オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 本日更新。

 今回はあの方がメインです。
 かなり違和感があるかもしれませんが宜しければどうぞ。


アドバイス

「動かないでアウラ。上手く測れないから」

 

 現在私は個室でムササビ様から御用命いただいた採寸の真最中。

 本来ならプレアデスかメイドに頼めばいいのだがこれはムササビ様から私への頼み事。他の誰かに任せる訳にはいかない。

 

「ちょ、冷たいよ」

 

 下着一枚の彼女は多少メジャーのひんやりとした冷たさに身体を捩ってはいるが大人しく採寸されている。

 

「まさか、ほんとにアタシのドレスを作ってもらえる事になるなんてねぇ」

 

 感慨深そうに呟いたアウラ。

 聞けば以前の守護者連盟会談でキャサリン達が誕生日に母親であるムササビ様達からドレスを作ってもらってたのがきっかけだとか。

 本当ならピューレが気を効かせて頼むはずだったのだが、いつの間にかアウラとマーレのドレス製作が決定していたらしい。

 

「私もただモモンガ様と御一緒して万魔殿に御訪問できれば良かったのだけれど。ムササビ様が仲間外れは良くないと言って私の分まで作る事になってしまったわ」

 

 素直にムササビ様の御気遣いは嬉しかった。

 流石はモモンガ様の妹君。本来招くつもりのなかった私にまでその寛大なお心を向けてくださった。

 初めてご来賓くださったあの時の演説でもその事が伺える。

 

「終わりよ。次は私の番だけどお願いできる?」

 

「大丈夫よ。一応私も女だからこれくらいわね」

 

 彼女のをはかり終えメモである羊皮紙に書き込んだ私はメジャーを渡して、身につけている衣服を脱ぐ。

 その際にアウラはじっと私を見つめていた。

 

「なによ」

 

「いや、なに食べたらそうなるのかな?って」

 

「何を食べたら・・って、貴女も知ってるでしょ?この体はタブラ・スマラグディナ様が創造したのであって決して何かを食べてこうなったのではないわ」

 

「わかってるわよそれくらい。ただ、将来的にはそれに近づけるのかなって」

 

「貴女はまだ70代でしょ?まだまだこれからなんだから可能性はあるわ。少なくともシャルティアよりはね?なんだったら以前、ぶくぶく茶釜様とやまいこ様が話していたトレーニングでもやってみる?効果は人それぞれみたいだけど」

 

 クスクスと笑いながら同僚を励ます。

 口喧嘩もするが彼女はたった三人の女性守護者の一人。

 以前ならモモンガ様さえいればいいと思っていたがムササビ様の演説を聞いて少し、考えが変わった。

 ムササビ様の仰った通り今はモモンガ様一人だが至高の方々は言うなれば私達の親で、私達創造された配下達は兄弟、姉妹なのだ。

 私達が死ねば最後の親であるモモンガ様は悲しまれる。喧嘩をすれば心配をなさる。

 だからほんの少し不敬かもしれないが自分の身体に不安を持っている姉妹的な同僚がいれば励ますのは別に不自然じゃないし。きっとモモンガ様も微笑ましく見守ってくださるだろう。

 そんな私の気休め程度の励ましに、まぁ確かにそうなんだけどねと肩を竦めて同意し、後で教えると約束を交わしてさっそく採寸を開始する。

 慣れてないせいか不器用な場面もあったがなんとか測り終えたアウラは衣服を着直している私に向かってふとあることを口にした。

 

「ところでマーレは男だから別室で採寸しているのはいいとして、シャルティアはまだ来ないの?」

 

 ここで私はまだ同僚がまだ来ていない事に気付いた。

 確かナザリックに帰還してすぐ、プレアデスに呼びに行かせたはずなのだがいない。

 そう思った時にドアをノックする音が室内に響く。

 入室を許可し入ってきたのはドッペルゲンガーのナーベラル・ガンマ。私がシャルティアを呼びに行かせたプレアデスである。

 やっと来たかと思ったが目当ての人物はいない。

 代わりにナーベラル・ガンマの困りきった表情が目に入った。

 

