原村和編
とある清澄の日常編
授業も終了し、部室までの慣れた道を通る。
麻雀部の部室は特殊の場所にあるため、人通りも少なくなってくる。
「(今日は染谷先輩が家の手伝い、部長が議会長の仕事で来れない。京太郎が家の用事、優希が小テストの補習、宮永さんが夏風邪か)」
面子も揃わないので今日の部活は休みなのだが、昨日の部活で牌にキズを見つけてしまい、家から新しい牌を持ってきた。
「小高君が来てから部室に牌が増えたわ」
「仕事柄牌のキズは気にするが、ほとんどキズなんて見えないじゃがのう…」
目を凝らして見えないようなキズで牌を交換するので部室には牌がどんどん増えてくる。
流石に使わないのはもったいないので染谷先輩の雀荘などにあげたりもしている。
部室につくと部長から貰った鍵を使いあける。
鍵は部長、染谷先輩、原村さん、俺が持っている。
こんなに鍵を持ってる人がいるのは、部長や染谷先輩が一番に来れない為、時間に余裕があり、かつ管理がしっかりしている人に鍵を作ったらしい。
まぁ、それでも鍵4本は多すぎるような気がするが………
バックから牌を取り出し、雀卓にセットする。
動作不良がないか確認する。
「(問題なしと………うんじゃ俺も帰りますか)」
身支度をして帰ろうと思ったが………
「小高君?」
「原村さん?」
side 原村和
「原村さんじゃあねー」
「えぇ、さようなら」
クラスの友達との挨拶をし、部室に足を運ぶ。
「(そういえば、今日は部活は休みでしたね)」
ふと足を止め考える。
「(せっかくですし、昨日の牌譜でもコピーしますか)」
--ここ最近原村和は達也の牌譜をこっそり集めている。
四校合宿以来、他人の牌譜もしっかり見るようになったが一番見る回数が多いのは達也の牌譜だ。
「(別にこっそり集める必要なはないのですが………なぜか恥ずかしいんですよね)」
--彼女の性格上、他人に興味を持つのは珍しい。
引っ越しを繰り返したせいでか、他人に必要以上近づかない、近すぎるといずれ離れる時に悲しい思いをする。
………しかし、それでも彼女は気になってしまった。
あの一打に、どんな意味があるのだろうと。
「(とりあえず部室に行きますか)」
部室に行くと、既に開けられている扉。
覗いて見ると、身支度をしている………
「小高くん?」
「原村さん?どうかしたの?」
「いえ、昨日の牌譜で気になることがあって」
「昨日の牌譜?なら確か」
彼はそう言い、棚からファイルをだしながら尋ねる。
「全部?」
「いえ、昨日の最後の半荘戦ですね」
「あー、時間なくて検討出来なかったからね」
ペラペラとファイルをめくり、牌譜を渡される。
「ほい、昨日の」
「ありがとうございます」
「部室で見る?それとも持って帰る?」
「………できれば小高君も一緒に検討して欲しいんですが」
「…………えぇ」
………露骨に嫌な顔されました。
「むぅ、何か予定があるんですか?」
「いや、ないけどさ、昨日の最後の半荘戦でしょ?………そんなオカルトありえませんが飛んできそうだな」
「何か言いましたか?」
「いいやなんでも、うんじゃ検討でもしますか」
--少年少女検討中………
「だからってこの混一を捨てて裏ドラに賭けるのは運に頼りすぎですっ!!」
「あの時は上ヅモは偶数の流れだったから下ヅモは奇数の流れっていう読みだったんだけど」
「そんなオカルトありえませんっ!!」
「ですよねー」
昨日の最後の半荘戦は、小高君は三面張を蹴ってあえてシャボ待ちで受けたりして、愚形で点を取りに行ってました。
しかし南3局、咲さんが跳満をツモって咲さんと小高君の点差は23600。
咲さんに跳満直撃じゃないと逆転勝ちなかったのですが………
「でも実際、下家と上家は奇数の流れでしょ、対面の宮永さんは偶数の流れだし」
「この際、最後の逆転勝ちは運が良かったことにします、それでもなんでこの半荘戦は愚形で和了ることが多いんですか?」
「あー、この時は奇数の流れよりも偶数が…」
「またそれですかっ!!」
思わす声を大きくなるのも無理はないでしょう。
彼は「でもそう言うしか説明出来ないしなー」と言い続けてます。
「はぁ………じゃあこの局の須賀くんの黙聴を躱すことができたのは何故ですか?」
この時私は軽い気持ちで聞きました、どうせまた「勘」などと言ってくるのだろうと…しかし………
「優希が2索をチーした時にほんの少しだけその牌を凝視してたんだよ。
