なのでチラシ裏でこっそり投稿します、暇潰しになってくだされば幸いです。
「――ヤッコー、ヤコー!!」
「………んん………」
煩いなあ……。
半分寝ている思考の中、けたたましい鳴き声が響いてくる。
頭に直接響くその鳴き声は、ただただ不快であり、僕はそれを遮るために布団を頭から被った。
まだ煩いが、これでだいぶマシになったな。
さて、もう一度眠り直すことに……。
「ヤッコオオオオオオッ!!!」
「ぐぉ………っ!!?」
鳩尾に鈍痛、堪らず肺から空気を思いっきり吐き出しながら上体を起こす。
激しく咳き込みながら何事かと涙で滲む視界を忙しなく動かすと、目の前にパタパタと飛ぶ小さな生き物が居た。
俺を見て何処かしてやったりといったような笑みを浮かべているその生き物を見て、僕は涙目のままおもいっきり睨みつけた。
しかしそんなものなど何の意味も無く、そいつは「ヤッコッコー」と泣きながら開いている窓から飛び去っていってしまった。
「いててて……」
鳩尾を右手で擦る、ズキズキと痛みを発しておりとてもじゃないがこのまま二度寝をする事はできなそうだ。
仕方ない、起きようと溜め息をつきつつベッドから降りると、下から階段を登ってくる足音が聞こえてきた。
足音は真っ直ぐ僕の部屋の前で止まり、扉が開かれる。
「――タクト、起きた?」
「……お母さん、ヤヤコマにどんな起こし方を教えたのさ」
入ってきたのは先程の小さな生き物、ヤヤコマの主人である僕の母さん、名前はサキ。
恨めしそうな視線を向ける僕に、母さんは呆れたような溜め息を返してきた。
……正直さっきのは本当に痛かった、というかまだ痛い。
だというのに母さんからは反省の色は微塵も感じられなかった、これはちょっと僕としても文句の一つや二つ……。
「十一時過ぎまで寝ている子に、優しい起こし方をする必要があるとでも?」
「…………」
……まあ、うん。
確かに痛いけど、今回は大目に見ることにしよう、僕だってもう十六になるんだし。
あー……でも眠いなあ、まだ思考が完全に覚醒していないけど、仕方ないので着替え始める。
外は快晴、今日もいい天気だ。
――カロス地方、アサメタウン。
昨日から僕達家族が暮らす事になった街の名前だ。
ここから遠く離れたホウエン地方からここに引っ越してきた、理由はサイホーンレーサーだった母さんが次代のサイホーンレーサーを育てるため。
あ、それと修行の旅ばっかりで殆ど家に帰ってこない父さんがこのカロス地方に居るらしいという情報を掴んだためだ。
僕の父さんは凄いポケモントレーナーらしい、とは母さんの弁。
実際僕はもう何年も会っていないからよくわからない、けど父さん大好きな母さんはどうしても父さんに会いたいようで。
サイホーンレーサーの件もあるとはいえ、父さんに会いたいが為にわざわざカロス地方に引越しする辺り相当である。
「きゃっ!?」
「うわっ!?」
散歩でもしてくれば、という母さんの言葉に従い、家を出る。
母さんのサイホーンに挨拶をしてから、いざアサメタウン観光…と言いたかったのだが、突如として衝撃が襲い掛かった。
突然の事だったがどうにか倒れることは無く、けれど僕とぶつかってしまった人が尻餅をついてしまっていた。
しまった、ボーっと歩いてたから……手を差し出そうとしたが、その時には既にその人は立ち上がって服をパンパンと払っていた。
「ご、ごめんなさい。ボーっとしてて……」
「ううん。こっちも走ってたから謝ることなんてないわ、ごめんなさい」
そう言ったのは、というか僕とぶつかってしまったのは、同じ歳くらいの女の子だった。
栗色の長い髪を後ろで一つに束ねている、大人っぽい雰囲気を醸し出している綺麗な女の子。
おもわず見惚れてしまう、だってそれだけ綺麗な女の子だったから……。
「……私の顔に、何か付いてる?」
「えっ、あ、いや、なんでもない!」
怪訝な表情を向けられ、慌てて誤魔化した。
初対面の相手をジロジロ見るとか、考えたらかなり失礼なことしてたな……。
暫し訝しげな視線を向けられていたが、女の子は「まいっか」と小さく呟き視線を逸らしてくれた。
「そういえばあなた、この家から出てきたけど……もしかして越してきたお隣さん?」
「えっ、そうだけどお隣さんって……」
「私、隣に住んでる“セレナ”っていうの。あなたは?」
「あ、タクトです……」
「ふーん……私とそんなに変わらない年齢みたいね、私は十七だけどタクトは?」
「じゅ、十六です」
年上だった、というか既に呼び捨て……。
いや別にいいんだけど、女の子とこんな風に話した事がないから緊張してきた。
「一つ下かあ、でも変な子が越してきたわけじゃなくて安心したわ」
「ははは……」
よかった、さっきのやりとりで変扱いされてなくてよかった!!
