オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 大変遅くなりました。

 本日更新。
 そしてタイトル詐欺です。

 あと、ンフィーレア君の性格がちょっと改変されてます。


ンフィーレア・バレアレ

 その日伝説を初めて目の当たりにした。

 

 僕と祖母が一緒に切り盛りしている工房に来たのは一人の女性冒険者。

 彼女は宿屋の主人が書いた紹介状と一緒にある物を見せてきたのですがそれは小さな小瓶に入った真っ赤な液体。

 それは宿屋で一悶着あった折りにフルプレートの冒険者から譲り受けたポーションで、その効能の鑑定の為に持ち込んだそうです。

 

 赤いポーションを最初に見た時、最初に思ったのは久しぶりにまた偽物が出てきたなといったどうでもいい考え。

 赤いポーションとは僕達薬師や錬金術士の間では“真なる癒しのポーションは神の血”といわれ、伝説とされている。

 僕達が作る薬草や魔法で生成するポーションは青い。

 また劣化するのでそれを防ぐために《保存》の魔法をかけているのが現状。というか製作課程でどうしても青くなる。

 そんな伝説があるからにはもちろん偽物も存在する。今まで様々な薬師や錬金術士が劣化しないポーションを作ったと言い、冒険者が赤いポーションを手に入れたといって売り付けに来たというのも聞いた事がある。

 それら同様今回のも偽物だと思ったけれど宿屋の主人からの紹介状付きの品だ。

 一応祖母に見てもらったのだが。

 

 

「アーッハハハハハ!!」

 

 祖母、リイジー・バレアレは壊れたように笑い声を上げた。

 イーヒヒヒヒヒヒッ!イーヤッホー!

 とはしゃぎ回っている姿は孫の僕からしても不気味の一言。

 工房を走り回った後、僕の肩を掴んで叫んだ。

 

「ンフィーや!これこそが恐らくは“真なる神の血”を示すポーションさ!!」

 

「へー・・・」

 

 軽く返事を返して祖母の手を肩から外すと報告書の作成に移る。

 全く、お婆ちゃんったら年甲斐もなくはしゃいじゃって。気を付けないと血管きれるよ?

 

「効能は第二位階の治癒魔法相当!しかも、これはそれだけで効能が劣化しないのさ!!」

 

 へー、そりゃ凄い。第二位階の治癒魔法か。

 しかも劣化しないときた。

 パーティーとはぐれた時とか重宝しそうだねぇ。

 話を聞きながら報告書を纏める。

 

「稀少性や付加価値を加味しないなら金貨で8枚。加味するならあんたを殺してでも奪い取りたいって人間が出ても可笑しくない代物さね」

 

 価値は金貨8枚。

 付加価値を加算すると大幅に価値が上昇っと。

 報告書を纏めた後に焼き印を押す。

 それを丁寧に封筒にいれて冒険者さんに渡した。

 

「ハイ、今の内容を纏めた書面です。鑑定料は紹介状にあった通り、後日宿屋の主人からいただきますので。あ、安心してください。ポーションについては誰にも言いませんから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「そのポーションはきっと貴女を助けてくれる筈ですので大事にしてください」

 

 さて、これで今日は終わり。

 さっさと店じまいして、僕のお得意先の注文をつくらないと。

 そうそうに切り上げた僕は工房の前の看板を下げようとして。

 

「またんかい!!」

 

 お婆ちゃんに引き止められた。

 

「ンフィーレアはこれを見てなんともおもわないのかい!?」

 

「まぁ、そりゃあ凄いと思うよ?真なるポーションって実在したんだ~って。世界は広いからね。何処かで製造に成功した人だっているでしょ」

 

 だけどそれだけだ。

 僕にとってはそんなものよりも将来の積み立て。

 そういえばカルネ村の幼馴染みの姉妹に薬を送って大分経ってるからそろそろ傷薬とか新しいの作ってあげないと。

 姉も畑仕事で生傷が絶えないし、妹もまだやんちゃだから塗り薬とポーションは定期的に村まで持って行ってあげてるのだ。

 

「お前はこれの製造法を知りたくはないのか!?」

 

「知りたくないと言えば嘘になるけど。仮に製造法を知ってどうするの?材料は?設備は?資料は?人員は?全部揃えようと思ったら幾らかかるか」

 

 僕の言い分にお婆ちゃんはニヤリと笑った。

 

「フッ、金など些細な問題だよ。大事なのは真なるポーションはこうして現実にあって生成できるということさ」

 

 その表情のまま冒険者さんに詰め寄って。

 

「これをワシに売れ。なぁに、心配しなくても色は付けるさ金貨四十枚でどうだい?」

 

 血走った目で要求した。

 って四十枚って!?

