オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 本日更新です。
 


無双ごっこ / お姉さん風 / 呼んでみました。

 森の奥から次々と現れる小鬼と大鬼。

 

 奴等は己の本能のままに破壊し、略奪する。

 

 蹂躙とはまさにこのことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手が弱者でなければだが。

 

 

 

「・・・・モモンさん遊んでますね」

 

 私の隣でヴィーが小さく苦笑している。

 今私達は戦闘の真っ最中。

 モココが森の中に駆け込んで私達にけしかけたのはゴブリンとオーク。

 数にしてだいたい50ぐらいだろうか。

 森から出てきた一団は真っ直ぐ、此方へと向かってきた。

 レベルの低い者達にとってはかなりの驚異となるだろう。漆黒の剣の面々も最初は顔を青ざめていた。

 それもそうだろう。レベルの低い彼等からしたらあの群れはまさに絶望そのものだ。

 しかし、その絶望に臆することなく勇敢に立ち向かう一人の戦士(笑)がいた。

 漆黒の鎧を纏うかれは私達の前に立つと身の丈はある大剣を二振り、背中から引き抜いてこう言った。

 

『ここは私達に任せてもらおう』

 

 その背中を見た彼らは無茶だ、逃げようと止める事もできない。

 供である魔法詠唱者を引き連れてかれは絶望(小並感)へと立ち向かっていった。

 

 そして見せつけた圧倒的武力。

 最初のオーガを一刀の下に両断した後、続けざまに周囲のゴブリンを薙ぎ払う。

 不意を突こうとした輩は第三位階の雷に貫かれて絶命する。

 それを見た漆黒の剣の面々も士気を取り戻し、彼に続いたのだった。

 

 

 とまぁ、シリアスな雰囲気で語るのは置いといてぶっちゃけ現在義兄さんは無双して遊んでます。

 えぇ、本当に楽しそうです。

 私達地獄の七姉妹は文字通りたった七人のギルド。

 ギルドマスターである私はギルド運営もこなしていたが魔導騎士として最前線で戦っていた。

 だがアインズ・ウール・ゴウンに所属する41人の長、ギルドマスターとして基本的にギルド運営に多忙なのに加えて魔法詠唱者である義兄さんは本当の最前線、モンスターと考えなしに斬った張ったの大立ち回りをすることはほぼ無いと言ってもいいだろう。

 加えて意味のない無双ごっこなんてまずやったことないはずだ。

 だから義兄さんが楽しんで無双しているのが手に取るように分かる。まるでチャンバラごっこをしている少年を見ているようで微笑ましく感じるのだ。

 今度ナザリックに行った折りにでも義兄さんのストレス解消法として取り入れるようデミウルゴスに提案をしてみようかな?

 建前で私が腕をなまらせたくない(無双ごっこしたい)とかいって無理矢理義兄さんを付き合わせる形で・・・。

 

「・・・参加されないんですか?ああいったのはお好きだと思ってたんですが」

 

「今は護衛だからねまたの機会にするわ」

 

 ヴィーが気を使ってくれたが乗り気はしないのが正直なところ。

 無双は好きだが流石に魔法詠唱者を装っての第三位階縛りのルールで楽しめるほどドMではない。

 やるなら即死系縛りがやりたかったり。

 

「貴女も行ってきなさい。少しは運動しないと」

 

「そうですね。ではお言葉に甘えますね」

 

 そう言って彼女は軽い足取りで混戦中の中へと駆け込んで行った。

 突然参戦したヴィーを見て漆黒の剣のメンバー、キュキュット(ルクルット)は何かを叫んでいるが無視。

 まぁ、叫ぶのも無理はない。なんせあの娘は無手で参戦したのだから。

 参戦したヴィーは一匹のゴブリンに正面から突っ込むとすれ違い様に顔面に拳を叩き込み、そのまま力任せに地面へ拳を打ち付けるように振り抜いた。

 地面と拳に挟まれトマトのように潰れたゴブリンの頭。

 それに目もくれぬまま曲芸のように跳躍した後、次のゴブリンへと兜割りの如く、踵落としを叩き込んだ。

 

「いやぁ、皆さんお強いですね」

 

 馬車の荷台から依頼主ンフィーレア・バレアレがひよっこりと顔を出して呟く。

 ペプシ(ペテル)さんから荷台に隠れてるように言われ大人しく隠れていたようだが今はなんの恐怖も感じていない様子。

 

