次はンフィー君はを書かないと!
地獄の七姉妹が末女にしてギルドマスターであるムササビ様。
かの御方の御息女である五女、エンリ様と六女、ネム様が治める予定となっているカルネ村に辿り着いた私達は脇目も振らず、真っ直ぐに姫様の居られる宮へとキャサリン様からの言い付け通り、他の村人に見つからないように移動する。
配下である私が力を奮い、姫様のこの村での地位を確かな物にすればいいと思うのだがそれはキャサリン様から止められた。
亡き実母と共に過ごした村を恐怖によって治めることになるのはお二方もそうだが女王も望むものではないそうだ。
姫様方が住まう宮は木で作られた小さな建物。
万魔殿で生活していた私にとって見るものは新鮮で、ここが姫様方が生まれ育った場所なのだと感動していた。
訪れた私達を先ず出迎えたのはネム様の親衛隊長を勤めるデスナイト。
女王の兄君でいらっしゃるナザリック地下大墳墓の支配者、モモンガ様が自ら創造し、ネム様へと支配権を譲渡され、ジョンという名前を頂きそのまま親衛隊長となった彼は宮の裏手から近づく私達の前に立ち塞がった。
私達からすれば矮小な存在だが彼はネム様の騎士。
それ相応の礼儀を持って自分達の到着を伝え、宮の中へと通される。
さあ、待ちにまった新しい生活の始まりだ。
そう思っていた。
「・・・・・」
現実逃避していた思考を戻した私はゆっくりと視線を左右に動かす。右手にはお預かりした品々の山。左手には馬。そして正面にはネム様とーー。
「それで?御姉様はなにしてたんですか?」
「はい。ネムと遊んでました・・・」
万魔殿で別れたはずのもみじ様がいた。
現在私達はエンリ様の宮の中で正座している。
私と駄馬だけではない。
ネム様ともみじ様も一緒に正座しているのだ。
私達の前にまるで鬼神の如く君臨なさっているのは我が主、エンリ様。
人間なのに鬼の角が見えるのは決して幻覚ではない。エンリ様は現在お怒りになっているのだ。
宮に入って先ず目に入ったのはネム様と戯れていらっしゃるもみじ様だった。
居られる筈のない御方が居られることに固まってしまった私達であるが直ぐ様互いに視線で合図を送り、その場に跪き頭を下げた。
御二人が私達に気付いて下さるまで待つつもりだったのですが幸いにもネム様が気付いてくださり、戯れるもみじ様のとぐろの中から飛び出して私達を迎えてくださいました。
私は仮の近衛を勤めたので面識はあるが馬は一度目の謁見が日も出ていない早朝だったということもあり、ネム様がご就寝中だったので直接の面識は初めて。なので戯れを邪魔されたもみじ様が拗ねつつも、クロア様の親衛隊長だと紹介した。
エンリ様のお姿が見当たらないので尋ねてみたらこの村の長のもとへ出ているとのこと。
お留守番をしているところにもみじ様がいらっしゃってジョン殿と入れ替わり戯れていたところに私達が来たのだ。
ケンタウロスを見たことのないネム様は馬の周りを目を輝かせながらくるくると回る。気を利かせた彼女が背中に乗せてゆっくりと部屋の中を周回、嬉しそうにはしゃいでいらっしゃるネム様。
そんなネム様を見て馬もたまにはいいことをするではないか。
そう思っていた。
だが、ネム様が馬のもとへ行ってしまったことによって絶望してしまった方がいた。
エンリ様とネム様の姉君、もみじ様だ。
『ネム、姉はこっちですよ?ネム?こっちを見てください。ねぇ・・・』
とヌルヌル這いながら二人を追走。
端から見たら本当に怖い。
駄馬も最初は顔が引きつりながらゆっくりと距離を取っていたが耐えられなくなったのか捕食者に追われる獲物のように逃げ、もみじ様もそれを追いかける。
気付けば室内はしっちゃかめっちゃかになってしまい、お帰りになったエンリ様が目撃。
鬼神となり今に至る。
「ネム?いつも言ってるわよね?夜は大人しくしてなくちゃダメだって」
「・・・ごめんなさい」
「エンリ、ネムを叱らないであげてください悪いのは姉でーーー」
「私からしたら皆同罪です。異論、反論は受け付ません。ここでは私が法です」
ネム様を庇うもみじ様の御言葉をバッサリ切り捨てた我が主。
圧倒的強者であるもみじ様をお叱りになるお姿を見て私も萎縮してしまっています。
しかし、流石エンリ様。もみじ様相手に物怖じせずにおられるとは。
「隊長さん?私は先日言いましたよね?皆さんが他の村人に見られるとクロア御姉様にもご迷惑がかかると」
「はい。し、しかしーーー」
「言い訳しない!」
「も、申し訳ございませんでした!!」
土下座する同僚。