 いったいどこからだすのさ!?

 

「ちょっ!?お婆ちゃん四十枚って何処から出すのさ!まさか、僕も出せって言うつもりじゃないでしょ!?」

 

「おだまり!!あんたも薬師であるワシの孫ならこの機会を棒に振るような真似するんじゃないよ!」

 

 それから僕とお婆ちゃんは大喧嘩。

 オロオロとしていた冒険者さんが止めてくれるまで続き、僕達の妥協案として赤いポーションをくれたという冒険者さんに僕が接触して探るということで落ち着いた。

 僕としてはその冒険者さんに迷惑をかけてしまうから気が引けたがお婆ちゃんが納得するなら仕方ない。

 とりあえずいつも通りの護衛の依頼でもして何事もなくやり過ごそう。

 ついでにカルネ村の幼馴染みに薬を届けないと。

 

 

 この時の僕は知るよしもない。

 まさか彼女達の身にあんな事が起きていたなんて。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 依頼を受けてカルネ村へと向かう私達。

 隊列は先頭を漆黒の剣の面々。

 次に依頼主が手綱を握る馬車。

 最後尾を私達四人が守っている。

 そう、現在私達は護衛任務に就いている。

 何故、私達は護衛任務に就いているのかというと。

 漆黒の剣の面々と組合を出立しようとした際に名指しの依頼が入ったからだ。

 依頼主はンフィーレア・バレアレ。

 エ・ランテル一番の薬師と名高いリイジー・バレアレの孫であり跡継ぎ、そして“どんなマジックアイテムでも使用できる”という破格のタレント持ちとして有名な彼は義兄さんに村の近くの大森林で薬草採取するための護衛を依頼してきた。

 彼が云うには今まで護衛を依頼していた人が街を離れて困っていたところ、宿で義兄さんが大の大人を片手で軽々と投げ飛ばした銅のプレートの冒険者という話を聞いたからだとか。

 それだけ聞いていれば納得もできたかもしれない。

 

 けど。

 

『そう、あの子はリイジー・バレアレに言われて兄様が冒険者に渡したポーションについて知るために接触してきたのね』

 

 最後尾を歩く私は視線を前に向けながら《伝言》を飛ばす。

 正確には私の背中にしがみついている女の子に話しかけていた。

 

『うん、あのおにいちゃんはあんまり乗り気じゃないみたいなの。迷惑かけちゃうかもしれないなぁって、ひとりで言ってたの』

 

 背中にしがみつき同じく《伝言》でやりとりしている女の子。

 彼女は七姉妹四女、昼の幼女が産んだ四女で名前をモココ。

 つぶらな四つの瞳が可愛らしく、モコモコしている蜘蛛の下半身と、なによりドピンクな色が目を引くアラクネ族。

 もう一度言おう。

 ド、ピンクだ。

 ぶっちゃけ目立つ。

 ド派手な娘だがエリザ率いる隠密部隊のメンバーの一人で隠密スキルを駆使している為、私達四人以外は誰も気付いていない。

 エ・ランテルを調査中のモココの小隊がたまたまバレアレの工房を訪れた際、丁度義兄さんが譲ったポーションを持つ冒険者が鑑定に来たので観察していたら今の話が出たので引き継ぎの後に追いかけてきたそうだ。

 個人的に比較的レベルの高くない(レベル55)この娘の隠密スキルでもバレないとは、この世界のレベルの低さに改めて驚いてたりする。

 

『そ、こちらに深入りしないなら別にそのままにしておきましょうか』

 

『はーい』

 

 可愛らしく返事をした彼女。

 用事は終わったはずだが一向に離れる様子はない。

 どうしたのかと首を傾げていたら義兄さんが教えてくれた。

 

『どうやらモココは一緒に行きたいようだぞ?』

 

