オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 本日更新です!


 書き終わってあれ?
 なんか幕間ぽくなっちゃったとおもいつつ投稿です。

 最初の視点は鬼っ娘こと夜叉姫ちゃんです・・・誰得?


そしてエ・ランテルへ

 私は女王と姫様を御守りする為に産まれた。

 幼い頃の記憶などない。

 私は私として産まれたのだ。

 七人の女王が統治する不可視の巨塔の最上階。

 玉座の間がある宮殿。そこが私の守る場所。

 私と同じような存在は沢山いる。

 姿、形がそっくりなのは私の姉妹だからなのだろうか?

 彼女達は私が産まれた時には既に姫様達の専属として仕えていた。

 けれども私は誰にもお仕えすることなく一人の兵士として宮殿を守っている。

 個人的には第一階層の“馬”が親衛隊長になれて何故あの“馬”より強い私がなれないのか不思議ではあるが女王の決定だ。なにも云うまい。

 ただ、数日だけ新しい姫様の近衛を任された時はとても嬉しかった。

 ジョン殿のように名前を頂いてそのまま就任とはいかなかったが貴重な経験にもなった。

 そしてその任も解けて、また私は兵士へと戻る。

 もう姫様の近衛をすることはないだろうし、憧れであったあのきらびやかな玉座の間に足を踏み入れることももうないだろう。

 良き思い出として記憶に刻み、私は宮殿を守りながら一時の主であるエンリ様の身を案じる日々を迎えよう。

 

 そう思っていたのだが。

 

「・・・・じょ、女王陛下のお呼び立てにより、さ、参上いたしました」

 

 私は再び玉座の間にいた。

 それも女王の目の前、たった一人でだ。

 目の前には万魔殿の支配者である女王。地獄の七姉妹の末女であるムササビ様が七つある玉座の中央。ギルドマスター、最高支配者しか座ることの許されない場所に腰かけている。

 私を取り囲むのは御息女である姫殿下の方々。

 エンリ様、ネム様はご自分の宮へとお戻りになられてこの場にはいない。

 そして玉座の間にいるシモベは私だけ。

 畏れ多いが姫様の中には私よりも力が劣っている方もいるが現状、私を支配しているのは恐怖。

 なにかしでかしてしまっていたのだろうか?

 必死に思考を巡らせているがなにも浮かばない。

 

 というか本当に怖いです!

 まるでオモチャが来た!と云わんばかりに笑顔のクロア様が怖いです!

 LOVE&デス陛下の御息女様方が送ってくる熱い眼差しが怖いです!

 なによりご飯を前にしたかのように尻尾をバンパン振っているもみじ様が本当に怖いです!

 

「・・・面を上げよ」

 

 女王の冷たい声で紡がれる言葉を受けて、ゆっくりと頭を上げた。

 初めて間近で見る女王の御尊顔。

 そのお顔を拝謁した瞬間に私は死を幻視した。

 先程までの意味の分からない恐怖が一瞬にして打ち払われる。

 この方こそ女王の中でも死を体現した御方。私達の女王なのだと、本能で悟った。

 私は自分が何をしでかしてしまったのかはわからない。しかし、なにか間違いを犯してしまったからこそ、こうしてお呼び立てをうけてた。そして処罰がくだされるのだ。

 そう思った。

 

「此度は我が娘、エンリの近衛の任、御苦労であった」

 

 だが耳に入ったのは私を労う言葉だった。

 

「急務にも関わらずその任を成し遂げたこと大儀である」

 

「・・・・・」

 

 シモベである私を呼び出して女王御自ら労いの言葉?

 なにか間違いを犯してしまったのではないのか?

 

「母様が御自ら言葉をかけていらっしゃるのにその態度はなんだ?」

 

 思わず呆然としてしまった所にもみじ様の怒気を孕んだ言葉を投げ掛けられて慌てて頭を下げる。

 

「も、申し訳ございません!まさか女王陛下御自ら労いの御言葉を頂けるとは!!」

 

「あれ?もしかしてなにかやっちゃったから処罰されると思った?」

 

 同僚がお仕えするキャサリン様が聞いてきたので恐る恐る首を縦に振る。

 そんな私を見た姫様方は口許を隠しながらクスクスと上品に笑いだした。

 思わず仕草だけでも絵になるなぁと思っていると。

 

「処罰なんてしない・・・今日は誉めるために呼んだ」

 

