風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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新章。

ダラダラやってたら一万文字オーバー


内容は、味方は増えるもそれ以上に敵も増えました的な


気に入る者・気に入らない者・憎悪する者
味方よりも多く作ってしまう敵


 漸くイライラする元の一つが消えて少しはスッキリした。

 あのサーゼクスって野郎はどうやら約束は守ってくれたらしく、朱乃ねーちゃんに対して悪魔共が何かをしてくる事は無い。

 

 グレモリー先輩の婚約までは知らんが、朱乃ねーちゃんさえ無事であるならそれで良い。

 

 

「へーいストーップ。

スカートの丈が短いなぁ? これはメジャーで測らせて頂かんと……ぐぅぇひぇへへへ!」

 

「寄らないでこの変態!」

 

「野蛮人! ドスケベ! 最近ちょっと見直したのに幻滅よ!」

 

「おいおい、見直したなんて嬉しいじゃないの? そんなキミにはハグハグして――あご!?」

 

「死ね! 死んでしまいなさい!」

 

「今よ! 皆でこの変態を退治するのよ!」

 

「いでで!? か、鞄の角はやめろ! 洒落になってねーよ!」

 

 

 これでやっとセクハラに専念出来るってもんやで。

 ……。現在進行で石やら鞄を女子軍団に投げ付けられてるけどな。

 

 

 

 

 

 

 つまる所、精神的な再起不能(リタイア)

 単身冥界に不法侵入した恐れ知らずのバカな人間――と、当初思っていた其奴に殺されかけた多くの悪魔達は、目の前で魔王・サーゼクスをも打ち倒したという現実を信じたくもなければ受け入れたくも無かった。

 

 

「うん、間違いなくあの時は僕の完璧な負けだ。

彼の温情で命までは取られずに済んだけど、いやー参っちゃうよねー……。まさか人間界の学校に通う妹の後輩且つ、妹の女王の幼馴染みだなんてさ」

 

『………』

 

 

 冥界都市ルシファード・新ルシファー城。

 たった一人の人間により更地となって一度は消えた城は、急ピッチでサーゼクス自らかが先導して建て直した事により、在りし日の姿へと戻った。

 そんな新しくなったルシファー城の大会議室には、先日中止となったグレモリー家とフェニックス家の結婚をどうするかという話題で、両家の現当主と主役だった男のライザーが、椅子に座って参った参ったと呟くサーゼクスに無言のまま声を出せずに居た。

 

 

「リアスは連れていかれちゃったし、僕としては夫になる予定のライザーに行って貰いたいんだよね――リアスの連れ戻しと兵藤一誠の退治を」

 

「っ!?」

 

 

 理由はそう……完全な無茶振りをライザーがされていたからだ。

 

 

「わ、私がですか?」

 

 

 サーゼクスとグレイフィアの尽力により、ボロボロのズタズタだったライザーは既に元の姿へと戻っている。

 しかし、サーゼクスからのこの無茶振りのせいで、折角回復した自分の身がズタボロに戻されるかもしれないという現実に、威勢の良さは既に無い。

 

 

「当たり前だろうライザー?

結婚相手は夫候補のキミ自身の手で取り戻してこそ純血の男だ」

 

「…………」

 

 

 『もし取り戻したら僕の称号をキミに譲渡すらする』等とにこやかに話すサーゼクスだが、ライザーは内心冗談じゃないと毒づいた。

 あの日式の場に居たサーゼクス含め大半の悪魔達を短い時間で半殺しにした挙げ句、危うく自分も殺されかけたのだ。

 それを平然と人間の分際でやりやがったという気持ちはまだあるものの、それ以上に未曾有の化物相手に命を賭ける勇気は無かった。

 

 

「無理です。サーゼクス様すら敗北した相手を始末できる力を私は持ち合わせておりません」

 

「おいおいライザー? キミらしく無いだろ。

僕だって負けっぱなしのつもりは無いし、鍛え直したらリベンジするつもりなんだぜ?」

 

