辺り、もしかしたらまだ中に生存者がいるのではないか?

 

 「これ……」

 

 後ろからついてきたりーさんと由紀もそのバリケードを見上げる。

 それを何秒間か見つめた後、くるみはりーさんに食料などが入ったリュックを預け、そのバリケードをよじ登って中に入っていった。

 しかし少ししても、くるみからの返事がやってこない。

 

「……どう?」

 

 心配になって、りーさんがくるみに聞いた瞬間、

 

「来るな!!」

 

 そんな声と同時に、勢いよくバリケードの上からくるみが落下してきた。

 

「だ、だいじょうぶ?」

 

 落下の衝撃で、痛そうにしているくるみを見て、由紀が駆け寄ろうとするが、急げっ!とくるみが焦ったように言う。

 それをくるみが言った数秒後、積み上げてたダンボールが勢いよく崩れ、その奥から大量のゾンビ達がいた。

 既にここもゾンビ達にやられていたのか。

 

 「あぶないっ!!」

 

 「くるみちゃん!」

 

 ゾンビが落下により倒れたくるみを襲おうとするのを、りーさんと由紀が引っ張る形で立ち上がらせ、階段を駆け下りていく。

 それを追う形で、ゾンビ達が由紀達の方へと付いていく。

 俺も由紀達の後を追おうとするが、崩れたバリケード越しから見える光景を見て、立ち止まってしまった。

 寝るために何個も用意されているベット、飲み食いした後のペットボトルと食料の残骸、そしてそれを大量に入れたゴミ袋。

 あのゾンビ達が、何日か生き延びてここで生活していた確かな証拠。

 ……俺とは違って、そこで生きていた場所。

 それがこんな結果になってしまったと思うと、非常に悔やみきれない。

 

「……感情に浸っている場合じゃないな」

 

 今はとにかく先に逃げた由紀達を追いかけなければと思い、最上階を後にしようとしたその時、

 

 聞こえた、聞こえてしまった。

 扉越しから聞こえる、誰かと叫ぶ人の声が――




 前編と書いてありますが、多分後編とくっつけると思いますのでそれまで待ってくれたら幸いです。
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