オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 まずは前話で読者の皆様に不快な想いをさせてしまった事をお詫び申し上げます。

 最新話があれだと気が滅入ってしまうのでさっそく本編を投稿。
 お目直しにどうぞ。

 》2月26日19時57分。ご指摘いただきました誤字に逢わせて加篳修正しました。


殺戮の後日《加筆修正》

 娘達が寝静まったころ。私はゆっくりとベッドから身体を起こす。

 そこは亡くなったエンリとネムのご両親が使っていたダブルベッド。

 私を中心として両隣にアルーシャとベル、その更に外側でそれぞれまだ赤ん坊の妹を抱き枕にしながら新しい娘達は寝ていた。

 エンリはアルーシャを、ネムはベルをまるで守るように腕の中に抱えている。

 規則正しい寝息が私の耳にも届いて二人が安心していることが分かる。

 

「・・・マァマ?」

 

 そんな中。起き上がったのを察したのかアルーシャが、わずかに瞳を開いて私を見つめる。

 

「ごめんなさい、起こしちゃったわね。ママちょっとだけお仕事してるからお姉ちゃんと寝てて」

 

 アルーシャの頭を撫でながら小声で呟く。

 愛娘は了承したようで姉の胸に顔を埋めて再び規則正しい寝息をたて始めた。

 さて、朝まであまり時間もないからさっさとやりますか。

 

「グレーター・テレポーテーション」

 

 私は音もなくベッドの上から姿を消した。

 移動した先は一階のダイニング。

 

「あ、ママ!言われたとおりに持ってきたよ!」

 

 そこにいたのはセブンスチャイルドを除く全姉妹の末の妹。若いが実力はセブンスチャイルドを除いて姉妹トップに君臨する鬼神。

 守護者統括という肩書きをもつ、現在のギルド地獄の七姉妹No.2であるキャサリンだ。

 

「こら、上では皆寝てるんだから静かにしなさい」

 

 普段は天真爛漫な彼女。しかし、一度戦闘となれば姉達の生存率を引き上げる為に策謀し、危機となれば嬉々としてその暴力的な力をもって蹂躙する。

 そんな彼女が産まれた理由は私達七姉妹が一通り娘を産んだ後に、

 アレ?なんか纏め役いないね。

 頭のいいこいないね。

 それじゃ一番下の子は守護者最強にしょっか?

 いいねぇ、お姉ちゃん達を守る為に頑張る妹って感じ?

 皆でつくろっか?

 

 試行錯誤すること1週間。こうして誕生したのが彼女である。

 

「あ、ごめんなさい。・・・うん、しっかりしないと。もう私はアルーシャちゃんと同じ末の妹じゃないもんね。お姉ちゃんなんだよね」

 

 キャサリンは感慨深く小さな声で私はお姉ちゃん、私はお姉ちゃんと小さく繰り返している。

 そう、貴女はもうお姉ちゃん。昔と違って今は自分より弱い妹がいるのだから今までとは違う見方、考え方をしなければならない。

 力ある姉達は沢山いるけど、貴女みたいに一を知って十を導き出す子はいない。

 ずっとついていることができない私達の代わりにその深い思慮で二人の妹を守ってあげてほしい。

 けっして私みたいにならないでほしい。

 そんな願いを込めて私は一言、姉達と一緒に作り上げた最後の宝にエールを送る。

 

「がんばってねお姉ちゃん。さ、それじゃ仕事しましょうか?」

 

「はい。あ、ママ・・じゃなくて、御母様服はそれでいいの?なんならピオーネお姉ちゃ、じゃなくて御姉様に持ってきてもらうけど」

 

「そこは別にママやお姉ちゃんでいいわよ。まぁ、今はこれでいいわ」

 

 思考の海から戻ってきた彼女は私の服装を指差す。

 今の私の服装は寝間着。

 それもけっこう薄く、際どい奴。俗にいうベビードールだ。

 これはLOVE&デス姉様が私にくれたプレゼントで数少ないまともな装備の一つ。

 真面目に選んだらセンスは抜群なのになんで普段はああなんだろ?