「それでも無理です! あんな化物と戦うくらいなら、リアスなんて……!」

 

 

 ライザーはへし折れたのだ。

 半殺しにされ、目を覚ませばその人間はサーゼクスまで倒して堂々と帰ったとされる人間の理解したくもない力に。

 再生を司る自分の血を平然と踏み潰した理不尽さに……。

 

 

「失礼します……!」

 

「お、おいライザー!」

 

「お待ちなさい!」

 

 

 完全に折れ、持ち直す事無く潰れてしまったライザーは、最早話は無いとばかりに乱暴に席を立つと、慌てて追い掛ける両親を無視して出て行ってしまった。

 

 

「あーらら。完全にへし折られちゃったみたいだね」

 

「ええ、其れほどに彼の進化は恐ろしいという事でしょう」

 

 

 正式では無いにしろ、実質破談となった結婚騒動の終結を予感したサーゼクスは、座っていた椅子に深々と腰掛けながら、今しがたフェニックス家の面々が城から去ったという報告を受けつつ、グレイフィアの差し出したお茶を静かに飲む。

 

 

「という訳で見ての通りです父上に母上。

リアスの結婚はこれで潰れてしまいました」

 

「う、うむ……。

まあ、向こうが断ってしまったのであれば仕方ない」

 

「無理強いさせるには余りにも酷ですものね」

 

 

 サーゼクスに言われ、目の前で見ていたジオティクスとヴェネラナも黙って頷くしかない。

 ライザーは運が悪かったんだと無理にでも自分を納得させるしか二人には出来無いといった方が正しいのか。

 

 

「さてと、勘を取り戻すとしようかな。グレイフィア、手伝ってくれ」

 

「はい、サーゼクス様」

 

 

 

 

 

 

 ライザーとの結婚話が消滅したその頃、リアスは今回の事で痛感させられた己の弱さを克服しようと考えつつ、部室のある旧校舎が使えないという事で訪れた兵藤家――つまり凛の家にお邪魔していた。

 

 

「これが5歳の時の凛」

 

「わぁ、小さい凛です」

 

「……。祐斗先輩、盗んだら犯罪ですからね?」

 

「し、しないよそんなこと!」

 

 

 凛の家にお邪魔し、凛の母親からアルバムを見せて貰ってはアーシア、小猫、祐斗が喜んでるのだが、リアスはただだだ疑問に思うことがあった。

 

 

「弟さん――いえ、一誠くんのお写真は一枚も無いようですが」

 

「……」

 

 

 そう、凛の写真はあれど一応元はこの家の者である筈の一誠の写真が一枚たりとも存在しない事にリアスは疑問だった。

 朱乃を女王にしたのが約10年程前で、その時には既に一誠は居た朱乃の家に居候していたらしいが、それにしても生まれた時の写真すら一枚も無いのは流石におかしいと思うわけで……。

 

 

「……………………。このアルバムには凛のだけしか貼ってなくて、あの子のは別にあるわ」

 

「あ、はい」

 

 

 一誠の名前を出した途端、あからさまに嫌悪の表情を浮かべた凛の母を見てリアスは察した。

 一誠の存在を彼女達は無かった事にしているという事を……。

 

 

「お買いものに行かなくちゃ」

 

「お母さん……!」

 

 

 そそくさと部屋から退室した兵藤母を見ながら、何故一誠が帰ろうとしないかを何と無く察したのと同時に、何故そこまで壊滅的な仲になってしまったのかと疑問に思う。

 

 

「一誠くんのアルバムなら私の実家に保管してますわ。

まぁ、家に来てからのですけど」

 

「え……!? あ、あるんですか?」

 

「ええ、私の母が思い出にとね」

 

「み、見たい……」

 

 

 一番それを知っていそうなのが朱乃だと思うのだが、今この場で聞くわけにもいかない。

 微妙に自慢気に語る朱乃に後で聞いてみようと密かに思いつつ、リアスはちょっと冷めていたお茶に口を付けるのであった。

 