「旅をしてた私達はもっと面倒なモンスターを相手してましたので。それよりもバレアレさんこそ全く恐れを抱いてないようで。大した胆力です」

 

 彼はゴブリンどもが襲撃してきた時も全く恐れてなかった。むしろ、戦況を観察している様子さえ伺える。

 彼の視線は指揮をだしているペプシ(ペテル)さんや義兄さんに向けられていた。まるで見て、学ぼうとしてるかのようだ。

 

「いえ、ただ鈍感なだけですよ。けど羨ましいです。ゴブリンの一二匹なら対処できますけどあんな群れなんてとても。こういった時僕にも力があればって本当に思います」

 

 彼は戦っている義兄さん達を見つめたまま視線を切らず苦笑した。

 

「フフ、男の子ですね。しかし、貴方も素晴らしい才能をお持ちじゃないですか。その若さで街一番と名高いお婆様の跡継ぎと云われる薬師だなんて」

 

「薬を作ることした能のない男ですよ。病から大切な人を守れても暴力から守る力はありません」

 

「・・・だったら頑張るしかありませんね。諦めずひたすらに」

 

 私としてはこういった思想には好感が持てる。

 守りたいから力を付けたい。

 大事な物を失わない為に、壊されない為に、奪われない為に力が欲しいと彼は言った。

 私も大事な家族を失わない為に、壊されない為に、奪われない為に力を付けた。

 姉達もその思いで力を付け、七人の女王となり、君臨したのだから。

 

「大切な人というのは恋人ですか?もしかしてその木箱はその人の所へ?」

 

「幼馴染みなんです。向こうは覚えてないかもしれませんが幼い頃に結婚の約束をした子なんですけど、その子の家族に渡すポーションと塗り薬です」

 

「・・・優しいですね。ポーションなんて決して安くはないでしょうに」

 

「薬師としての能しかない僕にとっては大した事じゃないですよ。あの家族は何かと血の気が多くて生傷が絶えないので役に立ってますが」

 

 小さく笑う少年に釣られて私も小さく笑う。

 このような思想の男の子は珍しいかもしれない。

 将来は腕利きの薬師。華奢たが人間基準で言えば顔もなかなか。

前髪を上げればそれはそれはモテるだろう・・・御姉様達に。

 かくいう私も何気に世話を焼いてみたくなった。

 リアルでも、ユグドラシルでも妹であった私には下の兄弟はいない。

 ちょっとぐらいならお姉さん風を吹かせてもバチは当たらないだろう。

 というか恋バナが聞きたい。

 

「将来的にその子にはエ・ランテルに来てもらうんですか?」

 

「いえ、僕が婿としてカルネ村に行くつもりです。僕が有名になればカルネ村に人が来ますし、なにより彼女とその妹がお母さんっ子なんで離れ離れにさせたくないんですよ」

 

 ちょっと、名も知らない幼馴染みさん。

 貴女、こんな優良物件に想われてるのよ?

 嫁に来てじゃなくて、自分から婿に行こうとしてるのよ?

 私としては中々の高ポイントなのよ?

 ぐずぐずしてたらどこぞの馬の骨に盗られちゃうわよ?

 む~、この子の恋路は個人的に応援したいけど直接は手を出せないし、できることと言ったらあの村が襲われないようにするといったぐらい。

 仕方ないなぁ、エンリが今後キャサリンとクロアから指揮官のイロハを勉強するって言ってたし勉強がてら村の防衛を任せてみようかしら?

 

「その幼馴染みさんも美人さんなんですよね?あんまりグズグスしてると知らない男に盗られてしまいますよ?」

 

 私は幼馴染みさんの為に発破をかける事にした。

 だってそうしないとなんかモヤモヤするんですもん。

 

「そうなんです。彼女村で一二を争う美人なんで正直気が気じゃないんですよ。あー」

 

「まぁ、頑張ってください。ちなみにどんな子なんですか?」

 

「あぁ、エンリ・エモットって言うんですけど栗色のお下げが可愛らしい女の子です」

 

 

 

 

 

 ・・・・はい?

