オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 やったー!終わったー!

 とりあえず。書いてたらいつの間にかヒヤッハーしてました。

 反省はしてます。
 だが後悔はしてない!!


無双

「・・・・・え?」

 

 《転移門》を抜けた先に待っていたのは炎の上位天使に串刺しにされた義兄さんだった。

 思わず口から洩れる困惑の声。

 

「そこの美しいお嬢さん」

 

 掛けられた声を耳に視線をずらせばそこにはピューレが言っていた村に近づいていた者達。

 そのリーダー格と思われる男がゲスな視線でを舐め回してきた。

 

 

「見知らぬ魔法で現れたところからしてその魔法詠唱者の仲間と思うが申し訳ない。既に彼は始末してしまった」

 

 ニヤニヤと笑うその表情は村を救う前に見ていた騎士達のそれと全く同じ。なるほどアレはコイツの部下か。

 

「本来ならお嬢さん方も始末しなければならないのだが私は慈悲深い。投降すれば命だけは助けてやろう」

 

 これはアレだ。

 言わずともこの体が目的なのだろう。エンリとネムからも美人と言われているし、アルベドも今は鎧をきているが絶世の美女だ。

 ほんとにどこにでもいるな。この手の男は。

 まるでリアルで働いていた時の取引先のお客さんみたいな目だ。それも1つじゃない。全員の視線が私に向けられている。

 

「貴様。誰に断りを入れてそのゲスな目を向けている」

 

 気持ち悪い。

 その思考の下、男の提案を真正面から斬って捨てる。

 

「・・・なに?」

 

「誰に断りを入れてそのようなゲスな目を妾に向けていると云ったのだ。雑魚どもが」

 

 男の表情が歪む。

 

「不敬であろう。ならば即座に自害するのが礼儀と心得ぬか」

 

「貴様。我が恩情を無下にするか」

 

「恩情?ハッ!恩情とは強者が弱者に使う言葉だ。まさか貴様は己が強者と思っているのか?笑わせるな」

 

 不適な笑みを浮かべ、槍の切っ先を突き付ける。

 

「まだガゼフ・ストロノーフの方が風格はあったぞ?」

 

「く、殺せ!!」

 

 男の指示で飛翔する炎の上位天使達。

 六体の天使はその剣を持って私を葬らんと迫りくる。

 

「はぁ、もっとマシな天使を喚べぬのか?こんなもの妾が手を出すまでもない」

 

 天使の剣が私を捉えようとした直前にある人物が動いた。

 

「・・・・」

 

 爆発的な加速を持って私の前に飛び出した存在は手に持つ巨大なハルバートを用いて一瞬のうちに天使達を全て葬った。

 

「アインズ様の妹君に手出しはさせません!」

 

「ご苦労アルベド。しかし、貴様が着いていながら何故兄様が刺されているのだ?」

 

「も、申し訳ありません!本来なら私が全て向かえ打っているのですが!」

 

「よい。大方兄様のご命令なのだろう」

 

 私に向けて必死に頭を下げまくっているアルベドの頭を苦笑しながらもポンポンと優しく叩いて嗜めてやる。

 さて、そろそろ悪ふざけをしている義兄さんにも動いてもらいますか。

 

「兄様ー。生きておられるのでしょー。そろそろ動いてくださいませー」

 

 動かない。

 

「わかっておるのですよー。怒りませんから動いてくださいませー」

 

 動かない。

 

「いい加減にしないとこの場で火葬するぞ」

 

「ッ!・・・フン!おはようナナシス。針ツボマッサージがあまりに心地よくて寝てしまっていた」

 

 ドスを効かせた声を聞いた義兄さんは慌てて天使ごと剣を引き抜いて地面に叩き付けた。

 後に爽やかな口調で言い訳してきた。

 何気にこのやり取りはリアルでもあった。その時の私は熱々のヤカンを手にして義兄さんを起こしていたのはいい思い出だ。

 

「おはようございます兄様。快眠だったようでなによりです」

 

 なにが快眠だ。アンデットは寝ないだろう。

 まったく、大方私が慌てる姿が見たかったのだろうが現状では無理がある。

 

「さて、アルベドよ。ナナシスの警護ご苦労」

 

「労いの御言葉光栄に存じます。しからばあの者達の排除の命を私に」

 

「まぁまて、アルベドがやってしまっては妾の出番がないではないか。兄様、先程はああ言いましたが実は娘達が見ているのです。是非ともここは妾に」

 

「アルベド。すまぬがここはナナシスに譲ってやってくれ」

 