「どうしたの?」

 

「あの、シャルティア様なのですが」

 

 ーー見つからず、連絡もとれません。

 

 私とアウラは互いに見詰め合う。

 試しに二人でシャルティアに《伝言・メッセージ》を飛ばしてみるが全く返事がない。

 

「これはアレね」

 

「そうね。アレね」

 

 

 ーー逃げたな。

 

 

 この後。シャルティアの数時間に渡る逃走がナザリック内で発生し、最終的にモモンガ様の命令によって捕まった。

 採寸の際にシャルティアが泣きながら命乞いのように嫌がったのは同僚としてちょっとだけ気の毒だったがそれ以上に楽しかったのはここだけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地獄の万魔殿。第四階層守護者、リィリィ。義母さまの命により参上しました。お久しぶり、伯父さま」

 

 約束の日。ナザリックにリィリィがやってきた。

 ムササビ様の御息女が来賓の為、全員ではないがそれなりの人数が集まっている玉座の間。

 中央の絨毯を挟むようにして配下、シモベが並ぶ中、たった一人でリィリィはいた。その視線を一身に浴びているが全く動じることなくモモンガ様と対峙し、スカートの裾を摘まんで小さく会釈をしている。

 

「アルベド達の為にわざわざ足を運んでくれてすまないな」

 

「気にしなくても、いい。・・私は、転移門を開いてくぐるだけ、だから」

 

 シャルティアにここまで連れてきてくれてありがとうと言った後に今度は私が口を開く。

 

「此方がムササビ様から承りましたご要望の品です」

 

「確かに受け取った。必ず、届ける」

 

 私はムササビ様からの御用命を果たせた事に内心安堵の溜め息をつく。全く、もしシャルティアが時間ぎりぎりまで逃げ切っていたらどうなっていたことか。

 仕方ないので同僚へのせめての情けとして一筆入れておいた。

 それを知らないシャルティアは私が手紙を渡す際に情けない顔をしていたので後で教えてやる事にしよう。

 

「リィリィ。この後は直接万魔殿に戻るのか?」

 

「そのつもり。ほんとは、新しい妹の所に顔を出すつもりだった・・・今は忙しいし。まだ顔を会わせてない私が行ったら・・・緊張させちゃうから、今日は諦めたの」

 

「そうか。いや、二人に届け物を頼みたかったのだが」

 

 少し残念そうに肩を落としたモモンガ様。

 リィリィの云う新しい妹とはムササビ様がお手自らその命を救い、養女にした二人の人間。

 最初は耳を疑ったが相手は同盟ギルドの長でモモンガ様の妹君。

 私ごときが意見できるはずもない。

 一介の下等生物が一気に王族へと成り上がったあの二人はまるでお伽噺のような存在だった。

 そんな事を考えているとリィリィがジッと此方を見つめていた。

 何かあったのだろうかと首を僅かに傾げた私にむかって彼女はとんでもないことを言った。

 

「だったら・・・アルベドに頼めばいい」

 

 玉座の間がどよめきに包まれる。

 

「い、いや。私が言うのもアレだがアルベドは、なぁ」

 

「別に言わなくてもいい。話は義母さまとキャサリンから聞いている」

 

 モモンガ様が言い淀むのも当たり前だ。

 私はムササビ様がお救いになった二人を目の前で始末の許可を求めたのだ。

 そんな私が二人に近づけるはずがない。

 そんな私をムササビ様が娘に近づけるはずがないのだ。

 

「あの時のは、義母さまも立場あっての事で、伯父さまに向ける忠義ゆえだと理解・・・してる。さっき許可を求めたら、オッケーが・・でた」

 

 リィリィが嘘を言っているとは思えない。

 本当にムササビ様は我が子に危険要素が近づくのを是としたのか。

 

