オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 明けましておめでとうございます。

 更新が1ヶ月以上空いてしまい申し訳ありません!

 久し振りすぎてぐだぐだですが生暖かい目で読んでいただけると幸いです。



共同墓地

「それじゃ、私は兄様の所にいってくるわ。よもぎ、お姉ちゃんとして皆をよろしくね?」

 

「言われなくてもわかってるよ。ホラ、エンリとネム、アルーシャもお袋と姉貴達の見送りしな」

 

「ムササビ御母様、お姉様方もいってらっしゃい。」

 

「いってらっしゃ~い!」

 

「やぁー!」

 

「いってきます」

 

「よもぎ。皆を頼みましたよ?」

 

「親愛なる妹方、いってきますわ」

 

「万魔殿にいらした際は私が案内しますね」

 

 

 エンリとネムに見送られて私は義兄さんの元へと向かう。

 アルーシャはまだ二人と遊びたいようで一応護衛兼、面倒見役としてよもぎに残って貰った。

 けっこうツンツンしているが面倒見のいい設定と私が産んだ娘の中ではキャサリンとアルーシャを除いてもみじに続く実力者だ。

 よっぽどのことがないかぎり、エンリとネムの安全。最悪の場合はピューレとエリザに時間を稼いでもらってその間に私が駆け付ける算段だ。

 

「それでは御母様。私は万魔殿に戻りますね。慌てて来たものですからお部屋の片付けが全くできてなくて」

 

 七女忠の天宮は万魔殿に戻るそうだ。

 聞けば現在私の部屋はお見せできる状態ではないらしい。

 

「そ、そう?それじゃお片付け任せていいかしら?私が見たら発狂しかねないし」

 

 うん、ほんとにお願い。返り血や汚れ程度なら全然我慢できるけど。散らかった部屋だけは我慢できない。

 姉妹の中でも人間心理学の知識を持つ双子の幼女姉妹からは一種の潔癖症とまで言われた。

 それはもう、普段から片付けをしないLOVE&デスさんが率先して自室の片付けをするレベル。

 

「畏まりました。ピオーネ、万魔殿まで送って頂戴」

 

「もちろんですわ親愛なる天宮御姉様。それでは親愛なる御母様。私達はこれで」

 

「えぇ、今日はありがとう。後日皆に二人を紹介するから周知しておいてね」

 

 転移により姿を消した二人を見送った後に私はもみじと一緒に歩き出す。

 その時の表情は娘達と過ごしていた時のようなモノではなく。苛ついた表情だった。

 

「もみじ。アレは私と兄様の護衛と考えるべきなのかしら?」

 

 視線を森に向ければチラホラと蠢く影が見える。

 その影達の視線は大半がネム達のいる家に向けられており、私達に向けられているのは僅か。

 アレは義兄さんが配置したのだろうか?

 それにしては数が多すぎるし監視対象がネム達にも及んでるのがおかしい。

 家族団欒の際も見られていたのが私のイライラの原因である。

 

「アレの指揮者と接触してきてどういうつもりか聞いてきなさい。この村をどうするつもりだって。私は直接兄様に聞いてくるわ」

 

「わかりました。後ほど連絡します」

 

 一礼した後、大槌を手に凄まじいスピードで森の中へと突っ込んでいった娘を見送り私は義兄さんの元へと向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「全く、万魔殿の守護者も舐められたモノですね」

 

 森の中を疾走しながら一人小さく小言を溢す。

 母様の命により村を監視している輩の指揮者と接触する為、とりあえず一人捕縛しようと考えたのだが監視者は皆、隠密系の者ばかりのようで私が森に入った直後には既にその姿はなかった。

 舌打ちの後に再び疾走、監視者を探す。

 奴らは透明化スキルを生かして姿を隠している。

 普通の者ならば奴等の姿を捉えることができなかっただろう。

 

「・・・・・」

 

 そう、普通なら。

 