「畏まりました。ナナシス様も出すぎた真似、もうしわけありません」

 

 さて、それじゃそろそろ始めようか。

 

「待たせたな。貴様等には妾に付き合ってもらうぞ。簡単に死んでくれるなよ?」

 

「全天使でかかれぇ!やられても再度召喚するのだ!!」

 

 

 迫りくる天使を横目に私は獰猛な笑みを浮かべる。

 私も姉達同様なかなかの廃課金ゲーマーだった。一番大好きなのはもちろんユグドラシルなのだが。昔からあった今では手当たり次第無双しているあのシリーズも好きだったりする。

 

「アハハハハハハッ!どうした全然錬度が足らぬぞ!!」

 

 単身群れの中に突っ込んだ私はヒラリヒラリと天使の剣を避け続け、丁寧に一匹ずつ四肢を削ぎ、翼をもぎ、頭を斬り飛ばす。

 全く当たる気配のない私にリーダー格の男は叫ぶ。

 

「絶えず攻め続けろ!一体ずつ消されようと召喚するのだ!!」

 

「む、心外だな。妾がわざわさ一匹ずつ仕留めてやっているというのが分からぬのか?ならばこのような技はどうだ?ーーハンドレットスラッシュ」

 

 天使群れの中心で蒼白い光が瞬く。

 直後、私を中心に周囲を凄まじい数の剣閃が煌めいた。

 

 ーーーハンドレットスラッシュ。

 ユグドラシル。戦士、騎士系職が覚えるアーツスキル。

 連続した斬撃を放つスキルだが、ハンドレット。百と謳っている癖に実際は5分の1、20連しか放たないスキルだ。しかも一撃一撃が弱く足して普通の一撃3発分にしかならないし、発動してから終わるまで1秒弱もかかるなんとも微妙な魅せスキルだ。

 ほんとに運営は何を思ってこれを創ったのか。

 

『義兄さん義兄さん!このスキルユグドラシルだったら正面にしか撃てないのに今、好きな方向に斬撃を飛ばせたよ!』

 

『マジか!くそぅ、この時だけは戦士職が羨ましい!!』

 

 しかし、その魅せスキルを楽しんで使ってこそユグドラシルゲーマー。自慢気に報告する私と羨ましがる義兄さん。

 さらに自慢するために更なる技を披露する。

 敵の残りはあと15体か。

 

「そらそら!早く召喚せねば天使が尽きるぞ!」

 

 再び魅せスキル。こちらはさっきのあれと違い、ちゃんと実用性のあるアーツスキルだ。

 

 群れの中心から飛び出すように上空へと跳んだ私は冥界の冷槍を真下に投擲するように構える。

 それに呼応するかのように周囲に展開した大量の槍。

 その槍の全てが愛槍である冥界の冷槍と同じ姿をしていた。

 

「ーーーサウザンドジャベリン!」

 

 私が槍を投げ下ろすと同時に周囲の槍も全て真下に向かって射出された。

 

 ーーーサウザンドジャベリン。ハンドレットスラッシュの後にユーザーのクレームによって槍使いのみに生まれた贔屓スキルの1つ。

 装備している槍の75%の威力を内包した槍を周囲に展開、射出するアーツスキル。まぁ、もちろんサウザンドと謳ってはいるが実際は30本。それでも装備が強ければ威力も上がるので弾幕として槍使いにはなかなかに重宝している。問題点は燃費なのだが。

 

『あー、MPは大丈夫か?それ、燃費悪いだろ?』

 

『大丈夫!私にはオーオバー姉様仕込みのスキルがあるから!今着てるこれもその1つです!』

 

『それずるくねぇ?』

 

 七姉妹長女オーオバーさん仕込みの装備のおかげてよっぽどの連発じゃない限りガス欠にはならないのだ。

 そしてこれで最初にいた天使は全て始末した。

 まだ足りない。

 消え行く槍達の中心に着地した私は催促するかのように恍惚の表情で天使を使役している連中を見つめる。

 

「早く、次を出せ。まだ足らぬぞ。このままでは皆死んでしまうぞ?」

 

 ヤバイ、楽しい。

 この状態のロールプレイも高揚感もひさしぶりだ。

 次々と再び召喚されていく天使を見て私は口をつり上げる。

 あは。そうこなくちゃぁ。

 多分義兄さんは私のこの状態にドン引きしているだろうけど。七姉妹の中じゃ普通なのよ?

