オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 更新が遅くなってすみません!


ナザリック訪問

「コキュートス。そなたはモモンガ様の姪っ子の人間をどう思いんす?」

 

 ナザリック地下大墳墓、第一階層《墳墓》で守護者の一角である私は同僚で同じく守護者のコキュートスに問い掛ける。

 

「・・・ドウイウ意味ダ?」

 

「そのままの意味でありんす。ただの人間が格でいえばわたし達より上。それについて何か思うところはないかと聞いたでありんすよ」

 

 真祖であるわたしは最初にただの小娘が我が君の縁者となったことに耳を疑った。

 ムササビ様という万魔殿の女王の養女ということは王族になったということだ。延いてはナザリックにおいて格でいえばアルベドを凌ぐという快挙をその小娘はなしとげた。

 何処の馬の骨とも分からない小娘が、と怒りの念を向けたいが我が君自身がその小娘二人を姪として見ているのでそのような不敬な真似はできない。

 終いにはわたしと一二を争うほどに我が君を慕っているアルベドが二人を個として認識し、目をかけているのがわたしをさらに混乱させていた。

 我が君は言った。

 二人は我らの盟友たらん小さき芽だと。

 しかし、わたしには意味が分からなかった。

 人間は人間。私達に及ばない弱い種族。

 至高の御方であるモモンガ様。そしてその人間を養女としたムササビ様の決定を配下である私が覆そうとは思わない。

 頭では分かっている。けどどこか納得いかない。同じ真祖のエリザは新しく可愛い妹ができたと自慢していたがそんなにいいものか?と適当に返したのは記憶に新しい。

 だから同僚へ何となく意見が聞きたくて聞いてみたのだ。

 

「我デハ、アノ御方達ノ考ヲ察スル事ハ出来ヌガ、ムササビ様ガタダ命ヲオ救イニナッタカラトイッテ養女トスルトハ思エヌ。何カ思ウトコロガアッタノダロウ。モモンガ様モ、ソンナ妹君ガ養女トシタカラコソ縁者トシテ受ケ入レタノカモ知レヌナ」

 

 そういうものなのだろうか。

 子もおらず、生まれながらにして守護者である私には分からない。

 ムササビ様がその娘達の何を思って養女としたのかは本人のみが知るところだ。一介の兵士であり、配下であるわたしには知るよしもないこと。

 

「しかし、わたし達がわざわざ迎えに上がる程のことなんしょうか?モモンガ様の縁者と分かって手を出す愚か者などいるとは思いんせんが」

 

 思考を切り替えて周囲を見渡せば配下や、その他シモベ達が列を成して控えている。

 それらを引き連れているのがわたしとコキュートスだ。

 第一階層にいるのは客人であるモモンガ様の縁者を迎え、玉座の間までの案内のため。

 アルベドの指示により、わたし達二人は完全武装。

 正直ここまでする必要があるのか疑問ではあるがアルベドいわく、初めて来る姪っ子に対してモモンガ様をちょっとでも格好よく見てもらいたいからだそうだ。あと、もしもの事があったら母親が全娘を引き連れて殴り込みに来かねないので二人の威圧感でシモベ達に粗相をさせるなと言われた。

 まぁ、前者は大賛成なのだが。

 後者は半分程、その姪っ子の胆力次第だと思う。

 わたし達がシモベ達を抑えたところで二人がシモベ達やコキュートスを見て恐怖を感じるかもしれないのだ。一応そう言ってみたがアルベドはそこら辺は問題ないと言っていた。というかわたしが二人を怖がらせないようにしろとか。

 

「アルベドも失礼極まりないでありんすねぇ・・・。コキュートス、万魔殿からの馬車が到着したでありんす。お前達もお客様に粗相のないように。相手は人間、わたし達が思っている以上に繊細故、行動には細心の注意を払え」

 

