姉になりたいセインさん   作:青色好き

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ヴィヴィオたちの会話がありますが、いざ書いてみると「この口調でいいんだっけ? こんな事言うのかな?」と思ったり。
皆さんもそういう経験ある… のでしょうか…?


第三話 実行

 太陽が日光を地面に送り、地面や山々・建物を明るい色にしていく。空には白色の空が幾つか浮かんでおりゆっくりとした速さで流れている。木々や草も萌え出づるように鮮やかな緑色を呈している。聖王教会の窓に光が差し込み、廊下や部屋を明るくしていく。窓から光が差し込む様子はまるで空へと誘う階段に見える。

聖王教会の廊下で、オットーは静かに台所に向けて歩いていた。窓から差し込む光を受けていて、足音が廊下に木霊している。

 

「今日は陛下やコロナお嬢様たちがいらっしゃる日だ。紅茶を用意しておこう。」

 

 聖王教会の執事として働いてるオットー(教会内ではシスターオットー)は職務上カリムやヴィヴィオの世話をしている。それ故今日もヴィヴィオにおもてなしをしようとしていた。紅茶にはセイン姉さまとディードの分も作っておこうと決めた。オットーは台所に入ってある違和感に気付いた。

 

「…え? 紅茶がもうできあがってる!?」

 

 オットーの視線の先には、自分がこれからしようとしている行動の結末が存在していた。台所のテーブルの上には既に紅茶が用意されていたのだ。紅茶の表面からは白い湯気がもくもくと立ち上がっており、コップも人数分揃っている。これを見てオットーは思った。誰が用意したのかと。

 

「あれ、オットーじゃん。どうしたの?なんか変な物見るような顔しちゃってー?」

 

 自分の背後から声がしたので振り向くと、そこには自分の姉であるセインが立っていた。

 

「あ、セイン姉様… もしかして…」

 

「ああ、あたしが作っておいたの。仕事まで時間があるからね」

 

 セインは自信満々でそう言った。その顔は笑顔で満ちていた。オットーはセインのそんな顔を見て花びらをつけたばかりの美しいバラを彷彿とさせた。

 

「あ… ありがとうございます…」

 

「いいってことよ! まあ、時間があったらの時だけどね。だからっていつまでもあたしを頼っちゃ駄目だぞ~。誰かに頼りっぱなしなんてお姉ちゃん悲しむからな~」

 

「は、はい…」

 

「あ、そろそろ行かなくちゃ。それじゃあね!」

 

 そう言ってセインは廊下を歩いて行き、オットーの視線から消えた。オットーはセインが出て行ったにも関わらずしばらくの間ボウっと突っ立ていた。あのセインがこんな事するのは初めてだからだ。その間にも紅茶の湯気は黙々と登っていき消失していく。

 

「セイン姉様… どうしたんだろう…?」

 

 オットーはそう呟いた。

 

 

 -     -     -     -     -

 

 

 聖王教会の庭には、ヴィヴィオ・アインハルト・コロナ・リオがいた。聖王教会に来た理由は、イクスの見舞いのためだ。黄緑色の美しい草の上をヴィヴィオたちが歩いて行く。

 

「イクス元気にしてるかな?」

 

「前来た時は喋れそうな様子でしたし、きっと元気でしょう。」

 

「昨日みんなが作った服喜んでくれるよね?」

 

「綺麗な飾りをつけたからきっと喜ぶよ!」

 

 ヴィヴィオたちの会話はとても明るく、誰が見ても4人は仲良しだと答えるほどの睦まじさだ。その様子は周りの美しい自然と遜色ない程の美しさと綺麗さを放っている。そんな中、教会からある人物が出てきた。その人物はヴィヴィオたちがよく人物だった。

 

「あ、ディード!」

 

「お久しぶりです、陛下」

 

 教会から出て来たのはディードだった。彼女はヴィヴィオたちに近づく。

 

「イクス様のお見舞いですね?」

 

「うん!3日掛けて作った服をイクスにプレゼントしようと思って来たの!」

 

「とても綺麗です。イクス様もきっと喜ぶでしょう。」

 

 ディードは微笑ましい笑顔を見せた。無表情だったJS事件の時と比べると、同一人物とは思えない程だ。だが、アインハルトは何か違和感を感じていた。

 

「ディードさん、今日何かありましたか?」

 

「ど、どうしてそう思ったんですか?」

 

「何だか心ここにあらずという感じでしたので…」

 

 アインハルトは彼女の様子から何となく彼女がおかしい感じていた。そう言われてヴィヴィオ・リオ・コロナも彼女の不自然さをやっと気づいた。3人の視線がディードに集まる。

 

「何かあったの、ディード?」

 

 ヴィヴィオがディードに問いただす。もしかしたら何か困ったことがあったのだろうかと思っているからだ。彼女の知る限り、ディードが困ることは殆ど無い故にどんなことがあったのか気になるのだ。リオとコロナ・アインハルトについても同様だった。

