俺は町へ戻り、宿屋へと帰ってきた。そしてエリーナから衝撃的な一言を言われた。
「わ、私もアントと一緒の宿屋に止まりたい……!」
「ひっ!?」
唐突過ぎて何を言われたかも分からなかった。
それに変な声も出てしまったせいで余計に混乱してしまった。
だがもっと混乱させるような発言をしする者が一人いた。
「これで店がもっと繁盛するのう」
「え、爺さん何言ってんだよ!? じいさんはいいかもしんねぇけど俺はどうなんだ!?」
「ここは皆の宿屋じゃ。それに別になにか減る訳でもないだろ?」
するとじいさんはエリーナに向かってウィンクを送った。
それでなぜかOKが出たと勘違いをしたエリーナはじいさんを見つめ、「この御恩は決して忘れませぬ!!」と斜め45度の姿勢でキッチリとしたお辞儀を披露してみせた。
マリィは嬉しそうに「よろしくね、エリーナ♪」と言い、ニコッと笑って出迎えた。
別に嫌って言う訳でもないが何かとマズイ。
俺は最後まで納得していなかったせいか、最大の敵が俺の前に現る。
「ア、アント…………、私が嫌いか……?」
せこいですよエリーナさん!! そんな顔で見られたら俺は……!!
上目遣い+涙目で、うるうると見つめて言ってくるエリーナに俺はどうすることも出来なくなった。
ここで泣かせたら俺は男として黒歴史以上の、アンデッド歴史をも作り上げてしまうだろう。
はぁ……、と溜め息を吐きながら「よ、よろしくなエリーナ……」と言い、本当に長かった一日は終わろ
うとしていた。※まだ終わっていません。
あれから2時間後のこと。俺は晩飯を食べてマリィとエリーナ3人で少し雑談してから現在は風呂場にいる。
まぁ前回は色々と遭ったが今回は大丈夫だろうと信じて入っている。だが、それは表面上だけのことであった。
後ろから物音がしたので、チラと見ると……
「ウワァァァァァァァ――!!」
風呂場に俺の全力の悲鳴が轟いた。
その悲鳴を例えるなら『お母さんにえっちな本が見つかった時』の心の悲鳴を具現化したものであろう。
「こ、こら! 静かにしろ!」
「アントまた驚いてる〜」
「またってどういうことだマリィ!?」
もう何で俺が風呂に入ってる最中に入ってくんだよぉぉぉ!! 俺のケチャップ―血―が今のままでは足りなくなって死んじまうだろぉがぁぁ!!
「どうでもいいから取り合えず出てけぇぇぇ!!」
「そんなに怒らなくてもいいだろう。こっちだって相当な覚悟して来ているんだ」
「そんなの俺には関係ねぇよ! こちとら突然来られて覚悟すら出来てねぇよ!?」
「まぁ落ち着いてよアント、前一緒に入った時はちゃんとお喋りしたでしょ〜?」
「だからどういうことだマリィ!?」
「あー、俺はそんなこと知らね! 知らねったら知らないんだ! てか俺から出れば早いか」
そして俺は、スッと立ち上がり後ろに美少女が産まれた時の姿で居ることもすっかり忘れ出ることに夢中になった結果……
「ブフォ――!!」
そのまま俺は意識を失った。
だから目覚めた時はベッドに寝かされていた。そして俺は昨日のことなんて一切覚えていない。そう覚えていないのだ。
本当は思い出そうとしていないだけなのだが……。
思い出したら確実に出血多量で恐らく他界してしまうに違いない。
あぁ、してしまうに違いない。
「さっきから何ヒソヒソ言ってるのアントー? もしかして昨日ので頭を打《い》っちゃったのかなぁ……。ごめんねアント」※誤字ではありません。
「今「いっちゃったのかなぁ……」って言った気がするのだが……。そもそもなんで入ってくんだよ……」
もうこのままいっちゃおうかな……。異世界だし別に構わないよな……
急に変な事を言い出してしまったことに気付き、正気に戻る俺。
本当におかしくなりそうで怖かった。
「はぁ……もう昨日の疲れが取れねぇ……」
「そうだな、うむ……」
こっちもこっちで脱力しているようだ。
決死の覚悟の末にあるものを夢見ていたようだが、気絶で済まされては落ち込むだろう。
マリィはいつものように穏やかでいた。そして俺に一言言う。
「そういえばアントは今日どこかに行く予定とかあるの?」
「う〜ん。出来ればもっとこの町を見て回りたいかな」
マリィにそう言われ特に行きたい場所はないので大々的な部分をあげた。
そしてエリーナは俺の発言見計らったように俺を連れて行きたい場所を言った。
「それなら少し、アントへ来てもらいたい場所がある。」
「まぁ行ける範囲なら行くけど……それってどこなんだ?」
「コロシアムだ」
コロシアム……? それって古代ローマの闘技場だっけな。あれって人間同士が殺しあってた気がするんだが、何でそんなとこに俺を……?
