間幕《沙織1》みたいな鬱になる話ではないのでどうぞご覧ください。
あー、参った参った。
本当なら今頃万魔殿で御姉様達とのんびりお話ししてるはずなんたけどなあ。
心のなかで小さな溜め息をつきながら周囲を見渡す。
崩れた建物の数々。
きっと最盛期は大都市として人で賑わっていたと思われるその場所はゲームユグドラシルにおいて荒廃したと云われるフィールド。
まぁ、今現在そのフィールドは今別の理由で賑わっているのだが。
「へへへっ。やっと追い詰めたぜ?デス・パラディンさんよぉ」
周囲を取り囲んでいるのは複数の人類種のプレイヤー。
見るからにレア度の高い装備を身に付けている彼等は俗に云う異形種狩りを楽しんでいる輩達だ。
正直云って彼等に暇なのかと問いたくなる。
私一人を追っかけ回すぐらいならダンジョンやイベントを攻略してギルドに貢献した方がいいのに。
「聞きそびれたんだけど、どちらのギルド?ウチにちょっかい掛けてきて潰したマイナーギルドって沢山あるからどこのギルドか特定できないんだけど」
「つい、この間テメェ達に潰されたギルドだ!!」
「いや、ついこの間ウチに攻めてきたのって複数の連合でしょ?全部とはいかなったけど報復に三つぐらい潰したからどのギルドかなって」
あの時は楽しかったな。
対して腕がいいわけではないのに50人ぐらいで攻めてきてたった七人に返り討ちにされたギルド。
あの時はクロアが殺されそうになったので第一階層から七姉妹全員参戦したっけ?もちろん報復もしたし、あっちも報復される覚悟があったと思ってたんだけど。
「テメェ等がギルドを潰したせいで俺達はバラバラだ。どう責任をとってくれんだ!あぁっ!?」
「それはお互い様でしょ?あんた達がウチを潰したらウチがバラバラになってたし。ユグドラシルでは報復が当たり前。報復対策を練らずに報復されないと思ってたあんた達が悪い。というかギルドを潰すだけでアイテムやNPCに手を出さなかった私達はまだ良心的よ」
全く、いったい何処の低レベルギルドだ。
まさか、面白半分で攻めてきてあわよくば美味しい思いをしようと思ってたのだろうか。
舐めるな。そんな輩に私達地獄の七姉妹が負ける筈がない。
けど、この状況はいささかまずいのは確か。
相手は30人。
私をデス・パラディンだと知っているということは即死対策をしているということ。
同じ100レベルでもあの程度なら10人くらいまでなら相手できるけど30人はキツい。
戦闘を避けようとして逃げ回ってたけど魔法やら遠距離攻撃が雨あられと降り注いだので体力も半分をきった。
一人、二人は殺れたけど逃げ回っているうちに廃墟に追い込まれた私は文字通りピンチ。
「はぁ、姉様達に怒られる」
一人で冒険をするのは姉達に止められていたが。とある理由で私は出ていた。
こんなことなら伝言ぐらい入れておけばよかった。
仕方ない、ギルドマスターとしてはかなり不甲斐ないが七姉妹の末の妹として盛大に足掻いてみせよう。
「・・・フフッ。アハハハッ、アーッハハハハハ!!」
不気味な笑い声に周囲のプレイヤー達は戸惑いの声を上げる。
さあ、沙織。貴女はこれから女王だ。
死を統べ、死を与える女王。
気高く、美しく、何人にも屈しない。
万魔殿の女王、ムササビだ。
「ーーー。ハァ・・・。この程度で妾を追い詰めたつもりか?地獄の七姉妹の長たる妾も甘く見られたものだなぁ」
愛槍を右手に不適な笑みを浮かべる。
この包囲網の中、黙ってバフを掛けさせてくれるほど連中も素人じゃない。
ならば、どうするか。
プラン構築。
各種強化魔法は白兵戦を行いながら実行。
フレンドリーファイアが存在しないユグドラシルでは混戦は回避する必要有。
フィールド的に各個撃破のゲリラ戦が有効。
それに伴い最優先抹殺対象の決定。