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「あの人間。ムシケラの分際でよもやヴィヴィ様との縁談を望むとは」

 

「フフ、大丈夫大丈夫。私が認めないから」

 

 私達は村外れの森の中にきていた。

 隣のヨミさんは不機嫌な表情でブツブツと文句を口にしているのだがそれはカルネ村現村長にあった。

 たまたま村長の所へ用事があったので訪ねてみたら、毎度お馴染みの長い話を聞かされた。

 私が養女だとはまだ知らないが御母様に可愛がられているのを知っている村長は私にヴィヴィ姉様と自分の息子の縁談を取り成すように頼んできたのだ。

 もちろん却下。

 再び一撃の後に沈めて今に至る。

 ヨミさんは不可視化し、護衛して話を聞いていたのですこぶる不機嫌。

 まぁ、気持ちはわかります。

 

「・・・周囲に人間はいないようです。問題ありません」

 

「うん、ありがとう。姉さん来ても大丈夫です」

 

 ヨミさんの言葉を聞いて私は空に向かって語りかける。

 直後目の前に開いた暗い門の魔法。

 そこから現れたのはキャサリン姉さんとクロア御姉様だった。

 

「エーンリちゃーん!!」

 

 登場即行で飛び掛かってきた姉、キャサリン。

 まるで親友とふれあうような雰囲気の彼女を受け止めてあげると彼女はスリスリと頬ずりをしてきた。

 姉妹の中ではもみじ御姉様に次いで私とネムを可愛がってくれる彼女。嬉しそうにしている彼女に釣られて私も自然と笑顔になるというもの。

 

「ムフフゥ、妹分補充!アレ?ネムは?ネムはどこ?」

 

「落ち着きなさい愚妹。姉なんだからもう少しシャキッとなさい」

 

「あ~ん!」

 

 私からクロア御姉様が姉さんを引き剥がす。

 七姉妹三女、ギブ・ミー御義母様の長女であるクロア御姉様は小さな触角と大きな黒い蝶の羽を持つ女性。

 青みがかった黒のドレス姿の彼女は私から見たら正に大人の女性でとてもかっこいい。

 かっこいいけど性格がちょっとアレなのよねぇ。

 

「姉さん、ネムはジョンくんと一緒に今日のお仕事をしてる最中なんです」

 

「エライ!流石ネム!」

 

 ネムは現在畑の草むしり中。

 我が家では働かざる者食うべからず。

 各々ちゃんと毎日の仕事を割り振り、交代でこなしている。

 ネムと騎士のジョン君は二人で一人として仕事をしているのだ。

 ちなみに草むしり当番にはヨミさんも組み込まれてます。

 

 

「クロア御姉様?今日はてっきりもみじ御姉様が来ると思ってたのですが」

 

「なぁに~?私よりもみじの方が良かったのかしら?」

 

「いえいえ、めっそうもございません。クロア御姉様が来てくださってエンリ嬉しい!」

 

 クロア御姉様がニヤリと笑ったので慌てて取り繕う。

 なんか自分が自分でないような感じになってしまったが気にしない。

 

「もみじお姉ちゃんはこの前のアレの罰としてアルーシャちゃん達とお留守番。きっと今ごろ第二階層でオモチャにされてるはずだよ」

 

「あの子達と本気で遊べるのはもみじぐらいよねぇ」

 

「いやいや、クロアお姉ちゃんもいい線いくんじゃない?」

 

「私じゃスモモに動きを止められて終わりよ。リィリィはルェフに魔法を封じられて、エリザはレヴィにスキルを封じられる。ディーネもマロン相手だとなにもさせてくれないでしょうね。というかルーキとアルーシャ、ベルが遠慮無さすぎるのよ」

 

「・・・御母様からアルーシャちゃん達の事は聞いてますけど、もみじ御姉様死んじゃわないですよね?」

 

「それよりもこれから呼ぶんでしょ?貴女のシモベ」

 

 あ、もみじ御姉様のことはスルーなんですね。

 ちょっと心配だが姉妹の中でもずば抜けて打たれ強いとされる我らが長女。きっと大丈夫だと自分に言い聞かせてポケットから小さな笛を1つ取り出す。今私達が森にいるのはこれから伯父様から戴いた小笛で私の配下を呼ぶためである。

 《小鬼将軍の角笛》

 吹けば私に従うべく、ゴブリン達が姿を見せるというマジックアイテム。

 本当に出てくるかは分からないが伯父様が下さった物、きっと本物なのだろう。

 姉さん達は指揮官のイロハを私に教える為に来てくれた。

 別に私が指揮官のイロハを学んだりしなくても姉さん達がいるから大丈夫だと思われるかもしれないが私自身がいやなのだ。

 妹だから守られる。力がないから守られる。

 仕方ないかもしれない。

 けど、それに甘んじてはいけないと思う。

 村が襲われたあの日、私は自分に力が無いことを恨んだ。

 力があればネムに怖い思いをさせないであげれたのかもしれない。

 お父さんお母さんを死なせることはなかったのかもしれない。

 あんな思いはもうたくさんだ。

 守りたい。お母さんが好きだったあの村を、家を。

 守りたい。唯一血の繋がった妹を。

 人間である私達を受け入れてくれた家族を守りたい。

 あの人が帰って来る場所を守りたい。

 その為に力ある姉達から学ぶのだ。

 