「後はアルベド次第。・・・アルベドが人間を嫌うのは・・わかる。私だってそう。弱くて、小さな存在。・・・けど、あの二人は私の大事な妹。・・いろんな経験、させたい」

 

 それがリィリィの考え。

 母であるムササビ様に進言してまでやろうとしている妹達への想いやり。

 お伽噺のように突然上流階級へと放り出された少女達への彼女なりの優しさだった。

 

「・・・モモンガ様。その役目、私にお命じいただきますようお願い申し上げます」

 

 これは彼女からの私への気遣い。

 至高のお二人への名誉挽回へのチャンス。

 それを無為にしてはいけないと私は悟り、モモンガ様へと頭を下げた。

 暫しの間、至高の御方は顎に手を当てて思考する。

 おそらく、ムササビ様とご相談されているのだろう。

 モモンガ様の深い思慮の全容はわからないがそれだけはなんとなく分かる。

 そして深く息を吐いた後に仰った。

 

「アルベドに任せよう。くれぐれも事を起こさないように」

 

「ありがとうございます」

 

「アルベドに1つ助言をしておこう。面を上げよ」

 

 そう云われた私は頭を上げた。

 

「私の姪は確かに弱く小さな存在だ。しかしそれは私達至高の存在も同様。遥か昔はそうだったのだ」

 

 モモンガ様は続ける。

 

「私達は力を付けた故の今がある。それは我が姪も同じだ。今は弱くともムササビの娘となったことにより、私達とはいかずともプレアデスに届きうる可能性が生まれた。いや、もしくは守護者に届きうるかもしれん。見よ、目をこらせ。その二人は決して下等生物ではない。我らが盟友たりえる小さき芽だ。けして枯らせてはならぬ」

 

「そのお言葉しかと胸に留めておきます」

 

 モモンガ様の言葉を胸に刻み、私は今一度頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ。・・・二人の事、よろしく」

 

「わざわざありがとう。リィリィ」

 

 二人のいる“小屋”の近くへ送ってもらった私はリィリィに礼を述べる。既に外は真っ暗で空には以前、モモンガ様と歩いた時のような星空が広がっている。

 

「それはいい。けど、連れてきた私が言うのも・・なんだけど。その格好で・・・いいの?」

 

 今の私の格好は二人と初めて会った時の全身鎧姿、もちろんヘルムも被っている。しかし、右手には小さな装飾された箱をもっていてなんとも締まらない感じだ。

 

「いいのよ。二人はこの姿は知っていても私の素顔は知らないからこれで私がモモンガ様の遣いだと分かるはずよ」

 

「そう。なら、いい。・・・アルベド」

 

 リィリィは私の心臓の位置に持っている錫杖の先を突き付けた。

 

「私は貴女次第と言ってチャンスをあげた。けど、二人になにかあったら私は貴女を殺す。例え伯父さまの配下であろうが。七姉妹魔法最強の娘である私が・・・必ず」

 

 彼女の瞳孔が開き、光を失う。何時もの途切れ気味な小さい口調もハッキリとしたものに変わった。

 彼女は本気だ。私がスキルを用いたとしても関係無しに死ぬまで殺しにくるだろう。

 例え、両ギルドの関係が崩れても関係無しと云わんばかりに。

 

「私がモモンガ様のお身内である二人に手を出す訳がないでしょう?」

 

「ならいい・・・。ついでだけど、アレも殺さないで・・・」

 

 もとに戻ったリィリィがある場所を指差す。

 “小屋”の傍らに闇に紛れながら佇むデスナイトがいた。

 僅かに灯っている光のお陰で大分目立たないがソレは此方をジッと見ている。

 

「アレは確かモモンガ様お創りになった・・・」

 

「ジョン君。・・今はネム。小さい方の妹に支配権があって。万魔殿では・・・ネムの親衛隊長」

 

「凄い大出世ね。名前までもらって」

 

 あぶないあぶない。支配権を譲り受けたのは知っているが名前までもらって尚且つ親衛隊長の位にまで出世しているとは思わなかった。何も知らなかったら初見で殺していたかもしれない。