 そんな事を考えながらテーブルについた私に傍らからかなりの量の羊皮紙を差し出してくる。

 これからやるのはシモベや娘達の報告書と提言書への返答及び許可。そして万魔殿運営面の確認と炙り出しだ。

 唯一の救いが報告書が日本語で書かれていることだろうか。

 

「それじゃ始めましょうか。貴女も妹の寝顔が見たいだろうからテキパキやるわよ」

 

「はい。それでは始めの報告からですーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?御母様?」

 

 日がまだ登らぬ薄暗い時間に私は目を覚ました。

 習慣とは凄いもので昨日はあんな事があったのに翌日にはいつも通りに起きてしまった。

 ベッドから身体を起こして義母を探すが姿は見当たらない。

 もしかして下でなにかしているのだろうか?

 寝間着を着ているアルーシャちゃんの手を優しく離して、ネムの方に動かす。

 ネムはそれを感じとったようでアルーシャちゃんの手を優しく握った。

 流石私の妹。もうお姉ちゃんとしての自覚がでてきたようだ。

 

 さて、こうしちゃいられない。早く下に降りて朝御飯の準備をしなければ。

 とくにベルちゃんはかなりの大食いと聞く。

 材料はあまりないけど追加で裏の畑から採ればなんとかなるはずだ。

 そっと息を潜めてベッドから抜け出して自分の部屋に向かう。

 そこで身嗜みを整えた後に顔を洗うために一階へと降りた。

 

「ですので現状は伯父様の配下であるアウラと同様の範囲が探索完了となってます。都市へは現在、第三階層守護者エリザの妹、テレサが潜入し、情報収集を行ってます。此方は厳命通りに人間に危害は加えず、接触も無しで可能な限りの情報を集めてる最中です。現段階の成果はお手元の資料に纏めてあります」

 

 ダイニングから知らない人が御母様の前で喋っていた。

 ひらひらのついた赤いお洋服の女の子。

 綺麗に背筋を伸ばしながら話す彼女はどこかのお嬢様のように思える。

 

「以上を持ちましてご報告を終了します。細部につきましては恐れ入りますがそちらの資料をご確認ください」

 

「ありがと。軍事面についてなんだけどアレは候補なんでしょ?」

 

「うん、それは妹達を考慮してなかったんだ。伯父様がうちに来るまでには草案を纏めておくね?もしもの時、二人に被害がいかないようにするし最悪万魔殿の中で生活できるように環境もととのえとくよ」

 

「頼むわね」

 

 御母様と女の子の話が一区切りしたようだ。

 今なら出ていっても大丈夫かな?と思った時に

 

「お仕事終わったから来ても大丈夫だよ~」

 

 と女の子が呼んできたので緊張しながらも小さく気合いをいれて私はダイニングへと入っていった。

 

「わ~。貴女がエンリ?私はキャサリン。よろしくねー妹ちゃん」

 

 歩み寄った私をまず迎えたのは真っ赤なお洋服の女の子。

 パタパタと駆け寄って手をとると嬉しそうに握手を交わしてきた。

 金髪の長い髪を2ヶ所で結った彼女の前髪から小さな角が覗いていることから彼女も人間ではないのだろう。

 

「わー、わー!柔らかい!いいにおい!かわいい!」

 

 本当に嬉しそうにしてくる彼女を見て私の表情にも笑顔が浮かぶ。私より幼く見えるけど彼女もまた私の新しい姉なのだと理解した。

 

「はじめまして御姉様。エンリです」

 

「そんな仰々しい!私には敬語なんていらないよ!私はエンリの一つ上のお姉ちゃんなんだからもっと楽によんで!!」

 

「それじゃ、よろしくね・・・姉さん」

 

「うん、よろしくよろしくー」

 

 まるで子供のような反応を聞いてこれがさっきまで芯を通して喋っていた人物だとは思えなかったのは私だけの秘密。

 

「あら、キャサリンは随分エンリのことが気に入ったみたいね」

 

「だって妹だよ?柔らかいし、いいにおいだし、かわいいし、かわいいし!」

 

「大事なことだから二回も?ふふっ、おはようエンリ。日の出まで時間あるけどいつもこの時間なの?」

 