私も直ぐ様土下座をして皆様を窘めることができなかった事をお詫びした。
あぁ、お仕えする初日で失敗するなんて。
内心涙するも後の祭り。
一頻り私達に向けてお叱りの御言葉を飛ばしたエンリ様は部屋を見渡し大きく溜め息をおつきになった。
「はぁ・・こんなに滅茶苦茶にして。ネム、片付けるわよ。隊長さんも夜叉姫さんも手伝ってください。御姉様も尻尾をフリフリしない。私はまだ許してませんからね」
「「「「はい」」」」
それからはエンリ様の指揮の下始まったお片付け。
ひっくり返ったテーブルや割れた花瓶を片付ける。
幸いと言ったらいいのかお預かりした品の中に新しい花瓶とかがあったので取り替える事になりました。
リーフ様とリース様に感謝です。
途中何度か張り切りだした同僚と尻尾をフリフリしだしたもみじ様が注意されましたがなんとかお片付けは終了。
エンリ様がお手自ら淹れてくださったお茶を振る舞われて、やっとお許しの御言葉を頂いた直後。
「やっぱりここにいた」
部屋の一角に《転移門・ゲート》が開いた。
そこから姿を現したのは第四階層守護者であるリィリィ様。
私と同僚は慌てて跪き頭を下げる。
「リィリィねーさま!」
「こんばんはネム・・」
もみじ様に続き更にに姉の一人がいらっしゃった事で笑顔になったネム様は小走りで駆け寄り抱き付く。リィリィ様も笑顔で受け入れているのだがもみじ様の表情は強張っていた。
「リィリィ御姉様。どうされたんですか?」
「もみじを探しに来た。万魔殿の・・守護者会議。始まってるのに・・いつまで経っても来ないから」
「・・・御姉様?」
エンリ様が今一度もみじ様を睨み付けた。
妹からの視線を受けた姉は顔を逸らす。
それがいけなかったのだろう。
「御姉様もう一度正座!!」
堪忍袋の緒が切れたエンリ様の怒声が再び宮に響いたのでした。
「やっと落ち着いた」
「おねえちゃんおつかれさま」
「もう、ネムったら」
リィリィ様によってもみじ様と同僚が万魔殿にお戻り(連行)された後、エンリ様は小さく肩で息を吐きながらテーブルに腰掛けて冷えきったお茶を口にされている。
その表情は少し疲れてはいるものの笑顔であり、楽しんでおられたご様子。
ネム様も対面の席に座りながらにこやかに笑っておられた。
お二人ともなんだかんだで姉であるもみじ様がいらっしゃったことが嬉しかったのだろう。
お叱りはしたものの最後、見送る際には姉の体を労っておられたのだから。
「それでは夜叉姫さん。大分遅くなってしまいましたが本日のご用件をお伺いします」
木でできた椅子の上で姿勢を正しながら此方を見つめるお二方。
私は床に両膝を付きながら頭を下げた。
「本日よりエンリ様の近衛の任を賜りました。名もなきシモベではございますが。我が力、我が魔導、我が命、全てを御身に捧げる所存にございます」
「女王ムササビが五女、エンリ。貴方の全て、確かに受け取りました。ようこそ我が家へ」
頭を上げるとエンリ様は優しく私を見つめ、ネム様は拍手で私を迎えてくださった。
夢までに見たシモベの憧れの肩書き。
思わずにやけてしまいそうになるのをこらえるが。
「あ、貴女の名前は決まってるんですよ。御母様に手伝っていただいて考えたんですが、貴女の宵闇のような黒い髪と月のように青白い角が夜空を見ているように見えましたので“ヨミ”。これからは“ヨミ”と呼ばせてもらいますね」
素敵な名前を頂いた私は満面の笑顔でありがとうございます!と今一度深く頭を下げたのだった。
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「ホラ、早く。みんな待ってる。全く、普段はしっかりしてるのに・・・」
地獄の万魔殿最上階層『宮殿』。
その一角にある会議室でこれから行われる守護者会議に参加するために私は姉妹であるもみじとクロアの馬を連れて会場に向かっている。
本当ならとっくに始まっているのだがもみじが急に行方を晦ませたのだ。
まぁ、先日までいた新しい妹が自分の家に戻ったから会いたくなり、エンリとネムの所に行ってるのだろうと思い、足を運んでみたら案の定そこにいた。
ついでにお使いから戻ってこない馬もいたので回収。
ちなみに何故私が最上階層に馬を連れているのかというと私達の守護者会議は各守護者の親衛隊や近衛も参加させる方針で戻ってこないコイツを拾いに行くのにクロアよりも私の方が早いからだ。
キャサリンが言うには会議で親衛隊や近衛には発言権はないが私達が説明するより、実際にその場で聞いていた方が理解するかららしい。
