魔法が無いので剣や素手で異世界謳歌   作:α+#

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第一章 《異世界という名の別次元》
《Ⅰ話》 異世界での特訓は最強への道程


――何も考えるな。目を閉じてその時を待て。死ぬ訳ではない。

 

――――――。

 

◆ ◇ ◆

 

 俺は御浜《みはま》アント。高2って言いたいところだが今は高校には行けていない。

理由は……。

 3ヶ月前の奇異的現象により地球とは別の……言わば異世界? に来てしまった。

 

「おいアントッッッ!! なに訓練サボってんだい!」

「なんだよ。少し休んでただけだろ? いいじゃんか」

「お前の愚痴は聞いてない! ほらあと1378回!」

 

はぁ……。今思えば何でこんな事やってんだろうな。

 

 まぁ説明すると、俺は3ヶ月前にここ、裏の世界(back world)―と俺が呼んでいる―場所に突然転移されてしまった。

 俺が最初ここに着いた時は大樹が覆い茂った森の奥深くに仰向けで倒れていた。

どこかもわからない場所に俺は訳分からずに2日も何も食わず彷徨《うろつ》いていたところを魔女《ばばあ》に拾われた。

 魔女だから最初は魔法が使えんのか? って思ったりもしたがここの世界には魔法が無いのだという。

 そして、魔女の家に付いて行き飯を1口食った刹那――、魔女の弟子にされてここ3ヶ月鬼の様な訓練メニューと奴隷生活をずっとやっている。

メニューと奴隷生活はというと……

 

 

 朝5時起床。

 目覚めたらすぐに大きな樽を持って近く―といっても2キロあるのだが―の川で全身を洗い、終わったら樽に30キロという量の水を入れて6時までに帰宅。遅れたら色々とヤバイ。

 そして家に着くともう飯が用意されているので食べる。

食べ終えると、12時まで15キロの鉄剣の素振り2000回。これまたキツイ。

 それを終えると次は食料集め。この森を出た所に『ドラゴン』『鬼オーク』『蜜蛇』など色々なモンスター達が生息する丘がある。

 そのモンスターを出来る限り倒して―なぜか粒子分解する―出てきたドロップアイテムに食料があるので拾い、3時までに帰宅。

 帰宅すれば次は魔女との取っ組み合いが始まる。だが、最初は触れることさえ出来なかった俺が最近では魔女と同等にやり合えている事に気づいてきた。

 暗くなると朝、樽に汲んできた水を適温になるまで温めて風呂に入る―魔女が入った後だが―。

 入り終えると飯が用意されているので今日の復習と共に魔女と話し合う。

そして8時に就寝に着く。

 

 

 というような事をやっている訳だが、これを3ヶ月もやっているうちにキツイと思っていた事がいつの間にか日常と感じてきて普通にこなしている。

 慣れるのが早いかと言えばそうなるがこれは慣れではなく理解だろうと俺は思う。混乱はあまりしないタイプなのですぐに馴染めれた。

 俺を拾って面倒を見てくれた魔女には本当に感謝をしている。厳しいメニューも何かと役に立つかもしれないからな。

 そんなこんなで3ヶ月も過ぎた頃。

 

「もうすぐで終わりだよ。ほら頑張りな」

 

シュッシュッシュッシュッ……。

 

「うっしゃ終わった――!!」

「もう見事にこなしてきてるねぇ。最初は馬鹿みたいに『しぬーー!!』『腕がぁーー!!』『もうだめだぁー!!』とかほざいてたガキがもう余裕を持って終わらせてるからねぇ」

「あ、あん時はまだ慣れてなかっただけだよ! 別に言わなくてもいいだろっ」

「ふはははは。もうそろお前も独り立ちする頃かねぇ……」

「独り立ちって急に何言ってんだよ! 俺はまだ――」

「もう立派に強くなってんだよ。お前がいつも狩りに行ってるドラゴンは冒険者ランクAだぞ?」

 

 ん……? そんなこと初耳なんだが。冒険者ランクってことは魔女以外にも人間がいるってことだよな……? そんなことはどうでもいいが急に何言ってんだ。勝手すぎやしないかよ。

 

