大変遅くはありますができるだけ更新頻度を回復できるように頑張りますのでよろしくお願いいたします。
「ふんふーん」
嬉しそうなネムの鼻唄を耳に義母様達と別れた私達は家路へと足を進めている。
視線を右下にずらせば可愛い大事な妹。
私の手をブンブン振っている彼女の表情ではとても嬉しそうで見ている私も嬉しくなってくる。
そして視線を上に向ければ
「ーーーー」
黒く脈打っている恐怖の権化ともいえる黒い騎士がそこにいた。
ネムがモモンガ伯父様から譲り受けた彼の名はデスナイト。
死の騎士の名を冠する彼は指先をネムに差し出しており、それを彼女が握る形で一緒に歩いているのだが小さな彼女に合わせているためか中腰の上にかなり小さな歩幅で歩いていて、かなり歩きづらいように見える。
けども嫌そうな雰囲気も見せずにネムに合わせてくれていた。
あと、モモンガ伯父様からいただいたお菓子をいれたバスケットのお陰で全然怖くないのは私だけの秘密だったり。
「これからよろしくねジョン君」
どうやら彼の名前はジョン君と決定したようだ。
私はよろしくねと挨拶をし、彼の家族入りを歓迎。明日から一緒に畑仕事頑張ろうねと言って、唸りながら返事を返している二人を微笑ましく思っていると
「エンリ、ネム。そいつはなんだ?」
私達を家の前で待っていてくれたよもぎ御姉様が険しい表情を浮かべていた。
そして視線が捉えているのはジョン君。
「ーーーーーえっジョン君?」
それに対してジョン君は優しくネムの手を離して頭を撫でた後に私達の前に出た。
戸惑いの声を上げるネム。
私も戸惑い、御姉様になんと声を掛ければいいのか分からないでいた。
「ーーーー」
そんな私達を背にして御姉様に向けて歩みだしたジョン君。
彼は御姉様の前に立つと剣を眼前に掲げ騎士の礼をとった。まるで自分は私達の騎士だと云わん雰囲気の彼によもぎ御姉様は険しかった表情をきょとんとしたものに変えて彼を見上げる。
少し考えた後にある結論に至ったらしく1つジョン君に質問を投げ掛けた。
「・・・まさか、お前の創造主は伯父様か?」
その問いに小さな唸り声を上げて答えるジョン君。
それを是と受け取った彼女は大きく溜め息をついた。
「分かりにくすぎだろお前。二人と自分のミスマッチ具合分かってんのか?大して強くねぇくせに妹達と一緒にいたら勘違いした姉貴達に殺されかねねえぞ?あー、仕方ねぇなぁ!アタシから皆に周知しとく。護衛ごくろうさん!」
ガシガシと頭を掻きながらめんどくさそうな声を上げながらジョン君に軽くお説教し、フォローを入れる約束をして、労いの言葉を掛ける御姉様。ジョン君と云えばかっこよく思えた騎士の礼から一転し、終始ペコペコと頭を下げていた。
というかよもぎ御姉様にとってジョン君は大して強くないんですね。他の御姉様達と義母様ってどれくらいつよいんだろ?
