今回は少し長く掛けましたが面白味があまりないかもです。
「おい!《転移門/ゲート》を開いて何処にいくつもりだ!」
遠隔視の鏡に写る光景を見た後に突然《転移門/ゲート》を開いた義妹。
俺や姪達の呼び掛けにも応えず無言のままそれに飛び込んで消えてしまった。
母親の行動に狼狽えるもみじ。妹である赤ん坊三人は突然母がいなくなった事により、必死にその首を動かして母親を探している。
《転移門/ゲート》に飛び込む直前見せた義妹の表情。それには見覚えがあった。
彼女が義妹となり、小学校を卒業したある日のこと。一緒に買い物に出た際に見た家族団欒をジッと見つめていたときと同じ表情だ。
義妹が家族という関係にある種の執着を持っているのは知っている。
NPCであるもみじ達を娘として扱い、この世界で愛情を注ぐのを微笑ましく思い。
義理の兄である俺を慕ってくれるのも嬉しく思う。
だが現在、遠隔視の鏡に写る殺される寸前の姉妹を助けに行った義妹の行動に俺は怒りを覚えた。
「・・・・セバス」
静かに家令の名前を呼ぶ。
セバスは俺の怒りを感じ取ったようで僅に冷や汗を流していた。
「ナザリックの警備レベルを最大まで引き上げろ。私は先に出て、バカのついでにあの娘達を助けてくる。アルベドに完全武装で来るように伝えろ。ただし、ギンヌンガガプの所持は認めない。あと、後詰めの準備だが、なにかあって撤退できなくなった場合を考え、この村に隠密か透明化の能力を持つ者を複数送り込め」
「畏まりました。ただ、モモンガ様の警護ということであれば私が」
「馬鹿者。その場合は誰が命令を伝達する」
「あ、あの伯父様?」
指示を出している途中に割り込んできた姪のもみじ。視線を彼女に向けると彼女を含めて、三人の赤ん坊も同時にビクリと肩を震わせた。
姪である四人のうち、もみじはなんとか堪えているが他三人は今にも泣きそうである。
なついてくれていたベルも涙目だったのが少しばかりショックだったが表情には出さずにもみじに問い返す。
「なんだ?」
「お、伯父様と母様の護衛をわ、私に勤めさせていただけないでしょうか?」
「この私に、姪に守られろと?」
「わ、私は物理特化ですので、魔法詠唱者である伯父様の弱点をカバーできます。そ、それに私は母様の娘ですが。地獄の七姉妹の守護者、物理のみの正面対決ではセバス様にも勝ると自負しております。」
震える姪をじっと見つめる。
彼女は震えながらも俺の目を逸らさすに見つめ返してくる。
あのバカ。自分の娘に心配掛けすぎだろう。
「・・・ゲートを潜ったらムササビの守りを第一に動け。私の守りは不要だ」
「ありがとうございます!」
同行の許可を貰い、勢い良く頭を下げるもみじ。
妹三人を一般メイド、シクススに預けて部屋の隅に立て掛けてある赤銅色の大槌を手に取る。
何気にドロップ率0.001%の神器級武装を羨ましく思いながら俺はアイテムボックスを開き、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出した。
「私が先に出て安全を確認するまで出てくるなよ?」
「ハイ、伯父様」
《転移門/ゲート》
空間が歪む。
ユグドラシルにおいて最も確実な転移魔法を使って義妹の背後に移動する。
義妹が先に転移していたことにより転移阻害魔法が使われていないことは確認済みだった。
万が一の場合、助けられないどころか逆に先手を取られていたことだろう。
眼前にいるのは我が愚妹と愚妹が助けた二人の少女。
怯える二人には申し訳ないが
「貴様は何を勝手に飛び出している!」
俺は愚妹の脳天目掛けてギルド武器を降り下ろした。
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そして現在、私は地面に正座させられています。
目の前には何の策も無しに飛び出した私をお説教中の鬼威様。
背後には私にしがみつきながら震えている村娘の姉妹。
そして周囲には自分の長い身体で円を作り、警戒している我が娘もみじ。どうやらセブンスチャイルドの妹達はナザリックに置いてきたようだ。
「ムササビ。お前の性格は分かってるつもりだったが、今回のは些か度がすぎるぞ」
「・・・申し訳ありませんでした」
義兄さんに頭を下げる。
彼女達の母親に頼まれたと言っても義兄さんは信じてくれないだろう。
けれど義兄さんは私の行動を最終的にはそれとなく察してくれて、流して許してくれる。
だから私は義兄さんの事が好き。
血が繋がってなくても、一緒に過ごした時間が私を理解してくれる。
「・・・で?どう見る?」
小さく溜め息を吐いた義兄さんは即死した騎士達を見て私に聞いてくる。義兄さんが聞きたいのはこの世界の騎士の練度。