広範囲殲滅魔法持ちの魔法詠唱者。
抹殺対象確認。戦闘開始と同時に抹殺。
作戦成功率30%
上等。30%もあれば上出来だ。
もし私が死んだら姉様達が仇を討ってくれる。
きっと義兄さんも動くだろう。
装備をロストする確率は高いがまぁ、なんとかなる。
今は妹としてみんなに恥ずかしくない闘いをしよう。
目標、敵の全滅。
最低ノルマ20人は道連れ。
「我が名はムササビ。死を統べる女王にして七姉妹が長。妾の首容易く獲れるとーーー」
パパパパーン。
突然廃墟のBGMが変わった。
パパパパーン。パパパパン。パパパパン。パパパパンーー。
先程まで流れていたどこか寂しさを感じさせる音楽が一転。
女性の幸せを祝福するあの曲に変わった。
合わせて降り注ぐ白い花びら。
全く場違いな演出に私は小さく呆れるような声をだした。
相変わらずミスマッチな選曲だ。
いや、本人にはピッタリなんだが。
そんな事を思っていたら遠くに人影が現れた。
新婦入場。
正にその言葉の通り、遠くから女性の憧れであるウェディングドレスを着た一人の花嫁が
全力疾走で突っ込んできた。
「あはっ!」
それを確認して私も正面に突っ込んでいく。
私と花嫁のターゲットは一緒だった。
見た目からして明らかな魔法職の内の1人。威力増幅の効果を持っている装備を着た女性プレイヤー。
突然現れた花嫁に困惑した前衛であるプレイヤーは私達の先攻を赦してしまった。
花嫁が両手に持っているウェディングケーキを切るナイフで女性プレイヤーを斬りつけた直後に私は即死系アーツスキルを叩き込む。
『ちょっと!即死無効付けてるのになんで効くのよ!?』
女性プレイヤーが驚愕の声を上げる。それに影響されて他のプレイヤーも動きを止めた。
その隙に包囲網から脱出し私達は高台を陣取る。
「姉様!来てくださってありがとうございます!!」
「ムーが万魔殿に来てなかったからね。探しにきたんだ」
両の手を組んで上目遣いに私が見つめるのは七姉妹最強の三女。
「で、でた・・・」
「一人で勝手に出かけて。帰ったらお仕置きだよムー」
「ああん。それはないですよギブ・ミー姉様~」
祝われるのは姉妹と自身だけ。
呪いを撒き散らす白き花嫁、ウェディングドSことギブ・ミーだ。
「ウェディングドSが出たぞー!!」
「失礼な。まるで人をお化けみたいに」
「そうです!姉様はお化けなんかじゃありません。化け物です!」
「よし、帰ったら覚悟しとくように」
「行ってきます!!」
姉様が怖くなったので脱出した包囲網に再び飛び込んだ。
これは別に無策の行為ではない。
ギブ・ミー姉様がいるなら彼女だっている。
「ちょっとぉ。ムサちゃん無策過ぎるわあ。アタシが来てなかったらどうするつもりぃ?」
私に向けて放たれた遠距離攻撃と魔法を間に入って打ち返した存在がいた。
紫色のガーターベルトと下着に見えるビキニアーマー。惜しげもなく真っ白い肌を晒す我が七姉妹で最も固いガード。
「妾が無茶しているのに姉様が止めないのはLOVE姉様がいらっしゃるからです!」
何故彼女の存在がユグドラシルで認められているのかは分からないが彼女こそ七姉妹を守る“絶対領域”。
LOVE&デスその人だ。
「過信しすぎですよムササビさん。全く、何故私達の妹はこうなのでしょうね」
呆れた口調が聞こえたと思ったら頭をポカリと叩かれた。
振り向いたらそこにいたのは白と黒の六枚の翼を生やした修道女。
いつの間にか体力が全快になっており、様々なバフも掛けられている。
「オバ姉様そんなこと仰らないでくださいまし!妾は目的があって一人でーーー」
「だからといって何も言わずに出ることはないでしょう?。私達がどれだけ心配したのか分かってますか?」
七姉妹長女ことオーオバー。
過剰回復や支援を得意とする私のスキル構築の先生。
