皆様初めまして。
地獄の七姉妹、末妹にしてギルドマスターであるムササビ母様の長女、もみじと申します。
インフェルノナーガである私は母様の手により第ニ階層守護者としての生を受けました。
私にとって母様は至上の御方であり、理想の女性であって愛する人。
守護者としての日々を送る私の元へといらっしゃいます母様は毎日何があったか。今日は何処へいくか、世界にはこういった場所や、モンスターがいるなど様々なお話しをしてくださって。私のお誕生日には可愛らしいドレスをくださいます。
万魔殿が異世界へと転移させられたという異常事態が発生した日、そんな母様は万魔殿の玉座の間へとある人物を招き入れたのです。
それは竜人の男。侵入者以外で男がこの万魔殿に招かれたことなどなかったので姉妹達は多少なりとも色めき立っており、私自身滅多に男性を見ないので興味本意で他の姉妹達と一緒にルーキ達のオムツを交換する授業を受けながらチラチラとお客様を見ていました。
その後は私の妹であるアルーシャを抱いて母様の指示通り第一階層にて同じ長女のクロア達と迎撃体制で待機していたのですが。
突如、クロアの妹であるドライアドの姉妹から《伝言・メッセージ》にて母様から緊急の指示が来ました。
内容は母様の兄様。私達の伯父であるモモンガ伯父様もこの世界に来ていて、今現在何者かによって伯父様が治めるナザリック地下大墳墓が占拠されている。第一から第五守護者、及び守護者統括は完全武装の後にセブンスチャイルドを連れて万魔殿入り口にて待機。母様の指揮の下、ナザリックへ救援に向かいます。
モモンガ伯父様について私は生まれた時より母様からお話をきいていました。
死の支配者にしてナザリックの主である母様と同じアンデット。40人もの上位者を束ねるその御方は千を越える軍勢を撃退した立役者。そんな伯父様に母様達は昔、私達が生まれる前に窮地を救われた事があるそうです。
私は姉妹達に言いました。
母様達が助けられた恩を今度は娘である私達が返そうと。
しかし、クロアとリィリィは伯父様の窮地を信じていない様子。
母様が伯父様が窮地だと言ったのに何故信じてくれないのか。アルーシャも腕の仲でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っています。
けれども私は気を抜かずに母様に続きます。
待っていてください伯父様。今、私達がお助けに参ります!
母様が伯父様にお叱りを受けています。
伯父様はナザリックが占拠されたと勘違いしたことと、この未知の世界で私達を不用意に連れ出した事に対してお怒りのようです。
母様を庇おうと思ってたのですが。伯父様から優しく席を外してくれと言われました。母様からもお願いされたので木陰からおろおろしつつも見守っています。母様だって間違う事があるのです。だから母様、お気になさらないでください。
しかし、流石母様の兄様。まるで見ていたかのように母様がこの世界に来た時に私達に出した指示を的中させています。やはり御兄妹なのだからでしょう。母様の考えが分かるのですね。
しかし、私も伯父様ほどではありませんが母様のお考えがわかるのです。えっへん。
そしてこの後に、私達にとって嬉しい事がありました。
なんと母様が笑ってくださったのです。
以前の深淵に咲く花のように、そのお顔に笑顔が浮かんだのです。私はアルーシャを抱きしめ静かに嬉し涙を流していました。
母様に見られたら心配をかけてしまいますので再び木陰にかくれます。エリザやキャサリンも嬉しそうに涙を浮かべながら共に喜びあってくれました。
さて、母様はナザリック地下大墳墓へと向かうそうです。それに伴いまして、これより誰がお供するかを決めねばなりません。
キャサリンは統括なので確定。まぁ妹ですし?ここは大人しく認めてあげましょう。
さぁ、ここで私は母様の長女という権利を主張します。
しかし、リィリィが私も行きたいと言い出しました。
ピューレは行きたいけど今の装備が恥ずかしいので譲ってくれるそうです。
エリザはどっちでもいいと言ってくれたので後はクロアです。
私は哀願するように彼女を見ました。
私と誕生日が近く、私が母様を大好き、いや、愛している事を誰よりも知っている彼女です。きっと私に権利を譲ってくれるはず。
クロアは私の目を見てにっこりと微笑み
『それじゃ、公平にじゃんけんにしましょうか』
とぬかしました。
えぇ、わかってましたよ。
貴女はそういう女だと。
絶望の表情を浮かべる私を恍惚の表情で見つめる彼女。
後のじゃんけんで負けて崩れ落ちる私をこれまた恍惚の表情で見下す彼女。
流石、ギブ・ミー上母様の長女。その顔は侵入者が私の階層に来た際、応援として来てくださったギブ・ミー上母様が恍惚の表情で蹂躙する際のそれです。唯一の救いはクロアも負けたことでしょうか。
負けた私は泣く泣く母様に別れを告げて万魔殿に引き返しました。
万魔殿に戻ったのは私とクロア、リィリィ。第一階層に戻った私は降りてきていた妹達にアルーシャ以外のセブンスチャイルドを預けて隅っこにある白百合の下で妹と反省会です。
ちなみに第一階層は巨体な草花で出来た森林。通称『巨大庭園』といいます。
そんなことよりもアルーシャ。姉の敗因はなんなんでしょうか?え、運ですか?・・・そうですか。
ムササビ母様の末の娘である竜人。妹のアルーシャを尾であやしつつ私は小さくため息をつきます。
私はまだぜんぜん母様と戯れていません。
昔は一人娘ともあって小さい私に様々な事を教えてくださったり、遊んで、私が寝付くまで一緒にいてくださいました(捏造)。
そんな私は自分で言うのもあれですけどもかなりの寂しがり屋だと思います。
あぁ、母様の肌の温もりが恋しいです。(ムササビは死体なので冷たいです)
また、昔の小さかった頃の私にしてくれたように優しく抱いてほしいです(捏造)。
気付けば私は七美宮にいました。
スライム種である女忠の妹、天宮が迎えてくれたのですが私は気付かずに母様の部屋に入ります。
今思えば天宮は私が寂しがりなのだと知っているのでそっとしておいてくれたのでしょう。
部屋に入った私はまず部屋の空気を堪能します。あぁ、母様の臭い。演説の後にお着替えになっていたのでお部屋に入られたと思ってましたが正解でした。
ハッ、ということは母様のドレスもあるはず。
憑かれたように家捜しを行う私。キレイに整理されたデスク、クローゼット、ドレスルーム、御手洗い、シャワールームと探索し、遂に見つけました!