 

 

 見下され、挙げ句に敬愛するソーナの目の前で恥までかかされたと益々一誠を嫌い、寧ろ憎悪にも近い感情を抱いていた匙は、その日から決定的な一誠の弱味を握ろうと一人躍起になっていた。

 

 

「これ以上恥の上塗りはしないで頂戴」

 

 

 と、一誠に対して微妙に味方している様な事をソーナに口にさせた嫉妬も手伝ってるせいか、制止を無視してる事に自分で気づいても居ない。

 

 

「気に入らねぇ……気に入らねぇ……!」

 

 

 ヘラヘラしてるだけの馬鹿が。

 力を持っているのをひた隠しにして散々自分達を見下していた事。

 ちゃらんぽらんな性格を嫌ってた筈のソーナを認めさせている発言をさせた事。

 その全てが気に入らない匙は、この前受けた傷の治療を済ませたというのに、ズキズキと幻肢痛の様に痛む鼻を押さえながら憎悪をたぎらせる匙は、凛派とはまたベクトルの違う一誠への嫌悪を膨らませていくのだった。

 

 

 

 さて、そんな一誠はと云えば、朱乃絡みの厄介事を片付けたという事ですっかり元の変態野郎に戻り、制服チェックで女子にしばかれ、男子達から10日坊主と呆れられつつもホッとされるという経緯を経て、只今とある小さな小川のほとりで釣りをしていた。

 

 

「と、いう訳で心配は無くなったぜ」

 

 

 針に餌を付け、川に投げ込み浮きの動きを眺めながらその場に腰かける一誠の『真面目な趣味』の一つであるのが実は釣りだったりするのだが、そんな一誠の意外な趣味に付き合うは、只今一誠の隣で釣糸を垂らしている一人の男。

 

 

「うむ、それは彼女から聞いた。

済まんな、本当は俺がサーゼクスに話を付ける筈だったのだが……」

 

 

 ゴツい見た目に反しない何処かの三國無双に出てきそうな男らしい声を穏やか気味にして一誠と話すこの男。

 

 実はこの男こそ、バラキエルという名の一誠が唯一心の底から慕う堕天使であり、朱乃の父であり、朱璃の夫であった。

 

 

「まさかあのサーゼクスが彼女と繋がっていたとは驚きだったぞ」

 

「だね。ったく、つくづく斜め上の事ばかりだぜ」

 

 

 此度の騒動により、冥界に乗り込もうとした所を止められたは良いが、それでもやっぱり娘が――そして血の繋がりこそ無いけど、息子同然に接してきた一誠が心配だったバラキエルは様子を確認しようと人間界へとやって来た。

 

 

「で、おっさんは二人に会ったんだよな?」

 

「いや、朱璃には会ったが朱乃とは……」

 

 

  しかしながらバラキエルは今言った通り妻の朱璃には顔を見せたが、娘である朱乃とは顔を合わせないままこうして一誠と釣りをしていた。

 理由は父娘関係が現状ガタガタだからだ。

 

 

「何で会わないんだよ……」

 

「そ、それはその、家に居なかったから……」

 

「それだけじゃないでしょうが。

ったく、父ちゃんはヘタレで娘は意地っ張りなんだから」

 

 

 浮きが沈んだのを見計らって振り上げた一誠の竿により、見事に釣り上げられた小魚がピチピチともがくのを見ながら呆れる一誠。

 一誠にとっても『分岐点』とも呼べるトラウマに近い事件からバラキエルと朱乃の仲は相当にギクシャクしたものになっている。

 

 

「そもそも仲直りして本格的に受け継いだおっさんの力を使えば、負ける事も無かったのにさ」

 

「………」

 

 

 自分の半分の血を嫌悪し、その力を使わずに居る程度には嫌い、バラキエルもそれを知っているこそ思春期に入ってますます会い難くなっている訳だが、この件に関してのみ一誠と朱璃はフォローや忠告せど、無理強いさせるつもりは無かった。