その異常な回復、支援魔法の連射速度からケアルマシンガンと呼ばれる。
「まぁ、ムサの御姉様絶対、御姉様大好き主義は今に始まったことじゃないから」
「そうそう。どうせ今回も私達に内緒でなにか企画してたんだと思うよオバー姉ちゃん」
離れた場所で次々とプレイヤーを斬り殺しながら此方にやってくる二人。
方や黒い髪を靡かせて、方や白い髪を靡かせるチャイナ服の幼女二人。時折、消えたと思ったら複数に増えて、また消えてと。たった二人なのに集団戦闘をおこなっているように見える。
黒い髪の幼女を四女、昼の幼女。
白い髪の幼女を五女、夜の幼女。
トラップ、幻術、何でも駆使したトリッキーな闘いを演じる双子の姉だ。
「昼姉様も夜姉様も来てくださったのですか!!」
「むしろ来ない方がおかしい」
「眠いけど、それとこれとは別」
「姉様!」
姉様、姉様、もひとつ姉様。とそっぽを向きながら照れ臭そうにしている双子の回りをくるくる回る。
さながらわーい、わーいといった擬音が聴こえてくるかのようにはしゃいでいる私。
間違っても娘達には見せれない光景だ。
それを見て苦笑ながらも飛来する遠距離攻撃を捌いているLOVE&デス姉様と次々と蹂躙しているギブ・ミー姉様に二人を支援回復しているオーオバー姉様。
流石私の姉様。圧倒的ではないか。
あ、いけない。姉様達だけに任せてばかりだった。
ギブ・ミー姉様の広域無効化スキル無効により即死無効が意味を為さない今は私も活躍できる。
待たせなた雑兵どもデス・パレードの時間だ!一人しかいないけど。
「ムササビ。それ私がもらうからね」
あ、ハイ。
ーー超位魔法・星光の破城槌ーー
最後の1人。私と喋ってたプレイヤーが極太の蒼白い光に飲み込まれた。
うわ、えげつない。
たった一人に躊躇なく超位魔法を叩き込んだお方は続けざまに十位階魔法を連続して叩き込む。
どう見てもオーバーキルです。
あんなの受けたらトラウマになっちゃう。
「あははっ。私の妹に手を出したんだし、こうなるのわかってたよね?それじゃ・・・すこし、頭冷やそうか?」
ハイライトない瞳を標的に向けながら空から降りてきたのは万魔殿における最強の魔法詠唱者。
妹と恋愛においてしょっちゅうヤンデレというか危ない人になっている六女、がんばるヤンデレ。
黒いドレスアーマーを靡かせて空に浮かぶ姿は正に魔王。そしてそんなヤンデレ姉様に勝てる姉様マジ化け物。
「ヤンデレ姉様もきてくださってありがとうございます!」
「うん気にしないで、私はお姉さんなんだから。それよりも帰ったらお話しがあるから逃げないでね?」
「ぴぇっ!?」
「くすん・・・姉様達は過保護すぎます」
私達の本拠地《地獄の万魔殿:ヘル・オブ・パンデモニウム》。
特級危険地帯に認定されているフィールドに存在する不可視の巨塔。
「いったいどの口がそんな事をいうのかな?ねぇ、夜」
「かわいい私達の妹の口だよ昼」
私達は最上階の玉座の間にいる。
「過保護っていわれてもねぇ」
右を昼の幼女、LOVE&デス、ギブ・ミー。
「いつも突然行動しているのは誰でしたでしょうか?」
左を夜の幼女、オーオバー、がんばるヤンデレ。
「確かに妹ってのは迷惑をかけるのが特権なんだけどね?
そして中央に私、ムササビ。
「過保護に扱うのもお説教するのも姉の特権なんだよムー」
私達こそ地獄に住まう美しき妖艶の女王。
ギルド、地獄の七姉妹。
ユグドラシルにおける女性最強ギルドの一角である。
今後も間にこの話はちょくちょく入れていきたいと思います。
私事で気になることがありまして。
読者の皆さんは万魔殿メンバー(ムササビ様以外)の中で誰が一番気に入っていて、誰が一番気になったりするのでしょうか?
感想などで教えていただけるとうれしいです。
ちなみに私は現在、ベルとアルーシャがお気に入りですw