と言うわけでスーパーロボットを造ろうと思うのだが、本件をSR計画と呼称する。
先ずSR計画を進めるに当って、いきなりオリジナルの機体を作る、と言うのは拙い。如何不味いかと言うと、やりすぎて暴走してしまう可能性が途轍もなく高い。
例えば今ぱっと思いついただけで、俺の肉体細胞を培養してエヴァモドキでも作ろうか、なんていう考えも在る。やれば多分出来てしまうとは思うのだが、さすがに拙い。
とりあえず試しに、何か最初から魔術を含んで動くスパロボを造ってみようと思う。本当なら造りたいのは鬼械神なのだけれども、何度も言うが鬼械神は拙いので、もうチョットマイルドなところを狙おうと思う。
例えばサイバスターとか。アレは確か、機体と精霊を契約させて、オカルティックなパワーを引き出すとかなんとか、そんな感じだったような? でも風って聞くと「デッド・ロン・フゥゥゥン!!!」を思い出すんだよなぁ?
――何でか嫌な予感が止まらない。
で、とりあえず製作目標はサイバスターという事なのだが、ソレを作るに当って試作モデルを一つ作ろうと思う。適度に魔術を含んでて、でも量産型とかな奴がいいな。ガディフォールとか如何だろうか。
今用意している設計図は、これから作ろうと思っているスパロボの基本設計。機械的に魔術を再現するもの、魔術と科学のハイブリッド、魔術が根本に在るものの三系統。
ガディフォールは魔術が根っこに在るタイプで、まぁ造ったところで俺以外に動かせる人間は存在しないだろう。その辺りのサポートは用意できているし、とりあえず機体を作ってしまおう。
内装の案は大体出来ているので、やるべき事は資材の用意と加工。でも、我が旗艦ウルにはとても便利な物が存在する。
先ず一つ目、多連結縮退炉。多数のブラックホールエンジンを並列接続する事により、安定的且つ莫大なエネルギーを取り出すことが出来る。
次に二つ目、マテリアルコンバーター。電力さえあれば、自由自在に様々な物質を生成することが出来るというモノ。莫大なエネルギーが必要である事が欠点だが、まぁウルにはそもそも過剰なほどのエネルギー生成能力が在る。
そして三つ目、超汎用型ナノマシン。これは医療にも使えれば艦の自動修復にも使えたりする超汎用マルチシステム。
先ず最初に、マテリアルコンバータで必要な素材を生成。ついでにB&Tに頼んで幾つかの電気部品を取り寄せておく。
で、集まったパーツと素材を、ナノマシンをたっぷり自己増殖させたプールに放り込む。これで其々のプールの中では、投入された素材をナノマシンが分解したり整形したりして、いつの間にかロボのパーツになる、という寸法だ。
問題点としては、パーツや各部位ごとの生成は可能なのだが、さすがに一つの完成固体を作るには重機での組み立てが必要と言う点か。
※因みにプールはTSFにショベルを持たせて掘っていただきました。
何故SR計画の候補がデモベと魔装機神かというと、まぁ、恭也をスパロボに乗せてみたかったと言うのが最大の一因。
え、声優ネタですよ?
で、そんなこんなでサイバスターを建設している最中、そんな時でもギーオスの襲撃がなくなるわけではない。
なんでも突如中国の某所、大気汚染の激しい都市に現れたとかで、現在ギーオスは人を餌に急速に成長を続けているのだとか。
何をトチ狂ったのか中国政府はギーオスの捕獲を決定。自国民が食われたというのに捕獲を決めるとは。これはもしかして、修正力という奴なんだろうか。
……単純に環境汚染が酷すぎたからだったりして。うーん。
「行くのか」
月村邸、その中庭で一人佇んでいると、背後からそう声を掛けられた。振り向けば其処に立つのは、前よりも何処か落ち着いた雰囲気を漂わせる高町恭也。なんでもギーオスを見て、諦める心算はないが壁の存在も理解した、とか。
恭也の言葉に頷き、右手に魔法陣を展開。前回は使えなかった俺の転移魔法。コレを使えば、ギーオスのいるポイントまではすぐに到着する。
のだが、その動きを不意に恭也に止められてしまう。
「……何だ」
「まぁ、待て。今回のギーオスは、既に50メートル級にまで成長しているらしい。お前単独で行くのは流石に無謀だろう」
「ウルを」
「アレをもう表に出すのか? 別の意味で世界が荒れるぞ?」
「………………」
ウルは、古代文明の遺産とはいえ、行ってしまえば超科学によって生み出されたオーバーテクノロジーの結晶。それも更なるテクノロジーのデータを内包した、しかも小型の戦艦に近い能力まで持っている。
あんな艦が存在する事が知れてしまえば、先ず間違いなくどこかの国が捕獲に動く。もし捕獲されれば最悪だ。此方のコントロールを離れ、無尽蔵にオーバーテクノロジーが流出する。そうなれば世界は二度目の滅亡を迎えるだろう。
流石に俺一人が地球人類の文明を全てコントロールする、などとうぬぼれる心算はないが、少なくとも俺由来の技術で自滅させる心算はない。
