オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 すみません。日曜みたいな字数には達しませんでした。


 2月29日加筆修正

 


陣中見舞い

 星空から地上にいるリィリィの背後に降り立った私。

 私の娘ともあって側に護衛として控えていたシモベ達は突然の登場に慌てて跪き、頭を下げる。そんな彼らに労いの言葉を掛けつつ、こちらに背を向けて魔法を行使し続けている彼女を観察する。

 

 第四階層《音恐の館》の主人にして守護者。

 六女、がんばるヤンデレの愛娘、リィリィ。

 黒い婦人服を身に纏い、腰まである黒髪を持つ、母と同じ精霊種の女性。手には禍々しい形の杖が握られている。

 母の禁じ手を含め八割の魔法を伝承された彼女はどうやら魔法に集中している際には周りの事があまり見えなくなるようだ。

 そこら辺は母と似ていて私は嬉しくなった。だけど同時にテンションがハイになると母と同じく爆撃精霊と化すのか心配でもある。

 いや、彼女が得意なのは呪殺だから大丈・・・夫じゃないか。

 

 この子は防衛の為に万魔殿に帰ったと思っていたのだけど、多分キャサリン辺りが呼び寄せたと思う。まぁ、こうしてちゃんとお話しできるせっかくの機会なのでちゃんと声を掛けてあげよう。

 

「リィリィ」

 

 肩を軽く叩き声を掛ける。

 反応がなかったので、少しの間に叩き続けてやっと彼女は魔法を止めて振り向いてくれた。

 

「あ、義母さま・・・来てくれたんだ」

 

「えぇ、リィリィが頑張ってくれてるのが空から見えてね。もしかしてキャサリンに頼まれて万魔殿からまた出てきたの?」

 

「うん。伯父さまの、拠点隠蔽に・・・協力してって。あと義母さまにすぐ気付かなくて・・・ごめんなさい」

 

「気にしないで。それだけ頑張ってくれてたんだから。それに私の方こそ兄様の為にありがとうリィリィ」

 

 彼女の頭を撫でてあげる。

 それを気持ち良さそうに受け入れてくれる彼女。

 少しの間、そのやり取りを交わした後に私は娘がナザリックの壁に集めた土を見渡す。自然な傾斜を作っていてそこに草を生やせば、遠くからは小高い丘として見えるだろう。

 

「流石はがんばるヤンデレ姉様の愛娘。こうまで緻密な魔法操作ができるなんて凄いわね」

 

「そんなこと、ない。・・・義母さまでもできるよ」

 

「私は使える魔法に偏りがあるのよねぇ、パラディンだし。正直言えば、緻密な魔法操作は苦手だし」

 

 私の種族は義兄さんと同じ《死の支配者・オーバーロード》。

 得意なのは即死魔法乱れ撃ちである。

 

「そうだ。頑張ってくれてるんだからご褒美あげないと。なにか欲しいものある?新しいドレスでも作ってあげましょうか?」

 

 この言葉に娘は一瞬固まって気まずそうに視線を游がせる。

 アレ?もしかして私の作ってあげてたドレスってあんまり好きじゃなかったりする?

 あり得る。私のドレスって姉達と違って子供っぽい。女の子は皆、ちょっと背伸びして大人っぽく見せたいモノだ。

 エリザですらスーツを着てるのに。

 流石にLOVE&デスさんみたいに露出面積が多くて、大事な場所以外はスケスケなドレスには勝ってると思うけど。

 というか、よくあの人BAN喰らわなかったわね。

 

「ごめんなさい。私のドレスはあんまり好きじゃないわよね?」

 

 思わぬ事実を知った私は肩をしょぼんと下げる。

 そうかぁ、これからはもっと大人っぽいデザインを勉強しないとだめなのかぁ。アレはアレでかわいいと思うんだけどなぁ。リボンとフリフリ・・・。

 

「ち、違うの。・・・最近義母さま大変だから、・・・無理させないかなって・・・」

 

「ありがとう・・・リィリィ」

 