でもまさかお隣さんだったとは思わなかった、こんなにも綺麗な女の子がお隣さん……。
……いかん、おかしな妄想をする所だった。
「タクトは、自分のポケモンを持っているの?」
「いえ、僕はまだ……」
「じゃあ私と一緒だね。というか私が一つ年上だからって敬語じゃなくても大丈夫よ?」
「あ、はい……じゃなくて、うん」
「ふふっ、よろしい」
小さく笑うセレナ、笑った顔は可愛い…って、僕は何を考えているんだか。
「セレナさん…セレナは、トレーナーになるの?」
「うん。プラターヌ博士っていう偉い博士から初心者用のポケモンを譲ってもらえるの、私の友達と一緒にね。
だけどパパとママからポケモンを借りてバトルの訓練はこなしているけどね、今も野生のポケモンとバトルしようとしてた所だし」
「あ、じゃあ邪魔しちゃったみたいだね」
「気にしなくていいよ。……それよりタクト、暇なら私と一緒に来ない?」
「えっ……?」
こ、これはまさか…女の子からのデートの誘い!?
彼女いない暦=年齢だった僕にも、ついに春がやってきたのか!?
「ポケモンバトルを見たら、タクトもトレーナーに興味が湧くかもしれないし」
「…………」
ああ、なんだ、そういう事か。
一瞬でも期待した自分が恥ずかしい、というか身投げしたい。
セレナにもごめんと心の中で謝罪した。
でも、ポケモンバトルかあ……正直、僕はトレーナーになりたいとは思っていない。
ポケモン自体に興味がないわけではないのだ、小さい頃から母さんと一緒にポケモンに触れ合える機会があったから。
でも、トレーナーになりたいという明確な理由がないから、今まで自分のポケモンを所有するという事もなかった。
「どうかな? もちろんタクトがこれから用事があるならしょうがないけど……」
「う、ううん。大丈夫大丈夫、すっごい暇だから!」
だがしかし、僕はあっさりとセレナの誘いをOKした。
べ、別にここで断ってセレナと気まずくなるのが嫌とか、印象を悪くしたくないからとか、そういうわけではない。
断じてそういうわけではないのである、ええ決して。
アサメタウンを抜け、一番道路。
右手にモンスターボールを持ったセレナの後ろをついていく。
セレナの顔は真剣みを帯びていて、どことなく緊張しているようにも見えた。
バトルの特訓はしているって言っていたけど、初心者ポケモンを譲ってもらえるくらいだしまだ慣れてないんだろう。
どんどん顔が険しくなっていくセレナ、なんだか声を掛けづらくて無言のまま歩く事暫し。
「っ」
「ん……?」
右斜め前数メートル先の茂みが、ガサガサと揺れる。
何か居る、僕がそう思った瞬間、茂みから勢いよく何かが飛び出してきた。
四速歩行のポケモン、少しチクチクしてそうな毛並みを持つあのポケモンは……。
「ジグザグマね……ヤヤコマ、出なさい!!」
モンスターボールを投げるセレナ、するとボールが開き光と共に中に入っていたヤヤコマが姿を現した。
「ヤッコーッ!!」
「ジマ……?」
ジグザグマの視線が僕達に向けられる、初めはキョトンとしていたがセレナとヤヤコマを見て身構え出した。