「それで俺がここを出たらお前はどうなるんだよ?」

「気にするな。元々私は一人でお前にやらしていた事をやってたんだ。またいつもの日常に戻るってだけだよ」

「そりゃそうだけどさ……」

「そんじゃ一回家に戻って話し合おうか」

 

 そう言うと艶かしい金髪をふらりと翻し、すぐ近くにある家―屋敷のような―に一人足軽に向って行く。

 俺は最初動揺していたがどうにもならないことを悟り少し小さめの見慣れた背中を追いかけた。

 

「俺のことが嫌になったのかなぁ……」

「何を言ってる。お前の事は初めて出来た子供のように愛おしくて仕方ないほど好きだぞ?」

「え、お、おう」

 

 俺は少し照れながらも家の前に着いた。

そして4段しかない階段をあがると、がちゃ.....と聞き慣れた扉の音が鳴った。

 俺と魔女は無言で何も言わずいつも飯が置いてある木材でできた4人用の机に腰掛けてから俺は魔女が口開くのを待つ。

 

「……………」

「さっきは突然言い出してすまんかったな。だけど今のお前の見込みなら相当強くなっている。これがどんな意味を持つかわかるな?」

「あぁ......。鳥も大きくなれば育て親を離れる。ライオンも大きくなれば自分で狩りに行く。だから俺も、もうここを旅立たなければいけない……ということだな?」

「そうだ。お前を最初拾った時は、そりゃ体力と根性だけしか持ち合わせていないガキだったからな。逃げ出そうとする時もあったけど、結局何も出来ず毎日同じ事を繰り返しした。気付けばお前は私に懐いてやがった。ふはははは。そんなお前を私も子供のように思ったもんだ。産まれてから458年、魔女だと言われどの村からも追い出されて何も面白いと感じさせない世界に、お前は現れた。私に笑顔を教えてくれたのもお前だった。だからこそこのままではいけないんだ。やる時はやらないとね」

「そうだな......。俺の母さんは亡くなってからというもの愛なんて知らなかったからな。そんな魔女を母さんだと思っていたのかもしれねぇな。まじでお世話になった」

 

 俺は今にも涙が溢れそうだった。

 2歳の時母さんは飛行機の事故で亡くなった。物心もまだついていなかったから母さんの事はよく覚えていない。

 そんな中突然現れた俺に優しくも厳しく接してくれた魔女には......いやアンナには感謝をしている。

 だからこそこうして、悲しい、離れたくない、という感情が溢れているのかもしれない。だけどこのままでいるのも我儘であろう。

 

「それじゃあ私から一つ贈り物がある」

「贈り物……?」

 

 すると魔女ことアンナは椅子から、スッと立ち上がり俺でも立ち入りを禁じられていた部屋の奥へと向かっていった。

 俺は贈り物と言われて検討もつかなかったが緊張しながら戻ってくるのを待つ。

3分位待ったところでアンナは何かバッグの様な物を持って部屋の奥から出てきた。

 

「それを俺にくれるのか……?」

「あぁ、そうだ。これは『物質保存鞄《セービングバッグ》』だ。これは普通の鞄とは違い、存在する物ならなんでも保存する事ができる。重くもならない。それと入れた状態時の時と永久に保存状態が変わることがない便利すぎるアイテムだ。しかも世界に一つだけの超レアアイテムだ」

「まじかよ。そんなもん俺にくれていいのか?」

「気にするな。もう私には必要がない。今はお前にやるべきだと思ってるからな」

 

 本当に良いやつだ。それなのに魔女ってだけで罵られ追い出されたアンナの気持ちは凄く辛いものだっただろうな。

 俺は絶対にそんな奴らを許しはしねぇ。

 

「本当に感謝する。もう行っていいのか……?」

「あぁ、別に構わない。それとお前が倒したモンスターから出てきたドロップアイテムはそこに全部入れておいたからな。売れば何とかやりくり出来るだろう」

「そうか、わかった。ありがとな――アンナ」

「ふっ、気にするな」

 

 アンナは最高の笑顔で俺を送ってくれた。

また戻ってこようと心に誓った俺はアンナから貰ったここ周辺の地図を頼りに家を出た。

 

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