この度大分遅くなってしまい申し訳ありません!!
私事でいろんな出来事があってかなり前回から大分遅くなってしまいました。
僕は紹介したい人がいると言われ、ある一軒家に連れてこられた。
そこは冒険者であるモモンさんとサザビーさん達が今日泊まることになっている空き家。
何故ここに連れてこられたのか。道中エンリに聞いてもネムに聞いてもはぐらかされるだけで答えてくれない。
「……」
そして今、隣にいる幼馴染みは緊迫した表情で扉を見つめていた。
「いくわよ」
彼女が何に緊張しているのかは分からない。
まるでこれから怒られにいく子供のようにカタカタと震えていた。
「ネムもいい?」
「うん」
普段笑顔の絶えない妹もまた緊張している様子。
「サザビーさん、バレアレです。エンリ達が御会いしたいそうでして連れてきました」
それを見て僕は彼女達の代わりに先陣を切って家の中に入った。
後ろ二人が何か言っているが関係ない。
サザビーさん達に面識があるのは僕だし、何かあったのなら説き伏せる。
彼女達に向けられている意識を無理矢理自分に向けるのは得意だ。
なにより僕がそうしたいからそうするのだ。
「……」
部屋の中はさして変わった様子はなかった。
一般的な民家の光景。
エンリの家が木造なのに対してこちらは土造りの壁。
木でできた家具。
その部屋にある食卓と思わしきテーブルに
「あら、いらっしゃい。貴方達お昼はまだでしょ? ピオーネにお昼作っておいてもらったから食べていきなさい」
アンデッドの女性が料理を運んでなかったらだが。
「あの……えっと」
テーブルに着いた私は混乱した表情で目の前に座る御母様を見つめる。
万魔殿の女王にして私達姉妹を家族に迎え入れてくださった女性。
魔法で姿を変えていたはずだが今の彼女は私が知る御母様の姿のままネムを膝に乗せて甲斐甲斐しくピオーネ御姉様が作ってくださった料理を食べさせている。
それも白骨した右手で。
「あらあら、口回りが汚れてるわよ」
「ん~~」
妹の口を優しく拭いてあげている御母様。
ネムはいつの間にか緊張が解れたようで、嬉しそうに母親の世話を受け入れていた。
隣の幼馴染みはさっきから何も喋らない。
「食べないの?」
「おねえちゃんおいしいよ!」
「あ、はい。いただきます……じゃなくて!」
思わず御母様を問い詰めようとして立ち上がった。
御母様が無闇にそのお姿を見せないのは重々承知している。
本当の理由は私なんかの頭じゃわからないが問題を引き寄せないようにしたり、アンデッドだということを隠しているというのはわかる。
それが私達の為だということも。
けどこの際私達のことなんてどうでもいい。
問題は本当の姿を見せて御姉様や伯父様達に迷惑が事掛かりかかるかもしれないということだ。
御母様が私達娘を愛しているのは私達姉妹や伯父様達の間では周知の事実。
それ故に理解できなかった。
「エンリ。お話は食べてから」
「……はい」
しかし、勢いよく立ち上がったものの優しく宥められてしまった。渋々再び席に着き、目の前の料理に手をつける。
普段なら愛する姉が作ってくださった料理に舌鼓を打ちながら笑顔でお話をするのだがこの時は混乱で全く味が分からなかった。
隣の幼馴染みも未だに混乱している様子で御母様に云われるがままに料理を口にしていた。
そして昼食を終えた私達はリビングにて改めて御母様と向き合う。
「さて、お昼も終えたことだし簡単に自己紹介でもしましょうか
」
椅子に座る御母様は膝からネムを下ろし、口を開いた。
「妾はムササビ。妖艶の魔窟、《地獄の万魔/ヘル・オブ・パンデモニウム》の女王。地獄の七姉妹が末女にして長である。仮の名をナナシスやサザビーと名乗っているが、以後見知りおけ」
その名乗りを聞いて私達姉妹は並び膝を突いて頭を下げる。
私達だけではない。
外で警備しているジョン君も、姿を消していたヨミさんも姿を現して跪いて頭を下げた。おそらく御母様が来るに当たって警備に来ている配下も姿を消したままだが、家の周りで跪き頭を下げていることだろう。
御母様が女王としての姿を見せた。
その姿からンフィーレアは目を離せない。
目は見開かれ、額から汗が滝のように流れている。
無理もない。
御母様はほんとに軽くだが威圧感を放っている。軽くといっても私達では耐えるのも難しい。