 

 

「まあ、役立たず共が足を引っ張った時点でアレだけどよ」

 

 

 本人同士が歩み寄らなければ意味が無い。

 そう思っている且つ、自分もバラキエルと朱乃の事が言えないレベルで本来の親達と終わってるので、言えないのだ。

 だから皮肉っぽくは言うものの、強くは言わないのだ。

 

 

「だ、だがもう一度『大嫌い』とか言われたら、今度こそ立ち直れる気がしない……」

 

「それ怖がってウジウジしてるせいで、どんどんハードル上がってるの自覚しようぜ?

つーかよ『俺こそが、真の三國無双だ!』とか言えそうなゴツい見た目なのに、ハートが弱すぎだぜ」

 

「むぅ……」

 

 

 糸目、ゴツい、ゴツい、糸目、ゴツい。

 豪快な見た目とは裏腹に娘に対してはヘタレMAXな実の親達よりも親と思うバラキエルに早いとこ仲直りして欲しいが、バラキエルの煮え切らない態度を見てると先は長そうだなとは内心思いつつ、釣り上げたダボハゼをリリースした一誠はひとつバラキエルのヘタレを緩和してみようと考え、竿を横に置いて立ち上がった。

 

 

「? どうしたんだ?」

 

 

 急に立ち上がる自分にとっては妻と娘を助けてくれた恩人であり息子同然の大きくなった一誠にキョトンとしたバラキエル。

 すると一誠はコキコキと首の関節を鳴らしながら言うのだ。

 

 

「折角こうして会ったんだ。

久々に俺が強くなれたかおっさんに確かめて貰うぜ」

 

 

 最後にやり合った時から自分がどれだけ強くなったかを見て欲しい。

 悪魔種族としてとはいえ、爆発的な進化にてサーゼクスを打ち倒したという話は既に彼女――安心院なじみから密かに聞かされていたバラキエルは久々に顔を合わせた時点でその強さを察していた。

 

 

「勝ったら朱璃さん――とついでに朱乃ねーちゃんとでも風呂に入らせて貰うぜ……ケケケケ!」

 

「安い挑発だが乗ってやろうじゃないか、この小わっぱめ」

 

 

 だからバラキエルは、 自分と違って娘との約束を決して破らない様に努力する一誠の偽悪的な挑発に敢えて乗ってやる為に釣りを切り上げ、場所を移動する。

 

 

「サーゼクスに勝ったとは聞いているが、それで俺に勝てるつもりで居るその自信を凹ませてやろう」

 

 

 人が一切立ち寄る事の無い山中の開けた場所まで移動した二人は、既に改神モードよりも先の状態となって構える一誠に、先程までのヘタレなおっさんという雰囲気を一切消し飛ばした覇気を放ちながら、その身に雷電を迸らせ、スッと糸目を開けて見据える。

 

 

「上等、行くぜおっさん!!」

 

「来い!」

 

 

 それがゴング代わりとなり、地面を抉る程の速力で突撃する一誠にバチバチと拳に紫電を纏わせたバラキエルが迎え撃つ。

 

 堕天使組織の幹部を努めるバラキエル。

 その強さは一誠と同じく、一度大切な存在を失った事より、そして二度と失ってはならないという想いにより錆びる事無く、寧ろ上昇の一途を辿っている。

 

 

「ぬりゃあ!」

 

「むっ!? 確かに以前の一誠とは別次元の力強さ!」

 

「当たり前だぜ! なじみと同じく、アンタは俺の目標なんだからなぁっ!!!!」

 

 

 宿す雷の力は只放つだけではなく、繊細なコントロールを可能にさせ。

 

 

「だが甘い!」

 

「っ!? か、身体が……!」

 

 

 自身の放つ雷撃は他人の細胞が放つ微弱な電解質にも干渉させる事も出来。

 

 