けど、一応ジョン君は村を救ってくれた恩人なんだけどなぁ。
「よもぎねーさまジョン君苛めちゃだめ~!!」
そんなジョン君に応援が駆けつけました。ネムです。
ジョン君の前で両手を広げて庇う妹。
「いや、苛めてねぇよ。てか、ジョン君ってコイツか?」
「ジョン君はネムのお友達なの!おじさまがネムのお友達にしてくれたの!!」
「は?どういうことだ?」
ネムの訴えに疑問を抱き首を傾げる。私は慌てて三人に駆け寄り事情を説明した。
「いや、いくら可愛いからって支配権まで譲るか普通」
ですよねぇ。私もそう思います。
一応ネムの事を信用してのことなんでしょうけどまだ子供のネムにジョン君は少しやり過ぎたと思います。
けど、伯父様も義母様も善意でそうしたのですから私は苦笑いしか浮かべることはできませんけど。
「まぁいいか。それよりも二人ともさっさと家に入れ。さっき姉貴からこの村に騎士が近付いてるって情報があった」
それを聞いた私達はびくりと肩を震わせる。
それを見た御姉様は安心させるように私達の頭に手を置き優しく撫でてくれた。
「心配すんな。ここにはお袋と伯父様もいるし、森の中には伯父様の配下ともみじネェ、空はピューレっていう姉がいるし、いざとなりゃあ昼寝してるがアルーシャもいる。知らないとはいえこの状態で喧嘩売ってきたバカがいたら逆に気の毒になるような目に合うだろうよ」
それにお前達はアタシが守ってやるよ。と付け加える。
けど、ネムは心配なようでチラチラと義母様のいる方角を見ていた。それを見たよもぎ御姉様は苦笑してネムにある提案をした。
「そんなに心配だったらジョンをお袋の手伝いに行かせたらどうだ?やり合うにしても正直お袋達や姉貴達が手を出す程じゃねぇと思うし」
「いいの?」
「おう、ネムからの応援と分かればお袋も喜ぶだろうしな。もし叱られそうになった時はアタシがなんとかしてやるよ」
この時の彼女はまさに頼れるお姉ちゃんといった感じでネムは嬉しそうにうんと頷いた。
「ジョン君!おかあさんとおじさまのお手伝いしてあげて!」
「ーーーー!!」
少女の頼みを聞いてジョン君は雄叫びを上げた。
御近所さんにはちょっと驚かせたかなと思いつつも私達は勢いよく走り出した彼を見送るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するために王の御命令を受け、村々を回っているものである」
私達の前に集う騎兵達。
義兄さんや私が殺した騎士達とは違って装備に統一感のない屈強な男達。人間だった頃の私ならその姿は歴戦の戦士集団と思っただろうが、ムササビという強者になった今では多目にみて武装にまとまりのない傭兵集団といった印象しか湧かない。
そんな彼等の中から一人の男が私達に馬で歩み寄り深く静かな声で名乗りを上げた。
義兄さんの配下、エイトエッジアサシンからの伝令によればこのカルネ村に向かっていた集団は彼等で間違いなく、私も遥か上空で監視させていたピューレからの報告により確認は取れている。
王国戦士長。つまり、彼等のリーダーだと思われる男の視線が村長を流し見し、アルベドへ5秒ほど視線を止めた後に私を経由して義兄さんを捉えようとして。
「ーーー!?」
私に戻ってきた。
え、なに?私なにかした?
初対面の上、あんまり興味のなかった私は突然ガン見されたことによって戸惑った。
義兄さんの少し後ろに控えていた私をアルベドより長く見つめてきた彼の行動に表面上はきょとんとしつつも内心引ながら首を傾げて
「なにか?」
と問いかけた。
それに対して彼は頬を染めつつ慌てて謝罪を向けて視線を村長に向けた。一体なんだったのだろうか?
「オ、オホンッ・・・この村の村長だな。横の方々は誰なのか教えていただきたい」
「それには及びません。はじめまして、王国戦士長どの。私はアインズ・ウール・ゴウン」
「妹のナナシス・ヘル・ゴウンと申します。私達はこの村が騎士に襲われておりましたので助けにきましたただの魔法詠唱者です」
義兄さんが口を開きかけたのでそれを押し止め、一礼し自己紹介を始め、続き私も自己紹介をする。横で村長があの槍さばきでただの魔法詠唱者?と小さく溢していたが気にしない。
この時に義兄さんが偽名を名乗ったので私もそれに習う。同時に娘達と娘経由で義兄さんの配下に周知するのも忘れない。特に横にいるアルベドだ。なにかの拍子に下手を打ってはいけないので義兄さんから命令、通達があるまで大人しくしておくように釘も刺しておいた。
こちら側でそんなやり取りをしているとは知らない王国戦士長は馬から飛び降りる。鎧の金属音を短く響かせた彼は重々しく頭を下げた。
「この村を救っていただき感謝の言葉もない」