「タクト、下がってて! ――ヤヤコマ、たいあたりよ!!」
「ヤコーッ!!」
先制攻撃はセレナとヤヤコマ、彼女の指示を受けジグザグマに向かっていくヤヤコマ。
しかしヤヤコマの攻撃が当たる瞬間、ジグザグマは横にジャンプして攻撃を回避してしまう。
攻撃を外され、再び空へと上昇するヤヤコマ、体勢を立て直そうとするがその前にジグザグマの反撃が繰り出された。
「ガウッ!!!」
「ヤコッ!!?」
跳躍し、飛んでいるヤヤコマの右の翼にかみつくジグザグマ。
これにはたまらずヤヤコマも悲鳴を上げ、しかも片方の翼をかみつかれているため、そのまま地面に落ちてしまった。
もがくヤヤコマ、だがジグザグマは離れない。
「セレナ!!」
「わかってる! 落ち着きなさいヤヤコマ、つつく攻撃!!」
「ヤ、コ……ヤココココッ!!」
「ジグ、ジマ………!」
首を動かし、ジグザグマの身体にくちばしを何度も叩きつけるヤヤコマ。
それにより翼から口を放すジグザグマ、そしてセレナとヤヤコマは勝負を決めた。
「たいあたり!!」
「ヤッコーッ!!」
勢いをつけてのたいあたり攻撃、まともに受けジグザグマの身体がゴロゴロと転がっていく。
数メートル転がり立ち上がるジグザグマだったが、ダメージが大きいのか戦意を喪失したのか、そのまま茂みの中へと逃げていってしまった。
しかしセレナは追いかけようとはしない、ほっと安堵の息を吐いてから、ヤヤコマに労いの言葉を掛けボールへと戻す。
「追いかけなくていいの?」
「別にゲットするつもりはないし、あれ以上攻撃を与えたら大きな怪我を負っちゃう危険があるでしょ?」
「成る程……」
「それより、どうだった? 私とヤヤコマのバトルは」
「えっと……凄かった」
「なによそれ、もっとちゃんとした感想が聞きたいんだけど?」
呆れを含んだ視線を向けられてしまう。
いや、だって僕トレーナーじゃないし、そんな事言われても困る。
それに、さっきの凄かったっていう感想だって、決して他に言葉が見つからなかったわけじゃないのだ。
本当に凄かった、テレビでポケモンバトルを見た事があったけど、こんな間近で見たのは初めてだったから。
ハラハラしたけど、それ以上に凄くて…ドキドキした。
「……まあいっか、トレーナーじゃないタクトにそれを求めるのは酷だものね」
どうやら納得してくれたらしい、ほっと一息。
「でも、今回の事でトレーナーに興味を持ってくれたら、嬉しいかも」
「えっ、どうして?」
「だってライバルができるでしょう? 楽しみが増えるわ」
「あはは……」
好戦的なセレナの言葉に、苦笑しか浮かべられない。
でも……ポケモントレーナーか。
なりたいと思ったわけではないけど、少し……興味が湧いた。
こうして、アサメタウンでの生活が始まり出した。
でも、僕はその後大変な冒険をする事になってしまう。
その中で僕は、沢山の出会いを繰り返しながら前へと進んでいき。
やがて、ある事実を知る事になるのだが、それはまた別の物語である………。
To.Be.Continued...?