「それでは始めます」

 

 手に持つ小笛に口を付ける。

 視界の端では姉さん達が笑顔で私を見守ってくれている。

 一人だったらとても心細かったかもしれない。

 姉達はそれを分かっているから立ち会ってくれる。

 私が守れる力を身につけることができるまで。

 その期待に応える為に、

 私は力強く笛を吹いた。

 

 

 

 

  ペプ~

 

 

 

 

 

 「「アハハハハハハハハ!?」」

 

 森の中に大爆笑する声が響く。

 姉さん達はその場でヒーヒー言いながら笑いこけていた。

 

「ペプ~!?ペプ~って!!」

 

「だ、ダメ!不意討ちはダメ!」

 

「~~~~~!」

 

 対する私は笛をくわえたまま顔を真っ赤にして震えていた。

 

「・・・帰ります!姉さん達なんてしりません!」

 

「あ~!ごめんね!怒らないで!お姉ちゃんのこと嫌いにならないでー!!」

 

「アハハハハハ!!」

 

 恥ずかしさのあまり、家に引きこもろうとした私を抱きついて引き留める姉さん。

 確かに変な音が出ちゃったけど別に笑わなくてもいいじゃない。

 

「クロア様も笑わないでくださいませ!エンリ様は一生懸命なさったのですよ!?確かに変な音が出てしまいましたがここはエンリ様の努力を誉めて差し上げるところかと存じます!」

 

「ヨミさん解雇」

 

「エンリ様!?」

 

「ごめんなさいエンリ。謝るからそんなこと言わないで?」

 

 やっとのことで回復したクロア御姉様からも謝られた私はしぶしぶその場に座り込んで姉二人に宥められる。

 

「ほら、もう一度やってみましょ?今度はきっと上手くいくわ」

 

「うんうん!」

 

「もう、笑いません?」

 

 涙目で二人を見ると優しい笑顔で頷いてくれた。

 これがもみじ御姉様だったらきっと裏切られてるんだろなぁと思いつつもう一度吹くため、手の中にある小笛に視線を落とすと私達は絶句した。

 

「あ、・・ぁあーー!?」

 

 何故なら手の中で小笛が粉々に砕けていたのだから。

 血の気が引いて真っ青になった私は恐る恐る姉の顔を見れば二人とも真っ青な表情でその角笛を見ている。

 

「ね、ねえ゛さん、どうじよ。ふえ・・ふえ」

 

 目元に涙を浮かべながら私は姉さんに助けを求めた。

 伯父様から戴いた笛が粉々に砕けてしまった。

 私達が自分の身を守る手段として戴いた笛が。

 伯父様が直接私に授けた笛が。

 姉達の表情から修復不可能だということは見てとれる。

 まだ、ちゃんと呼べてないのに!ペプ~なんて変な音しか出てないのに壊しちゃった!

 

「うわぁ~~ーん!!」

 

「大丈夫だから!お姉ちゃんも一緒に謝ってあげるから!!」

 

「えぇ、御姉様がなんとかしてあげるから!!」

 

 森に響く私の泣き声。

 この時の私達は知るよしもなかった。

 《小鬼将軍の角笛》はちゃんと吹けていたことを。

 姉達が強すぎてゴブリン達が出るに出れないでいたことを。

 それを知らずに姉達は私を必死に慰めながら普段以上に必死に現状の打開策を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 伯父様が無双してるときのモココ様。

 

 

「まきまき~、まきまき~♪」

 

「モココ様嬉しそうね」

 

「えぇ、手頃なオヤツがいてよかったわ」

 

「モココ様・・カワイイ」

 

 森の奥で自分の倍の大きさはある熊を糸で巻き巻きしていた。

 

 






 今回はエンリのスキルについては触れてません。
 姉達が口に出さないのはまだ結論が出てないないからだと考えてください。


 拙い文章ではありますが今後ともよろしくお願いいたします!
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