それほどまでに御母様は上位の存在なのだから。
「どうした。妾は名乗ったぞ? よもや、そなたは名乗られた相手に名乗り返す事もできぬほどに矮小な男か?」
「え……、エ・ランテルで。祖母と製薬店を営んで……います。ん、ンフィーレア……バレアレ、です」
小さく笑みをうかべかならンフィーレアから視線を外さない御母様。
それに対してやっとの事で名乗り返した幼馴染みは小さく息を吐くと拳を握り締めて、御母様を見つめ返す。
「うむ、人の子といえどこれぐらいは耐えねばな」
「あの、貴女は一体……アンデッド、ですよね?」
小さく満足そうに頷いた御母様にンフィーレアは恐る恐る問いかける。
視界の端でヨミさんが一瞬敵意の眼差しを彼に向けたが私が大人しくしているようにと視線を送ると渋々だがなんとか下がってくれた。御母様も特に気にしている様子はない。
「ここからは私が」
「よいのか? そなたでは言いにくかろう?」
「いえ、彼だからこそ私からご紹介したいのです」
「許す。後程兄様もいらっしゃるがそこは妾に任せよ」
「お心遣い感謝いたします」
今一度深く礼をした私は前に出て、御母様の傍らンフィーレアと対峙する。
「ンフィーレア。此方のムササビ様は村を救ってくださった方々のお一人で親を亡くした私とネムを家族に迎え入れてくださった方なの」
そして
「そして、今の私は地獄の万魔殿の女王。ムササビ様の五女、エンリ。対外的にはエンリ・エモットを名乗っているけどね」
「他人の娘なのに、全然役にたたないのに、それでも御母様は私達を大事にしてくれてる。ンフィーレアに私達の御母様を侮辱されたくない。お願いだから御母様をアンデッドだなんて云って侮辱しないで!」
静かに幼馴染みを睨み付けた。
私はンフィーレアが好きだ。
小さい頃から私達を守ってくれてた幼馴染み。
だけど、同じぐらい御母様も大好きなのだ。
私達に優しく守ってくれる大好きな姉達と同じぐらい大好きなのだ。
確かに血は繋がっていない。種族も違う。けど家族なのだ。
私の大事な家族なのだ。
ンフィーレアには化け物を見る目で見てほしくない。
私の想い人に私の家族をそんな目で見てほしくなかった。
エンリは小さく涙を浮かべながら僕を睨み付けている。
今まで向けられた事のない眼差し。
彼女はムササビさんの事を本当の母親のように慕っているのだ。
「……ムササビさん。先程から失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした」
僕はなんてバカな事を言ったのか。
彼女達が目の前の女性を慕っているのなんてネムの反応で解りきったことじゃないか。
だから僕は拳を握り締めて頭を下げた。
自分の口から出た彼女を傷付けた言葉を悔いながら。
「よい、アンデッドであるのは事実だからな。その程度、癇癪を起こすほどではない。エンリもそのような悲しいことを云うな。妾は損得でそなた達を愛してなどいないのだぞ?」
抱き寄せて頭を撫でながら涙を流した幼馴染みを宥めている彼女。
「ンフィーレアよ。そなたが妾達に接触したのは妾達が持つ赤いポーションの出所もしくは製造方法が目的であろう?」
撫でつつ彼女が言った言葉に僕は身体を強張らせた。
バレていたのだ。
僕自身としては深く探るつもりはなかったが。それが目的で接触したのは事実。
それを聞いてエンリも彼女の腕の中から僕を再び睨み付ける。
「コレ、そう自分の幼馴染みを睨み付けるでない。モココからそなたの幼馴染みは別に深く探ろうとする様子もなかったと聞いている」
「……ンフィーレア。ホント?」
「うん。僕自身、真なるポーションの製造方法にはあんまり興味はないよ。お祖母ちゃんが暴走した手前、形だけでもって依頼をだしたんだ」
「まぁ、この件については妾と兄様の落ち度だ。少しばかり考えが甘かった故な。どこの馬の骨ならいざ知らず。エンリの幼馴染みと知って手をかけるなどありえんよ」
よしよしと娘を宥めている彼女。
妹であるネムも手招きして大事そうに抱き上げて姉と一緒に愛で始めた。
そんな彼女は僕に視線を送ると小さくニヤリと笑う。
「そういえば妾がそなたを呼び出した理由を話してなかったな」
あれ? なんだろう。
なんだか背筋に寒気が走ったぞ?
