魔法が無いので剣や素手で異世界謳歌   作:α+#

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《Ⅹ話》 悪魔族の少女

「おい、見つけたぞ! 南側に向かえ!」

 

 俺達は今、追われていた。

 それは俺が悪いっていうか……まぁそうなんだけど

 今から、30分ほど前に今抱えている女の子を連れ出すためにちょっと派手にやらかしてしまってって言うかそれがそもそもの計画だったんだけど。

 それで合流地点まで無事に行けたのだが、見つかってしまって、今追われている訳だ。

 

「くっそ、逃げても逃げても見つかっちまう」

「ひとまず身を隠すぞ!」

「はぁ……! はぁ……! ちょ、ちょっと待ってー……!」

「マリィ大丈夫か!」

 

 マリィがバテてしまったようで地面に疲れ切って倒れこんだ。

 兵も近くにまで来ているので、どうしようかと思っていた時、あの女の子が動いた。

 

「お兄ちゃん降ろして」

「え、お、お兄ちゃ!? って何をすんだ……」

 

 お兄ちゃんって言われて戸惑うが、言われた通りその女の子を降ろす。

 兵も近づいて来て何をするのか不安になったが、SSランクの名は伊達ではなかった。

 

「お兄ちゃん達を傷付けたら許さない……。貴方達は今ここで自害しなさい!」

「…………」

 

あれ……何言ってんだ……? ……って嘘だろ!?

 

 俺はえげつない光景を目の当たりにした。

 兵達は次々と倒れる。

 誰かが殺している訳でも何でも無い。

 女の子が言った通り、次々と自分の剣で自害をしていった。

 次から次へと、ブシュ……ブシュ……と。

 その鮮血が剣に滴り落ちて、とうとうここにいる兵達は皆死んでしまった。

 

「ふむ……。これは悪魔特有の洗脳……だな」

「ま、まじかよ……」

 

 もう周りには50人近くの兵達が野垂れ死んでいて見れる光景ではない。

 とてもグロい絵図だが、人は粒子分解はしないらしい。

 取り合えず次が来られても困るのでさっさと再び女の子とマリィを抱える。

 

「ア、アントその格好は……」

 

 マリィを後ろに抱え、女の子を前に抱える。

 今の状況を確認するが特に不審な点はない。

 

 「よし、あと少しでこの地区から出れる」

 「もう、兵達追ってきていないから降ろしてもいいんじゃないか……!?」

 

 行き迫ったような様子で言うものだから断れず、降ろす。

 

 「よいしょ、」

 

 俺はマリィと女の子を降ろした。

 だが、マリィの様子がおかしいと思い、顔を覗きこんでみると……

 

「ス〜……」

「……って寝てるし」

「ほ、本当か! マ、マリィ起きるのだ……!?」

「いや、俺がおんぶするから起こさなくていいよ」

「で、でも……!?」

 

エリーナさっきから何を焦ってんだ……

 

 エリーナのことはよく分からないが、今の気持ち良さそうな顔で寝ているところを起こすのは可哀想だと思い、もう一回おんぶした。

 すると降ろした女の子も羨望の眼差しで。

 

「お兄ちゃん私も、もう一回おんぶして!」

 

 と腕に引っ付いてきた。

 だが、させまいと逆らうものが一人。

 

「何甘えたことを言っている! 私と共に歩け!」

 

何に怒ってんだ……ていうかさっきから不機嫌だよなエリーナ。何かあったのか……? 

 

 そんなことを考えている中二人の戦いはまだ続く。

 

「お姉ちゃん嫌いだから嫌だ」

「なっ!?」

 

もうこの二人引っ付けたらダメだ……。まさに『混ぜたら危険』だな。どうしたものか……

 

 すると、良い所でマリィが目を覚ました。

 ふわぁ……とあくびを出してから俺に気付く。

 

「あれ、アント何で私をおんぶしてるの?」

「俺がおんぶしてないとマリィは今ここには居ないぞ?」

 

 そう掛け合いながら、マリィ女の子に声を掛けた。

 

「もうエリーナと仲良くなったんだ♪」

「なってなどいない!」「なってないもん!」

 

おぉ〜見事なハモリ! ここまで来ると運命だな、あははは

 

「そ、そんなんだ……。それで君の名前は?」

「俺も聞いてなかったなぁ」

「それよりだなマリィ……」

「ん?」

 

 これまでにない様な顔でシワを寄せぴくぴくと動いている眉毛が可愛らしいエリーナ。

 何を言うかと思いきや……。

 

「アントとイチャイチャしてないでさっさと降りろぉぉぉ!」

「あ、本当だ!」

 

 そして、マリィが俺の背中から、ひょいと降りたところで、やっとエリーナはそのぶっきらぼうな顔をいつもの可愛い顔に戻してくれた。

 なんだ、そういうことか……と俺は安心する。

 

「あ、それで君の名前は?」

「私エマって名前だよ」

 

エマちゃんか。下の名前は皆と違ってないタイプなのかな

 

「そうなんだ、よろしくねエマちゃん!」

「うんよろしくね、お姉ちゃん!」

「ふ、ふん知るものかエマなど」

 

相変わらずだけど、ちゃんと名前で呼んでんじゃんか。それよりエマちゃん無茶苦茶馴染んでるよな……

 

 そして、ここに来た当たりで俺達は『スラム地区』を抜けて下の地区へと戻ってきた。

 活気は徐々に戻ってきており、あと少し進めばあの宿屋へと辿り着く。

 

「取り合えず宿屋へ戻って纏める方が優先だからさっさと戻るぞ」

「ふむ。それが一番だ」

「そうだねアント!」

「お兄ちゃんどこに行くの……?」

「休む場所だよ」

 

 少し目立っているのか、チラチラと見てくる人が多いため口数が減っていく。

 そして、ギルド前を通り過ぎ宿屋の前まで来た。

 

「ここだよエマちゃん」

「う、うん」

 

――ガチャリン...... 

 

 俺は扉を開けてエマちゃんを引き連れながら中にはいる。

 

「おかえりなさい皆様」

 

 いつものように優しい微笑みでお帰りのコールを言った。

 

「ただいまじいさん」

「ただいまおじいちゃん!」

「ただ今戻りました」

 

 そして俺の腕に引っ付いているエマちゃんを見るやいなや。

 

「そちらの方は……」

「あー、なんて言ったらいいのか……」

 

 とエリーナが突然とんでもないことを発言した。

 

「私の母の友人の子供だ」

「え、えぇぇぇぇぇぇ!!」

 


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