 拝啓義兄さん。ウチの娘達はとてもいい子達です。

 

「私は義母さまのドレス・・・好き」

 

「嬉しい事言ってくれるわねぇ」

 

 ヤバイ。娘が可愛くて仕方がない。このまま万魔殿に引きこもって愛でてたいくらい。

 けどそういう訳にはいかないので改めて希望を聞いてみることにした。

 

「私は大丈夫。それにご褒美をあげるって言ってるんだから。素直に欲しいモノを言ってくれると嬉しいなぁ」

 

「う・・・それじゃ・・・義母さま、耳、かして?」

 

「うん。言ってみて?」

 

 なにやら頬を染めて恥ずかしそうにしだした娘は私の耳に口を近づけて小さく呟いた。

 

「ーーーーーーーー」

 

「うん、わかった。それじゃその時は鳴宮もエスとカナ、ヴィヴィも皆で一緒にね?」

 

「ありがとう。・・・義母さま」

 

 嬉しそうに微笑むリィリィ。

 護衛のシモベ達が首を傾げているが無視。

 リィリィが恥ずかしがって頼んできたお願いだ。ヤロウに聞かせてたまるか。

 

「親子ともども仲が良くて結構」

 

 そこへ義兄さんが守護者だと思われる女の子を連れて私達の元へとやってきた。

 ダークエルフの少女はそれはそれは可愛らしい子でした。

 

「兄様。そちらの陣中見舞いはすみましたか?」

 

「あぁ、ムササビの娘にも協力してくれている礼をしようと思ってな」

 

 義兄さんがリィリィに視線を向ける。それに合わせて彼女はスカートの裾を摘まんで小さく礼をした。

 

「地獄の万魔殿。第四階層守護者、リィリィ。お初にお目にかかりますモモンガ伯父さま」

 

「母君、がんばるヤンデレ殿は私も良く知っている。その娘であるリィリィの母に引けをとならない魔法、見事だ。わざわざ万魔殿からナザリックの為に出向いてくれた事に対して礼を言おう」

 

「私は、まだまだ母さまには及ばない・・・。けど、伯父さまのような、魔法詠唱者に褒めてもらえるのは、嬉しい」

 

今度は義兄さんに頭を撫でられるリィリィ。それも気持ち良さそうに受け入れる彼女。

 キャサリン達の時もそうだけどリィリィにも受け入れてもらえて良かった。

 ギルド、地獄の七姉妹は女性だけのギルドだ。

 今まで玉座の間まで男の進入を許したこともないし。お客さんを招いたのも女性だけ。正直、娘達が潔癖症みたいに男性プレイヤーである義兄さんを毛嫌いするかと思ったのだ。

 まぁ、良く思い出せばセバスを招いた時のセブンスチャイルドのオムツ交換の授業中、娘達は女子校よろしく、はじめての男のお客さんに若干テンションが上がってた気がする。

 ・・・あの子達、妹をダシにして男を見に来てたな。

 

「それで?なにやら嬉しそうにしていたが母からなにかご褒美でももらったか?」

 

「うん。ご褒美もらった・・・でも、恥ずかしいから・・内緒」

 

「兄様でも教える事はできませんからね?」

 

 俗にいう女の子同士の秘密とやらに義兄さんは機嫌よさそうに笑う。

 側にいる女の子も主の機嫌がよかったら自分も嬉しいようにニコニコと笑っている。

 う~ん。本当にかわいいわねこの子。私のドレスが栄える逸材。

 

「では。私からもかわいい姪にご褒美をやらなければな」

 

「ダメ。・・・私だけ、貰いすぎ」

 

 流石に私からも貰ってるからだろうか。本人は遠慮して首をブンブンと振っている。

 遠慮せずに貰えばいいのに。

 

「私だけ、貰ってたら・・・不公平」

 

「ふむ、エリザとキャサリンにも褒美をあげねばならぬな」

 

「ピューレも、頑張ってる。だから私達長女の、お願いを聞いて欲しい、お願いは全員でひとつ。・・・前から、皆で、決めてたの」

 

 優しい彼女の提案に私は思わず笑顔になる。

 私達七姉妹も喧嘩はするけど仲がよかったのだ。

 それが娘達の性格に出ている。

 けど、全員で1つのお願い?なんだろ?