「覇ァ!!」

 

「がはっ!」

 

 

 実質的に他人の動きを『支配』する事も可能となった。

 数年前に安心院なじみからの言葉により、独自に研究し、そしてモノにした――十三組の十三人(サーティンパーティ)の内の一人が使えた人心支配(アブノーマル)とほぼ同じである事は恐らく偶然では無い。

 

 

「俺ならまずサーゼクスやお前が持つスキルを『無力化』する。

どうだ? 相手の心臓(ハート)に電力を放ち、制限時間はあるが強制的に能力(スキル)を封じてみたぞ?」

 

「お、くっ……! た、確かに使えない……。くそ、また制御が上手くなりやがったなおっさん? ねーちゃんが使える日が来ると思うと恐ろしくて震えちゃうぜ!」

 

 

 それは創帝(クリエイト)と呼ばれた男と同じなのだから。

 

 

「スキルを封じられた程度で負けたなんて思わねぇよ!」

 

「勿論そうだろう。そういう子だお前は!」

 

 

 進化(アブノーマル)逃避(マイナス)を封じられた一誠に諦めの色は無く、果敢に向かっていくその拳を片手でいなしながらバラキエルは笑う。

 

 

「それでこそ一誠(オマエ)だ!!」

 

 

 何時だって娘の傍らに居てくれる頼もしくなった血の繋がりが無い息子の放つ拳の重さに嬉しくなったバラキエルは、本当の父子の様に存分に撃ち合うのだった。

 

 

 

 

 バラキエルのおっさんめ。

 少しは差が埋まったかと思いきや、おっさんもまた強くなってるせいで全然埋まりゃしねぇ。

 

 

「イチチチ……ちくしょう、また負けた」

 

「だが強くなった。俺もヒヤリとした所が多々あったしな」

 

「それでも最後に立ってたのはおっさんじゃんか。

ちぇ、悔しいぜ」

 

 

 つーか、放ったビリビリで相手の肉体やスキルに干渉するとか反則だろ。

 現に何度か身体が硬直させられて動けなくさせられたし、本気だったらその時点でやられてたと思うと……やっぱ悔しいわ。

 

 

「一応俺も彼女――いや、安心院さんに教えを貰っては居るからな。おいそれと負けてはやれんぞ」

 

「ちぇ~ 朱璃さんとのドキドキお風呂はお預けかよ~」

 

「当たり前だエロガキめ。

朱璃に手を出したらシバくぞコノヤロー」

 

 

 朱璃さんの話を持ち出したらマジになるおっさんとの差はまだまだ縮まらないものの、それ以上に目標に向かって進めるというワクワクした気持ちが大きく、その場に座り込む俺の頭を軽く小突くおっさんの拳に偉大さを覚える。

 

 

「封じたと言ったが、お前なら直ぐにでも復活させられる。あれは一時的なものだからな」

 

「ん、わかったぜおっさん」

 

「じゃあ俺はそろそろ帰るが……」

 

「え、ねーちゃんには結局会わねぇのかよ?」

 

「……。今はまだな」

 

 

 辺りは暗くなり、おっさんは朱乃ねーちゃんとは会わずに帰る様だが、俺は敢えてそれ以上言うつもりは無く、家まで送ると言ってきたのを断り、そのままお見送りする。

 

 

「何時かケジメがつくまで、朱乃の事を頼むぞ一誠」

 

「けっ、勝手なおっさんだぜ」

 

「済まんな……俺がどこまでも父親失格のせいで」

 

「違う。

俺や朱璃さんは少なくともおっさんの事を父親失格だなんて思っちゃいねーさ。アンタがちゃんとねーちゃんと向き合う勇気が出るまで、任されたぜ」

 

「…………ありがとう」

 

 

 ガキの俺にペコペコ頭なんて下げながら転移して行ったおっさんを無事に見送った俺は、痛む身体と自分の中で封じられてると感じるスキルを胸に山を降りようと山道を下る。

 