 足を止めて周囲を見渡す。

 私の視界には複数の監視者を捉えていた。

 守護者として母様から賜った隠密系スキル看破の指輪を装備している私には隠密スキルは無意味。

 私達長女が務める階層守護者は家族を守る為に大抵の対策をしている。隠密スキル看破もその1つだ。

 母様達のお陰で余程の相手でなければ遅れを取らない自身はある。まぁ、大抵は途中で母様達の乱入があったのだがそれは今はおいておこう。

 私達は万魔殿を納めていた七人の女王の娘。

 だからといってあの者達の箱入り娘のように軽んじているあの態度はいただけない。

 私は灼熱流砂に住まう煉獄の大蛇。

 私が舐められては母様の名前に傷がつくのだ。

 そんなことは私が許さない。

 

 

「さて、とりあえずは・・・」

 

 

 尻尾の揺れがが徐々に加速していく。

 鋭い牙を剥き出しにした私はーー。

 

「一人。捕まえますか」

 

 蛇の如く獲物に襲い掛かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「エイト・エッジ・アサシン?」

 

 義兄さんとアルベドを見つけた私は傍らに控え跪いている存在に首を傾げる。

 人間大の忍者服を着た蜘蛛を思わせるモンスター。

 不可視化ができるアイツ等が私のイライラの原因だろう。

 イライラを隠しもせずに歩み寄る私に気付いたアルベドは一瞬硬直した後に礼をし、エイト・エッジ・アサシンも慌てて礼をした。

 

「兄様。村の周りに控えている輩はなんですか?」

 

 義兄さんを睨み付ける。

 その際にアルベドが口を挟もうとしたが目で黙らせて再び義兄さんを睨む。

 義兄さんはあーこれはだなと頭を掻きながら説明しようとした際にエイト・エッジ・アサシンが口を開いた。

 

「お、恐れ多くも発言をお許しいただきたく存じます!!」

 

 震えながらも必死に張り上げる声を聞いて私はイライラの対象だった者へと視線を向ける。

 

「発言を許そう。妾を納得させてみよ。どういうつもりでアレだけのシモベ配置したのか。嘘、偽りは赦さぬ。まさかシモベ等の注意が村へと向けられているのを妾達の護衛と申すのではあるまいな?」

 

 私が喋るにつれて奴の震えが大きくなっていく。

 虫なのにまるで生まれたての小鹿のように震えているソイツから目を離さずにゆっくりと問い詰める。

 その際にアルベドも妾の言葉に緊張を隠しきれないでいた。

 それはそうだろう。彼女はあろうことか私の前でエンリとネムを処分すると宣ったのだ。

 義兄さんの手前、できることならばコイツらを殺したくない。

 だが、発言次第では自制心を保てる自信はない。

 

「よい、私から説明する。お前は持ち場に戻れ」

 

 そんなときに義兄さんから待ったがかかった。

 

「・・・下がれ。後は兄様から直接伺う」

 

 本当なら当人を直接問いただしたかったが、奴等の主人である義兄さんが説明すると云うなら私は引かなくてはならない。

 礼の後に走り去るエイト・エッジ・アサシンを見送った後に私は再び義兄さんを問いただすことにした。

 

「で?あの配下達はなんですか?」

 

 久し振りに義兄を射殺すような視線で睨んだと思う。

 私の質問に義兄さんは溜め息を吐いて答えた。

 

「村をいつでも襲撃できるように400名程配置していたらしい」

 

 それを聞いた瞬間、私の体から緑色の光が溢れだした。

 精神異常耐性のスキルが発動したのだ。

 スキルにより打ち消された感情は怒り。

 私はエンリとネムが危険にさらされていたことに怒りを覚えたのだ。

 

「それは兄様のご指示で?」

 

 スキルにより打ち消されて多少は落ち着いたものの、完全には怒りが払拭されないでいる。持ち直した自制心でできるだけ抑えながら義兄さんの話に耳を傾ける。

 

「私はそんな指示は出していない。もちろん取り囲んでいる配下は先程一部を除いて撤収、役目も周辺監視に変えた。しかし、配下のやったことは私の責任だ。ムササビには不快な思いをさせた。すまなかった」

 

「お待ちください!モモンガ様には非はございません。全ては愚かにも勝手に行った私達にございます!」

 

 アルベドが慌てて口を開いたが

 

「ムササビは妹ではあるが同盟ギルドのギルドマスターだ。ムササビの知らぬ所で勝手に動いて誤認させたのは私達で、アインズ・ウール・ゴウンの代表は私だ。故に謝罪するのも私だ。言っておくが配下を勝手に殺すな。私はそんなことは望んでいない」

 