 

「貴重な情報ありがとう。それじゃいってくるわ」

 

「がんばって・・・」

 

 エールを背に受けて私は歩き出す。

 “小屋”に近付くにつれてデスナイトが得物であるフランベルジェとタワーシールドを構える。

 生意気にも格下とはいえ元同僚は私を警戒している。

 しかしそれでいい。モモンガ様から離れた同僚は元の主から任された職務を忠実に全うしていた。

 

「久しぶりね。モモンガ様からの命令通り、新しい主をしっかり守っているようね。元同僚として安心したわ。それに大出世したらしいじゃない?名前まで頂いたんでしょ?今後は貴方の名前も覚えておくわ」

 

 挨拶と労いの言葉を掛けてやる。

 黒き騎士は小さく唸り声をあげた。

 まるで世辞は不要、主を害しようとした者が何用か。と言っているように思える。

 

「・・・我が主より御二人への贈呈の品を承り此度此処に参りました。宜しければお目通り願いたい」

 

「・・・・」

 

 暫し見詰め合う私達。

 やがて、了承したのか小さく頷いてその手で主が住まう“小屋”の扉をノックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、ようこそいらっしゃいました。粗茶ですが宜しければどうぞ」

 

 ジョンがノックをして最初に出てきたのは小さい方の“下等生物”だった。

 “煩い”声を上げながら扉を開いた“それ”は私を見た瞬間に顔を青ざめた後に、勢いよく扉を閉じて中に逃げ込んだ。

 頬がひきつるのが分かる。モモンガ様の縁者でなかったら“小屋”ごと叩き潰していたかもしれない。

 少しして代わりに出てきたのは大きい方の“下等生物”。

 それも私を見て一瞬目を見開いたが直ぐに表情を整えると“小屋”に招き入れた。

 そして私は現在、安い茶を出されている。

 目の前には“下等生物”が二匹。

 木でできた雑な造りの椅子に座っている。

 

「先ずは御挨拶を」

 

 本来なら“下等生物”に名乗る等、尊きその御名ではない。

 しかし、目の前にいる“それ等”はムササビ様の養女。名乗らない訳にはいかない。

 

「ナザリック地下大墳墓の支配者モモンガ様の配下にして守護者統括をさせていただいております。アルベドと申します。本日は我が主より贈呈の品を承り参上いたしました」

 

「ご丁寧にありがとうございます。女王ムササビが五女、エンリと申します」

 

「六女ネム、です」

 

 

 ここで私は内心小さく関心した。

 ちゃんと形になっている“二人”の礼。

 作法としては正しく、された側としては全然不快にはならない。

 おそらく数多くいる姉のだれかが教えたのだろう。

 

「改めてよろしくお願いいたします。では此方が我が主からの贈呈の品です」

 

「確かに賜りました。恐れ入りますが伯父様にお礼をお伝え願います」

 

「ありがとうございます!」

 

「かしこまりました。必ずや御伝えいたします」

 

 これで用は終わった。ならば速く立ち去るとしよう。その方が私や、“二人”にも精神的にいい。

 

「では、私はこれでーーー」

 

「あ、あの!」

 

 “二人”の内、大きい方が立ち上がろうとした際に声を掛けてきた。まだ、なにかあるのだろうか?首を傾げつつ私は再び椅子に腰をかける。

 

「なにか?」

 

「ア、アルベド様は姉、キャサリンと同じ守護者統括でいらっしゃいますよね!?」

 

「えぇ。そうですが」

 

 私もキャサリンもそれぞれの守護者、配下を纏める纏め役だ。

 戦闘能力は多少あちらに分があるが知略では負けるつもりはない。

 

「・・・わ、私に」

 

 震えながらも私の目を見つめる。

 そして意を決したように

 

「外交の作法を教えてください!!」

 

 姉妹揃って私に向かって頭を下げた。

 