 配下達に念の為に注意を促し、表層から第一階層へと続く階段を見上げた。

 ゆっくりと扉が開いてまず入ってきたのは四人の鬼族の娘。

 それに続くように来客である姪っ子二人、最後にデスナイト他、九人の鬼族の娘が入ってきた。

 総勢、16人が本日の来客だ。

 彼女達は姪っ子を守るようにしてわたし達の前まで降りてくると代表してその集団の中で見るからに一番の強者である鬼族の上位種が前に出てこようとした時にわたしと小さい姪っ子の視線が合った。

 ジッとわたしを見ている彼女になにかありんしたか?と首を小さく傾げて笑みを浮かべてやる。

 すると彼女は小さく呟いた。

 

「・・・カッコイイ」

 

 もしかしてこの子、けっこういい子でありんす?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓、玉座の間にて守護者統括アルベドの声が響き渡る。

 

 

「地獄の七姉妹、ムササビ様が息女。エンリ嬢!並び、ネム嬢のご入場!」

 

 玉座の間の入り口である門が開いてまずはアルベドが護衛として迎えに行かせていたシャルティアとコキュートス。それに続き四人の護衛と思われるシモベが入ってきた。

 レベル60の鬼種モンスター夜叉。

 黒い平安時代を思わせる和装と口元を鬼の能面の下半分で隠しているのが特徴。

 同じくレベル30の鬼種モンスター鬼娘。

 町娘のような服装で額に出ている小さな角が特徴。

 彼女達の後からそれぞれ鬼娘と夜叉に挟まれるようにして本日の来客である姪が玉座の間に入ってきた。

 

『『・・・ォォ』』

 

 シモベ達から小さく感嘆の声が上がった。

 

 妹のネム。

 黒い裾が膝丈までのタンクトップタイプワンピースドレスを身に付け、髪はいつもの髪型ではなく後頭部に石榴を模した銀色の装飾が施された髪止めで結われている。更には僅かながら化粧が施されており、薄いピンクのルージュが幼い彼女を少しだけ大人な雰囲気の少女に引き上げていた。

 また、歩き方も両手の平を後ろで合わせたものだが年相応の歩き方のはずなのにそうは見えない。どこかの令嬢の散歩を思わせるのは彼女が浮かべる笑顔が満面の笑みではなく、小さい、自然な微笑みを浮かべているからだろう。

 ネムという村娘の姿はそこにはなく、ムササビの令嬢ネムの姿がそこにはあった。

 

 そして姉のエンリ。

 同じく黒いドレスだがこちらはアメリカンスリーブのマーメイドドレス。しかも胸の谷間が見えるように菱形に切り欠いであるタイプだ。彼女も俺が贈ったマジックアイテムを身に付けていて、ドレスと、それだけでも大人の雰囲気を醸し出しているが彼女はいつも結っている髪を全て下ろしており、更には化粧として唇に引いている真っ赤なルージュがそれを際立たせている。

 また、彼女も姿勢に工夫が見られた。

 左手は右の脇腹に添えられ、腕で軽く胸を持ち上げ、右手は動かさずに下げている。

 視線もほんの僅かに顎を惹いた上目使いで此方を見つめているといったもの。

 俺が人間だったら間違いなく誘われていると勘違いしているであろうその表情は万魔殿に相応しい妖艷の笑み。

 エンリという少女は今まさしく大人の女性、ムササビからの使者として相応しい姿だった。

 

 姉が指導したのか。姉から指導された母親が指導したのか。二人の風貌に感心しながら彼女達の後ろに続く者達に視線を向けた瞬間。

 

『・・・は?』

 

 顎が落ちた。

 俺が呆然としているのは鬼娘を見たからでも夜叉を見たからでも、ネム命名のデスナイトことジョン君でもない。

 エンリの背後、夜叉の後ろを歩く十二単を身に纏った、ユグドラシルでも有名な上位モンスターを、夜叉姫を見たからだ。

 レベル90のガチモンスター。

 魔法やデバフが効きづらい上に攻撃力が高い鬼種最上位クラスのモンスターの一体。唯一の救いといえば放つ魔法の種類が少ないといったところだがそれでも威力は高いし、エグい魔法をつかってくる。