 だって私はギブ・ミー姉様の妹だし、色気だってLOVE&デス姉様をずって見てたんだからそんな私が姉達の影響を受けないはずがないでしょ?

 飛翔する天使に紛れて飛んできたファイアボールを叩き斬る。

 

「あはは!もしかして妾に魔法戦を挑むの!?がんばるヤンデレ姉様と兄様の妹の妾に!?いいわよぉ!きなさいな!!」

 

 口調も崩れつつ槍を地面に突き刺して両手を前に掲げる。

 飛来する魔法と天使達に向けて

 

 

「ファイアーレイン、エメラルド・サルコフアガス、ショック・ウェーブ、チャージ・オブ・スタラグマイト、ファイアーボール、アシッド・ニードル、ダークレイーーー」

 

 第一、二位階魔法を三重化魔法無しで撃ちまくった。

 この時、普通なら舌を噛んでしまいそうになるがそこはご安心を早口言葉は七姉妹2位、オーオバー姉様には負けるけど自信があります。

 え?発動後のクールタイム?あはは。オーオバー様の異名をお忘れですか?

『ケアルマシンガン』の妹ですよ?私の早口言葉の速度に合わせてとっくに装備で調整済みです。

 

「な、なんなんだ貴様は!」

 

「どこにでもいるパラディンで~す!というか殿方が何を情けない声を出してるんですかぁ!?ホラホラ!もっとがんばって妾を楽しませてくださいな!マス・ターゲティング。アーク・エンジェル・フレイム!」

 

 ーーーーチェイン・ドラゴンライトニング。

 

 

 直後、凄まじい雷光が一帯を覆い尽くした。

 

 直ぐに光は収まり、もとの平原が姿を現す。

 消え行く光の粒子を見つめながら私は未だに帯電している右手を頬にあてて熱い吐息を吐く。

 

「はぁ、やはり無双って最っ高・・・」

 

 そんな私を他所に魔法戦を挑んできた男達は全員が尻餅をついて恐怖していた。

 

「もう・・・終わり?」

 

「ぷ、監視の権天使!かかれぇ!!」

 

 リーダー格の掠れた声に従って現存する最後の天使が突貫を仕掛けてきた。

 全身を鎧に包んだ天使は己の得物であるメイスを私の脳天目掛けて振り降ろす。

 

「あは、かわいっ」

 

 私はそのメイスを左手で受け止めると今一度吐息を吐く。

 

「お前はそんなに弱いのに妾に挑んでくるのねぇ。分かっているのでしょ?妾がどんな存在かと」

 

 ご褒美をあげると付け加え、必死にメイスを引き離そうと引っ張る天使に抱き付く。

 

「インブレイス・デス」

 

 監視の権天使がもがき苦しみ出す。

 天使に声帯があったらきっと耳も塞ぎたくなるような断末魔を上げていたことだろう。

 

 ーーーインブレイス・デス。

 

 文字通り死の包容と呼ばれる即死魔法。

 セクハラ対策が凄いユグドラシルに存在するネタ魔法の1つ。

 女性のオーバーロードしか取得できない射程範囲が腕の中という魔法なのだがまとも使い道がない。

pvpでは相手が女性でもセクハラに引っ掛かるし、上位のモンスター相手では抱きつこうものならこっちの身が危ない。 真っ当な使い道としてはロールで遊ぶぐらいのネタ魔法だ。

 ちなみに姉達と一緒に縛りプレイをしたことがあるのだけど低レベルのダンジョンに赴いた際には私はこの魔法を用いた抱き付き魔となり、ピンチになってた初心者達を助けては更に震え上がらせた。ちなみにその時の動画を誰かが撮影しており、七姉妹の悪行として掲示板に晒された。一応ファンもいたらしい。

 しかし、ネタといえ侮ることなかれ。実はこれかなり即死成功率が高い。

 何度か上位ダンジョンのボスに成功した実績をもっているのだ。

 余談はさておき、天使を光に還した私の表情は未だに恍惚としている。端から見れば危ない女。

 まだまだ無双して遊びたいがお家ではエンリとネムが待っているのでそろそろおしまいにしよう。

 

「ありがと。ひさしぶりに楽しめたわ。お礼に最後はとっておきで殺してあげる。ーーー超位魔法・ゴゥ、アイタッ!?」

 

 

 とっておきを使おうとした際、脳天に走った激痛。

 その場に踞る私は揺れた視界を必死に定めつつも頭を押さえながら後ろに振り返る。

 

「やりすぎだバカもん」

 