「…………」
「メラ、お前は確か、TSFは動かせるんだよな?」
頷く。TSF、戦術機。適性的な意味で言えば、機動兵器に関する適性は俺はとても高い。何せ生身で曲芸機動を連発しても酔わないのだ。人型こそしているが、肉体のモデルはアレ。多分、超電磁スピンを生身でやっても酔わない。
と、そんな事を考えていると、恭也がPCタブレットを取り出し、其処に何かの情報を表示して見せた。
記されているのは世界地図。いや、見ればソレは中国大陸にピックアップされている。
「いいか、此処がギーオスが餌場として陣取っている箇所。これが、現在中国工場で建造されているTSFのFCS試験場だ」
言われてみれば、その指し示された試験所はギーオスの陣取っていると言うポイントから程近い場所に在る。
「この実験施設は、ギーオスの影響で現地職員は総員退避した。が、連絡の不備で火装済みの不知火が一機残された。因みにこの機体は何者かによって強奪される予定だ」
「……いいのか?」
思わず聞いてしまう。恭也が行っている事はつまり、それを使え、という事、なのだろう。
「本来なら、俺が直接行って戦いたいくらい何だが、残念ながら俺にはあんな怪物と戦う術を今は持たない」
――だから、頼む、と。
……SR計画、間に合わなかったか。
「任せろ」
言って、地図をチェック。座標を確認した後、その地点へ向かって転移プログラム起動。世界が瞬時に書き換わり、次に俺が目にしたのは丘の上から何処かの施設を見下ろすような風景。
その一角に、自走整備支援担架に積み込まれた不知火の姿を確認して、即座にその胸部ハッチへと転移。生憎強化装備は無いが、あったところで生体データを取られるわけにも行かない。バリアジャケットを少し弄り、邪魔にならないような形にして代用する。
管制ユニットに乗り込み、即座にシステム起動。どうやら暖機は既に済ませておいてあるらしく、即座にシステムが立ち上がる。
担架をTSF側から遠隔操作で立ち上げ、一歩脚を地面へ。
直立歩行で少し移動し、其処に用意されていたカタパルトシステムへ接続。チェックを済ませ、システムに命じてカタパルトを作動。
同時に噴出する跳躍ユニット。突如加速する機体。体をシートに押し付ける加速を感じながら、機体を一気に空中へと飛ばすのだった。
三十分ほど機体を飛ばし続けると、途端に周辺の空気が変わり始めた。山を一つ越えた辺りから急速に大気が曇り始め、同時に立ち並ぶビルと、響く砲撃の音。――そして、人の気配。
違和感に即座に不知火のメインカメラを操作。そして即座にその違和感の理由を突き止めた。
「何で、避難が行なわれていない!!」
思わず激昂しながら、慌てて無線を調節。どうやらこの国の軍隊は国民の避難よりもギーオスの撃退を優先したらしく、巣を作るギーオスに対して戦車・航空部隊による一斉攻撃を敢行したらしい。
その結果、当然の帰結と言うか、既に60メートルの大台に乗っていたギーオスの盛大な反撃(超音波メスの乱射)により部隊は壊滅。地上どころか航空部隊までも壊滅し、今は次の戦力を国土から寄せ集めている最中、といったところだろうか。
で、住民の避難に人手が回らないどころか、更に駆逐された戦車や航空機で被害は拡大。更に何故か頻発する暴徒やらの所為で被害は悪化の一途。
若干こいつら滅んだほうがいいんじゃないだろうか、何て思いつつ、とりあえず武装を解禁。なんと装備はいきなりレールガン。まぁ既存兵器での効果が薄いからこそ、俺由来の超兵器を開発したのだが。
ただこのレールガンは原典のソレとは違い、コストを抑える為に単発式になっている。軍用ではなく民間のライフル、といった感じだろうか。まぁ、超電導物質なんて使うとコストも跳ね上がるし、第一精度が取れない。
故に一撃必殺。ギーオスの拠点としているらしいビルを光学で確認。避難が済んでいないため道路はそこら中混雑の最中。何処か狙撃体制を保持できるスペースはないかと周囲を索敵しつつ、ギーオスの待機地点を中心にぐるりと円形軌道で移動。索敵を続行する。
そうして見つけた一角。他に比べ建造物が新しい区画。早々に避難した富裕層の区画なんだろうと辺りをつけて不知火を着地。膝を付け、ギーオスに向けて狙撃体勢をとる。主機で慣性を相殺する必要が無いというのは、単発式の利点か。
視界の中、網膜投影されるターゲットマーカー。それらがギーオスに重なる一瞬を狙う。
深呼吸。する意味は今の俺には余り関係ないのだが、これも人であった名残かな、なんて如何でもいい事を考えて。
キィンッ!!
音にすればそんなものだろうか。一瞬の静寂、そのあと放たれた衝撃波。
目に映る景色には、ギーオスの陣取るビルが弾けとんだ景色が映し出されていて。
「やったか――っ!!」
思わず言ってしまった自らの言葉に、思わず頭を抱えてしまう。それはやってないフラグだろうが俺ぇ!!