 守護者の娘達が近衛に付けるならまだしもエンリに付けるのは過剰戦力すぎると思うが、大方心配になった姉のだれかが近衛に付けたのだろうと結論づけた。

 エンリがアレをつれているお陰か、我が陣営のシモベ達は戦慄した表情でエンリを見ているので結果オーライとしておこう。これで二人が最低でもシモベ達には軽く見られる事はないだろう。

 

 まぁ、それでも伯父としては二人が心配な訳で此方に向かって歩いている間は馴れない環境でボロを出してしまわないかと気になってしまう。

 無意識に左手を握っては開いてを繰り返しているのに気付いた時は内心思わず苦笑してしまった。

 

 気をまぎらわせる為にアルベドを見てみるとジッと二人を見つめていた。

 流石というべきか、まだそこまで二人を受け入れてないというべきか。僅かながら残念に思っていると彼女の唇が小さく動いているのに気付いた。

 

「・・・そう。落ち着いてゆっくりと、慌てず、優雅に」

 

 ここで俺の顎が再び落ちた。

 思考を回転させるまでもなく、二人の指導をしたのが彼女だと気付いたからだ。

 まるで教え子の発表会を見にきた教師ではないか。

 そういえば二人に贈ったマジックアイテムを届けさせた時、妙に帰りが遅いと思ったらそういうことか。きっとアルベドが二人にそれぞれに合った指導をしたのだろう。

 納得した俺は再び視線を正面にむけた。

 最前列の近くまできた姪はそれぞれに動きを止めた近衛の輪から抜け出して前に出てくる。

 シャルティアとコキュートスも俺に深く礼をした後に自分の立ち位置へと移動していった。

 

 

「地獄の七姉妹長、ムササビが五女エンリ」

 

「同じく六女、ネム」

 

「「我らが親愛なる母の命にて、参上いたしました」」

 

 姪二人は配下達の前で、頭を小さく下げドレスの裾を摘まみ、優雅に礼をした。

 それを確認した後に俺は小さく頷いて口を開く。

 

「遠路御苦労。わざわざ着飾ってきてくれて嬉しく思う。どれ、此方に来なさい。顔をよく見せてはくれぬか」

 

「「はい」」

 

 云われ、二人は玉座に近付き、差し出した出した俺の手を優しく取ってくれた。

 

「まだ、数日しか経っていないが久しぶりだな。あまりに綺麗になっていたから見違えた」

 

「お久しぶりです伯父様。伯父様にそう言っていただけると嬉しいです」

 

「おじさま。ネムちゃんとできてた?」

 

「あぁ、ちゃんと出来てたとも。最初はどこのレディかと思ったぐらいだ。なぁ、アルベド」

 

「はい。お二人とも見違えるほどでした」

 

 姪二人は頬を染めて互いに見つめあい小さく喜びあった。

 アルベドも小さく笑みを浮かべて安堵の息を洩らしている。

 

「第一階層から玉座の間前まで《転移門・ゲート》で移動したとはいえどうだこのナザリック地下大墳墓は」

 

 道中は流石に二人には酷な環境なので玉座の間前まではシャルティアの《転移門・ゲート》を使って移動してもらった。その為にシャルティアにはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持たせたし、桜花領域の領域守護者にも話を通して、一時的な措置も命じておいたのだ。

 

「すごいです。陳腐な言葉しかでないのが本当に申し訳ないぐらい凄くて、素晴らしいです」

 

「おじさま、ここでいちばんなんだよね?すごいなぁ」

 