「目的地は伯父様のギルドとはいえ、道中なにが起こるか分からない今回の出向。お前を除いてレベルが低い近衛の統率として良く率いて無事にエンリを家に連れ帰った」

 

「初めてのお務めで緊張していたでしょうに。安心して職務を全うできたのは貴女のお蔭よぉ。あの子も守ってくれてありがとぉ、って言ってたわぁ」

 

 リィリィ様、ピューレ様、ディーネ様の順に私を労ってくれる。

 もしかしたらこうまで姫様達に労ってもらえるシモベは私が初なのではないだろうか。

 有頂天になりそうになるが理性を総動員して再び、今度は感謝を込めて小さく頭を下げた。

 嬉しい。

 姫様が、エンリ様がそう仰ってくれたのが本当に嬉しかった。

 

「畏れ多くもエンリ様にお伝えして頂きたい事がございます。一介のシモベである私がこのような事を申し上げますのは不敬だとは重々に承知しておします・・・ですが。何卒、何卒お願い申し上げます」

 

 こんな申し出。

 不敬と取られ、この場で殺されても文句は言えない。

 けど、できることなら伝えてほしい。

 

「姫様を御守りできて幸せでした」

 

 道中エンリ様は私の事を色々と聞き、話をしてくれた。

 夜叉姫というシモベの特徴、強さ、弱点。

 私個人の好き嫌いや趣味。

 姫様の伯父上がお納めになられているナザリックでは知将デミウルゴス殿にいいように遊ばれたがネム様が仇を討ってくれたり。頂いた茶菓子を私達に分けてくださった。

 

「夜叉姫は姫様の御健勝を影ながらお祈りしております」

 

 せめて一言。

 そんな心優しい姫様にお仕えできて本当に幸せでした・・・と。

 

「うん、却下♪」

 

 えー。

 笑顔でキャサリン様に却下された。

 

「私達もけっこう忙しいのよ。貴女の言葉をエンリに伝えてあげたいのはやまやまなんだけど。ちょっと人手が足りないから自分で言いに行って頂戴♪」

 

 はい?

 

「フフッ、貴様はこれよりエンリの近衛とする。我が娘たっての希望だ。断る事は許さぬぞ?」

 

 えっと、エンリ様。

 どうやらこれからお世話になりそうです

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 俺は執務室で今後の動きを決めるべく、思考を回転させる。

 DMMORPGーユグドラシルのサービス最終日に起きた不可解な現象によって俺と義妹はそれぞれモモンガ、ムササビとして異世界に飛ばされ1週間と数日が経過しようとしていた。

 義妹もだが、我が陣営からも情報収集の為に守護者やシモベを放っているがそろそろ次の手に出るべきだろうと考えている。

 できることなら義妹のギルド、地獄の七姉妹の本拠地である不可視の巨塔、地獄の万魔殿の所在はバレないようにしたい。

 ユグドラシルに存在していた数多くある女性ギルドの中でも最強の一角であった義妹達が簡単に陥落するとは思えないが。妖艶の魔窟の異名の由来ともなった美しい女性達が住まう宮殿の所在をどこぞの国王や貴族が聞き付けてしまっては彼女達を狙ってひっきりなしに攻めてくることになるだろう。それでは俺も気が休まらないし、彼女達も安心して生活することができない。

 また俺達以外のプレイヤーの耳に入りでもしたら目も当てられない。

 地獄の七姉妹の防衛力の真髄は完璧に役割分担された七人の適材適所にあると思う。

 防御の要、LOVE&デスが防ぎ。

 回復の鬼、オーオバーが傷を癒し。

 双子の、昼の幼女と夜の幼女が撹乱して。

 魔法最強、がんばるヤンデレと。

 七姉妹最強、ギブ・ミーが蹂躙した上で。

 ムササビが葬る。

 女王が一人しか玉座にいない現在。

 即死に対する対策をされたら防御力が格段と低下することはまちがいない。

 そんなところへレベル100の上位プレイヤーが複数人束となって攻めてきたら万魔殿が陥落の危機に陥る事になってしまう。

 義妹の云う最強戦力であるセブンスチャイルドを投入すれば守りきるのは可能かもしれないが母親であるアイツは悪魔化せざるをえない状況に陥りやすい対プレイヤーの防衛戦にあの七人を投入させたくないだろうし、誰一人死なせなくないから単騎で立ち向かうだろう。

