「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ――!!」」」」」
すごい歓声の中現在、俺はコロシアム会場内にいた。
会場内と言っても観客席ではなく戦闘場の方だ。
そして、今は予選って言うよりかは……言うのは難しいので下の表を見てほしい。
コロシアム戦闘予定モンスター表。
・第一回戦Aランクモンスター
・第二回戦Aランク亜種モンスター
・第三回戦Sランクモンスター
・第四回戦Sランク亜種モンスター
・第五回戦SSランク亜種モンスター
この様な表になっており、第五回戦は2桁超えてのSS亜種になっている。
その中で俺は第三回戦のSランクモンスターとの戦闘中だ。
相手は俺の10倍はあろうかと思える巨大なタコ『クラーケン』だ。
『クラーケン』は触手を自由自在に操り、右へ伸ばしたと思えば左にもその巨大な触手が地面を叩きつけており、神経を澄まさなければ今頃死んでいただろう。
だが、俺は戦う為にここに立っている訳ではない。
今から1時間程前。
◆ ◇ ◆
「え!? ボスモンスターが女の子だと!?」
俺は先程の武器を選ばされていた場所から離れて今、ムキムキの案内役に待合室へと連れて来られていた。
「あぁ、そうだ」
そして俺はここに連れて来られた理由を聞いた。
「それで俺にどうしろと……!?」
「救ってもらう」
「は……!?」
俺はエリーナからここのボスモンスターのことを教えてもらい凄く驚き、怒りを覚えた。
そのボスモンスターはこの世界では手足の指合わせても数えきれる位の種族『悪魔族』の女の子だとか。
『悪魔族』は『人間体』と『モンスター体』の2種類が存在し、『人間体』は俺達と同じく判断することや感情を持ったりしているが、『モンスター体』の方は別で喰らうことしか脳にないらしく危険だ。
だが、今回のは『モンスター体』ではない。
明らかな『人間体』だ。
エリーナは実際見たことはないらしいがギルドに情報が入ってきたため俺にどうかしてほしいらしい。
「でも、どうやって救うんだよ? もし失敗して殺しちまったらどうなるんだよ……」
SSランクなんだろ……手加減なんかしてたらこっちが殺られちまうぞ……
「その心配はない。アントにはこの会場をぶっ潰してもらう」
ニコリと不気味な笑顔を浮かべて普通に言ってくるエリーナに俺は呆れた。
「また無茶なことを言って……」
「実際、この真上はコロシアムの戦闘会場となっているんだ」
ってことは……沈める気か……。それだとここにいる奴らは下敷きになるぞ……
「一人救うために他の奴は犠牲にできねぇ」
俺がそう言うとエリーナは自信満々な顔で返事をした。
「それなら案があるから安心しろ。私とマリィでここにいる奴らは全て会場の外に追い出しておく」
「そんなのどうやって……」
「女のやり方ってもんさ……」
うわぁ……女って怖ぇよ……。聞かない方が身の為だな……
俺は嫌そうな顔を浮かべ、一応了承した。
そもそもこの会場を潰す事自体出来るかも分からない。
「それじゃ、作戦を伝える。」
「あぁ」
俺は顔の表情を切り替えて、聞くことに専念した。
マリィは口に出すのは不味いと思っているのか黙ってこちらを見ている。
「まず、この紙を見てほしい。」
と、戦闘表を見せられる。
コロシアム戦闘予定モンスター表。
・第一回戦Aランクモンスター
・第二回戦Aランク亜種モンスター
・第三回戦Sランクモンスター
・第四回戦Sランク亜種モンスター
・第五回戦SSランク亜種モンスター
「この五回戦のがあれか……」
「うむ。そうだ。それでだが、まずは第四回戦まで勝ち進めてほしい」
「いけるかな……」
正直亜種は大嫌いなのだ。
一々全回復してからのグレードアップしだすとかチートとしか思えないからな。
不安になったもののエリーナはどうも思っていないらしく普通の顔だった。
「アントの実力なら簡単にいける」
「どっからそんな自信が出てくるんだか……」
今日2度目の呆れた顔を俺はした。
「そこまでいったら次が肝心だ。第四回戦までは連続戦なのだが、第五回戦に来ると5分の休憩が入る。」
「れ、連続戦か……」
体力には自身があるけど、気力がな……そもそもどんなモンスターかも気になるし……まぁそん時だな
「私達は地下にいる冒険者達を5分の間に全て連れだしそして、『悪魔族』との戦いが来たら思いっきり地面に打撃を入れ、会場を破壊してくれ。その際に『悪魔族』を抱えてアントも脱出してくれれば構わない」
俺が5回戦まで勝ち上り、休憩の間に皆を避難させ、戦いが始まれば会場を破壊。その際にその悪魔族の女の子と一緒に脱出と……やけに面倒臭いな……
「まぁいいけど、その後の合流地点は?」
「コロシアムの後ろに、今は使われていない教会がある。そこに来てくれ」
「わ、わかった……」
少しやり遂げれるか心配だが、エリーナはその少女を助けたいらしい。
なら、やってやる他ないだろう。
そこで終わったのを確認したのかマリィが声をかけてきた。
「わ、私も何かやるんだよね……?」
「あぁ、それは後に説明する」
「わ、わかった! がんばるっ!」
変なことは頼むからしないでくれよ……
俺はそう思ったと同時に出番がやってきた。
◆ ◇ ◆
「オラァッ!!」
――ボウォォォンッッ!!