疑問に思いながらも、行動が早いエリーナはスタスタと歩き始めているので、それに俺とマリィはついていく。
マリィも名前は知っているらしいが詳しい事は何も知らないようだ。
まぁ、コロシアムと聞いていいイメージが無いのは確かなんだけどな。
そしてエリーナは店の宿屋の出口前にいるじいさんに声をかけた。
「それでは、じい様。私達は出掛けてくる。マリィはしっかり見ておくから心配しないでくれ」
「えぇ、皆さん気をつけて言ってくるんですよ。マリィもね。」
「はい、わかりましたです!」
「んじゃ、じいさん行ってくる」
「はい。」
そう言い、俺達は扉を開けて外に出た。
今の時間帯は昼前頃だろうか。
人通りが多めのこの通りはいつもより少し少なくなっている。そこを歩きながら今回向かうコロシアムのことをエリーナに聞いた。場所はこの地区の上にある地区にあるらしい。
そこは前聞いたことによるとスラム街がその地区にあり、その付近にコロシアムが点在している。
俺はここの地区以外に『王族地区』へ行ったことがあるのだが、その名の通り王国貴族やら金持ち共がその9割を占めていた。
本当は行きたくないのだが、そこに転移門があるため仕方なく行っている。前行った時は冒険者が来るのを嫌がっている貴族中心に下衆
げす
い視線をたっぷりと浴びせられた。
エリーナに言われ、余り気にしないようにしているのだがそれでも居心地は悪かった。
「あ、そういやこの町の名前って何だ?」
「町? ここは王国だぞ。そんなことも知らないのか」
王国だったのか……。王族がいるってことはそうだよなぁ……
「ここはね、『ロレスタン』って王国だよ〜」
「へぇ……『ロレスタン』王国か」
「あぁ、そうだ」
「この国に来て、もうそろ10日になるけど初めて知ったな」
「何も知らぬとは……」
「アントとはもう10日になるのかぁ〜」
そういう雑談をしながらあと少しで『スラム地区』への地区境へと辿り着くところまできた。
ここ周辺に来ると人に数は徐々に少なくなっていき、建物の数も減っていく。
少し嫌な雰囲気を感じさせるような場所だ。
エリーナが急に真顔になり口を開いた。何か辛いような感じも含んで。
「ここ周辺は余り王国の管理が行き届いていない地区だ。」
「何かあったのか……?」
「あぁ。今から7年前のことだ。」
◆ ◇ ◆
私が8歳の頃だった。
お母さんが額に汗を垂らしながら緊迫した顔になりながらも優しく私の肩に手を置き何があったのかを説明する。
「エ、エリーナよく聞いて……」
「どうしたんのお母さん?」
「お父さんが亡くなったの……」
「え……ど、どうして……?」
「さっきね。モンスター達に城壁を破壊されてしまったの。それで侵入してきたモンスターにお父さんは……」
「…………」
突然お父さんが亡くなったと言われても私にはすぐにはわからなかった。
いつも優しくしてくれたお父さんが突然居なくなってもすぐに実感が沸かず、戻ってくると信じていた。
その後、お母さんはここにもモンスターが来るかもしれないということで移動することになった。
だがそれはもう遅かった。
「さぁ、行くわよエリーナ」
「う、うん」
すると。
「ガウゥゥゥゥゥ!!」
扉を開けるとそこには虎型のモンスターが目の前にいて、私達を威嚇していた。
お母さんはそれを見ても怖がらずに「逃げてッ――!!」とだけ言い残し私の前で無惨に食い殺された。
私も食べられて死んじゃうんだと思ったがそこで冒険者の人達がきた。
「大丈夫か!?」
「…………」
私は一人の冒険者に声をかけられた。私はお母さんが目の前で殺された衝撃が大きすぎて何も言えなくなっていた。
モンスターは他の冒険者によって倒されて私は下の地区『冒険者地区』へと運ばれた。
そして私はギルドに引き取られて数年そこで暮らすことになった。
◆ ◇ ◆
「そしてその数日後にモンスターは全部排除された。だがその代償は大きく、負傷者783名。死亡者569名と信じられない数もの人が数日で死んだ。そこにお父さんもお母さんも含まれている。ここの地区はそれまで『貴族地区』と呼ばれていたが今ではもうあの名前になってしまった。」
「…………」
「そんなことがあったんだね……」
「って何故アントは泣いているのだ!?」
「い、いゃ……(ズゥー)んぁんがぁ……なげでぎでぇ……(ズゥー)」
俺は思いっきり号泣していた。聞いていたら、いつの間にかそうなっていた。
格好悪いとかそんなの関係なく感情を全開にし鼻水を、ズーズーと鳴らしている俺にエリーナは優しく微笑みかけた。
「アントは本当に良いやつだな……。それでだが、あれがコロシアムだ」
「え"……?」
「でっかーい!!」
そこには円形の形をした建物があった。
エリーナの話を聞き始めてからは見えなかったが気付けばかなり進んでいたらしい。
そしてコロシアムの入り口からは色々な重装備を着けている冒険者達が入っていく姿が見当たった。その他にもボロボロになっている冒険者や、包帯グルグルの冒険者なども沢山いた。
そして俺は鼻声で一言言った。
「こごがぁ……ゴロジアムか」
「「アントまず拭きなさい!」」