『そうなの?』

 

 横目で彼女の顔を覗き込んで見れば顔を真っ赤にして頷いた。

 それがまた可愛らしくて思わず抱き締めたくなるが我慢。

 

『エリザはなんて言ってた?』

 

『おかあさんがいいって言ったらいいって言ってたの。明日エスおねえちゃんにあの街に行ってもらうらしいの』

 

 それを聞いて義兄さんはだったらいいんじゃないか?とモココの同行を容認したので私も良いよと言ってあげた。

 

『良かったですね親愛なるモココ。幸い今日はいい天気です。皆でのんびりお散歩でも楽しみましょう』

 

『うん。みんなでおさんぽおさんぽ♪』

 

 楽しそうに小さく鼻歌を口ずさむ義妹に義姉のヴィーことピオーネはクスリと笑う。

 未だにモンスターが出て来ないのはある意味退屈なのかもしれないが私としては娘とピクニック気分でお散歩できているので気分は上々。

 

『おかあさん。何にも出てこないの』

 

 気分良く歩いている時、義兄さんに肩車(?)されているモココが再び声をかけてきた。

 どうやら少しお腹が空いたようでモンスター(ご飯)が出てくるのを期待していたらしい。

 ご飯(モンスター)は自らエンカウントしてくるという独特な思考は置いといて、私の娘はご飯をご所望だ。

 

『ふむ、これでは些かつまらんな』

 

 それをすぐに雰囲気で察した義兄さんはモココが空腹という事には触れず、自分が退屈という建前を作る。次に前を歩く漆黒の剣の面々とンフィーレア・バレアレの注意が此方に向いていないことを確認してモココにある提案をした。

 レディとして扱われたモココはちょっと顔が赤くなったが義兄さんに同意するようにコクコクと頷いた。かわいい。

 

『モココ。すまないが部下と一緒にに森から適当なモンスターを此方に仕向けてもらってもかまわないかな?こうも変化がないと些か退屈でな』

 

『うん、いいよ。・・・ちょっとだけ食べてもいい?』

 

『あぁ、一匹と言わず二三匹先に食べてくるといい。ただ万魔殿のご飯よりは旨くないかもしれないぞ?』

 

『うーん、おいしくないのはイヤだからオヤツだけにするの』

 

 義兄さんとコソコソ話してるが全てお見通しな私。

 隠密スキルを駆使して後ろを歩くモココの近衛である三人のアラクネを近くに呼ぶとその内の一人に小声で命令した。

 

「そなた達の内の誰か一人、モココのオヤツを捕らえに動け。間違ってもゴブリンや虫けらなどあの娘に食べさせてはならぬぞ。最低でもウルフかボアの類いにしておけ。残りはモココの護衛だ」

 

 

 私の勅命に目を輝かせながら敬礼した近衛達は一礼の後に自分の主人のもとへと歩み寄っていった。

 あの娘は多分雑食だからなんでも食べれるかもしれないけど母親としては変なモノ(ゴブリン、オーク、ワーム等)は口にしてほしくないので先に手を打たせてもらった。

 

『おかあさん。おじちゃまがちょっと暇みたいだからなにか連れてくるね?』

 

『あら、モココは優しいわね。けど、あんまり遠くに行っちゃ駄目よ?』

 

『はーい。みんな行こっか』

 

 義兄さんから飛び降りた娘は小さいモコモコした八本の足をちょこちょこと動かして森の中に駆け込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~ ピオーネ&ナーベラル ~~~

 

『・・・森の中に親愛なるモココのご飯に叶うエサはいるのでしょうか?』

 

『ウルフやボアぐらいでしたらいるのではないでしょうか?』

 

『ベアの類いがいれは丁度いいのですが』

 

『・・・ウチの調理師を呼びますか?』

 

『お恥ずかしながらあの娘踊り食いが好きでして』

 

『・・・見かけによらずワイルドですね』

 

 

 

 





・モココ

 七姉妹四女、昼の幼女の四女。

 モコモコしたドピンクな蜘蛛の下半身を持つアラクネ。
 ド派手だが隠密スキルに長けている。
 見た目の年齢はネムに近い。
 レベルは姉妹の中でも比較的に低い55レベル。
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