「御姉様達にお頼みすればよろしいのでは?」

 

「御姉様方はなにか忙しいみたいでして、そんな中私達に会いにきてくださってます。これ以上我が儘を云うわけにはいきません」

 

「では、何故私に?」

 

「アルベド様のお声からして女性の方。それも守護者統括という地位にいらっしゃるのならば外交の作法もご存じのはずだと愚考しました」

 

「何故今?」

 

「此度モモンガ様をお招きする際、ナザリック地下大墳墓へとお迎えする命を母より承りました。母の娘として、伯父様の姪として無様な姿を晒すわけにはいかないからです」

 

「例え無様でもモモンガ様の縁者を嗤う愚か者はナザリックにはいませんが?」

 

「それでもです」

 

 私はヘルムの下で小さく溜め息をついた。

 これは確かに我等の盟友になりえるかもしれない。

 お伽噺のように高みへと掛け上がった“少女”はそれに胡座をかかずに考えていた。

 ムササビ様の、モモンガ様のお顔に泥を塗るような恥ずかしい存在になりたくない。箱入り娘でいるつもりはない。

 そう言っているのだ。

 格上なのに自身より強者である私に怯えながらも頭を下げてまで教えを乞うている。ずっと僅かに震えている肩を見て分かっていた。

 はぁ、このままでは至高のお二人から見たら私が悪者ではないか。

 

「・・・頭を上げなさい」

 

 ヘルムを脱ぎ小さく溜め息をつきながら頭を上げさせた。“二人”はなにやら私の顔を見て驚いているが気にせずに話を進める。

 

「エンリ、ネム。二人は女王でいらっしゃるムササビ様の息女。姫なのだから簡単に頭を下げてはいけないわ。頭を下げたり跪くのは相手に平伏するという意味。下げていいのは姉達とムササビ様とモモンガ様だけ。ですから普段も会釈程度にしなさい」

 

「アルベドさまにも?」

 

 “ネム”が首を傾げて聞いてきた。

 

「えぇ、私にもよ。私とキャサリンは確かに同じ守護者統括だけど彼女が王族なのに対して私は所詮一介の兵士。言葉遣いはまだしも彼女が私に頭を下げたりなんかしないわ」

 

「アルベドさま綺麗だからお妃さまだと思ってたのに」

 

 それを聞いて私は小さく吹き出した。

 

「お妃様がわざわざ来たりしないでしょ?まぁ、本当にそうなれたらいいのだけれど」

 

「アルベドさまならきっとなれるよ!」

 

「ありがとう。がんばるわね」

 

 彼女の云うお妃様が誰のお妃様かはしらないが。そう思われていたと云うのは気分がいい。

 お礼にネムの頭を撫でてやる。

 私がほんの少し力を込めれば簡単に潰れてしまうその貧弱さ。その弱さがモモンガ様にもムササビ様にもあったという事実は私には信じがたいことだった。

 しかしそれは本当のことなんだろう。

 だったら確かに可能性はある。

 立派な姫として成長する可能性が。

 今回だけだ。今回だけ、私はその成長を手助けしてやろう。

 

「それで?何が聞きたいのかしら?」

 

「は、はい!ナザリック地下大墳墓にお迎えする際に馬車などは準備されると思うのですが。私達だけでいいのでしょうか?」

 

「簡潔に云うならば良くないわね。エンリのお姉さん。リィリィのような守護者じゃないとダメね。威厳に欠けるわ」

 

 不敬だが、私は頭の中で自分の立場をナザリックの守護者統括から万魔殿の守護者統括に置き換える。

 今日私が見たようにナザリックの玉座の間の中央を歩くのがリィリィなら実力、格共に問題ない。ナザリックの配下達もその威厳を感じとることだろう。

 しかし、エンリとネムだけでは威厳なんて微塵も感じられない。

 どんなに着飾ってもただの迷い込んだ小娘だ。

 

