オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 更新遅くなりました。


カルネ村

「全く・・・人間の男性というのは何故こうも人に向けて下卑た目を向けるのでしょうか?」

 

 ムササビ様とモモンガ様のお二人と別れた私達は再び、村を襲った騎士達に遭遇していた。

 私達を取り囲む五人の騎士の視線は全てある人物に向けられている。

 

「伯父様の所の男性方は紳士的だったのですが・・・いけませんね。男性に変な先入観をもっていたようです」

 

 綺麗な金髪と同じ女性である私でも羨ましく感じる白い肌。

 何を食べればそこまで成長するのか、形、張り、大きさも一級品の胸。それを守るのは紅い下着のような服。

 ムササビ様を母様と呼ぶ彼女の名前はもみじ。

 彼女のその美しい容姿もさることながら一番の特徴は下半身である蛇のような紅い身体だろう。

 私達を守るように円を作るその体の先、尻尾を少しばかり小刻みに揺らす彼女の視線は私達の腕の中にいる赤ん坊に向けられる。

 

「その子達を絶対に離さないように。伯父様の魔法と私でも十分ですが。その三人がいれば絶対に安全です」

 

 言われて視線を下げれば私をジッ見つめるちっさな角がちょこんとだけ出た可愛らしい赤ん坊。

 女の子と思われる彼女は私の頬をその小さな手で挟むと

 

「ねぇ~!」

 

 と言ってキスをしてきて私に甘えだした。

 呆然とする私にクスクスと笑うもみじさん。やっと我に返って視線を横に向ければ

 

「あ、やん、くすぐったい」

 

 妹が赤ん坊二人にキスをされまくっていた。

 

「やだ、かわいい」

 

「あらあら、アルーシャ達は二人の事が気に入ったようですね」

 

 取り囲む騎士達の事など忘却の彼方にある私はゆるゆりしている妹達に釘付けになっている。

 そんな私の頭を撫でながら抱き締めたもみじさんは頬に手を宛ながら考え始めた。

 

「見たところあの人間達のレベルは一桁。ステータス隠蔽のスキルをもっている様子もありませんし。これは本当に伯父様の魔法だけで十分ですね。しかし、あの下卑た視線に晒され続けるのはこの子達の教育に悪いですし、なんとかしたいのですが無理矢理この魔法から出てはせっかく張ってくださった伯父様の魔法が消えてしまいそれでは伯父様の顔に泥をぬってしまいますから・・・・はぁ、仕方ありません」

 

 自分だけが集めている視線が私達にまで晒されていると勘違いしているもみじさんは空を見上げる。

 ゆっくりと歩み寄ってくる騎士達。普通ならもみじさんみたいな存在は警戒するのだけどあまりに美しく、華奢な女性である彼女の姿に騎士達の警戒心はゼロ。むしろニヤニヤしているのが兜の上からでも分かる。そして私は思う。

 この男達は直ぐにこの場から逃げるべきだったと

 

「ピューレ。ごみ掃除を頼んでいいですか?」

 

 

 

 あいよ。

 

 空に向けて語りかけた直後、騎士達が一人残らず爆散した。

 血霧となった騎士達。甲冑の破片を宙に散らばらせた彼等は巻き起こった風に運ばれて、文字通り掃除されるかのように私達の前から姿を消したのだった。

 

「さて、ごみも掃除されたことですし、わたしと少しお話ししましょう。先ずは自己紹介からですね」

 

 突然の出来事に再び呆然とする私達姉妹に、誰かに掃除を頼んだもみじさんは何処からか取り出した御菓子を差し出してにこやかに私達とお喋りに興じるのであった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 村に辿り着いた私は襲い来る騎士達を適当に切り殺しながらある場所に足を運んだ。

 それは私が助けた村娘エンリとネムの母親の元。

 遠隔視で見た場所に近辺を探し、そして見つけた。

 

「・・・・・」

 