「おはようございます御母様。はい、いつも大体これぐらいですね。朝御飯の準備をしないといけませんから」

 

 テーブルにつきながら白骨化している右手を振っている御母様。

 今は眼帯もしていなければ一緒に寝たときの下着のような寝間着のままだ。

 それにより改めて御母様は人間でないと確認した。

 けど、御母様は御母様だ。

 私達に新しい家族をくれてた母親。

 まるでほんとのお母さんみたいに暖かい人。

 

「あ、朝御飯なら私が万魔殿から持ってきたよ。ベルちゃんもいるから沢山ね。もちろんエンリ達も食べれそうなパンとかハム、果物。保存が効くのもあるから」

 

 そんな母親に愛されているからか娘である姉達や妹達もとても暖かい。

 姉は妹に不自由させまいと気を使い。

 妹は姉に手放しの信頼をよせてくる。

 

 私は彼女達の家族になって本当に良かったとそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然の謁見失礼いたします姫様」

 

 

 御母様達がお帰りになられた後のある日の朝。日も出ない私がいつも起きる時間。我が家に一人のお客様がいらっしゃった。

 

 それは下半身が馬で上半身が鎧を身に纏った女性。

 前足をつき、頭を下げる彼女はまるで騎士を思わせる。

 

「えっと、どちら様でしょうか?」

 

 私を訪ねてくる人外の主は二人しかいない。御母様かモモンガ伯父様である。

 私の予想では前者だが。

 

「ハッ、私は地獄の万魔殿、第一階層守護者クロア様の親衛隊をしている者です」

 

 ここで私は守護者統括である姉さんから教えてもらった事を思い出す。

 御母様とモモンガ伯父様はそれぞれの組織のトップ。

 二人とも組織を守る為に守護者を配置して守っているのだが。

 守護者には場合によるが親衛隊や近衛がいるらしい。

 ちなみに姉さん達は全員親衛隊を持っているとか。

 第一階層守護者でいらっしゃるクロア御姉様は御母様と一番仲の良かったギブ・ミー義母様の長女。そのクロア御姉様の親衛隊が目の前の女の人なのは分かった。

 姉さんからの注意事項として私達姉妹以外は全てシモベで万魔殿の兵士であり騎士。

 御母様や今は座におられない義母様は彼女等にとって女王。その娘である私達は姫の位、王族になるらしい。

 だから、むやみに自分は姫なんかじゃないなんていって困らせてはいけないそうだ。あと、私に直接謁見するなら最低でも親衛隊長や近衛の長がくるのが普通とか。

 ちなみにジョン君はネムの騎士で親衛隊隊長のポジションだそうです。凄いねジョン君いきなり隊長さんだって。

 今もネムの安眠を守る為に家の回りで警備をしている騎士に尊敬の念を送る。

 さて、朝早いがせっかくのお客様。それももみじ御姉様と同格の姉からの使者がいらっしゃったのだ。さっそく家に入ってもらおう。

 

「クロア御姉様の親衛隊隊長さんでしたか。ここじゃ目立つのでどうぞ中にお入りください」

 

「な、なんと!私ごときが姫様の宮に入るわけにはいきません!」

 

 あ、これはめんどくさい奴だ。

 私は瞬時に悟った。

 いや、確かに親衛隊長さんの気持ちもわかるよ? 

 私だっていきなりお妃様の部屋に招かれたら恐れ多くなっちゃうし、下手したら気絶しちゃう自信だってある。

 けどね?ここは玄関口で目立つの。村の人は私が亜人種と親密な関係だったり、母親がアンデットだなんて知らないの。

 バレたら御母様達に迷惑が掛かるのがわからないかなぁ。

 

「はぁ、いいから入りなさい。他の村人に見つかったらクロア御姉様にもご迷惑がかかります。それは親衛隊の貴女としても本意ではないでしょ?」

 

「は、はい。それでは失礼します」

 

 私の説明に納得したようで親衛隊長。長いので隊長さんと呼ばせてもらうが。彼女はビクビクしながら我が家に入ってきた。

 