巨大なタコ『クラーケン』の連続攻撃を全て避けきり、やっとのことで相手が疲労し、隙を見せた所で俺はターンを切り替えた。
もう10分間ずっと避け続けたので、こちらの疲労も著しいがまだまだ余力はある。
「これを喰らえッ!」
俺はそう言い、鉄剣を取り出し『クラーケン』目掛けて斬りつける。
だが、二本の触手に遮られた。
その触手は、ブシャッ――と斬られて力も無く落ちていく。
「あー!! 面倒くせぇなー!!」
何でタコがこんなとこにいんだよ!! 取り合えず触手から片付けていかねぇと……!!
「ウッラァ!! ウォラァ!!」
俺は次々と迫ってくる触手を、斬りに斬りつけ『クラーケン』を真っ裸にする。
幸いなことに再生能力は無いみたいで斬りつけた所からは緑色の汁が溢れていた。
そして全てを斬り払った所で渾身の一撃……と思いきやまだ相手は切り札を持っていた。
「グギャァァァァァァ!!」
バケモノの咆哮が鳴り響くと同時に『クラーケン』の赤い頭から腕が二本出てきた。
「うっわ何だあれ……」と俺は気持ち悪く思い少し引いた。
そして、猛スピードで迫ってくる。
通った場所はその力で削られ跡が出来ていた。
「グギャァァァァァァ――!!」
そして目の前まで迫り、焦った俺はどうしたかと言うと……
「黙れぇぇぇ――!!」
思いっきり殺気を含めてブチギレた。
渾身の叫びと殺気が効いたらしくモンスター本能でその動きを止め、気絶したらしい。
「え……死んだ……?」
いや……まだ死んでないよな……? 何か泡吹いてるけど……取り合えず勝ったのか……
観客席からは「おいアイツあれだけで殺っちまったぞ……」「な、何者だ……?」と先程とは打って変わって驚きへと変わっていた。
それもつかの間。
その数秒後に「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ――!!」」」」」と歓声がこのコロシアムを包んだ。
「はぁ……あんな大声久々に出したなぁ……。それよりもう一戦あるのか……次は亜種……か」
俺は気乗りしないまま怠そうに肩を落とした。
そして『クラーケン』は粒子分解し、ドロップアイテムを落とす。
俺は時間も残っていない為空かさず拾う。
『海の王の玉宝を入手しました。』
『ヌメヌメとした膜✕3を入手しました。』
『鋭い黑牙✕5を入手しました。』
『海の王の眼を入手しました。』
ツッコミたい物は一つあるがそんな余裕はない。
拾い終わると同時に次のモンスターが現れる。
「ヒュルルルルル……」
「き、騎士か……?」
鉄柵の奥から出てきたのは暗黒に包まれ、馬に乗っている騎士のモンスターだった。
モンスターというには少し不自然でその手には剣を持ち、その紅く煌く怪しい瞳で俺を見据えている。
だが、そんなことを考えていた俺はつい隙を見せてしまった。
「ヒュアアアアア!!」
俺は空かさず避けた。
「ぬアッ――」
だが俺はギリギリのところで避けたが、全ては避けきれず胸に一閃刻まれた。
その後も連続で馬を自分の身体と同化したかのような動きでまたこちらへとその黒く包まれた剣の刃を振りかざす。
俺も鉄剣で何とか受け止めたが次の攻撃が来る為、こちらの攻撃が出来ず苦戦する。
そ、そうだ! 馬……馬を先に殺れば……!