「一人は最低でも7人連れなさい。7は貴女達の御旗にも使われている数字だから無礼にはならないわ。ネムはジョンと同程度をあと6人、エンリは上位を7人、美しく屈強なシモベを選出しなさい」

 

 それ等をそれぞれ従えていればそれなりの威厳になる。

 ネムの親衛隊長がデスナイトであるジョンなのは致し方ないがまだあの年ならアレ位でちょうどいい。

 

「貴女が自由に使える配下はいるかしら?」

 

「すみません。私が呼べるのは以前伯父様から頂いた笛で喚べるゴブリンだけで」

 

「・・・弱すぎる上に話しにならないわね。万魔殿は女の園と聞くから女性の方がいいのだけれど。もみじの親衛隊の構成は分かるかしら?軍事機密だから誰にも公言しないとモモンガ様に誓って約束するわ」

 

「えっと蛇だったり、蠍だったりするみたいです」

 

 それを聞いて脳内に浮かぶのはナーガとスコーピオーネ。女性の容姿を持つモンスターだ。ナーガは弱すぎるがスコーピオーネはそれなりのモンスターだ。しかし容姿は人間には美しく見えるかもしれないが同じシモベからしたら少し綺麗な程度。

 

「・・・キャサリンのは分かる?」

 

「えっと確かおに?と言っていました」

 

「少し、待ってなさい」

 

 それを聞いて私はすぐさまキャサリンに《伝言・メッセージ》を飛ばした。

 ネムの云っている事が“鬼”なら鬼娘、鬼姫、夜叉、夜叉姫といった上位鬼族の可能性が高い。

 それなら鬼娘をネムに付けて、鬼姫を付けれる。

 鬼娘はデスナイトクラスの力があるし、鬼姫は上位モンスターの一匹。更にはどちらもシモベから見てかなり整った容姿をしているので条件はクリアできる。

 

 

『ちょっと聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?』

 

『どうしたの?なにかあったー?』

 

 直ぐに返事が返ってきた。相変わらず楽しそうなしゃべり方だ。

 まぁいい。今はそれよりもやることをやろう。

 

『貴方の配下に鬼姫はいる?』

 

『ちょ、ちょっと。いきなりなにかなぁ。いくら同盟だからって堂々と軍事機密を普通聞く?』

 

 それはそうだ。私だっていきなり脈絡も無しにそんな事を聞かれたら無言で通信を切ってしまうだろう。

 

『たった今、モモンガ様をお迎えする際にどうすればいいか貴女の妹に相談を受けているの。私が自由に動かせるのはゴブリンしかいなくてどうしようって云っているわよ?』

 

『あぁ、連れていくシモベの話ね?それは今私の方で選出しているところなんだけど。エンリに7“匹”、ネムにジョン君と同程度を6“匹”』

 

 どうやら彼女も同じ考えだったようだ。

 ・・・ちょっと待て。いま“匹”と言わなかったか?

 

『何を寄越すつもりだったの?』

 

『ユニコーン。バイコーン。ペガサスやらをネムにつけてー』

 

『・・・それで?』

 

『白竜やヴリトラ、ハーピードラゴンの比較的小さい個体をエンリにーー』

 

『貴女ウチと戦争したいの?やるならいつでも相手になるわよ?』

 

 それはやりすぎだ。

 百歩譲ってネムのユニコーン達は認めよう。確かに美しいし、デスナイトに近い強さだ。

 だがエンリの竜種のオンパレードはやりすぎだ。

 というか竜種を飼っているのか万魔殿は。聞いたらその日限りで召喚するつもりらしい。

 

『はぁ、貴方の配下に鬼姫と鬼娘がいたらそれでいいのではなくて?おそらく夜叉や夜叉姫は貴方の近衛でしょうから』

 

『だって、男ばかりの所に女の子を送ったら危ないじゃん。だからちょっとでも、強い竜種にするつもりだったのにぃ』

 

 あぁ、やっぱり彼女ももみじの妹だ。妹にいろんな事をさせてあげたいのだろうが過保護過ぎる。

 