 そして敗れれば復活できるかは分からない死が待っている。

 そんなことにならないためにはどうすればいいか・・・。

 

「モモンガ様、シャルティアがご面会を求めております」

 

 報告書に目を通しながら更に思考を回転させようとした時、側に控えていたアルベドが声をかけてきた。

 

「シャルティアが?」

 

「はい、どうやらエリザも一緒のようです」

 

「ん?今日は特になにも聞いてないが・・・まぁいい。通せ」

 

 俺の許可に従い、執務室の扉が開く。

 入ってきたのはスカートが大きく膨らんだボールガウンを着た少女と、彼女よりももう一〜二才幼い容姿の白の燕尾服を着た少女。

 それぞれナザリック地下大墳墓、第一から第三階層守護者のシャルティア・ブラッド・フォールン。

 地獄の万魔殿、第三階層守護者、エリザ。

 俺達兄妹のギルドが誇る《真祖/トゥルーヴァンパイア》だ。

 

「モモンガ様ご機嫌麗しゅう存じんす」

 

「こんにちはおじさま」

 

 目の前でにこやかにお辞儀をした二人にソファーへ座るように促し、俺も二人の前に腰掛ける。

 それに合わせてアルベドがメイドを呼び、エリザの前に茶を出しさせた後に話を切り出す。

 

「それで?どうした突然」

 

「はい。これより君命にしたがいまして、セバスと合流しようと思っておりんす」

 

「万魔殿からはわたしとわたしの親衛隊が出ることになったからそのご報告。あとシャルティアのお迎えといっしょにごあいさつにきたの」

 

 現在都市へ、セバスとソリュシャンを人間と接触させる方面での調査に向かわせている。そこへシャルティアも送り込むつもりなのだが、七姉妹側からも一人送り込む事が決まった。

 

「今、セバスがいる街にはわたしの妹のテレサがいるし、となりの街にはエスがいるから守護者であり隠密頭のわたしがいくことになったの」

 

「隠密頭・・・まるで忍者だな」

 

「わたしニンジャなのニンニン♪」

 

 かわいい。

 

「ンンッ!・・・わざわざすまないな。どれ、二人にアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターとしての助言をしよう。もし、プレイヤーと思わしき者と遭遇したら即時撤退しろと言っておこう。連中は最初こそ戦うがそれは決して本気ではない。本気のふりをして情報を集めているのだ。だからできるだけ情報を与えないように全員撤退しなさい」

 

 プレイヤーは守護者達のような存在ではない。

 研究し、対策する。

 上位プレイヤーなら二度目で確実な対策を講じてくるし、ワールドチャンピオンなら二度目はない。仕留めれると判断されたら確実に殺られる。

 

「言い方は悪いかもしれないがお前達がプレイヤーを相手取るにはまだ経験が浅い。だからプレイヤーと思わしき者を発見したら直ぐに全員撤退し、私とムササビに報告するように」

 

「その御言葉、しかと受け取りました」

 

「うん。おじさまの忠告ちゃんと覚えておくね」

 

 義妹もおそらくできることなら万魔殿の外に娘達を出したくないだろう。

 けど、一人ではできることに限りがあるのを十分に分かっている。

 俺にできることは主人として、叔父として忠告し、可能な限りの可能性を考慮して手を打つこと。

 さて、家族や姪達ばかり最前線に立たせる訳には行かない。

 俺ももしもの為に動くとしよう。

 

 

 

 

 

 

「アルベド、わたしがいないからってモモンガ様に粗相をせんでおくんなましね?薹の立ったおばさんは賞味期限切れのせいか忙しなくて・・・ナザリックを頼んだでありんすよ」

 

「保存料過多の賞味期限切れの毒物より安全なんじゃない?・・・貴女も死なない事ね」

 

「・・・お前達は素直に激励もできんのか」

 

「おじさま、わたしも賞味期限切れ?」

 

「ノーコメントだ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 バハルス帝国、スレイン法国の要所となる境界に位置するエ・ランテル。

 三重の城壁に囲まれ、外周部は王国軍の設備が置かれ、駐屯地として、最内周は兵糧を保管する倉庫の他、行政関係の施設があり、その二つの区画の間に市民の為のエリアがある文字通り城塞都市だ。