 ちょっと狭いがリビングにいてもらおう。

 リビングへ招き入れた私は彼女に紅茶を差し出した。

 丁度朝食の準備も終わって、さあ一息着こうという所に彼女が来たのだ。

 お客様なのだから邪険に扱うつもりはないが彼女はクロア御姉様の親衛隊。妹として精一杯もてなさせてもらおう。

 

「こ、このような姫様がお手自らお淹れになったものを私ごときがーーー」

 

「一度出した物を引っ込める趣味はありません」

 

 思わず言葉に怒気を込めて言ってしまった私は悪くない。

 

「い、いただきます」

 

 こうでもしないと彼女はお茶一杯飲めないのか。

 まぁ、確かに見た目からして騎士なのは分かるけど。これはあまりにもめんどくさい。まさか、わざとやっているのではあるまいか。

 

「飲みながらで結構ですので。御用をお伺いしたいのですが」

 

「は、はい。本日は女王陛下より姫様への書状を承ってます」

 

「御母様から?」

 

「はい。こちらに・・・あ、あれ?」

 

 腰の辺りを手でまさぐって突然慌てだした隊長さん。

 身体のあちこちを触っては次第に顔が青くなっていく。

 あ、これはもしかて・・・。

 

「もしかして落としちゃいました?」

 

「そ、そんなことはございません!こ、ここに!確かにここにあったのです!」

 

 あ、落としたんですね?

 まぁ、こんな夜更けに森の中を全力疾走したらあるものもなくなる。

 しかし、どうするか。私が隊長さんの案内で御母様の所にいってもいいけど、きっと隊長さんはクロア御姉様に怒られる。

 私としてはわざわざ来てくれたのにそうなってしまうのは本意ではない。

 

「おはようございます。親愛なるエンリ。親愛なるクロア御姉様のところの“馬”。いらっしゃいます?」

 

 そんな事を考えていたら。二階からネムを抱き抱えて私が降りてきた。正確には私の姿をした姉、女王ムササビの三女ピオーネだ。

 二階にはネムしかいなったはずなのだが状況から推測するに魔法でやってきたのだろう。

 まだ寝ているネムを抱き抱えているピオーネ御姉様は僅かに頬をひきつらせた笑顔を浮かべている。

 あ、これは怒っている。怒っているけど私や寝ているネムの手前、怒れないから我慢してるんだ。

 

「ぴ、ピオーネ・・・様」

 

 隊長さんの血の気がストーンと引いて、真っ青になった。

 うん、ごめんね。こうなったら庇護できないよ。

 

「親愛なるクロア御姉様の親衛隊はみんなわざと叱られるために失敗しているのですか?親愛なる御母様から勅命を受けたにも関わらず、書状と荷物を持たないで飛び出すなんて」

 

 ピオーネ御姉様は私に書状を渡す。

 細かい彫りを刻まれた封筒に蝋印で封をされたもの。

 詳しく言うにはわざわざ御母様が第一階層にまで出向いて頼んだのにも関わらず。大きな声で返事だけして飛び出したらしい。

 その時の御母様は眉間に青筋が浮かんでて怖かったとか。

 

「それが親愛なる御母様の書状ですわ。それでこちらは親愛なるお二人にと」

 

指を鳴らして私達あてに預かっていた荷物をテーブルに出現させた。

 相変わらずの魔法。話によれば此れくらいならば魔法を修めている姉達なら皆できるらしい。

 現れた荷物は同じ箱が2つ。そのどちらも光沢のある黒い箱に綺麗な金細工を施されていた。

 それらを確認した後にピオーネ御姉様はでは本題に入りますと云い小さく咳払いをした。

 

「親愛なるエンリ。親愛なる御母様は貴女とネムに女王の娘として初めての職務を命じました」

 

 その言葉を聞いて私は背筋を正す。

 御母様から頼まれた初めてのお仕事。

 いったいなんだろう。全然想像できない。

 

 

 

 

 

 

「二日後地獄の万魔殿にギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター、モモンガ様を招きます。二人には伯父様を御迎えにあがるようにとのことです」

 

 

 

 




 今後は間幕《沙織》シリーズを書くときは本編を逢わせてその日に連続して投稿します。
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