それはそうとアニメvivid五話のセインさん、あそこが大きいような…
緑が生い茂る木々の中に大きな建物が建っている。大きな塀・巨大な門・壮麗な庭・洋式の教会を思わせるその外観。ここは聖王教会である。
その美しさから観光地としても有名な教会から少し離れた、多少整備された獣道の近くにある少し大きな石に、ある女性が座っていた。白と藍を基調としたシスター服を着ており、食材を入れたかごを掲げていたが今は自分の傍らに置いていて、女性は疲れを体から排出するかのように力を抜いて休んでいた。
「あ~……」
思わずため息のような声を出す。口からぬるい温風を吐き出し、両手の手のひらを地面について少し後ろに体を傾けて動きを止めた。
「……」
女性はある考え事をしていた。現在自分が大いに悩んでいることを。おそらく自分だけしか考えないことを。
その思考を声として出すつもりはない。恥ずかしいというのも一応理由にあるのだが、他者が分かるような悩みではない(と思っている)からだ。そのことを表に出すつもりはない、自分自身が解決する。そうでなければ沽券がかかっているからだ。
だが、どうしてもその悩みが解決できず、女性にいら立ちが募っていく。このままでは声として表に出してしまう。それだけはやめたい。だが、非情にも限界が来た。ついに口を開いて、
「何で姉として見てくれないんだよおおぉぉぉ!」
悩みが言葉として具現化し、森の中を音速で駆け巡って木霊した。
- - - -
「ああ、つい言っちゃったよ… あたしのバカ……」
そう言ったのは、聖王教会のシスターであり、12人の戦闘機人集団「ナンバーズ」のナンバー6であるセインだった。
聖王教会の頼みで買い物に行って、聖王教会に帰るところだった。そんな中荷物を長時間持ちながら歩き続けた疲れで座った。そして自分の妹たちのことをふと思ったことで前々から考えていた悩みを長々思考してしまったのだ。何だか歩いた時間よりも費やしたような気がした。
「何で姉として見てくれないのかなぁ…? オットーやディード、ノーヴェやディエチやウェンディはあたしに嫌なところでもあるのかなぁ… まぁ、心当たりあるけど…」
自分は姉らしくないのだろうか? 自分が稼働を始めてから今までそんなことを考えてきたことがあるが、思い当たる節があるのだ。
セインはナンバーズの中ではかなり明るい性格だ。自分の妹のウェンディとは明るい性格同士故に気が合う。そして12人の姉妹の中では真ん中に位置するため姉と妹を繋ぐ緩衝役でもあるのだ。そう考えると欠点が無いように見えた。まあ、うっかり任務に失敗したときはあるけど。
以前、陛下、もといヴィヴィオがノーヴェたちと合宿に行ったとき、自分は合宿先であるメガーヌの所へ差し入れを持って行った。その際みんなが温泉に入ってる時に私はちょっとしたサービスをした。と言ってもみんなの体を触るという悪戯みたいな事だけど。そしたら陛下の友達におもいっきり蹴り入れられて、みんなに咎められた。まあ、そこは仕方ないとしてその後ノーヴェが「あたしより年上だと思うと涙がでてくる」 みたいなこと言われてちょっと悲しかったな… その後精神的に大人じゃないと言って開き直ったけど。
そう、セインは明るい性格なのだ。冷静なチンクやトーレたちと比べるとかなり明るくマイペースだ。それ故あまり姉として見てくれないのだ。
「今思えば良い思い出… じゃなくて微妙な思い出だよ。ホントに」
思わずため息が出た。さっき一回やったのでこれで二回目だ。でも買い物を終えて帰る時に荷物が少し重い故にため息を何度か出したような気がする。何回出したか忘れたけど。私は戦闘機人だ。体の一部が機械で構成されてるから他の人より力はある。とはいえ今日の荷物の量はいつもよりも量が多いために自分でも少しきつかった。
話を戻して妹たちから姉として見てくれない事を考えてみる。合宿の時にサービスをやらかしたみたいに自分が精神的に未熟だからなのだが、それでも姉として見てもらいたい気持ちはある。どうすれば姉として見てくれるのか… 少しばかり考えてみたが、やはり分からない。やはり精神的に大人になるしか無いのだろうか?