 ディードはやむを得ず話すことにしたのだ。

 

「ええ、実は…」

 

 

 

 

 

 ヴィヴィオたちが来る1時間程前、ディードは彼女たちが来るというのでクッキーを作ろうと考えた。ディードは台所へ行き材料を確認するために冷蔵庫を開けた。ひんやりとした空気がディードの体に当たる。冷たいと感じながらも中身を見た。

 

「あ、バターが無い… なら他の菓子を…」

 

 ディードは別の菓子を作ろうと考えた。今冷蔵庫、他の置場にある食材で何が作れるか考えていた。その時、

 

「あ、ディード。どうしたんだ?何か考えてるみたいだけど?」

 

「あ、セイン姉様…」

 

 背後から声がした。振り返ってみるとそこにはセインが立っていた。自分と同じ服を着ており、セインの背後から陽の光が当たっている。セインの輪郭線から光が少し漏れていた。

 

「もしかして、菓子の材料が無いんじゃないのか~?」

 

「え…?」

 

「一応バターとかならあるけど、使う?」

 

「あ、はい。使わせて頂きます…」

 

 ディードはセインが持ってきたバターを取ろうと手をセインに向ける。セインの手に持っていたバターを渡した。ディードの手に質量を持つ個体の感触と重量が伝わった。

 

「やっぱり。ディードは陛下たちが来たらクッキー度々作っていたからね。もしかしたらと思って買っといて正解だったよ~!」

 

「え、セイン姉様は私がクッキーを作ると思ってバターを…?」

 

「ああ! 勿論!」

 

 セインは自信満々で答えた。目を瞑って口をへの字にしてそう言った。(鼻から白い息が出たような気がした。)セインの輪郭線から出てくる光が少し強くなったように感じた。そこでディードはある疑問が浮かんだ。それを少し躊躇いながらも言葉にして言う。

 

「ど、どうしてわざわざそのような事を…?」

 

 そう、セインがそのことをした理由だ。別にわざわざそのような事をしなくても、一応菓子は作れるのだ。セインはその答えを口に出した。

 

「あたしはお姉ちゃんだからね。妹が困るところはあまり見たくないからね!」

 

 セインはそう言った。自分は姉。だから妹が困りそうな事は見過ごせない。セインが言いたいことはそういう事だ。その時セインの輪郭線から漏れだす光が強くなった。セインの周りは穢れが一切存在しない白色に染まり、セインの存在感が強まった。ディードはその様子をまるで天使のように、聖王のようにも感じた。頼りになれる存在、皆から親しまれる存在、完璧な姉という存在に見えた。

 

「そんじゃあ、あたしはそろそろ仕事に行くから。クッキー作り頑張れよ~」

 

「あ、はい。ありがとうございます。」

 

 セインはそう言って歩いていった。ディードはきちんと礼を言ってセインが歩いて行く様子をボウっと眺めていた。眺める行為はセインが視界から消えても続いた。窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、窓からは暖かい光が差し込む中ディードが頭の中で思考している事はただ一つだ。

 

「セイン姉様があんな事するなんて… どうしたのでしょうか…?」

 

 

 

 

「…という事があったのです」

 

 ディードはそう言ってヴィヴィオ達の様子を見た。やはり彼女たちの様子は、セインの行動を不思議に思っていた。

 

「確かに、何か… セインらしくないね…」

 

「何か考えがあるんだと思います。 姉と言う立場ですし…」

 

「でも、あの人ってどちらかというと悪戯好きという感じですし…」

 

「妹を心配することはあるけど、何か方向性が違うような…」

 

 ヴィヴィオ・アインハルト・リオ・コロナは各々意見を言うが、セインの動機がさっぱり分からない。そんな様子にディードは、やはりと思っているような表情をした。

 

「どうしたのでしょうか… 少し…らしくありません…」

 

 

 -     -     -     -     -

 

 

「う~ん、中々上出来だったかな?」

 

 外や教会内部が光の無い暗黒に染まっていた。この中で暗黒に染まっていないのは二つの月と小さな星々くらいである。月明かりのみだ。月明かりが窓から入っていく自室に居るセインは今日の事を振り返った。セインはさり気無い親切を行ったことで姉らしさが増したのではないかと思っていた。そう考えると嬉しく感じた。

 

 セインはあの姉に関する本を、小さな明かりから放たれる光の下で一字一字逃さず読んでいた。

 

「ふむふむ、次はこれを試してみるか…」

 

 明日もあの本に書かれている事を実行することに決め、何を行うかをきちんと頭の中で整理した。

 

「よし、明日も頑張るぞ! その為にすぐ寝るか!」

 

 セインは明日の為就寝した。ゆっくりと目を瞑って思考を奥底にしまった。それを見ているのは夜空に浮かぶ二つの月と点のように小さい星々だけだった。




駅や公園などの公共施設にあるベンチを見るとついつい座りたくなってしまう。
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