俺達は今、コロシアムの入り口前に立っていた。
ゴツイ体の冒険者達はそんな俺達を見て、嘲笑うかのような視線をチラチラと見せていて鬱陶しい。
そして1分ほど立ち尽くしてやっと中へ進んでいく。
通路は俺達3人が横に並んでもまだ余裕があるくらいの幅で、たまにネズミの死骸が落ちていて少し不気味さを味わう。
進んでいくにつれて人の歓声や、モンスターの唸り声、剣を交わす鋭い音。それぞれがどんどん大きくなり耳五月蠅い。
それから数分歩くとエリーナは右側にある、下へと続く階段を降りて行き、降り終わった時と同時に武器を携えた兵へと声を掛けた。
その人と数秒会話した後、エリーナがその人の後ろへとついて行ったので俺達もその後に続く。
そして、数人だけだが少し先に見える行列の前へと兵が足を止めた。
「これって何の行列?」
と俺が疑問に思って、質問をする。その行列には活き活きとしている冒険者が並んでいるので多分だが、参加者だろう。
「参加する冒険者達だ」
思った通りだ。それにしてもここに来てるって言うことはS級の冒険者達なのだろうか。
「そういえば私も参加するのですか?」
「マリィには私と一緒にお金を賭ける役に回ってもらう」
「え、金ってギャンブルあんのか」
「モンスターのレベルによってお金を賭けれる限界はあるが」
「私、2Gしか持ってないよ……?」
「ふっ、安心しろ。アントが戦うからには勝率は100%だろうからその数十倍には膨れ上がるだろう」
「え、なんだよ!! 俺道具なのか!?」
「大丈夫だアント。本来の目的は他にある」
「なら、まぁいいけど……」
そこで俺達の順番が来た為、話を一度中断した。
椅子に座ってもたれかかっている中年のおっさんがコンコンと机を2回鳴らす。
「はい、それじゃ、ギルドカードと10Mの拝見、提出を願います」
「あ、はい」
そう言われ『物質保存鞄』からさっさとギルドカードを手渡し、そのついでに10Mも机へ置いた。
するとおっさんがナメた口調で「Fランクだと? 帰れガキ」とか言い出すものだから俺の代わりにエリーナが叱ってくれた。
何とかわかってくれたようで―ほとんで暴力だったが―何も言わずに10Mを受け取り、おい、と言って近くに立っていたムキムキの体を自慢しているかのような服を着た案内役をこちらへ呼んできた。
「それじゃ取り合えずついてこればいい」
「ういっす」
その人が少し怖いのかマリィが、ギュ......と手を掴んできた。
その手は温かく包まれるようで離したくはないと思ってしまった。
それを見ていたエリーナは羨ましそうに気付かれてないと思っているのか、こちらへチラチラと視線を向けては俺が目を合わせる度に顔を染めて前を向く。
俺がエリーナの手を握ろうと伸ばしかけたその時、ムキムキの案内役が声をかけてきた。
「それで、兄ちゃん本当にFランクなのか?」
なんだそのことか……。てっきり「リア充爆ぜろ」とか言うのかと思った……
「えぇ、まぁそうですけど」
「ほう、珍しいな。このコロシアムにAランク以下の冒険者を俺は見たことがない。さっきのエリーナさんの話によれば相当強いのだろうな」
何でエリーナのことを……。もしかしてギルドで聞いたのはマジだったのか。ギルド嬢の言った通り本当に有名なんだな。
奥にまで来ていると思うのだがまだ着かないようだ。
そしてエリーナが蔑んだ様な瞳を数倍も身長差がある案内役に向けて。
「ふ。ナメていたら一瞬でお前なんざ動かぬ屍へと変わり果てるぞ」
「Sランクのエリーナさんにそこまで言わせるとは……兄ちゃん期待しているよ」
ん……? 何の期待持ってんだよ……
「期待されてもなぁ……あはは……」
「アントならどんな敵でも倒せるよ! 頑張って!」
「お、おう」
マリィもか……
マリィは胸辺りに(๑و•̀ω•́)وっと手を寄せてにこやかに応援してくれた。可愛いすぎる。
本当は王国を食べ歩きやら、見て回りたかったのだが、このコロシアムには何かありそうで少し楽しみになってきた。
そして案内役が足を止める。
「それじゃ、兄ちゃん武器を選んできな」
そう言われ、話していて気付かなかったが広い空間が目の前にあった。
そこには剣を中心とした武器がそこかしこに置かれていて、それを俺達以外の冒険者達も真剣な眼差しで一つ一つ丁寧に見ていた。
そんな中俺は疑問に思った。
俺基本武器は使わねぇ……と。鉄剣はたまに使うくらいだがそれ以外は色々と。
「俺それ使えないから」
「え」
唖然として数秒呆けた顔で俺を見てきた。
それを聞いた他の冒険者達も「何言ってんだコイツ」の様な目で俺を見る。
「に、兄ちゃん? 本当に強いんだな? 死にに来たわけではないんだな?」
「んな馬鹿な奴がどこにいんだよ」
まぁ武器を使わないのには理由があるから心配しなくてもいい。
「取り合えず見てくれ」
「何をするのだアント?」
エリーナも見たことないからいい機会だろうと思い、近くにあった丈夫な剣を手に取った。
俺は本当は勿体無いからやりたくないのだが、「はぁ……」と溜息をつくと。
「はッッ!!」
俺は皆から少し離れた所で、かつ剣が見えるように一振りした。
普通ならモンスターの骨をも切り砕く剣が。
――ガキンッ……
と根から折れて、地面にその本体が落ちた。
これだからしたくねぇんだよな。と後悔するももう遅い。
それを見ていた3人も、その他の冒険者達も驚愕で口を、ポカンと開けていた。
「これで分かっただろ? だから俺は武器を使わねぇ」
「「「そういうことか……あはは……」」」
3人が同時に同じことを言い、笑うことしか出来ない3人だった。
――――そしてこの後エリーナでも倒せないモンスターの意味を知る。