私は別にいいと思うのだが統括である妹の決定だ。意見するつもりはない。
「お前も、クロアに荷物を。届けたら直ぐ、戻るよういわれた・・はず」
「申し訳ございません。ネム様が可愛らしくてつい」
後ろで馬が歩きながらも頻りに頭を下げているが見向きもせずに足を進める。
ネムが可愛いのは周知の事実だが、自分の主の指示を忘れるのはどうだろうか。
全く、クロアは甘い。私だったら親衛隊長から外して消し炭にしている。
まぁ、今回はクロアも怒っていたようで。
「会議、終わったら。お前は、クロアと、3日間模擬戦。執行猶予、半日。しっかり引き継ぎ、しておくように」
クロアからの伝言を伝えてやった。
途端に顔が真っ青になった馬。
まぁ、それもそうだ。クロアは七姉妹最強と名高いギブ・ミー義母さまが産んだ武人。
普段はもみじやシモベやもみじを苛めて楽しんでるが一度戦闘になれば一切の容赦なく、シモベ達を従えて侵入者を迎え撃つのだ。
私も好んで戦いたいとは思わない。特に第一階層では。
というか私だって新しい妹と遊びたい。
一緒にお茶(精霊なので飲めないけど)したいし、お世話だってしてあげたい。
してあげたいけど私にも仕事がある。
この世界の魔法の分析、エリザ率いる隠密部隊に派遣した妹達の持ち帰る情報の纏め。有事の際に動く部隊の編成に階層守護。やることは山程だ。
時間があるならキャサリンだけで十分だが世界の全容が分からない今は少しでも速く情報を集めなくてはいけないし、なによりそれがカルネ村の妹達の為にもなる。
義母さまのその言葉により、諜報、生産、軍事といった各部門のエキスパートは総出で作業に当たっているのだ。
もちろんもみじにもちゃんと仕事はある。
クロアと一緒に第一、第二階層で侵入者を確実に葬る為、編成された特別部隊の指揮と大森林調査隊が持ち帰る情報の間引きだ。
私より仕事が少ないのだからちゃんとやってほしい。
今度仕事を押し付けてやろうか。
そんな事を考えながらもみじを横目で見てみると何やらこめかみをすりすりとさすっていた。
「どうしたの?」
「いえ、エンリにぐりぐりされた所がまだチクチクしてまして」
「あぁ・・・。けっこう、思いっきりやってた・・ね」
私が迎えに行った時にもみじがバックレた事を知ったエンリは彼女にお仕置きしたのだ。
妹が姉を叱ること自体は我が家では珍しくない。というかもみじ達の間ではしょっちゅうなのだが。
長女であるもみじにあそこまでやれるとは流石義母さまが養女としただけのことはある。時と場合によっては目上でも強く出れる胆力。これは将来が楽しみだ。
そう思ってまた一歩足を踏み出して。
「流石エンリ様。まさかもみじ様の守りを突破するとは・・・」
馬の呟きに足を止めた。
「エンリは抜いたの?もみじの《最上位物理無効化》」
「・・・あ」
私達は互いに歩みを止めて見合わせる。
第二階層守護者もみじ。
インフェルノナーガである彼女は持ち前の炎属性魔法と高い炎耐性に加えて義母さまから物理特化型として産み出された。
非常に高い物理攻撃力と物理防御力を持つ煉獄の大蛇。それがもみじだ。
スキルもそれに特化しているが彼女の持ち味はバカみたいな防御力。もちろん物理無効化スキルも持っているので並大抵の攻撃は全くダメージが通らない。
そんな彼女がチクチクする?
ダメージが通った?
確かにぐりぐりされてる時、もみじはチクチクするって叫んでたがてっきり演技だと思ってた。
「・・・スキル?」
「いえ、そんなスキルは知りません。御母様ならもしかして知ってるかもですか。この世界特有の異能であるタレントの一種かもしれないです」
「でも、エンリがもってるの・・《コマンダー》だけの、はず」
「もしかしたら見落としかも・・・」
「え?あの・・・」
「煩い」
「これは早速議題に上げるべきですね。もし実在するなら相手によっては些か面倒になるかもしれません」
スキルも防御力も無視してダイレクトにダメージを与えるタレント。力ない者が持っていても脅威にもならないスキルだが、力ある者が持っていたら面倒になりかねない力だ。
それを私達の統括である妹に伝える為、私達は早足で会議室に向かった。
途中私に煩いと言われて固まった駄馬を取り残したのに気付き、慌てて戻ったのはここだけの話し。
万魔殿の姫にふさわしくなって貰うために隠しタレントを付けました。
詳細はいずれw
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