かなり遅い更新になりますがよろしくお願いいたします。
MMORPGーユグドラシル。
自由度の高いと評判なそのゲームは運営開始から12年。
長きに渡る繁栄の末、今日その物語が幕を閉じようとしていた。
幾多のプレイヤー達がその時を嘆いただろう。終わらせないでくれと運営にメッセージを送った事だろう。
とある森の奥に存在する不可視の巨塔、その最上階にある玉座の間で運営停止までの時間を孤独に過ごす私もその一人だ。
必死に運営停止を見送って欲しいとメッセージを送ったが現実は虚しく、運営停止の決定が覆されることはなかった。
私も最古参のプレイヤーの一人。義理の兄の後を追うように始めたユグドラシル。義兄に手伝って貰ってレベルを上げ、義兄と同じ領域にまで到達し、義兄とは別のギルドの長となった。義兄とは違い7人だけの、女性だけのギルドだが長い時間と膨大な資金、愛情を詰め込んだこのギルドは私の宝だ。
「みんなお母さんになったから生活があるのは分かるけど最終日ぐらい妹分のお願い聞いてくれても良かったのに」
玉座に座る私の姿は胸元が多く露出している黒いドレスを身に纏った女性。普通と違うのは胸が左半分と右手、そして左目周りが骨となっているという所。それ以外は絶世の美女と言っても過言ではない。私が課金をし、造り上げたもう一人の自分。
種族でいうアンデットという異形種である私は表情の変わらない顔を泣きそうに歪ませながらまず自分の座る玉座の両隣に視線を移す。そこには自分の座る玉座とは一回り小さい玉座が左右に3つずつある。
「がんばるヤンデレさん、夜の幼女さん、昼の幼女さん、LOVE&デスさん、オーオバーさん、ギブ・ミーさん・・・」
それは我がギルドのギルドメンバー達の玉座。
思い起こせば彼女達との思い出が甦ってくる。
皆が皆、ゲーマーで、廃課金者だったこともあってユグドラシル内では最凶の女性ギルドの栄光(不名誉)を手にし、クリスマスにはログインしてきたリア充を爆撃。
夏にはメンバーでR-18ギリギリの水着を着て、水着コンテストに出場しようとするも予選で落とされた。腹いせにその水着で本選に乱入、他のプレイヤーにはドン引きされた。
ギルド防衛戦の時は危うく負けそうな所を義兄のギルドに助けられ、お礼に私達が夜のお店よろしく、もてなしてあげた。
義兄のギルドへの大侵攻の情報を耳にした時は、ギルドの総力を挙げての援護をした。2000いた大軍の内、500しか削れなく、申し訳なさから泣いたのを覚えている。
その大侵攻の後に、ギブ・ミーさんが結婚した。その報告を受けた時は皆で祝い、皆で運営にメールを送って彼女の持つ嫉妬マスクの返却を申請した。
時は流れ、一人、また、一人と結婚し、家庭を持ってこのユグドラシルを、このギルドを去っていった。そして残ったのは私一人。
「お前達も母親がいないと寂しいよね」
視線を正面に向ければ玉座に向かって跪き、頭を下げる女性達。
全員NPCで私達が創った娘であり、宝だ。
「ごめんね。貴方達を置いていってしまう事になってしまってごめんね」
表情の変わらぬまま私は嗚咽を漏らす。
「ごめんね。無力な私を許して」
しばらく泣いた後に私はゆっくりと立ち上がった。
運営停止まであと僅か、私は最後の時を。娘達に、姉達に恥じない姿で締めくくる。
「面を上げよ」
義兄の友人に作って貰ったAIがコマンドに反応して、NPC達が跪いたまま顔をあげる。
「我等“地獄の七姉妹”が配下である諸君。此度、妾の呼び掛けに集まって貰った事を深く感謝しよう」
私が謳うのは偽りの物語。
「昨年より我が姉達、そなた等の母がここ、ヘル・オブ・パンデモニウムに姿を見せないことに疑問を持っている事だろう」
娘達に贈る嘘の物語。
「そなた達は、妾の姉が。そなた達を見捨て行方を眩ませたとでも思っているのだろうがそれは違う。姉達はそなた達を守る為に旅立ったのだ」
娘達を不安にさせない為に謳う。
「今、このユグドラシルは崩壊、いや、消滅の危機に瀕している」
母親は貴方達の為に旅立った。
「姉達はそれを成さんとする脅威に立ち向かっているのだ。他ならぬそなた達の為に」
母親は貴方を捨てたんじゃない。
「ならば、そなた等は姉に付き従い共に戦いたかった事だろう。だが敵は強大だ。我がギルド、地獄の七姉妹の力を持ってしても苦しい戦となるだろう・・・」
「故に姉達はそなた達を残したのだ。愛すべき我が子を守る為に」
母親は貴方達を愛している。
「そして妾は姉よりそなた達を任された。故に妾は姉達を死地に見送り此処にいる」
私は貴方達を任された。
「そなた等は妾を軽蔑するだろう。母を見殺しにしたと。だが妾はそうは思わぬ。聞こう、貴様等の母はそれほどまでに弱い存在か? 否!!」
絶望のオーラⅠが体を包む。
「そなた等の母、地獄の七姉妹は容易く滅びる存在ではない!! 故に妾は姉達を送り出したのだ。子を思う母は何者にも負けぬものと知れ!!」
そしてオーラを消し、できるだけ優しい口調を心掛ける。
「案ずる事はない。姉達だけが脅威に立ち向かったのではない。我が兄様(あにさま)のギルド、アインズ・ウール・ゴウンから至高の41人の方々もご出陣なさっている。その中にはギブ・ミー姉様の婿殿もいらっしゃるそうだ。故に姉達に敗北の二文字はない」
私はゆっくりと玉座に腰掛けた。時間はもう一分を切っていた。
「今は姉達の帰りを待とう。妾はどこにもいかない。妾もそなた達を愛しているのだから」
静かに目を閉じて私は世界の終わりを受け入れた。
筈だった。
駄文ですがよろしかったら感想お待ちしてます。
追記
空白の修正をしました。