『だったら此方が出迎える際に玉座の間まで守護者を二人つけます。それだったらいいでしょ?』

 

『うー、分かったよ。エンリには近衛じゃない夜叉と夜叉姫をつけるよ。ネムには心配だけど鬼娘。ジョン君が隊長なんだし仕方ないね』

 

『それじゃ、それを二人に伝えるわね?』

 

『うん・・・あとごめんね。妹達の面倒見てくれてありがと。あー、お姉ちゃんとしてしっかりやるつもりだったのにこれじゃ先が思いやられる~!』

 

『エンリも忙しい姉に気を使ってるのよ。いい子じゃない』

 

『私の妹ちゃんなんだから当たり前でしょー』

 

『はいはい。それでは後日』

 

『うん、二人によろしく~』

 

 《伝言・メッセージ》でのやり取りを終えた私は二人に姉であるキャサリンの決定を伝える。

 

「エンリには夜叉姫が1人と夜叉が6人の計7人。ネムには鬼娘が6人付く事になったわ」

 

 夜叉、夜叉姫と言っても二人は分からないだろうが今はそれで納得してもらおう。

 

「わざわざ姉さんに連絡を取っていただいてありがとうございます」

 

「別に構わないわ。寧ろ連絡を入れておいて正解だったぐらいよ」

 

 エンリとネムは首を傾げる。

 気になるのだろうが何も言わない私を見て自分達は知らなくていい事だと理解したらしく何も聞いてこなかった。

 

「お茶、いただくわね?」

 

「あ、冷めてしまってるので淹れ直します!」

 

「姫は下の者にお茶を淹れたりしないように。例え淹れたとしても、もてなすつもりでは淹れてはいけないわ。あくまでも自分の趣味に付き合わせるつもりで淹れなさい」

 

「あ、はい。・・・私はお茶を嗜んでいるのですが宜しければお付き合いいただけますか?」

 

「御誘いとあらば御断りする訳には参りません。恐れ入りますが喜んで頂戴いたします。・・・そう、それでいいのよ」

 

「はい!」

 

 新しく淹れられたお茶をいただきます。と断りをいれて口に含む。安い、まるで雑草みたいな茶葉だ。ナザリックでメイドやプレアデス、私が淹れるのに使う茶葉の質とはかけ離れている。

 けど、私達以上にこの茶葉を美味しく淹れようとしている努力が伺えた。

 まるで彼女達のように。

 

「そういえば・・・」

 

 二人に聞こえないぐらいの小さな声で呟く。

 そういえば私はいつから二人を個として認識していた?名前を覚えて、ネムに至っては頭まで撫でて、こうして今はエンリの淹れたお茶を飲んでいる。

 そうか。私は気付かぬ間に二人を未来の盟友としてみていたのか。

 

「茶葉は安物ね」

 

「ナザリックにある茶葉と比べれば確かに安物ですが都市では一応最高級品なんですけどね」

 

「けれども、良い腕をしてます」

 

 私の素直な感想にエンリは目を丸くした。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ですから。姫が頭を下げたりしてはいけないといったしょう?」

 

「す、すみません」

 

「他に聞きたい事があるのではないの?私が此処に来れることはほとんどないのだから今のうちに聞けるだけ聞きなさい」

 

「は、はい!あと聞きたい事なのですがーー」

 

「アルベドさま。ネムもしつもーん!」

 

 それからは食事に招かれた際の作法や歩き方、言葉遣いをなどを教えた。

 この子達は未来の盟友であり姫だ。

 モモンガ様とムササビに出会って手にした可能性。

 立派な姫として成長する可能性が幸運にもエンリとネムの中に芽生えた。

 今回だけだ。

 今回だけ、私はその成長を手助けしてあげよう。

 この“家”の中で芽吹いた小さな芽を。




 いかがでしたでしょうか綺麗な(?)アルベドさんは。

 途中から細かく変化を付けたつもりだったのですが
 上手く掛けているか不安です。
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