身内で一番最初に戦闘をした私に感想を聞いているのだ。
「雑魚。スライムレベル」
それに対して私は素直に感想を述べた。
デス・パラディンの異名を持つ私の得意魔法はその名の通り《死/デス》である。
スキルによって成功率を底上げしているが義兄さんほどではない。ならば私の即死魔法の真価はなにか。それは連射だ。
一人目を殺す際に、一撃で仕留めれなかったら二発、三発と撃ち込むつもりだったが、一撃でなんの抵抗もなく仕留める事ができた。それはもうあっけないレベルで。
そして、私が助けた村娘の姉の方だが背中にできた大きな切り傷と砕けた右手。それがただのポーションで完治した。
これらから考えるにこの世界の一般人はレベル一桁。一般騎士も一桁か10レベル台前半と思われる。
「なるほど。しかし、油断は禁物だ。ここはユグドラシルではないのだからな」
「わかりました」
相手が弱すぎたこともあって失われた緊張感を警戒心で補う。
義兄さんの言うとおりここはユグドラシル、ゲームの世界ではないのだ。
「中位アンデット作成/デス・ナイト」
義兄さんが特殊能力を発動した。
様々なアンデットモンスターを生み出す能力。今回造り出したのは壁モンスターとして重宝されてきたアンデットモンスター。
レベル的にはさほど高くないが、モンスターの攻撃を完全に引き付ける能力とどんな攻撃を受けてもHP1で耐えきるという能力を持つ。
「ひっ」
しがみついている姉妹から小さく悲鳴が上がった。
それもそうだろう。黒い霞が空中から滲み出ると私が殺した騎士に覆い被さり人間と思えない動きで起き上がったのだから。
私もちょっとだけびっくりしたが種族特性のおかげでなんとかなっている。
起き上がった騎士は一瞬身震いすると。兜の隙間から黒い液体が溢れだした。
その液体は尽きることなく、その身体を覆うと歪みながら形を変えていく。
やがて姿を表したのは二〜三メートルはあらんほどの巨体、身体の四分の三は覆えそうなタワーシールド、本来なら両手で持つべき刃物であるフランベルジェを片手でもった怪物が現れた。
正に暴力の権化のような怪物は義兄さんの指示を待つ。
その姿は正にアンデットの騎士に相応しい堂々としたものだった。
「この村を襲っている騎士を殺せ」
義兄さんが指示を出すと同時に上がる咆哮。
駆け出すデスナイト。まるで疾風のように、まるで猟犬のように、走り去っていった。
義兄さんを置いて。
『あー、これは予想外だね』
『盾が守るべき者を置いていってどうするよ。いや、命令したのは俺だけどさぁ』
本来、デスナイトは召喚者の周辺に待機して、襲ってきた敵を迎撃するのだが。これは予想外だ。
なんとも云えない空気が私達の間を流れたのでとりあえずフォローすることに
「わざわざ兄様がお力を使わなくても妾だけで十分ですのに」
わざと膨れっ面をする私とそっぽを向きながらコリコリと顔を掻く義兄さん。
そんな時にゲートから人影が一つ吐き出された。
全身をまるで悪魔のような黒い甲冑で包んだ存在。
「準備に時間がかかり、申し訳ありませんでした」
角の生えたクローズド・ヘルムの下から聞こえたのは女性の声。
「アルベド。実にいいタイミングだ」
「ありがとうございます」
ナザリック地下大墳墓の守護者統括。アルベドは義兄さんに対して恭しく礼をする。
ちなみに私は彼女のある一点を見つめていた。
「貴女達なにしてんの?」
それは彼女の腕の中。かぎ爪のようなスパイク付きガントレットに抱かれる三人の赤ん坊。
娘であるルェフ、ベル、アルーシャの三人だ。
三人はアルベドの腕の中で身動き一つしていない。
目はガン開き、ルェフのロバのような耳はピンと立っている。
「ムササビ様。御嬢様方を勝手に連れ出してしまい申し訳ありません。御嬢様方がムササビ様を探しておりましたので私の一存でお連れいたしました。すべての非は私にございます。如何なる罰も受ける所存でございますので何卒御嬢様方には寛大な処置を」
「あー、よい。妾は全てを許そう。兄様も宜しいですか?」
「あー、分かった。親のいない場所に置いてきた私も悪いな。よい、アルベド。私はお前の全てを許そう」
娘達を受け取った私はなんとも云えない表情で固まってる三人をあやす。
流石に親がいない状況で他人に抱かれるのは何かしらの恐怖を感じるのかもしれない。
「それで・・・その生きている下等生物の処分はどうなさいますか?お手が汚れるというのであれば私が代わりにーー」
「母様がわざわざお手を掛けて救われた命を殺すと?」
アルベドが言い切る前にもみじが遮った。赤銅色の大槌、神器級武器を突きつける。
二つの視線が衝突する。