「はぁ… 駄目だ。全然分からないよ。チンク姉なら分かるのかなぁ?」
セインは5番目の姉であるチンクを思い出す。妹たちの面倒見が良く、ノーヴェから懐かれてる。そんな様子を見ると自分もあんな風にされたいと思ってしまう。
「あ、もうこんな時間だ。早く帰らないとシスターシャッハに怒られちゃうよ」
空を見ると、蜜柑のようなオレンジ色に染まった夕焼けが空を浮いていた。ミッドチルダを公転する二つの月も静かに空に浮いていた。空は大分空色が残っているが徐々にオレンジ色が侵食しつつあった。木々の葉も陽に当たることでオレンジ色を呈しており、山や聖王教会の建物はカメラの逆光みたいに黒く塗りつぶされそうであった。もうそろそろ夕方なのだろう。
「ディープダイバーを使おうかな? オットーかディードを見つけたら驚かそうっと。いなかったらシャンテでもいっか」
自分の子供心を発揮して、セインは聖王教会に帰ったら誰か驚かそう。それと同時にあの叫び声が教会に届いてないかと少しばかし不安に思ったが。
「よし、ディープダイバー発動! 帰るか!」
そう言ってセインはディープダイバーを発動させて地面を水の中に入るように潜った。もちろん傍らに置いた買い物箱を忘れずに。
その後、セインはディープダイバーを使って聖王教会に帰った。庭にディードがいたため、背後から現れて彼女の両目を手で覆った。そしたら不審者だと思われたためツインブレイズで切られそうになった。セインは思わず冷や汗をかいてしまった。
そしてセインはシャッハに怒られてしまった。ディードとオットーはやれやれという感じの表情を浮かべ、シャンテは遠くで手を口に当てていて、目は極僅かに涙を浮かべていた。笑うのをこらえているな。うん、今度会ったらちょっと痛い目に遭わせておくか。カリムは遠くで苦笑いしていた。うへぇ、恥ずかしい… 悪戯するんじゃなかったとセインは心中で呟いた。あの叫び声届いてたのかどうかは、セインには分からなかった。
ー - - -
夕陽が完全に沈み、空は底が無い深淵のような黒で支配されていた。その中に二つの月が静かに浮いており、点状に薄らと光る星々が空中で固定されていた。聖王教会周辺にある木々や山々は夜空と完全に同化していた。だが、よく見ると木々や山々の輪郭が微かすかに見えた。木や山が呈してる黒は夜空よりも僅かに薄い故に分かったのだ。月と星々が居座り、暗黒と静寂が支配している夜空をセインは自室の窓からで眺めていた。
「あ~ 綺麗だねぇ…」
セインはそう呟いた。あまりの夜空の美しさに自分が考えてきた悩みがふと忘れそうになった。何だか自分の悩みがちっぽけに感じてしまいそうだった。だがその悩みは、彼女からすればちっぽけではない。
「あたし、お姉ちゃんだよね…?」
セインは妹たちから姉として見られていない。どうやったら姉として見てくれるのか?そう考えている内にもう一つ疑問が浮かび上がった。自分は姉だ。お姉ちゃんだ。だからこそ思うのだ。立場が姉であるにも関わらず分からない疑問が。チンク姉みたいな姉でもその疑問の答えを知ってるのか分からない疑問がセインの頭の中に浮かび上がった。壮麗な空を眺めていて呆けてしまい、つい呟いてしまったのだ。そのもう一つの疑問を。
「どんな事すれば、姉って呼ばれるんだろう…?」
ディープダイバーを利用すれば恐竜の化石発掘とかに貢献できそう…