 この時の俺は嬉しさでいっぱいだった。

 アインズ・ウール・ゴウンのメンバーと一緒に作り上げたこのナザリック地下大墳墓。

 ある意味一つのダンジョンとして挑んでくるプレイヤーは沢山いたが純粋に褒め称えてくれる存在がいなかった。

 玉座の間にまで攻め入られた事がないので一番手の込んだ場所を見られた事がないし、二人の姉達は万魔殿で豪華な玉座の間を見ている故か反応がちょっと乏しく感じていた。

 だから二人の手放しの賛辞が嬉しかったのだ。

 

「シモベ達の方を見なさい」

 

 二人の手を取りながら立ち上がる。

 俺が立ち上がった事により、シモベ達は一斉に跪いた。

 

「エンリ、ネム。此処がナザリック地下大墳墓で、私を含め彼等がアインズ・ウール・ゴウン。私達の家で、・・・家族だ」

 

『『!!!』』

 

 シモベ達が息を飲んだ。

 そう、彼等は俺の大切な仲間達が産んだ子供達で俺の大切な家族なのだ。

 たっちさん、ウルベルトさん、ぶくぶく茶釜さん、ペロロンチーノさん・・・かけがえのない仲間が産んだ子供達を血は繋がってなくても、たとえ異なる種族であっても、家族となった新しい姪に受け入れて欲しい。そう思った。

 

「分かりました伯父様。ネム」

 

「うん」

 

 ゆっくりと手を離して二人は俺の前に立った。

 そして、俺に向けたように優雅に礼をするとはっきりとした言葉で言ってくれた。

 

「エンリと申します。伯父様の家族である皆様に全幅の信頼を」

 

「ネムです。おじさまの家族であるみなさまに愛を」

 

「「これからも伯父様の誇れる家族であらんことをお願い申し上げます」」

 

 それを聞いて俺は二人の肩に優しく手を置いた。

 

「ありがとう」

 

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!!」

 

『『アインズ・ウール・ゴウン万歳!!』』

 

 

 アルベドが高らかに謳い上げ、それにシモベが続く。

 玉座の間に轟音となって響き渡る皆の声。

 新たな盟友を家族を迎えるその轟きに合わせ俺は二人の前に立つと両手を広げて宣言した。

 

「我が名はモモンガ!アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターとして、我が妹の兄として、新たな盟友、愛しき家族である二人を迎えよう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いや・・・そ、そんなところにささないで」

 

 頬を染め、涙を浮かべながらエンリは必死に拒絶している。

 どうしてこんなことになってしまったのかは誰にも分からない。

 

「何故です?これは貴女様から望んだこと。御自分の口から出た言葉は御自分で責任を取らなければなりませんよ?」

 

「お、お願いいたします。他のことでしたらなんでもしますから!」

 

 エンリの必死な哀願をデミウルゴスは悪魔に相応しい小さくも邪悪な笑みを浮かべながら首を横に振った。

 

「お断りします。私は此処にさしたいのです」

 

 彼は悪魔なのだ。悪魔が人間の哀願を受け入れる訳がない。

 元より無意味なのだ。

 

「・・・こ、この悪魔!!」

 

「悪魔ですがなにか?では、参ります」

 

「い、いや。やめて・・・いや、いやああああぁあ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェックメイト」

 

 ロイヤルスイートの談話スペースにてデミウルゴスの勝敗を決する一手が指された。

 その瞬間、テーブルに突っ伏した我が姪。

 そんな二人を俺は生温い視線で見つめている。

 

 なんだこの茶番は・・・。

 