 通りの反対側、家の裏手に彼女はいた。

 手に持っていた包丁は既になくなっており代わりにあったのは胸に出来た大きな刺し傷。側には騎士が一人倒れており、首には彼女が持っていた包丁が深く突き刺されていた。

 彼女の顔は苦痛に歪められておらず、どこか安らかなものだった。娘達の無事を確信してたようなその表情、焦点の定まっていないその瞳はきっと娘である二人を見ていることだろう。

 

「お初にお目に掛かる。妾はムササビ。此度そなたの願いに応えた者だ」

 

 小さく礼をした後にしゃがんで冷たくなった彼女の手を取る。

 

「そなたの願いである二人は、そなたの宝は無事だ。今は妾の娘が守っているから安心してほしい」

 

 冷たくなったのに私にとって、その手はとても温かく感じた。

 あぁ、本当の母親というのはこれほどに温かいのか。

 あなたの見せたその勇気と愛により二人の命は繋がれました。

 姉はあなたに似て勇敢で、妹をこよなく愛し、妹も姉に全幅の信頼を寄せています。

 二人はこれからきっと素晴らしい女性へと成長するでしょう。

 

「二人の事は妾に任せよ。不自由などさせぬ、望むなら学業も学ばせよう」

 

 だから

 

「ゆっくりと休まれよ」

 

 ゆっくりと休んでください。

 

 手を下ろし、優しく瞼を閉じてあげる。

 

「母としてそなたに敬意を」

 

 踵を返して歩き出す。

 遠くから野太い断末魔や悲鳴が聞こえる。

 どうやらデスナイトが蹂躙を開始したらしい。

 ここで私は身なりを確認する。

 一応、そこそこ綺麗な死体であるわたしだが所々白骨化しているので、装備を変更した。ドレスをガントレットとレギンスに合わせてアーマーに変更し、旅の冒険者らしくローブを羽織る。背中の翼も折り畳んでローブの下に隠した。

 義兄さんも服を変えて仮面を被っている。

 その仮面というのは狂った運営がクリスマスイブの十九時から二十二時に二時間以上ログインしていたプレイヤー全員に押し付けたある種の呪われた一品。

 名は“嫉妬する者達のマスク”。

 通称、嫉妬マスク。

 それが配布された当時は笑い話だったが。

 七姉妹が結成された翌年のクリスマスイブ。

 我が七姉妹の六女、がんばるヤンデレ姉様はこうおっしゃった。

 

「せっかくのクリスマスイブにログインしてきてイチャコラしてるリア充が腹立つ」

 

 その時のヤンデレ姉様は怖かった。

 何が怖かったかと云うと七姉妹を一人一人洗脳していき。クリスマスイルミネートされた大都市にいるリア充爆撃作戦に引き込んでいったのだ。

 唯一の防衛ラインだったギブ・ミー姉様はその日はアタック中の人がやっとの事で約束を取り付けたのにも関わらず、一方的に予定が入ったと云ってキャンセルされてしまったらしくかなり荒れていたという理由で一番最初に陥落。

 ギブ・ミー姉様に一番なついていた私は二人がかりで説得(誰も言葉でとは言っていない)されて抵抗も空しく陥落。

 そして、全員を洗脳し終えたがんばるヤンデレ姉様は全員に嫉妬マスクを装備させてリア充爆撃を開始した。

 朝から日付が変わるまで、延々と。たまたまその日は全員仕事がなかったから良かったものの。当時のこの悪行はネット上でも話題になり、リア充からは恐れられて非リア充、特に女性プレイヤーからは賛辞を贈られたのだった。

 

 懐かしい思い出を思い出しつつ、村の広場に辿り着いた私がまず見たのはデスナイトが繰り広げる一方的な蹂躙。

 逃げ惑う騎士達が悲鳴を上げている。

 ここに来るまでに何人かの騎士を適当に相手したがまさかここまで弱かったとは。

 デスナイトは見た目かなり凶悪な姿をしており、義兄さんのスキルで能力の底上げをされているが所詮は35レベルのモンスター。

 私達ユグドラシルの上位は勿論中堅プレイヤーからすれば雑魚、かなり譲歩してちょっとめんどくさいといった程度の相手なのだ。

 そんなデスナイトが騎士相手に無双している光景はどこか子供が楽しく遊んでいるように思える。・・・あれによだれ掛けとかおしゃぶりを、いや、野球帽とバットを持たせれば・・・。