 姪と配下を送り出した数日後、潜入した俺の姪であるテレサとエスを筆頭とした万魔殿の隠密部隊が、人間との接触無しで拾い集めてきた情報を義妹から受け取った俺は、彼女達とは別方面で情報を収集、今後の為の地盤作りのために動いている。

 そして今いるのは市民エリアにある広場の中でも一番大きい中央広場。

 様々な露天が並び、商人が道行く人に声を投げ掛けているのだが俺が冒険者組合の斡旋所から出たと同時にその喧騒は鳴りやんだ。

 いや、正確に言えばさっきから止んでいるのだが。

 それは俺が共に連れている女性が原因だと思う。

 ナザリック地下大墳墓を守る戦闘メイド、プレアデスの一人ナーベラル・ガンマ。

 見た目は十代後半から二十代。

 長い切れた黒い瞳とポニーテールの黒髪、きめの細かい白い肌の持ち主である彼女は絶世の美人と言っても過言ではない。

 故に道行く人間が彼女に見とれてしまうのも分かる。

 分かるのだが

 

「モモンガさーー」

 

「モモンだ。そしてお前はナーベ。けっしてプレアデスのナーベラル・ガンマではない。私達は冒険者仲間としてここにいる」

 

「し、失礼しました。モモン様」

 

「冒険者仲間なのだから様付けもいらぬ。怪しまれてしまうからな」

 

「し、しかし!」

 

 声がが大きくなったナーベラル・ガンマことナーベにジェスチャーで落とすよう言った後に少しばかり苦笑する。

 彼女は真面目だが少しばかり融通が利かなさすぎる。

 固いと云うのだろうか。パンドラズ・アクターみたいに砕けて接しろとは云わないがもう少し肩の力を抜けばいいのに。

 

「潜入任務の一環と考えるのだ。その為に考えた冒険者仲間という設定。それを遂行するつもりで発言すればいい」

 

 ナーベラルはカルマ値が大幅にマイナスに傾いたNPCだ。

 本来なら今回の潜入にはあまり向かないだろう。

 しかし彼女はアルベドからの推薦なのだ。

 最初は俺がここに来ることを渋り、共に着いて来ようとした彼女。

 だが彼女には統括としてナザリックを守ってもらわねばならない。

 故に一人供を連れていくと云った時にアルベドが推薦したのがナーベラル・ガンマだ。

 

「は、はい」

 

「頼むぞ」

 

 人間を嫌悪し見下しているが、アルベドと同様せめてエンリとネムにぐらいは心を開いてくれるようになってほしいと思っている。

 その予行演習もかねているのだが先は長そうだ。

 

「しかし、なぜここの人間はこうまで静かなのでしょうか?」

 

「さぁな・・・」

 

 お前が綺麗だからだと云ったら要らぬ誤解を生むだろうと思い、適当にはぐらかせた後に目的の絵を掲げた店の看板を見つけた。

 同時に合流する予定であった人物二人も直ぐに見つかった。

 店の入り口の脇にひかえている人影が二人。

 顔の上半分を覆う右目だけ開いた真っ白い仮面と懐かしい中堅魔法職が装備するローブを身に付けた義妹と、これまた懐かしい格闘職が装備する軽装を身に付けた姪。

 ムササビとヴィヴィに変身したピオーネの二人だ。

 二人は俺達に気づくと笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。

 

「遅いよモモン兄さん。私もヴィーも待ちくたびれちゃった」

 

「まぁまぁ、サザビーさん。私たちが速すぎたんですから」

 

 二人の偽名はサザビーとヴィー。

 義妹の自律兵器でも飛ばしそうな名前は置いておいて、二人が何故ここにいるのかというと俺と似たような理由で母親なのに娘にばかり働かせるのを嫌がったからだ。

 本音は色々とあるだろうが数時間にわたる口論の末、俺が折れて今に至る。

 

「申し訳ありません。私が登録に手間取ったばかりに」

 

「あ、ナーベは気にしなくていいからね。ほら兄さん、さっさと宿を取ろう」

 

 背中を押されながら店へと入る。

 頭の中で今後の動きを練りつつも気分は義妹と一緒に冒険していた頃のように少しワクワクしている俺だった。

 

 

 

 

 

  




 第二の大台2000突破!!

 読者の皆様に感謝を!

 拙い文章の上かなりスローですが。
 エタらないように頑張ります!

 2016年5月30日
 加筆修正しました。

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