 アンデットではなく別の表情筋を持った種族か義妹のように肉のあるアンデットだったら俺はきっとなんとも云えない表情をしていたことだろう。

 玉座の間にてシモベ達への顔見せを終えた俺達は守護者達を引き連れてロイヤルスイートへと移動した。

 姪達の休憩を兼ねてアルベドがお茶を出して、会話に花を咲かせている所にデミウルゴスが色々な遊戯を持ってきた。

 囲碁、将棋、人生をテーマにした双六。

 どれもユグドラシル内にあり、現実では大昔から存在したミニゲームだ。

 しかし、それでは少し物珍しさに欠けるのではないかと云ってみたら出るわ出るわデミウルゴスの父、ウルベルトさんがアンティークとして作った禍々しいダーツとパズルだったり、ナザリックきっての問題児である、るし☆ふぁーさんが作ったとんでもない罰ゲームが執行されるジェンガだったり、普通のゲームの原型は保っているものの普通の人間は勿論、異形種である俺ですら触れるのを躊躇ってしまうものばかりだ。

 そんな中でエンリが興味を持ったゲームがあった。チェスだ。

 それもただのチェスではない。天使と悪魔を型どったチェスで魔法によって駒が動くチェスなのだ。

 聞けばチェス。この世界ではチィースと云うらしいが存在するらしく、貴族の遊戯として普及しているのを亡き母から聞いた事があるそうだ。

 興味があるならやってみるといいと薦め、対戦相手はデミウルゴスとなった。

 ルールはアルベドが教えてやり、デミウルゴスに手加減してやるように云って始まった試合。

 アルベドから聞いていたがエンリの思考の回転率はなかなかのもので序盤から次々と手加減しているとはいえ、デミウルゴスの駒である悪魔のポーンとビショップを盤外へと跳ねていった。

 これはまさかいいところまでいくかと思ったがそこは我がナザリックのきっての知将。

 眼鏡をクイッと持ち上げて“いい夢は観れましたか?では、お遊びはここまでです”の言葉の後に悪魔の逆襲が始まった。

 あれよあれよと天使達が駆逐され、そして先程エンリのキングてある最上位天使を型どった駒が弱々しい光を発して盤上から消えた。エンリの敗北、そしてデミウルゴスの勝利である。

 

「~~~~~!!」

 

 そして現在エンリは隣に座っているアウラに抱き付き涙目でデミウルゴスを睨んでいた。

 しかし彼は涼しげに眼鏡を再びクイッと持ち上げている。

 

「デミウルゴス。あんたムササビ様の御息女泣かせるなんてさいってー」

 

「まったく、うちの知将には優しさの欠片もないのでありんすか」

 

「普通こういうときは相手に花を持たせるでしょう?」

 

「いつも喧嘩をしてるのに何故こういうときは仲がいいのですかねぇ!?」

 

 守護者の女性陣に攻め立てられている我が知将をどこか憐れに思うのは俺だけだろうか。

 

「ーーーっ!デミウルゴス様!私に勝ったからと云っていい気にならないでくださいませ!私は姉妹の中でも下から二番目、第二、第三の姉が控えております!我ら姉妹は44人います!」

 

 お前は何処の魔王だ。というかなんで見たことないのにそんなところが沙織に似てんだよ。昔オセロで勝負して完封した時も似たようなこと云ってたぞ。

 涙目でズビシッとデミウルゴスを指差して切った姪の啖呵にシャルティアとアウラが大爆笑している声を耳にしながら姉妹で最弱と云われた膝の上の姪にあることを聞いてみた。

 

「ネム。エンリは負けず嫌いだったりするのか?」

 

「うん。いつもはあんなのじゃないけど、だいたい同じ」

 

 おう、これはこれは、ますます似てるな。

 隣に座っているマーレも、後ろに控えているコキュートスもそれを聞いて笑っている。いやいや、向上心があってよいではないか。

 

「フッ、途中にはあたしもいるわよ!」

 

「私もいるでありんす!」

 

「私を忘れてもらっては困るわね!」

 

「だから、なんでこういった時だけ仲がいいのですかねぇ!?というか謀反ですか!?」

 

「フハハハハハ!デミウルゴスよ。お前に勝ち目はないぞ」

 

「モモンガ様!」

 

「何故ならば私も控えているからだ!」

 

「モモンガさまぁ!?」

 