 そこにいたのはさっきまで静観してくれていた義兄さんとアルベド。義兄さんはその赤い眼光を呆れながら私に向けており、その傍らでアルベドが申し訳ありません!と必死に何度も頭を下げている。どうやら私はアルベドにハルバートで頭を殴られたようだ。

 道理で痛いはずだ。義兄さんの筋力パラメータでは私に大してダメージは通らないからね。

 

「こ、こほん。申し訳ありません兄様。どうやら妾は少しハメを外し過ぎたようです。アルベドもそこまで謝る必要はない。よく止めてくれた」

 

「きょ、恐縮です」

 

 危ない危ない。あのままだったら広域即死魔法を撃つところだった。彼奴は貴重な情報源。義兄さんに回収してもらわないと。

 

「それで、アレはどうされますか?」

 

「その前に、お前に客だ」

 

「客?」

 

 義兄さんが親指を立てて後ろを指差していた。

 そちらに視線を向けると小さな羽根をぱたぱたさせて飛んでくるオーオバー姉様の末娘、ベルがいた。

 

「ベル!」

 

 胸の中に飛び込んできた娘を優しく受け止めてあげる。

 どうしてベルがここに?空でピューレと一緒だったはずだけど。

 

「し、失礼します!!」

 

 そう思っていたら義兄さんの影からピューレが出てきた。

 連続した娘の登場に嬉しくなったが。あることに気付いた。

 なにやらピューレの様子がおかしい。

 目に涙を浮かべ、内股でプルプルと震えていた。

 

「じょ、女王のお勤めの間際、と、とちゅじぇんのえっ、えっけんをおゆるし、ぐださい」

 

「ちょ、ちょっとなに泣いてるの!?」

 

 突然の事に戸惑う私。

 え、なんで泣いてるの!?

 私なんかした!?

 

「お前、娘達にあの状態を見せたことあるか?」

 

「当然でしょ?私がキレたら即死魔法連発するデス・パラディンだって皆知ってーー」

 

 あ、見せてない。さっきの無双大好きドSモードは見せてなかった。

 インブレイス・デスも見せたことない。

 だって万魔殿にくるの皆レベル100だし。

 

「私もひさしぶりにあの姿を見たがなかなかに恐ろしかったぞ?」

 

 ああああああああっ!!

 もしかしてピューレは私を怖がってたの!?

 もしかして、デス・パラディン状態の先があの姿だと勘違いしてる!?

 

「あぁっ!ごめんなさいピューレ!怖がらせちゃったね!ほら、義母さんはもうもとにもどったわよ!!」

 

「が、かあざん。いつもは、あんなんじゃ、ないのに。アタシ、アタシ・・・かあざんが、おかしくなった、っで」

 

「おかしくない。おかしくないなってないよ?ほら、義母さんいつも通り!」

 

 それから5分私は必死に娘を宥めた。

 その間、もちろん近場にいた娘達も含めてだ。

 しかし、相変わらずセブンスチァイルドはマイペースよねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々を無視するなぁ!!」

 

 ピューレをベルの力を借りてやっとのことで泣き止ませた時に耳に入った煩い声。

 視線を向ければそこには再び天使を召喚した男達。

 中でもリーダー格の男は私達に見えるようにクリスタルを掲げていた。

 

「この化け物どもが。何を家族団欒としている!見よ!この古の輝きを!これより最高位天使を召喚する!!」

 

 美しい輝きを放つクリスタル。

 私と義兄さんはそのクリスタルに覚えがあった。

 

「・・・あれはまさか魔法封じのクリスタル」

 

「クリスタルの輝きから察するに第十位階までの魔法を封じられる代物ですね」

 

 どうやらこの世界にはユグドラシルのアイテムもあるらしい。

 あの男の言葉から推測すると召喚される最高位天使の正体は・・・。

 

「義母さん。必要ならアタシが対向手段として天殺の堕天竜を召喚するけど?」

 

「召喚するには時間がかかるでしょ?彼奴はアレを砕くだけなんだから、貴女は下がってなさい」

 

「チッ、アルベド。スキルを使用し、ピューレとベルを守れ。至高天の熾天使が出てきたら全力で戦う必要がある」

 

 義兄さんの指示に従いアルベドはピューレとベルの前に立つ。

 それを確認した後に私は前衛として義兄さんの前に出る。

 

「兄様。先手を打たれようともなんとか一撃をしのいでください。奥の手を使い、至高天の熾天使を一撃で葬ります」

 