多分鳴いたどれかの牌が欲しかったんだろうな。
まず鳴いた2索はない、もし欲しい牌が下家に出たらその時点で和了るからなし。
3索か4索のどっちかの牌だけど、
………仮に4索が欲しかったら、とれる形は234、345、456の形、もしくはなんかのシャボ………だけど黙聴だとシャボはキツイ、役牌抱えないと基本和了れない、例外的に断么のシャボ待ちがあるけど、それならリーチかけた方が得だ。ドラ抱えのシャボ待ちはドラは9筒だから断么が出来ないし黙聴で断么のみのシャボ待ちは却下。
つまり考えられるのは、ある牌を持ってこれれば役が付く、もしくは役が増える形。
単純に考えれば断么、チャンタ、三色のどれかだ。
チャンタだと河がもう少し匂いがつく、だから却下。
問題は三色か断么だけど、これは複合してとれる役だから絞れきれない」
「は、はぁ」
「うんで、この時の咲さんの手配に6索の槓材が揃ってる」
「……なんで断定できるんですか?」
「手配を揃える時につい槓材を触る癖があるんだよ、ついでに暗刻から槓子になる時は誰かツモるときにほんの少し山を見る癖があるね。
………まぁその辺は置いといて、とりあえず6索の場所は全部わかった。
ならあるのは234、345の形。
うんで、さっきも言ったけど2索はないから、あるのは345の形。
となると、三色を見つつの断么が妥当。
役さえわかればそこを気をつければ振り込まないでしょ?」
「………小高君は防御に回るときはしっかりと理を使うんですね」
思わずジトっと見てしまう。
「攻めるときはどれだけ相手の理から外す、守るときは相手の思惑を理解することかな?」
「なるほど………では安パイがない状況の時はどうしますか?」
どんなに綺麗に降りてもいずれ安パイはなくなりスジや壁が通じない時も多々あります、そういう時はどういう対応するのかと訊ねたんですが………
「勘」
「………投げましたね」
「もうさ、理を重ねても自分の手配の中に安パイがなければ、もうそれは勘とか指運しかないよ」
あっけらかんに言いますが未だに放銃はありません。
前も彼は「一人が役満張ってて、一人が安めを張ってたら安めに差し込む」と言ってましたがまだそういう状況がないみたいですね。
「後付けな説明なんていくらでも言えるけど」
「………そうですね、私はただ納得したいだけかもしれないですね」
そう言ったら、小高君は意外な表情で私を見るので思わず頬を膨らませる。
「なんですかその反応は、私だって麻雀が全部計算で出来る競技だと思ってませんよ」
「そうだけど、………あの堅物原村さんが」
「小声で言ってますけど聞こえてますよ」
私が少しジトッと見ると彼は「何も言ってませんよ」という感じで顔そらします。
「………でも原村さんの強みは運じゃないからね」
確認するように聞いてくる。
確かに理で説明できない麻雀があるのは分かります………いや分かったのですね。
「ええ、私が信用するのはそんな不確かなものじゃありませんから」
「そっ、………あとはもう少し他人に寛容になれば強くなれるんじゃない?」
「まるで私が心が狭いみたいな言い方じゃないですか」
「さぁどうだろう?………さて、検討も終わったしそろそろ帰ろうか」
「そうですね………って、なんで当然のように先に帰ろうとしてるんですか?」
「………?だって原村さん鍵持ってるし」
「女子を残して先に帰るのは男子としてどうなんですかね?」
彼は一瞬驚いた顔をしたが、「それもそうだね」と横に並ぶ。
「そういや原村さん、昨日の放課後告られたらしいね」
「………どうして知ってるんですか」
「優希」
「………あの子はホントに」
思わず頭を押さえる。
嬉々として部員のみんなに喋っている様子が容易に想像出来ます。
「中学時代を入れると20回を超えるとかなんとか」
「………実際にはもう少し多いですけど」
「アララ、他人から好意を持たれてるのに随分と冷たい反応だ」
「男性にあんまり興味がなくて」
「つまり女の子がいいと」
「今ならiPS細胞で………ってこの会話は優希としたような」
「そ、だから部員の皆は原村さんが特殊な趣味を持ってることになってるから」
「特殊?ん?………って違いますからっ!!」
確かに男性よりも女性のほうが付き合いやすいということはありますけど、それは友人関係であって、私にだって男性と結婚………ん?