 とりあえず女性陣に味方をする。

 いつの世も女性が強いのだ。

 再び笑いの渦に包まれている中、姉の仇を討たんとする少女がいた。

 

「デミウルゴスのおじさま。ネムと勝負しよ?」

 

 アルベド、アウラ、シャルティア、エンリの四人からおぉ!と感嘆の声が上がり、エンリ以外の三人からは手を抜かなかったらどうなるか分かっているのかなど罵声が追加で放たれる。

 

「フッ、私はいかなる相手でも手は抜きませんよ?いいでしょう。なにで勝負しますか?」

 

 しかし、開き直ったのかデミウルゴスは今一度眼鏡をクイッと持ち上げてネムに微笑む。

 そんなデミウルゴスに対してネムが笑顔で提案したのは。

 

「じゃんけん!」

 

 じゃんけん。

 じゃんけんとは、手だけを使って3種類の指の出し方(グー・チョキ・パー)で三すくみを構成し、勝敗を決める手段である。現実でも未だに世界的に普及が進んでいる遊びだ。

 

「分かりました。では私はパーを出しましょう」

 

 エグい、エグいぞデミウルゴス。

 悪魔の知将に相応しき彼は幼い子供に心理戦を仕掛けた。

 じゃんけんとは偶然性の強いゲームだが、先程デミウルゴスが仕掛けたように心理戦としての側面をもっている。

 大人げないぞデミウルゴス。貴様、それでも知将か!

 いや、ナザリックの将だからこそ敗北は許されないのか。

 獅子は小さなウサギを狩る時でも全力を以て狩る。

 そう云いたいのだろう。

 

 

 

 だがなデミウルゴス。

 

 貴様は知らない。

 純粋無垢な少女の可能性を。

 いかなる心理戦を仕掛けたところで全てを無視する理不尽さを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数秒後。俺達の腹筋が崩壊したのは云うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 隅っこでデミウルゴスがこれ以上ないぐらい落ち込んでいるのを他所に、勝者であるネムは膝の上でアルベドの作ったプチマフィンを食べている。

 彼女いわく、今は一つだけ食べてあとは一緒に来てくれた近衛のシモベ達に分けてあげるそうだ。

 

「失礼します」

 

 そんな優しいネムに和みながら皆がお茶を飲んでいると談話スペースにセバスがユリ・アルファとペストーニャ・S・ワンコを引き連れてやってきた。

 三人は俺の膝の上で至れり尽くせりのネムを見て目を丸くしているが守護者達が咎めていないことからそのままでもいいと判断したらしく用件を述べた。

 

「モモンガ様、そろそろお時間です。御嬢様方は此方でお色直しを・・」

 

 その言葉に従い、エンリとネムは立ち上がって俺に一礼した後、

ユリとペストーニャについていった。

 残されたのは私と守護者達、そしてセバス。

 ソファに背を預け、大きく息を吐いた。

 

「どうだった。二人と触れ合った感想は」

 

 俺はアルベドを除く、守護者達に問いかけた。

 

「いい子達だと思うでありんす。完全武装のわたしを見ても恐れることはなし、先程も楽しかったでありんす」

 

「我ハ、是非二次ノ機会ニハ爺ト呼ンデイタダキタイデスナ」

 

「ボクはあの二人が好きです。けど、他の人間はあまりですね」

 

「あたしはまるで妹ができたみたいで楽しかったです!」

 

「私も負けはしましたがよい経験となりました」

 

 それを聞いて俺は小さく笑い声を上げた。

 愉快だ、実に愉快だ。

 まるで本当に家族みたいではないか。

 今度ナザリックに来たら次は各階層を案内してやろう。

 そんな事を考えながらお色直しが終わるまでの間。子供達同然である守護者達と次は何でもてなすかを話し合うことにしたのだった。




 チェスのネタはenoba0129様の感想から触り程度で頂きました。
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