 その際に周囲に待機している娘達に後退命令を出す。

 いくら私の娘達がいい子でも殆どがカルマ値マイナス寄りだ。至高天の熾天使の攻撃なんか受けたらただじゃ済まないし、瞬殺できないから娘達にも被害がいくかもしれない。

 ほんとなら奥の手は使いたくなかったが仕方がない。元にもどれないかもしれないが娘を守るためだ。その為なら喜んで“化け物”になってやろう。

 娘を“化け物”にすることなんかよりはるかにマシだ。

 

 そうしてる間に男の手の中で規定の使用方法に従いクリスタルが破壊された。

 それはまるで日の出の瞬間のようだった。

 白く染め上げられるように光に包まれた。

 その中で男が歓喜の声を上げる。

 

「見よ!最高位天使の輝きを!威光の主天使」

 

 その天使は光輝く翼の集合体。

 翼の塊から出る手が王権の象徴である笏を持っているだけであとの手足といった四肢は存在しない。

 異様な外見であるがそれが威光の主天使。至高善の存在である。

 

「どうだ!最高位天使のその姿は!!」

 

「貴様等化け物もこれで終わりだ!」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 声を出せないでいる私達をよそに男達は喝采を上げる。

 彼等は勝利を確信しているのだ。

 

 そんな彼等の歓喜の感情を向けられた私は

 

 

「・・・あー、兄様?兄様の予想では確か至高天の熾天使でしたよね?妾にはどう見てもあれは威光の主天使に見えるのですが。どうでしょうか?」

 

「・・・見間違いではないな」

 

「そうだ!怯えるのも無理はない。これぞ最高位天使の姿だ!」

 

 その言葉を聞いて私は思わず眉間に手を当てる。

 その間もなにやら演説をしていたが全て無視。

 なんか彼方さんは騒いでいるようだけど

 

「本当に・・・下らん」

 

 黙らせる仕事は義兄さんにやってもらおう。

 

「この程度の幼稚なお遊びに警戒していたとは・・・すまないなアルベド。わざわざスキルを使わせたのに」

 

「ピューレも覚えておきなさい。主天使は上から四番目の天使階級で間違っても最高位天使なんかじゃないの。相性最悪のエリザでも楽に勝てるわよ」

 

 完全に興味の失われた私達はもはや相手にするのも馬鹿馬鹿しかった。

 そんな私達の態度にさっきまでの歓喜が嘘のように消えていた。

 

「何故だ!何故、最高位天使を前にそんな態度ができる」

 

「だからそいつは最高位天使ではないと言っておるだろうが」

 

「いや!ありえん!ありえん!ありえん!コイツは最高位天使だ!魔神にすら勝利した存在だぞ!」

 

「そいつでも下位の魔神族。最弱とされたあのモンスターには勝てるだろうな。アンデットなら威力は跳ね上がるからな」

 

「あぁ、あれは弱かったですね。妾達七姉妹の中ではオーオバー姉様の独壇場でしたが」

 

 回復魔法が弱点のあの魔神はオーオバー姉様のケアルマシンガンで最速討伐記録が立てられているほどだ。

 さて、とくに驚異はないので後は義兄さんに任せよう。

 

「善なる極撃を放てぇ!!」

 

 そう思っているとなにやら娘が私に何かを訴えていた。

 

「分かった分かった。なにもしないからとっとと「あ~申し訳ありません兄様。なにか食べ物をお持ちではないですか?」いや?ネムにあげたのが最後で今は持ち合わせてないが」

 

「マァ、マンマ!」

 

「あぁー、ごめんね。ママ今はなにも持ってないのよ。ピューレとアルベドは?」

 

「ご、ごめん、アタシも持ってない」

 

「申し訳ありません私もなにも持ち合わせておりません」

 

 威光の主天使がチャージしている目の前でぶすっとグズる赤ん坊とそれを必死に宥める大人達。

 無視されていることに腹を立てたのか威光の主天使の手に持つ笏が音を立てて砕けちった。

 その破片は持ち主の周囲をゆっくりと旋回し始める。

 それは召喚毎に1度しか使えない特殊能力による魔法威力増幅。

 それを用いて自身の全力を叩き込むつもりなのだろう。

 しかし、奇しくも一人の悪魔がその音を聞いて獲物を見つけてしまった。

 

「マンマ!」

 

「え?ベル、アレ食べるの?羽と骨しかないと思うけど」

 

「まぁ、本人がアレでいいって言ってるからいいんじゃね?」

 

「おい、何を言っている?」

 