王国戦士長という地位の人間が見た目怪しい私達に頭を下げ敬意を示したことにより空気が揺らいだ。
『義兄さん、このビーフストロガノフって人いい人みたいだよ』
『ガゼフ・ストロノーフな? 王国戦士長というのも偽りじゃないみたいだ。特権階級の人間が誰とも知れない奴に頭を下げる。普通の度量ならこんなことはしないな』
王国のトップである王直属の精鋭部隊隊長のその姿は彼の人柄を雄弁に語っていた。
「・・・いえいえ。実際は報酬目当てですから、お気になさらず」
「ほう。報酬か。とすると皆さんは冒険者なのかな?」
「それに近いものです」
「見たところ御三方はかなり腕の立つ冒険者とお見受けするが・・・寡聞にしてゴウン殿、妹君の名は存じ上げませんな」
「こちらには旅の途中、タマタマ通りかかっただけですので、さほど名が売れてないのでしょう」
義兄さん達の腹の探りあいを聞きつつ、私はいつでも義兄さんのフォローに入れるように思考を回転させる。
まぁ、この程度の探りあいなら義兄さんは負けないだろう。ビーフストロガノフさんはけっこう脳筋ぽいし。
そんな事を考えていると遠くで小さな、本当に小さな聞き覚えのある雄叫びが聞こえた。
『義兄さんあの子がこっちに来るみたいだよ』
『あの子?』
『デスナイト。エンリとネムの面倒をお願いしてた娘から《伝言・メッセージ》でネムが心配だから私達のお手伝いしてもらうために向かわせたって。ちなみに名前はジョン君に決定しました』
『ジョンって面じゃないだろアレ。まぁ何はともあれナイスだネム!』
よくやったと義兄さんがネムに賛辞を送る。そんな彼に内心あきれつつ、実は私も嬉しかったり。戦力的にはちょっと頼りないけど娘が私の身を案じてジョン君を送ってくれたのだ。
「ゴウン殿にお聞きしたいことがあるのだがいいだろうか?」
「とうぞ」
「その仮面ーーー!?」
ビーフストロガノフさんが義兄さんの被っている仮面に触れようとした時に凄まじい雄叫びが響き渡った。
それを耳にした瞬間私は小さく、義兄さんは仮面の下でニヤリと恵美(笑み)を浮かべる。
「た、隊長!!」
「な、なんだアレは」
兵の一人が悲鳴に似た声で叫ぶ。
視線をずらすとその先には雄叫びを上げながらこちらに突っ込んでくるデスナイト。フランベルジェとタワーシールドを手に向かってくる姿はさながら大型トラックのよう。
腰を抜かす村長。戸惑いながらも己の獲物をてにする兵士達。
「私の後ろに!!」
ビーフストロノガノフさんが守るように前に立った。
いや、仮にジョン君が敵だったとしても守ってもらうほど弱くはないんだけどなぁ。
「ビーフストロガノフ殿?落ち着いてください」
「ここは私達にお任せを!妹君はお下がり下さい!あと私はガゼフ・ストロノーフです!」
聞く耳持たず(?)部下を鼓舞する王国戦士長。
私としては娘の戦力であるジョン君が傷付けられるのは本意ではない。相手になるのがこのビーフストロガノフさんだけだとしてもこの数を相手にすれば少なからずジョン君は傷を負うことになるだろう。
仕方なしに横目で義兄さんを見る。
彼は分かっていると云うようにどうぞと促してくれた。フォローは任せろと云う様に。
「・・・・」
義兄さんからの許可をもらい、私はビーフストロガノフの横を通り抜け前に出た。
一瞬彼は戸惑いを見せたが直ぐ私に向かって下がるように叫ぶ。しかし、私は歩みを止めない。迫るデスナイトとの距離があと僅かになったとき。
彼は跪き頭を下げた。
私の表情に笑顔が浮かぶ。
「ネムに云われて来てきくれたのだな。話は聞いている」
喉元を優しく撫でてやりながら彼にしか聞こえない声で優しく労ってやる。
うん。やっぱりこの子は賢いいい子だ。
「お騒がせして申し訳ない。それは私が産み出したシモベ。先程まで村の警備として放っていたのです」
私がジョン君を労っている間に義兄さんは仮面の言い訳も無事にやり過ごした。
「ネムからジョンという名を貰ったのを聞いたぞ。よかったな。これからネムを頼むぞ」
「妹君、失礼。ナナシス殿とお呼びしてもよろしいか?貴女はそのシモベが恐ろしいとは思わないのですか?」
「妹である私が兄様の産み出したシモベを恐ろしく思うとお思いで?従順で純粋。寧ろ可愛らしく思ってますよ」
「そ、そうですか」
全く失礼な。
私がネムのお友達を怖がる訳がないではないか。
そんな事を考えているときに今度はピューレともみじから《伝言・メッセージ》が届いた。その内容は共通したもので村の周囲に複数の人影。村を囲むようにし接近しているとのこと。
それを受け取った私は小さく溜め息をついてエンリとネムが待っている家の方角を見た。
ごめんね。お母さんもう少し帰れそうにないよ。
リハビリが本当に大変です。
モチベーションを上げるのも大変です。