天に掲げるその手には先程まで母様が着ていた漆黒のドレス。
至宝を手にしたことにより頭の中で響き渡るファンファーレ。母様の温もりが残るそれ(ムササビは死体なので温もりはありません)を手にぬるぬると母様のベッドに潜り込みます。
全身に母様を感じ、火照ってきた私はーーーー。
あぁ、母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母様母ーーーー。
「それで私のベッドで悶えてたと?」
私はベッドに腰掛け目の前にもみじを正座させている。下半身が蛇だから正座をできているかはわからないが取り敢えず正座させているのだけど。
「申し訳ありません母様!」
この娘は目をキラキラさせて全く反省の色が窺えない。
正直さっきのはインパクトが強かった。布団を捲れば悶えている全裸の娘。アルベドの件や所持するアイテムの整理などが一瞬で頭からぶっ飛んだ。そして現在はドン引きしている。娘じゃなかったら即死魔法を叩き込んでいるところだ。
「あのね?母様は怒ってるのよ?私としてはそんなはしたない娘に育てたつもりはなかったんだけど」
「ハイ!申し訳ありません母様!」
嬉しそうに私を見上げて蛇の尾をパタパタと仔犬のように振っている。少し可愛いと思いつつも私は小さくため息をついた。
この娘M気質なのかしら?たしかに物理特化させてたからかなり打たれ強いけど性格まで反映されてないわよね?
まぁ、この世界にきてからほったらかしだったし寂しかったんだろうけど。
「寂しがり屋なのにほったらかしにしたのは悪いと思ってるけど、貴女もお姉さんなのだからもう少ししっかりとーー」
「第ニ階層はピオーネとよもぎに任せてます!」
「嘘つきは嫌いよ」
「申し訳ございません。妹達をほったらかしにして此処にまいりました」
やっと反省してくれたもみじは土下座して謝罪した。
全く、アルーシャまでほったらかしにして。
パタパタと振っていた尻尾も今では力なく垂れ下がっている。
その雰囲気にそろそろ話題を変えようと思いもみじに言った。
「アイテムの整理が終わり次第、また兄様の所にいくわ。向こうにいる三人と入れ替わりで誰か連れて行くつもりだったからもみじ。貴女が来なさい」
「ハイ!ありがとうございます!」
「元気なのはいいけど。貴女ははやくその立派なモノを仕舞いなさい。はしたないわよ」
「ハイ!母様!!」
再び尻尾がパタパタと元気よく動き出す。
現金な娘だこと。
そんな事を考えつつアイテムの整理を始める。
別に作業の邪魔になるからといって追い出したりはしない。私は娘を邪険に思わない母親なのだ。
「あ、あの母様。母様は上母様達の助けにいかれないのですか?」
棚を漁る私にもみじが聞いてきた。
一瞬だけ手を止めた私は直ぐに作業を再開する。
「皆に話したはずだけど、私は姉様達に皆を任されてるの。それなのに助けにいったら逆に怒られちゃうわよ。貴女は知らないだろうけど本気で怒ったオーオバー姉様怖いのよ?」
「私が負ける直前に助けに来てくださった母様よりですか?」
「むしろテンションがハイになったがんばるヤンデレ姉様といい勝負」
「それは・・・怖いですね。怖さの指向性は違いますが」
思わず身震いしているもみじを横目にそれにと続ける。
「貴女のような寂しがり屋を置いて行けるわけないでしょ?」
そう、私は家族を任されたのだ。
だからこの子達を置いていくなんて真似はしない。
私達は家族なのだから。
昨日が残業になってしまい。
書いている途中で力つきてしまいました。