 

「叶えられる願いなら約束しよう」

 

「万魔殿に遊びに来てほしい・・・。姉妹達に私達の伯父さま、義母さまの御兄さまを紹介したい。みんな義母さまの兄さまに会いたがってた・・・。家族なのに、会った事がなかった・・から」

 

 私は思わず目を見開いた。

 

「女だけの、家だから・・・。伯父さま、居心地わるいし。退屈させるかもしれないけど。・・・頑張って、おもてなし、するから。・・・ダメ?」

 

「・・・近いうちに時間を作って必ず行こう。約束だ」

 

「うん。・・・約束」

 

 どこで覚えたのかリィリィは義兄さんと小指を絡ませて指切りを交わした。

そう、あの子達はみんな義兄さんも家族だと思ってたのね。日頃、話していた義兄さんの話の影響がこういった形で現れるなんて・・・。

 

『・・・沙織』

 

『絶対来てよ。前みたいに女だけのギルドだから行きづらいって言い訳はなしだからね』

 

 今度という今度は拒否しようがなんだろうが引き摺ってでも連れていってやる。なんたって、かわいい娘からのお願いなんだから。

 

『姪と約束したんだ。必ず時間を作る。それとなにかあれば俺を呼べ。お前達にちょっかいを出す奴がいたなら俺がなんとかしてやる』

 

 けど義兄さんは素直にはっきりと約束してくれた。

 その声はどこか嬉しそうに感じた。

 

『親バカになりつつあるわよ伯父様。けどウチの子達はかわいいでしょ?』

 

『そうだな』

 

 初めて“お兄ちゃん”と呼んだ時みたいに骸骨からなにやらやる気がみなぎっているのが分かる。

 そんな義兄に苦笑しつつ私はずっと放置しっぱなしだった女の子に視線をあわせてあげた。

 

「はじめましてだな。妾はムササビ。兄様の妹だ。そなたはナザリックの守護者か?」

 

「は、はじめまして。第六階層守護者、ま、マーレ・ベロ・フィオーレと申します」

 

 ほう、マーレと言うのか。いい名前だね。

 綺麗な髪にチャーミングなオッドアイ、ダークエルフ特有の褐色の肌、手足も細くて・・・んん?

ツッコミを入れていいのか分からないけど彼女の左手の薬指に光る指輪が目に入った。

 既婚者ですか。その年で旦那さん持ちですか。という反応は“まだ”しない。何故ならその左手の薬指に光るのは義兄さんが持っているモノと同じ、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだから。

 転移阻害効果を持つギルド内で何処へでも転移することのできる効果を持つその指輪。普通ならプレイヤーのみが持つモノを何故彼女が?

 

『・・・義兄さん』

 

『なんだ?』

 

『結婚した?』

 

『してねぇよ。なんで?』

 

『だって、この子の左手の薬指に義兄さんが持ってる指輪してるし』

 

『それは褒美で渡しただけだ。守護者クラスならギルド内で自由に行き来できた方がいいからな。後々、他の守護者にも渡すし、後でお前にも渡すつもりだよ』

 

 ですよね。流石に異世界に渡ってすぐ義姉ちゃんができるなんて、とんでもイベント発生しないよね?

 

『で、なんでその指に通してツッコミいれないの?』

 

『いや、あまりに嬉しそうだったからタイミング逃してしまって』

 

 

 何をやっているのかこのお兄さまは。

 そんななことをしてはこの子がかわいそうじゃないか。

 期待だけさせて、実はその気はありませんでしたなんて女の子にとって残酷すぎる。

 

『・・・この後、直ぐにでも誤解は解いておきなさいよ。その方がお互いの為なんたから』

 

『・・・・おい、なにか勘違いしてないか?』

 

『なにが?』

 

『マーレは男だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・は?

 

 

 

 




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