 あ、ヤバイ可愛く見えてきた。

 自分のバカな考えに苦笑しつつも私は愛槍を片手にデスナイトへと歩みを進める。

 騎士達の視線は恐怖の権化とも云える姿のデスナイトに向けられており、私に気づいていない。

 デスナイトは何やらやかまし男をフランベルジェで突き刺しており、男はたすけて、たすけてとわめいている。

 私はその煩い声に表情を歪めつつ、4回目になる刺突を剣の腹を槍の突きを軽く叩き込んで弾いた。

 デスナイトの紅い相貌が私を睨み付ける。

 それに対して私はできるだけ柔らかい笑みを返すことによって応えた。

 

「楽しんでるところすまぬな。少しばかり時間を貰えぬかな?」

 

 喚く騎士以外の声が広場から消えた。

 見つめ合う私達。少しの間を置いて動き出したのはデスナイト。

 地にフランベルジェを突き刺して跪き、頭を下げる。私はその頭を優しく撫でてあげた。

 

「よしよし、お前は賢い子だな。妾が誰だかちゃんとわかっているか」

 

 喜ぶように小さく声を上げているデスナイトに更なる愛着感を感じつつ私はデスナイトが剣を突き刺していた騎士に向き直る。

 その時に気付いたがその男に見覚えがあった。

 私がエンリとネムを託された時に二人の父親と思われる男性と揉み合っていた騎士だ。

 

「たしゅけて・・・おかね、あげしゅ。なんでも、しま、しゅ・・・」

 

 涙と鼻水と血で顔を汚した騎士は私に向けて必死に生を哀願している。

 正直云って汚らわしい。

 元人間だったとはいえ、私はこの醜い生き物に嫌悪感を抱いていた。

 

「貴様らに聞きたい事がある。この村で女を犯した者を差し出せ。聞き入れぬ場合は皆殺し、大人しく差し出すならは多少の情けは掛けよう」

 

 この問いに騎士達は一斉に私の足元に視線を送る。

 やはり、この男か。あの時父親と母親が命を掛けて二人を逃がしていなかったらエンリはこの男の慰み者となっていたことだろう。

 

「た、すけーー」

 

 エンリ、ネム。血生臭いけどちゃんと仇は取ってあげるよ。

 

「貴様の声は耳にするにも煩わしいーー消えろ」

 

 一閃。

 凄まじい衝撃と共に立ち上がった土煙。

 埃を払うように振るった愛槍は騎士を跡形もなく消し飛ばした。

 あまりの衝撃的な光景により呆然と立ち尽くす騎士達。

 私は彼等を冷たい視線で一瞥した後に再びデスナイトの頭を撫でてーーー。

 

「待たせたな。デスナイトよ、遊ばずに痛みを感じる間もなく奴等を殺してやれ」

 

 彼等の抹殺を命令した。

 上がる咆哮。

 騎士達は悲鳴を上げて逃げ出す。

 途中、騙したなと罵声を上げたり、命だけは助けてと必死に哀願する。

 

「・・・貴様らはそう言った母子を助けたか?」

 

 そう、小さく呟く私は再び、駆け出したデスナイトを背に向けて歩き出す。

 

『気は済んだか?』

 

 そこで義兄さんからの《伝言・メッセージ》が繋がった。

 その口調は小さい頃に喧嘩した私を宥める時と同じ口調だった。

 ここで私は自分が怒っていたということに気付いた。

 

『大丈夫。幾分か気は晴れたよ』

 

『だったら悪いがデスナイトを止めるぞ。そいつらにはまだ利用価値があるからな』

 

『うん。私は二人を迎えにいってくるね』

 

 この短いやりとりの後に上空から聞こえてきた義兄さんのデスナイトに対する制止命令。

 私は《飛行・フライ》の魔法で空を飛ぶ義兄の姿を一瞥した後にその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 




 あとはガゼフとニグン。
 ほのぼのまであと少し
 頑張れ私!
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