ザワザワといたる場所から怒声や笑い声に歌声などが耳煩く聞こえてくる。
こんな夜番遅くにも関わらず活気に満ちていた。
ここは大樹の森から見えた城壁に囲まれていた国である。
妖精さんの案内でここまで来れた訳だが、入国する際にここの入り口を管理する門番に身分証明カードらしき物の提出を求められ、俺は持っていなかったために「持っていない」と答えると、ギルドへ手続きを命じられ地図を渡された。
地図はそれほど大きいものではなく、横幅30cm縦20cm程の物である。
俺はそれを手に取りギルドへと足を運んでいる最中なのだが、余程俺の顔つきが珍しいらしくスレ違う人々の目線が痛い。
その目線が興味なのかは分からないが事実上俺は顔見知りであるが故に俯き気味になってしまっていた。
すると近くの屋台から食欲をそそるような香ばしい肉の薫りがしてきたと同時に
――ギュルルルルル......
ふと俺のお腹が鳴った。
俺は余り気にしてはいなかったものの、お腹は正直である。
「はぁ......。お腹空いたなぁ」
俺はそう呟き、お腹を2度、3度とさすった。
だが今はモンスターのドロップアイテム以外は『物質保存鞄』には入れていないためお金も無い。
そう思った俺はお腹は空いているが諦め、早くギルドへ行くことにした。
「ギルドに換金所とかあったらいいんだけど……あんのかな?」
まぁ、なければ誰かに聞けばいいことだ。
そして俺は再びギルドへの行き方が書いてある地図を眺めた。
●←現在地
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パ 雑 宿 本 ギ
ン 貨 屋 屋 ル
屋 屋 ド
現在地から4軒先にギルドが点在している。
『パン屋―雑貨屋―宿屋―本屋―ギルド』と、まぁこんな風に表示されている訳だが、驚きなのが『本屋』と示された建物だ。
この世界にも本があることを知り、それなりに文化は衰えていない事に俺は安堵した。
俺は、かなりの本好きで家には親父に買ってもらった本含め、1000冊以上は余裕である。薄い本は無いが……。
そしてこの世界には人間以外の種族も多々と存在していた。
ここに来るまでに多く見かけたのが『獣人』だ、獣耳が生えて素晴らしく可愛かった。
それ以外にも特徴的なのが、『ドワーフ』『巨人』『スライム』(スライム……!?)。この種族達だ。
一見『ドワーフ』と聞いて凄く小さいと思う人もいるが、1m位はあった。
そして『巨人』は大きい人で4m普通のサイズだと3mは超えるのだとか。(間違っていないはず……)
その中で一番驚きなのが……『スライム』。なぜかわからないが半透明で人間の形を装っていた。時折普通の丸いような形のスライムも居たが。
別にこの種族だけではないが、俺的に特徴的な種族達だと思ったので堂々と出させてもらった。
そんな事を考えているうちに『ギルド』と書かれた看板の前までやってきていた。
だが、不自然な事に明かりは灯っていなく、1m位の窓からは暗闇しか見えない。
「あ、あれ……?」
そして入り口の扉に木製の板で何やら文字が書いてあった。
――今日の営業は終了しました。AM4:00〜PM24:00
「え……? 終了……?」
俺は一気に身体中の力が抜け落ちた。
そこに書いてあるのは営業の終了を告げる言葉であった。
5分ほど脱力、呆けながらもどうしたものか、と頭を悩ませた。
お金も何も無い。もはや絶望的な感情に至った時、ふと脳裏によぎった。
『物々交渉』
俺は物々交渉というよりはこちらからドロップアイテムを渡し、お金の代わりに代金として払う。
簡単に説明するならば
ドロップアイテムの価値→宿泊代
の様な形式である。
巧くいくか分からないが一応やってみる他ない。
「よし」
と一声あげると、早速俺は2件裏の宿屋へと迷わず足を進めた。
少しずつ近づいていき宿屋の前まで来ると、明かりはまだ点いていたためひと安心した。
そして
――ガチャリン......