確かに結婚してお嫁さんになりたいという願望はありますが、男の人と付き合うのは想像できないですね。
「ま、まぁ、その辺は個々の自由って奴だから」
「引きつりながら言わないでくださいっ!?」
「重い冗談だよ」
「せめて軽い冗談にしてくださいっ!!」
………合宿以降なんですけど、こうやってからかうことが増えた気がします。
麻雀の打ち筋からしてもそうですけど他人をおちょくるというか、からかうのが好きなんですね。
「そういえば小高君はどうして部室に行ってたんですか?」
「牌の交換しに行っただけ」
「またですか、これで5回目くらいじゃなきですか?」
「交換しないとガン牌できるからね、それでもやっていいならやってみる?」
「………そもそも本当にガン牌ができるですか?」
「大抵のサマはできるよ、多分公式戦でもバレないやつも」
なんでもない口調でこの人はとんでもないことを言いますね。
「まぁ、遊びで見せるもんじゃないからね」と言いましたが、一体どういう状況でソレが必要な時があるのでしょうか………
「………原村さん、あれ知ってる車?さっきからこっち見てるから」
「車?………あぁ、あれは父の車ですね、というかよく視線を感じましたね」
「まぁ、そういうのに敏感なタチでね」
父はクラクションを軽く鳴らし、こちらへ車を寄せる。
「学校の帰りか?」
「はい、今日は部活がないので早めに帰ります」
「そうか、このまま車で家に送ってやりたいがまだ仕事の途中でな」
「大丈夫です、明るいですし歩いて帰れます」
「………隣にいる男子は?」
「同じ麻雀部の同級生です」
父は少し小高君を見て、「………そうか」と言い気をつけて帰れよと声をかけそのまま行ってしまいました。
「随分と嫌われたもんだ」
車が去ってから肩をすくませてやれやれというジェスチャーをとる。
確かに冷めた対応と言えばそうですが………
「正しく言えば麻雀にもかな?」
ピタリと父の心境も読んでくる。
「父は確かに麻雀は好きではないみたいですけど、初対面でなんで分かるのですか?」
「細かく言えば沢山あるけど、大体は雰囲気」
「雰囲気ですか?」
「初対面で京太郎を見てどうおもった?」
「………軽そうな男子ですかね?」
「宮永さんは?」
「文学少女です」
「それは概ね間違えじゃないでしょ?
初めて会った人間なのに原村さんの第一印象は大きく外れている訳じゃない、それが人の雰囲気ってやつだよ。
実際は顔の表情や仕草を見て頭の中からもっとも近い人物を探してその人の人格を予想する脳の働きだけどね」
「それでも初対面で父の麻雀嫌いを当てるのはおかしいですよ」
「半分くらいは当てずっぽうだけどね」
相変わらずこの人は人の本質を見抜く目と経験値が違い過ぎますね。
………でも意外にも女性の心は読めないのが偏ってるというかちぐはぐというか。
「というかよく麻雀嫌いな親が部活なんて許したね?」
「………まぁ、多少小言は言われますが」
「辞めろって言われてるでしょ?」
ここで思わず目線を逸らしたのは失敗しました。
「でも優勝したら、て……辞めなくていい条件をもらいました」
「辞めろじゃなくて転校か?」
「転校」という単語を言い淀んだらまたピタリと当ててきます。
「はぁ、そうです出来なかったら転校です」
正直言うつもりはなかったんですが、ここまでピタリと当ててくるとさすがに観念します
「ふーん」
彼はそう言って黙ってしまいました。
「えっと、このことは」
「言わないよ、みんなのプレッシャーになりたくないんでしょ?」
「はい」
一瞬怒っているのかと思いましたがそうでもありません。
………ただ、いつも通りにも見えません。
「あの?」
「ん?」
「何か思うことがあるんですか?」
「んー、まぁ、原村さんの勝負だから口は出さないようにしてるだけ、あとは………」
「あとは?」
「………みんながどう思うかなと思ってな」
「………それは」
正直皆さんには悪いと思っていますが、軽々しく言える話題でもないです。
「まぁ、たらればを言ってもしょうがないからな、勝つことだけ考えてればいいさ」
「それに関しては同意見です」
負けた後のことは負けた後に考えます。
今は少しでも強くなるようにならなければいけません。
「それではここで」
「おう、またな」
なんとなく手を振ると、彼はぎこちなく手を振り返す姿に少しだけ笑ってしまいました。
………本当に女の子慣れしてないんですね
えぇ、まぁ皆さんの言いたいことは分かりますよっ!!
しかし、スルー………ッ!!圧倒的スルー………ッ!!
なんでこんなに放置したかって?しかも本編じゃない?まぁとりあえず事情を聞きましょう。
もちろん本編は書いてたんですよ?北大阪編めっちゃ書いてたんですよ?
突然のtoki-怜-ですよっ!!
いやね、これで「怜のキャラの掘り下げができるっ!!」って思うじゃないですかっ!!
「ん、そしたら今書いてる怜と設定とか違ったらどうしよう」←重度の原作厨
「えっ、マジどうしよう………とりあえず放置だな」
流石に更新なさすぎてマズイ………そうだ番外編書こうっ!!
そうだ、デレマスも書こうっ!!
そうだ、FGOもイベント行こうっ!!
そうだ、デレステもイベント行こうっ!!
そうだ、京都行こうっ!!←嘘
とまぁ、いろいろあったせいで投稿してませんでしたっ!!
ちょくちょく確認はして「書こうかなー」って思ってたんですよっ!!
………思っただけなんだよなー
例えるなら
夏休みの宿題をそろそろやろっかなーって皆さん思うじゃないですかっ!!
………思っただけなんですよね。
まぁ、何はともあれ更新出来たという目標は達成されました。
これからも長い目で見てやってください。
ここまで読んでくださりありがとうございましたっ!!
評価や感想をお待ちしておりますっ!!