これもまた案の定と言うべきなのだろうか。巻き起こる粉塵の向こうから響くギーオスの声。
再度の砲撃に備え次弾装填、粉塵に銃口を向けたところで、咄嗟に機体を立ち上げ真横へ跳躍させる。途端寸前まで機体が存在していた場所を通り過ぎる黄色い光。ギーオスの超音波メスだ。
ギーオスの超音波メスは空気ではなく魔力を触媒としているため、そういうモノに敏感な俺には察知しやすい。流石に至近距離で打ち込まれれば回避は難しいが。
光線の角度から大体の位置を割り出し、粉塵に向かって第二射。放たれた閃光は粉塵を蹴散らし、白く濁る空を裂いて、その場に無窮の空を描き出す。
――見えた。
其処に陣取るギーオス。どうやら照準にずれがあったのか、こちらのレールガンの一撃はその中心を避け、ギーオスの脚を叩き落していたらしい。
道理で、ギーオスを狙ったのにビルが爆ぜた筈だ。
と、視線の先。ギーオスが此方を驚異と判断したのか、此方に向けて更に超音波メスを放つ。
それを再び跳躍ユニットの自由稼動で回避し、ビルの陰に回りこみ、そのまま道路を通って姿を晦ます。
ギーオスの超音波メスは、既にビルなんて容易く輪切りにする程の威力を備えている。が、その照準はあくまでギーオス本体による光学視認。一応超音波探査なんかも使えるらしいが、壁越しの探査は不可能。
故に遮蔽物のあるこの場では比較的此方に有利!
……なんて考えて、再び新しい狙撃ポイントを探そうかと考えていたのだが。視線の先で上空へ飛び立つギーオス。
拙い。既に成体に近いギーオスは、文字通りマッハでの飛行も可能。生身での戦闘ならまだしも、TSFでは流石に追いつけない。
此方に向けて凄まじい勢いで迫るギーオス。ほぼ直線的な機動であるため回避は出来るのだが、その凄まじいスピードの影響で発生するソニックブームまで回避することは出来ない。
回避先で機体に膝を付かせて衝撃波を耐えるが、軽乗用車が容易く宙を舞うほどの衝撃波だ。飛ばされてきた乗用車の爆発なんかが地味に不知火にダメージを与えていく。
旋回し即座にギーオスの背中へレールガンを発射。然し在る程度の距離がある所為かレールガンは微妙にその軌道をずらし、ギーオスの胴体に命中する事はない。
これは、チョット拙いかもしれない。
いや、怯むな。この程度の苦境で怯んでいては、この先に来るであろう災厄を乗り切ることなど到底不可能。
そう、来る可能性は高いのだ。群体と邪神が。
……あー、なんだろう、この絶望感。
首を振って迷いを振り切る。諦めるなと念じて、なぜそう絶望的な状況しか頭に浮かんでこないのか。
大怪獣対ロボット軍団と考えろ。どうだ、燃えてきただろう?
そう、今戦えるTSFはこの不知火一機だが、後にこの機体が量産されれば、この状況は一気に改善される筈。というか改善されてほしい。
ならせめて、その明日が来ることを願って、その明日を呼び込むために、今この機体で、俺は出来るだけのことはやってみようと思う。
「く、そっ!!」
再び強襲するギーオスを回避、けれども今度はそのままでは終われない。咄嗟にギーオスの残された脚を掴み取る。途端掛かる横からの重圧を感じながら機体をなんとか制御する。
このギーオスの驚異的なこと。なんと数十トンもの重量を持つTSF、それに足をつかまれているというのに、欠片も速度を落とす気配も無く飛行を続けている。逆に脚を掴んだ不知火は、その余りの速度に既に機体の全身が悲鳴を上げていた。
「……!!」
流石に自分から飛行しているわけでも無いのに掛かるこの重圧は少し辛い。振動の中でコンソールを操作し、なんとか機体の体勢を変更。レールガンを腕で保持したまま、なんとかその銃口をギーオスの身体に向けて。
「この距離なら、外しはしない!」
バシュンッ!! ガチャッ、バシュンッ!! ガチャッ、バシュンッ!!
連続して三発の発射。初弾で羽を貫通、バランスを崩したギーオス。ついで二発目で胴体を貫通。三発目で頭を貫通。
片腕を削がれたことで飛行能力を失い、慣性のままに吹き飛ぶギーオス。かくいうこちらも、ギーオスの変則機動による過負荷と、レールガンの反動により既に機体はボロボロ。
凄まじい勢いで郊外の山中へ突っ込んでいくギーオス。その死亡をなんと無しに確認して、ギーオスから離脱。
中国の山中に響くギーオスの墜落した轟音を耳朶に、そのスモッグに隠れて姿を消すのだった。
「流石に、疲れた」
そうして、既に殆どの機能を失っている不知火と共に、日本へと転移したのだった。
■TSF
戦術機のこと。開発はB&T、協賛は某ゲームブランド。
本来はF-15から不知火が開発されたが、この世界ではF-4→不知火で不知火からF-15が開発されるかも。
最初に世界に存在が知られた時点で、世界中のOTAKU達が日本へ巡礼へ訪れた。