 義兄さんの言葉を聞いて畏まりましたと大人しく引き下がったアルベド。

 発端は察するに作戦立案の権限を持つアルベドかデミウルゴスのどちらか。おそらくデミウルゴスが指示を出したのだろう。

 

「兄様。エンリとネムを妾の庇護対象とします。それに伴い、この村での勝手な行動を慎んでいただきたい」

 

 私は義兄さん経由で義兄さんの配下に釘を刺す。

 エンリとネム達の周りに危害を及ぼす事は許さない。

 たとえ義兄さんの配下であろうとも私の娘達に危害が及ぶなら容赦なく叩き潰す。

 

「わかった。我が陣営がなにか行動するなら必ずムササビの耳にいれよう。アルベド、アインズ・ウール・ゴウンに属する全ての者に周知せよ。この村での勝手な行動を禁ずる。反故にするということはムササビに対する私の顔に泥を塗ることと同義だと思え」

 

「ハ、畏まりました」

 

 義兄さんの決定を聞いて私の気分は幾分かマシになると思っていたがそんなことはない。

 チリチリと燻っているなにかを私は必死に押さえ続けている。

 しかし、これでアインズ・ウール・ゴウンの陣営はこの村で、延いてはエンリとネムの周りで騒動を起こすことはないだろう。

 

 

「しかし、珍しいじゃないか。家族でもない者に対してムササビが怒りを覚えるとはな」

 

 

「・・・エンリとネムを娘として迎え入れたのです。娘の住み慣れた村が滅ぼされるとなると母親として黙っている訳にはいかないではないですか」

 

 そっぽを向いたまま答える。

 すかさずさ義兄さんか《伝言・メッセージ》を繋げてきた。

 

 

『おい。なにあの二人を犬や猫みたいに拾ってんだ』

 

『私が頼まれて、私がそうしたいから二人を娘にしたの。こればかりは義兄さんでも口出しはさせない』

 

 それにと続ける。

 

『義兄さんもどうせ二人のフォローするつもりだったんでしょ?』

 

『・・・後で、うちの戦闘メイドプレアデスから一人と一般メイドをよこすつもりではいた』

 

『フフッ、それでこそ私の義兄さん』

 

 ありがとうと義兄さんに礼を言い。私は視線を動かす。

 その先では共同墓地で葬儀が行われていた。

 墓石と思われる丸石達のまえでは村長と思われる男性が鎮魂の言葉を紡いでいる。

 後ろには村人達。その中にはエンリとネムの姿もあった。

 彼女達の両親は別に私が埋葬して、弔ってあけだがどうやら村人の一員として参列しているらしい。

 彼女達とは離れた場所で義兄さんはローブの下で義兄さんはあるモノを取り出していた。

 

「兄様。いくら妾達が死を統べる存在だとしてもこの世界でそれを行うのは容認できません。配下達やエンリとネム達娘の復活ならまだしも」

 

 それは《蘇生の短杖/ワンド・オブ・リザレクション》。死者復活の魔法を宿したアイテムだ。

 無論、義兄さんも私も村人全員蘇らせてもまだまだ余る程にストックを持っている。

 

「わかっている。村長の話ではこの世界に魔法の死者復活はないということだ。わざわざメリットがないのにリスクを負ってまで蘇生するつもりはない」

 

「壁に耳あり、障子に目あり。どこから蘇生の情報が漏れるか分かったものではありませんからね」

 

 死を与える魔法詠唱者と死から甦らせる魔法詠唱者。どちらが厄介事を引き寄せるかは目に見えている。

 厄介事は更に大きな問題に発展し、この村を、新しい娘達であるエンリとネムの二人を巻き込む事になるだろう。

 

「彼らには村を救ってやったことで満足してもらおう」

 

「それがよろしいかと」

 

 ここで私はところでと話題を切り替える。

 

「この子はなかなか消えてしまいませんね。妾としては可愛らしいので問題はないのですが」

 

「可愛らしいか?」

 

 私はデスナイトの首を猫のように撫でながら義兄さんに尋ねる。

 この可愛らしい死の騎士は跪きながら気持ち良さそうに小さく唸っている。

 愛でている私に対してドン引きしている義兄さんは小さく溜め息を吐く。

 

「なんならそいつの支配件を譲ろうか?」

 