俺はそう思い付き、チャンスを見計らう。
ガキンッ、ガキンッと何度も攻防した際あちらが少し動きを緩めた。
「ハァッッ!!」
「ヒヒィィィィィン……!!」
悲痛な叫びを馬があげ、騎士を振り落とした。
馬はそのまま粒子分解し消えていく。
やっとこれでまともな勝負が出来ると思い立ち上がった騎士と向き合う。
だが……
「ヒュラァァ……」
ドン……と膝を付きそのまま力無く倒れこちらも粒子分解した。
「え……どういうことだ……?」
俺は意味が分からないままもドロップアイテムを拾う。
『暗黒の黒騎士の剣を入手しました。』
『暗黒の黒騎士の防具を入手しました。』
案外少ないな……。これで休憩が入る訳だが、エリーナ達は無事にやっているだろうか……
と思い、俺が戦闘会場の入り口を見ると……
「アント無事に終わったよー!!」
「もう準備は出来ている!!」
あれってマリィとエリーナか……
そこにはニコニコと手を降っているマリィと、腕組みをしてこちらを見るエリーナだった。
急いでエリーナのところへ行くと「全員避難は完了した。後はアントだけだ」と言われて安心した。
「んじゃ後は俺が『悪魔族』の女の子を連れ出すだけだな」
「あぁ、そうだ。私達は先に教会へ向かっておくからしっかりと来るんだぞ」
「了解だ」
そう言うと、すぐさま会場奥へと消えていった。
「よし、本気でぶっ潰すか……」
そう言うと戦闘会場の中心へと戻っていく。
相変わらず歓声は途絶えないままで、五月蝿いがまぁそこは無視しよう。
そして、ガラガラガラと鉄柵が開かれそこにいたのは……
「本当に女の子だ……」
少し見えにくいがその表情は曇っていた。
何かに怯えるように……
戦う気はないのか、それとも戦うのが初めてなのか、は分からないがその位置から一歩も動こうとしない。
そして一人の兵がその娘の所まで行き、バシンッ!!とムチを打ち付けた。
「何やってんだ……!?」
あんな女の子に何てことしてるんだよ……!!
俺はその娘の元まで行くが、怯えて近付こうとしない。
だから、俺はニコッと笑みを浮けべ……
「逃げよう」
と言った。
すると兵が「お前何をほざいている!!」とこちらへ剣を向けたので蹴り飛ばし、女の子を抱えて戦闘会場の中央まで行くと。
「掴まってて」
そう言い、観客席からのブーイングも兵がこちらへ向かっているのも気にせず心を無にした。
ハァァァァ…………
「ウォォォォォッラァァァ!!」
――――ドガアアアアアアアアアアンッッ――!!
俺が全身洗礼の本気で地面を殴りつけた。
その瞬間地面が崩れ落ちたが、何とか上へのぼり、観客席へと登るとそのままダッシュで席を通り抜けて数十mはあろうかと思えるコロシアムの天辺からジャンプした。
「捕まってろよぉぉ!!」
「…………(ギュッ)」
シューとどんどん地面に近付き、トンッ……とあり得ないような音で着地した。
「よし、確か後ろの教会へと行けばいいんだなっ」
俺はコロシアムの後ろ側へ周りその近くにある教会を見つけて、ドンと扉を片手で開ける。
「あ、アント無事だったんだね!」
「来ると思っていたぞアント」
二人は安心した顔で出迎えてくれて抱えている女の子を見据える。
「あ、ごめん。取り合えず連れてきたは良いけど……どうするの……?」
「よし、ひとまず宿屋へ戻ろう」
「うん、そうだねっ」
「…………」
そして俺達は急いで宿屋へ戻ることにした。