ドアの上に付いていたベルが綺麗な音色をたてて鳴った。
「こんばんは。御一人様ですか?」
「あ、は、はい。」
受け付けと思われる場所に居たのは、耳が尖り、眼鏡をかけているその下の顔は皺がよく目立っている『エルフ』族の老人であった。
「何泊なされる予定ですか?」
「そ、それがですね……」
顔見知りもあってか最初は話しづらい雰囲気だったがドロップアイテムの事を伝えた。
最初は少し悩む素振りを見せたが返事は一言だった。
「ドロップアイテムの種類……次第ですかね。」
「ならちょっと待ってください」
俺はそう言いこの三ヶ月、食料確保の為に狩り続けていたドラゴンの一番ドロップ数が少なかった『火竜
ドラゴン
の黒爪』を取り出し見せた。
「…………! こ、これは『火竜の黒爪』ですか。えぇ、分かりました。これ一つで2ヶ月分の宿泊代は賄
まかな
えますので、よろしいですか?」
「に、二ヶ月も……。よろしくお願いします。」
事実この『火竜の黒爪』は500本近く持っている。
そして、無事に泊まれる事になった俺は安堵の溜息をはいた。
「それでは孫娘に御案内をさせますので。」
「あ、はい」
すると受け付けの後ろに控えている扉が開いた。
そこから出てきたのは一人の娘のエルフだった。
だが、それは娘だけでは物足りず付け足すならば……
―― 一輪の可憐な華
の様である。
透き通った綺麗なスカイグリーンの瞳。
ちゃんと整理されてあるであろう、腰まで伸びた薄黄緑色の綺麗な髪は一歩、歩くたびに星が舞いそうだった。
顔は持っての他。キリッとした輪郭に小さな唇には薄紅色の輝きを放っていた。
もし、イケメンで女には興味ない奴がいたり、してでも100パーセント綺麗だと感じるはず。
それほどの容姿をしていた。
そんな姿に少し見惚れていると
「……キャッ」
「おっと、」
その世界一美しいと思われるエルフは足を何故か床に引っ掛け、俺の胸に抱き着いてきた。
柔らかな双丘が俺の胸板に、ブニュ......と沈んだ。
「あ、あ、ぁ。す、すみませんっ!!」
<(_ _"")>ペコ←の様に謝ってきた。
俺は少し動揺したものの怪我はないので「き、気にせずに」と苦笑で返事をした。
「今から案内するので付いて来てくれればいいですっ」
「あ、あぁ。わかった」
俺はそう言われると突然手を握ってきたエルフに驚いてしまい手を振り払ってしまった。
その行為が酷いものだと気付いた俺はすぐさま謝り許しをもらった。
するとウルフは俺の顔をまじまじと数秒見つめてから
「あ、あの! 私の名前はマリィ=サリヴァン・クラレンスです!!」
「あ、えっと、俺は御浜
みはま
アント……です」
なんかやけに長いけど、この世界ならではなのかな。まぁ気にしても意味ないから深く考えないでおこう。
「それじゃあよろしくね。マリィ」
「〜〜〜〜!! は、はい!!」
よく分からないが、可愛いからいいか。
それから、俺はこの宿屋の部屋などの案内を受けた。
ここの宿屋はそれほど広くはなく
部屋が8室―リビング―お風呂場―庭―トイレ
のような構図となっている。普通の一軒家よりは広めと言えるだろう。
そして俺は疲れきった身体を癒やすためにお風呂へ行くことにした。
「案内ありがとな」
「いえ、当然のことをしたまでですっ!」
「それじゃあ俺は風呂に入るからもうここまでで構わないよ」
「お風呂ですか……。分かりましたっ」
そういうと先程の受け付け後ろの扉に戻っていった。
それを確認すると、宿泊する予定の部屋――A-1と書かれた部屋に案内された際手渡された鍵を、鍵穴に差し込み、カチャッと音をたてた扉を開けて、中に入る。
中は意外と広く日本で言うならば、8畳半くらいはあるだろうか。一人用の部屋と聞いていたので意外と驚きだ。
そして肝心な家具は、と言うと。
タンス―ベッド―服掛け
この3つだけである。
まぁ肝心なのは休めるかどうかだけだからベッドさえあれば構わないだろう。
俺は風呂に行くために『物質保存鞄』をベッドの上に置き、さっさと風呂場へと向かった。
風呂場への行き方はすぐなので忘れることはない。
俺が今いる部屋が一番手前なので扉を開け、左側に曲がると異世界語で『風呂』と書かれてあるのがすぐに見つけれる。
俺はそれを見つけ、中に入るとふと気付いた。
――この風呂は1つしかないのだと