「よろしいのですか!?」

 

 義兄さんの申し出はかなり嬉しかった。

 デスナイトがかなり可愛らしかったので私も後で造ろうかと思っていたのだか。騎士の死体は全て埋葬された後だったので諦めていたのだ。

 それにこの子ならエンリとネム達の農作業の即戦力間違いなしだ。

 

「おかあさん!」

 

 腰に軽い衝撃を受けた。

 何事かと思って視線を下げればそこには満面の笑みを浮かべた娘、ネムの姿があった。

 どうやら葬儀が終わったようで私を見つけた彼女は一目散に此方に駆け付けたらしい。

 

「どうしたのネム。慌てて走ったら転んじゃうわよ?」

 

「おかあさん見つけたからきたの!」

 

 ムフーと嬉しそうにしている娘の頭を撫でてあげる。

 

「ネム。ほら、兄様にご挨拶して」

 

「ネムです。よろしくおねがいいたします」

 

 スカートの裾を両手で摘まんでつたないながらもお上品に自己紹介する彼女。聞けばよもぎに教えてもらったとか。

 義兄さんもその丁寧な挨拶に気を良くしたのか彼女の頭を撫でながらあれこれお菓子を取り出しては新しい姪に与えていた。

 

「やっと見つけた。申し訳ございません御母様。モモンガ様と大切なお話の最中に」

 

 そこへ遅れてやってきたエンリ。

 これまたよもぎに教えてもらったお上品な挨拶の後にネムの両手にある溢れんばかりのお菓子を見てペコペコと義兄さんに頭を下げだした。

 

「ムササビ。二人にデスナイトの支配件を譲ろうと思うのだがどうだ?護衛は勿論畑仕事にももってこいだと思うのだが」

 

「そうですね。娘達を四六時中付けておけませんし」

 

「え、コレをですか?」

 

 エンリは私が片手間に撫でているデスナイトを見て頬をひきつらせる。流石にカルネ村最強の娘でもこの子は荷が重いかしら?

 コレ呼ばわりされたデスナイトはどこか寂しそうだ。

 

「おかあさん。この子怖くない?」

 

 そんな中ネムはお菓子を姉に預けて私に歩み寄る。

 撫でているデスナイトに興味があるようだ。

 

「大丈夫よ。撫でてみる?」

 

「うん」

 

 恐る恐る私の真似をするように首下に手を伸ばす少女。

 端からみればなんともシュールな光景だ。

 伸ばされた手はその黒い肌に触れる。

 

「・・・わぁ」

 

 ネムの口から嬉しそうな声が溢れた。

 優しく撫でるその手にデスナイトも心地よさそうに小さく唸る。

 どうやらデスナイトも彼女の事を気に入ったようだ。

 その光景を見て満足そうに頷いた義兄さんはネムに歩み寄りしゃがんで頭を撫でる。

 

「デスナイトの支配件をネムに譲ろう。この騎士はネムの盾であり、剣であり、友だ。その身が果てるまでネムと共にいるだろう」

 

「私も他のお姉ちゃん達もずっと一緒にいることはできないから。もしもの時はこの子と一緒にお手伝いしたり、エンリを守るのよ?」

 

「エンリも渡したあの笛は好きに活用するといい」

 

 エンリがゴブリンの軍勢を指揮し、ネムがデスナイトと共に闘う。数と質。丁度良いバランスだ。

 過剰戦力と思われがちかもしれないがこの世界には野生のモンスターもいるはず。だったら戦力はいくらあっても損にはならないだろう。それに私達が、離れている間に不埒な野盗や村の男が来てもデスナイトにネムが一言命令すれば撃退も可能。

 あとはあまり人目につかないようにネムに言い聞かせれば問題なしだ。

 

「それじゃ、私達はちょっとお話しがあるから二人はお家に帰ってて。今晩は私も家に泊まるから後で行くわ」

 

「分かりました。それでは伯父様、失礼します」

 

「しつれいします!」

 

 離れていく二人と一匹(?)に手を振る。

 二人が見えなくなった後に私は視線を墓地へと向ける。

 その先には村長と村人の男性が深刻そうな表情で話し合っていた。

 どうやら、今日はまだおわりそうにないようだ。

 

 

 

 




 拙い文章ですがこれからもおつきあいいただけたらうれしいです。
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