暫し睨みあった後にアルベドは私に向かい頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「・・・セバスに何を聞いていたのだ」
義兄さんの問いにアルベドは答えない。
「聞いていないのか。・・・この村を助ける。とりあえずの敵はそこに転がっている鎧を着た者達だ」
了解しましたと。返事をした彼女から義兄さんが視線を動かす。
義兄さんの視線に晒され、二人は私の身体で少しでも身体を隠そうとする。先程から震えているのはデスナイトの姿を見たからか、はたまたアルベドの発言のせいか。まぁ、全部だろうが先ずは敵ではないアピールをするべきだろう。そう考えた義兄さんは私達に歩み寄る。
しかし、姉妹はそう受け取らなかった。
「兄様。回れ右!」
とうとう決壊した二人の自制心。名誉の為に男性である義兄さんに背を向けさせると赤ん坊三人をもみじに預けて母のオーラⅡを発動した。
「安心しなさい。あの方は妾の兄様だ。魔法詠唱者としての研究の過程であのような姿になってしまったが根は優しいお方で先程のデスナイトも兄様が村を救う為に放ったのだ」
よしよしと頭を撫でながら私は我が子のように二人をあやす。
次第に震えが収まっていく二人。
そんな二人を横目に私はもみじに指示を出す。
「もみじ、二人を任せる。ルェフ達も置いていくので大丈夫でしょうがなにかあれば連絡しなさい」
畏まりましたともみじが一礼をする。それに併せて私は二人から離れるとその間を埋めるかのように身体を差し込んで円を狭めた。
「母様。母様がお手から救われたということはそういうことで?」
離れた私にもみじが問いかけて来たのに対して私は無言で頷く。
それに対して頷き返した彼女はやさしく二人の頭を撫で始める。次に二人の耳元でなにかを話し掛けた後に二人の背中を優しく押した。
「さ、二人とも伯父様と母様に謝罪とお礼を」
背を押された二人は恐る恐る此方を見る。
私はうっすらと笑みを浮かべ、義兄さんは背を向けたまま様子を伺う。
「あ、あの!助けてくださってありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
そして、無礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでしたと頭を下げた。
「気にするな」
「あ、あと、図々しいとは思います!で、でもあなた様しか頼れる方がいないんです!どうか、どうか!お父さんとお母さんを助けてください!」
「了解した。生きていれば助けよう」
義兄さんが軽く約束した。
姉が大きく目を見開き、茫然とした後に頭を下げた。
「ところで、お前達は魔法というモノをしっているか?」
「は、はい。村に時々来られる薬師の、私の友人が使えます」
「ならば話しは早い。妹が言った通り、私は魔法詠唱者だ」
義兄さんが魔法を唱える。
《生命拒否の繭》
《矢守りの障壁》
姉妹ともみじ達を中心に半径三メートルの微光を放つドームが形成された。
「生物を通さない守りの魔法と射撃攻撃を弱める魔法を掛けた」
「大抵の物理攻撃ならもみじが無効化できるし、大規模魔法が来てもルェフがいるから大丈夫だ」
「それと、念のためにこれをやろう」
驚く姉妹に魔法の効果を説明した義兄さんは二つのみすぼらしい角笛を投げ渡した。
障壁の抑止対象とされなかった角笛は姉妹の手の中に収まる。
「それは小鬼将軍の角笛というアイテムで、吹けば小鬼。小さなモンスターの軍勢がお前に従うべく姿を見せるはずだ。そいつらを使って身を守るが良い」
正直言って過剰な守りだと思うが。
助けると決めたのだこれくらいはさせてもらおう。
「もみじ、姉として五人を頼むぞ」
「伯父様もお気をつけて。母様をお願いいたします」
礼をするもみじに義兄さんは片手を上げて歩き出す。
それについて私も歩き出した時に姉から声を掛けられた。
「あ、あの・・・お名前を!」
義兄さんは私を見る。
『名前。どうするよ?』
『私はムササビを名乗るよ。対外では偽名を使うけど。この名前が娘達の母親の名前なんだから』
『だな。それじゃそれっぽく云ってみるか』
頷きあった後に先ずは義兄さんが半身を姉妹に向けてポーズを取る。次にその背中合わせに立って私もポーズを取った。
「死の支配者にしてナザリック地下大墳墓の主。モモンガ」
「妖艶の魔窟、地獄の万魔殿の女王。ムササビ」
後にノリでやっちまったと頭を抱えるアンデット二人の姿があった。
ちなみに先程のポーズを目をきらきらと輝かせて皆が見ていたのを二人は知らない。
拙い文章ではありますが。
これからもよろしくお願いいたします