 おっさんはヘタレ、ねーちゃんは意地っ張り。

 揃って面倒な性格してるせいで仲直りできるものも出来ない二人に世話が掛かるとは思うが、それが苦に思うことは決してない。

 

 おっさんに認められる強さ、ねーちゃんとの約束を守り通す為に強くなる事自体が目標でもあるんだから――

 

 

「がっ!?」

 

 

 俺ももっと強くならないとな。

 そう一人やや冷たい山風を木々の隙間から浴びつつ山を降りていた最中だった。

 

 

「ぎぃ……! だ、誰だテメ……ごばっ!?」

 

 

 突如襲う後頭部への衝撃と鈍い痛みに意識が一気に遠退く気分に陥る。

 おっさんとの力比べでスキルが封じられてたせいか、それとも考え事をしていたせいなのかは知らないが、不意討ちなんてのを無様に受けてしまった俺は、直ぐ様背後に感じる誰かの気配に向かって裏拳をかましてやろうと腕を振り回すが、その拳は見事に空を切り、代わりに顔面な鉄の様な固い物で殴られてしまった。

 

 

「ぐぁっ……!」

 

 

 おっさんとの力比べでマジになった後なのと、スキルが使えない事で疲弊していたせいで上手く力が出せないまま下り坂になっていた山から転げ落ちていく。

 

 

「う……く……!」

 

 

 ゴロゴロとアホみたいに転げ落ちたが、大木に身体が引っ掛かってくれたお陰で止まった。

 しかし身体に全く力が入らずに起き上がる事も叶わない俺は、ザクザクと草木を踏みながら近付く足音の主が誰なのかも確認出来ないまま。

 

 

「やっぱり魔王様を倒したなんて嘘じゃねーか。ほら、何とか言ってみろ!」

 

「…………」

 

 

 遠くなる声に蹴られ続け、そのまま意識を吹っ飛ばすのだった。

 

 

 

 凛の家での時間も過ぎ、朱乃は何故か自分だけに話があると言ったリアスと共に取り敢えず自宅に向かおうと歩いていた。

 

 

「聞きたい事って何でしょうか?」

 

「うん、兵藤くんの事なんだけど、折角だし朱乃のお家にあるらしいアルバムを見ながら一つ聞きたい事が……」

 

「……。凛ちゃんや凛ちゃんのご両親との壊滅的な仲である理由でしょうか?」

 

「………。有り体に云えばそうよ。

だから着いてきたがっていた凛には来ないように言ったの」

 

「なるほど……」

 

 

 リアスから話を聞いて凛や小猫、祐斗、アーシアを連れてこなかった理由を理解した朱乃は納得したかの様に小さく呟く。

 だが朱乃は話すべきなのかと迷っていた。

 そもそも一誠から話して良いかも聞いてないし、本当の事を話しても信じてもらえるのか……。

 

 そして仮に信じた場合、仲間内に亀裂が完全に入るのではないか。

 ――等々、総合的に考えると話すべきでは無いのかもしれないと朱乃は考えるが、話さないと話さないで仲間内で疎外感を感じ始めてるリアスが可哀想に思えてしまう訳で……。

 

 

「話すのは良いですが、一誠くんに許可を取るために家に来て貰う必要が……」

 

 

 何にせよ一誠を介さないと話にならないだろうと思った朱乃は、リアスにそう告げながらふと日が沈んで電灯の光だけが明かりとなってる道路の数十メートル先にてフラフラと千鳥足で此方に向かって歩いてくる人影に気づく。

 

 

「え、誰?」

 

 

 リアスもそれに気付いた様だが、上手いこと電灯が無い場所だったのでよく見えず目を細めており、思わず立ち止まってどんどん近づいてくるその人影を共に観察する。

 

 するとそのフラフラな人影は徐々にシルエットをハッキリとさせ、どうやら怪我をしているという情報を二人に与え――

 

 

「い、一誠……くん!?」

 