失礼なのは重々承知しているが僕には彼女がなにか悪巧みしているようにしか見えない。
というかもう、引き返せない所にいるような気がしてならない。
「ンフィーレアよ。我が兄の陣営に入らぬか?」
「……はい?」
「なに。そなたのタレントが妾や兄様の陣営でも持つものが居らぬ稀少な異能でな。最初は危惧していたのだが、エンリの幼馴染みとならば話しは早いということで兄様の軍門に下れ」
「あ、いや。いきなりそういわれましても……」
「兄様の事だ。そなたの待遇はそれなりにしてくれるだろう。上手くゆけばそなたの云う真なるポーションの研究も任せてくれるだろう。アレは大した効能ではないが材料が手に入るか微妙な代物でな。在庫はあるが生産するには限りがあるのだ。妾達は薬師としてのそなたの才を買っているのだ。だから兄様の軍門に下れ」
第三位階の治癒魔法相当の効能を持つ劣化しないポーションが大した代物でないというのにツッコミを入れたい。
というかそれ勧誘じゃなくて命令です。
引き吊った表情を浮かべている僕を見て今度は小さくエンリに耳打ちを始めた。
「――――」
「――――!?」
「――――」
「――――」
耳打ちされたエンリは一瞬で顔を真っ赤にして、再び耳打ちされ、顔を青くして、再び耳打ちされた後にコクコクと頷く。
そして僕に歩み寄ると両手を取って
「ンフィー。伯父様の軍門に下って?……ね?」
頬を染めながら上目遣いで迫ってきた。
頬を染めて熱い吐息が頬を擽る。
うっすらと濡れた瞳が僕を捉えて離さない。
何を吹き込まれたのか。どこでそんな仕草を仕込まれたのか。
僕が君を好きなのを分かっててやってるのか。
そんな風に頼まれたら断ることなんてできないじゃないか。
「わ、わかりました。ムササビさんのおっしゃるお兄さんの軍門に……入ります」
「ほんと!? ありがとうンフィー!」
パアッっと顔を綻ばせて抱きついてきた彼女。
なんだか前会った時より肌艶が良くなっていることに今更ながら気付いて、ただでさえ顔を赤くしてしまっているのにさらに熱くなるのを感じた。
「さて、用事も済んだ事だし依頼の薬草採取にいきましょうか?」
気づけばムササビさんがいつの間にかサザビーさんの姿になっていた。
口調も厳格なモノから変わっていてまるで人格が入れ替わったかのように錯覚してしまいそうになる。
「あ、御母様。大森林には伝説の魔獣と呼ばれる森の賢王がすんでいるそうです。御母様達なら敵にもならないと思いますが一応お気をつけください」
「うん、ありがと。気を付けておくわ。あ、そうそうバレアレさ――まぁ、周りには誰もいないしンフィーレア君でいっか。ンフィーレア君ちょっと」
にこやかに笑いながら手招きしてきたサザビーさん。
僕は首を傾げつつ彼女に近付くと肩を掴まれ隅っこにつれていかれた。
「努々忘れるな。そなたのタレントは確かに希少だがそれは建て前に過ぎぬ。妾がそなたに目をかけるのはエンリとの深い縁がある故だ。そなたのこれからはそなた次第。功を立てよ。妾と妾の娘達にそなたを認めさせよ。それができぬならそなたに未来はない。万が一、エンリを泣かせようモノなら死すら緩い地獄を味わうことになることを覚えておけ。そなたの意地を見せてみよ」
再び見せた女王としての言葉に小さくもしっかりと頷く。
それを見た女王は再びその鳴りを潜め、にっこりと笑顔を見せると頑張ってねと云いポンポンと優しく頭を叩いて激励してくれた。
寒暖の差が激しすぎるその人格の変わりようにすこし混乱するが彼女の暖かい人格はどこかおばさん、エンリ達の母親を幻視させた。多分これがあの二人が慕っている最大の要因なのだろう。
僕は彼女の期待に応えなければならない。
彼女のお兄さん。おそらくモモンさんだろう。
彼の陣営がどんな所かはわからないがきっと過酷を極める事になる。
だけど僕は諦める訳にはいかない。
エンリの母親である彼女からもらったチャンスなのだから。
「それで? 私に何の話もなく事を進めている言い訳はできているのかな?」
ム・サ・サ・ビぃ?
ヤバイです。
私事でいろんな出来事があってメンタルズタズタです。
執筆に逃げようにも全然のらない。
誰か助けて