「兄様。べつにアレは始末してもよろしいのですよね?」

 

「まぁ、そのつもりだが」

 

「畏まりました。ベル、お許しが出たわーー」

 

 

 

 

 ーーーー喰らいなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の帳が降りた草原を歩く私達。

 見上げれば満点の星空が浮かび、私は二度目となる星空の散歩を楽しみながら村へと歩みを進める。

 この時私は義兄さんから《伝言・メッセージ》を用いての追及を受けていた。

 

『いい加減白状しろ!なんだベルのあの魔法は!あんなの見たことがないぞ!?』

 

 腕の中のベルに甘えられながらも義兄さんは私をを睨み付けてくる。

 アルベドはヘルムを外して義兄さんの傍らにいて終始嬉しそうに想い人である義兄さんを見つめていた。

 あの時、私が許可した直後に威光の主天使の上半身はギザギザに割れた空に文字通り喰われた。

 義兄さんもアルベドもなにが起こったのか判らなかっただろう。

 最終的にたった二口で威光の主天使を喰ったのはセブンスチャイルドの一人であるベルなのだ。

 ベルが使ったは義兄さんでも知らない魔法。

 だから今、こうして私を問い詰めている。

 

『・・・ウチの最強戦力であるセブンスチャイルドは普通のNPCを創る方法とは全く違う方法で産まれたの』

 

『それで?』

 

『以前私達はワールドエネミーを倒したって言ってたでしょ?その時に手に入れたワールドアイテム《七罪紙片》というNPC製作スクロールで創ったのがセブンスチャイルドよ』

 

『・・・おい。まさかワールドエネミークラスのポテンシャルがあるなんて言わないだろうな?』

 

『体力値は100分の1。その他は10分の1。スキル云々はそのままだったはずよ?』

 

『・・・運営の連中、二十の他にそんな壊れアイテムを』

 

 更に本当はそれぞれのスクロール使用者はスペシャルスキルを獲得するのだけどこれはまだ教えない。

 それが私の奥の手だ。

 

『ベルは悪魔化したら本当に化け物みたいな姿になっちゃうから悪魔化は本当の最終手段としてるの。そうなる前に私達母親でけりをつけてるんだ』

 

 悪魔化した姿は何をやっても弄れない。だったら人化の姿はおもいっきり可愛らしくして悪魔化させないために私達が頑張るのだ。

 

『ベル達のこと怖がらないでよね?』

 

『こんなになつかれてるのに怖がれってのが無理だろ』

 

 義兄さんは腹の中の玉の上で玉をハムハムしているベルをどうよと見せてきた。

 思わず小さく吹き出してしまったがどうやら義兄さんは変わらずベル達に接してくれそうた。

 

『話はかわるけど義兄さんに預けたあの男達はお願いね?』

 

『任せろ。此方でキッチリ情報を引き出しておく。そっちもリィリィ達には礼を言っといてくれ。情報系魔法に対する対処をしていてくれたんだろ?俺はすっかり忘れていた』

 

『うん。ちゃんと伝えとく』

 

「あ、兄様。今度迎えを寄越すのでちゃんと我が家へ来てくださいね?リィリィと約束したんですから」

 

「わかっている。その際はアウラとマーレも一緒になのだろう?ついでだシャルティアも連れていってやるか・・・」

 

「ムササビ様!ムササビ様!恐れながら私もお伺いしても宜しいでしょうか!」

 

「え、・・・アルベドのドレス作れるかしら?」

 

「お嬢様方のお口に合いそうなお菓子を作って参りますので是非!!」

 

「んー、まぁよい。女性でそなただけ仲間外れも寂しかろう日程は兄様に伝えるので一緒に参るがよい。あ、忘れていた。アルベド、そなたにシャルティア、アウラ、マーレの採寸を頼みたい。もちろんそなたのもだ。計り終えたら、そうだな、二日後にリィリィを向かわせるので伝えてくれ。くれぐれも嘘はつかぬようにな」

 

「ムササビ様の寛大なお心に感謝を。そして御用命確かに承りました」

 

 流石にスリーサイズ云々は義兄さんに伝え辛いだろうしね。

 リィリィには申し訳ないけどちょっと頑張ってもらいましょう。

 

 こうして私達は楽しく女の子らしくお菓子やドレスなどの話題を話し、それを義兄さんも楽しそうに眺めながら家路についたのだった。




 いやー、今までで一番ながかったです。

 あとは辛辣な批判は控えていただけると嬉しいです

 ベルちゃんの温めていた設定を解放したんです!
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