「うっ……ひ、酷い怪我よ!」

 

 

 それが、今話題にしていた男の子だった事に気付いた二人は、今にもぶっ倒れそうな足取りでフラフラ歩いていた一誠に急いで駆け寄る。

 

 

「どうしたのよその怪我――うっ!?」

 

「な、ど、どうしたの朱……乃……!?」

 

 

 駆け寄り、一誠の肩に触れて顔を覗き込んだ朱乃が言葉を失うのを目にしたリアスがつられて猫背気味だった一誠の現状を見て絶句した。

 

 

「? そ、その声は朱乃ねーちゃんとグレモリー先輩……?」

 

 

 全身から血が止めどなく流れてるだけならまだ許容範囲内だった。

 しかし二人が絶句したのはその顔だった。

 

 

「え、っと……わり、よく見えないんだわ今……」

 

「め、目が……」

 

「な、無くなってる……」

 

 

 頬は切り裂かれ、鼻は折れ曲がり、そして何よりだらしなく緩んだり、激情に駆られたりとコロコロ変化する目が……眼球ごと消えていたのだ。

 そう、それはまるでくり貫かれたかの様に……。

 

 

「いや、イヤァァァッ!! ど、どうして! 何で! す、スキルは!?」

 

 

 その余りにも無惨な姿に朱乃は悲鳴をあげながら、この程度の傷なら直ぐに否定して元通りに出来る筈だと叫ぶが、一誠は無惨な顔でも変わらずのヘラヘラした声で首を横に振った。

 

 

「いやさ、バラキエルのおっさんと会って修行相手になって貰った時に新技くらって半日くらいスキルを疑似封印されてな? んで、その帰りに後ろから思いきり殴られてこの様って訳」

 

「ち、父と会った!? 何で……!」

 

「落ち着きなさい朱乃! 問題はその後の不意打ちをやった相手についてよ!」

 

「おー……グレモリー先輩が冷静役で助かった。

そうそう、朱乃ねーちゃんと会いたいけどヘタレて会えないおっさんと別れた後に不意打ちを食らった奴なんだが――――あ、やべ、血ィ流しすぎてクラクラしてきた……」

 

 

 バラキエルと会ってたという一誠に更に取り乱そうとしていた朱乃を落ち着かせるリアスに感謝しながら不意打ちの犯人の特徴を口にしようとしたが、それ以上に体力の消耗が激しいようで、ヨロヨロと住宅の石壁にもたれ掛かかってしまう。

 

 

「一晩寝たら勝手に直るから大丈夫大丈夫」

 

「大丈夫な訳無いでしょう!? 言って、誰がこんな事をしたの!?」

 

「アナタには大きな借りがあるし、私達で突き止めて見せるわ。だから特徴を――」

 

「いや、もう目星は付いてるんで」

 

「じゃあその目星とやらを……」

 

「嫌だよ。こんなアホみたいな事にねーちゃんやグレモリー先輩が出る事なんて無いし、ケリは俺個人で付けたいし……」

 

 

 問い詰める朱乃とリアスを眼球の無い目から血の涙を流しながらヘラヘラ笑って誤魔化す一誠は、そのまま自宅に帰る気なのか、二人の間を縫ってフラフラと歩き出そうとする。

 

 だがそんなのを許す二人な訳が無く、朱乃とリアスで出来るだけの治療魔法を一誠に施す。

 

 

「お、身体が全快した!」

 

「無くなった目はどうすることも出来ないけど……」

 

「十分っすわ、それじゃあ俺はこの辺で……」

 

 

 二人の腕は確かな様で、楽な体勢で座らせた一誠に数十分に渡る念入りな治療を施した朱乃とリアスは、目の見えないままボディビルダーの様なポーズをして、あからさまな回復アピールをしつつそのまま帰ろうとするのをガッチリとホールドして止める。

 

 

「帰らせる訳無いでしょう? 今日は家に来て」

 

「んだよオーバーだな。

前に全身を吹っ飛ばされても何とかしたのを見たことあんだろうに」

 

「いや、それとこれとは別だわ」

「グレモリー先輩まで言いますか。

へーへー……わかりましたけど、誰がやったとか言いませんからね俺は」

 

 

 観念した様に無くした目のまま降参のポーズをした一誠は、自宅から朱乃の家へと二人に引っ張られる形で進路変更を余儀なくされるのだった。

 

 

「ほら、肩を貸してあげるから」

 

「目が見えないと不便でしょう? 私も貸すわ」

 

「そりゃどうも……」

 

 

 身体の痛みは消えたものの、バラキエルの技によってスキルが一時的に失った状態の一誠は未だに両目を失ってる状態だった。

 なので横から朱乃とリアスが肩を貸して一誠の目の代わりとなってあげようとした……のだが。

 

 

「ひゃん!?」

 

 

 右に朱乃、左にリアスがそれぞれ肩を貸してたのだが、そのリアスが突如驚いた様に身を小さく跳ねながらちょっと艶かしい声を出す。

 一体何だ? と朱乃は不審に思って肩を貸したままリアスを見てみると……。

 

 

「目が見えない、あー目が見えないなー……これはなんだろーなー? 大っきなマシュマロかなぁ? げへへへ」

 

「あっ……ん……! や、やめ、て……は、恥ずかしいから……! ま、マシュマロじゃなくて私の胸だから……!」

 

「ポヨンポヨンだなー……うぇへへへ!」

 

 

 どう見てもわざとにしか見えないドスケベ笑いでリアスの胸をもにゅもにゅと一誠がしてたのだ。

 

 

「………………」

 

「うぅ……な、何故か兵藤くんに触られると変な気持ち……にぃ……!」

 

 

 しかも敢えて黙って見てると、嫌嫌と言ってる癖にリアスは全く抵抗らしい抵抗をしちゃいない処か、顔を紅潮させながらもじもじしてると来た。

 

 自分には全く何にもしないのに……何にもしないのにと徐々に嫉妬やら何やらの感情が膨れ上がった朱乃は。

 

 

「…………。後でたっぷりお話がお二人にありますので」

 

 

 物凄い低い声で有罪判決の言葉を口にするのだった。

 

 

「いやほら、目が見えないから偶然……」

 

「は?」

 

「す、すんませんした」

 

「な、なんで私も……?」

 

「嫌嫌言って置きながら無抵抗の癖に被害者顔してるんじゃありませんよリアス?」

 

「あ、は、はい……」

 

 

 夜は長くなりそうだ。

 

 

「真羅さんといい、何処まで浮気すれば良いの? ねーねー教えてよ一誠くーん?」

 

「うっ、素の口調……だと? ま、待て、この人見てるのにそのモードは――んみゅ!?」

 

「ちゅー♪」

 

「ば、や……! やめろ! この前しちゃってから急に頻繁になりすぎ…にゅえ!? し、舌はやめひぇ……!」

 

「あ、あわわわ、あ、あんな凄いキスを……!」

 

 

 素モードになった朱乃が一誠に飛び付き、びっくりレベルの激しいキスを見せられて顔真っ赤なリアスや、形振り構わず飛び付いてキスした朱乃や、された一誠の三人が揃って身体が火照ってしまった的な意味で。

 

 

終わり




補足

バラキエルさんとはちょくちょく会ってはキャッチボールやら今回の釣りやらをしてから、一戦交えてます。


その2
最早兵藤家の両親は一誠の存在を抹消しています。

ちなみに、凛の写真は転生した時の辻褄合わせの為に転生神が捏造して産まれた時からのが存在してます。

その3
襲撃者はぼかします……とはいえ、多分察してしまわれるかと……。

その4
バラキエルさんは安心院さんの助言一つで某王様とスキルと同質化してます。

つまり、朱乃さんがちゃんと受け継いだ血を訓練したら女帝と化……すか?
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