オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 投稿が遅くなってすみません!


弟子

「えっと・・・モモンさんの本職は別だったりしますか?」

 

 トブの大森林と呼ばれる森の奥依頼主であるンフィーレア・バレアレに聞かれて俺は首を傾げる。

 

「どうしてそう思ったのかな?」

 

「いえ、失礼かもしれませんが僕の知っている人と立ち回り方が違って見えまして。ちょっと気になったんです」

 

「ちなみにその知り合いとは?」

 

「エンリのお母さんです」

 

「……本当に何者だ? あの子の母親は」

 

 可愛い姪の身内に呆れて小さく笑う。

 しかし、よく見ている。

 知り合いに戦士職の上位プレイヤーはたくさんいたが彼らは皆戦闘中は無意識に最善の立ち回りをすると聴く。

 フレンドリーファイアのない攻略戦はまだしも単騎攻略型のイベントやPVPなどでは個人の立ち回り方が命運を分けることも少なくない。

 戦士職には戦士職の、魔法職には魔法職の立ち回り方があるのだ。

 

「まぁ、正解だ。私の本来の職業は魔法詠唱者。使う魔法の構成は教えられないがな。だが、その観察眼は見事だ。それは後に君の助けになるだろう。戦闘だけではなく何気ないことでも日常的に意識して養っておくといい。もしものときに必ず役に立つ」

 

「はい」

 

 とまぁ、こんな会話を彼としてはいるのだがお気づきの人もいるだろう。

 彼は成り行きではあるが俺の陣営に入ることとなった。

 この少年のタレントは確かに貴重で敵に回ったらかなり厄介な異能、俺自身どうしようか考えていたのだがなかなか解が見出だせずにいた。

 まず第一に交友が広すぎる。

 そして何よりエンリの幼馴染みだということだ。

 最近姪となった彼女の幼馴染みで幼い頃に結婚の約束を交わした間柄。下手に手を出せば可愛い姪の顔が涙で濡れてしまう。それは俺の良しとする所ではないし、姪を餌に引き込むのも気が引けた。

 そんな時何を思ったのか義妹が強制的にこちら側に引き込んだのだ。

 

「えっと、サザビーさんはあのままでいいのでしょうか?」

 

「かまわん、アイツが悪い。しばらくあのままにしておけ」

 

 ンフィーレアが気まずそうに視線を向ける方には決死の顔でブチブチと一人薬草を引っこ抜いている義妹。

 回りには誰もいない。ただ一人、黙々と凄い勢いで薬草を引っこ抜いている。

 あのあと兄妹二人きりにしてもらい十分ほど説教。

 一人で目的量の五割の収穫を罰としてやらせることにした。できなければウチのダンジョンでも最悪と呼ばれる部屋の一つ黒棺に放り込むぞと脅して。

 黒棺に放り込むのは冗談としてエンリのためとはいえ、度が過ぎたので今後はちゃんと連絡するようにしろと言っておいた。人間であるンフィーレアを末席とするにはいろいろと面倒なことがあるのだ。

 

 

 

――――――――――

 

「全く、お前が言ったんだろうが。事を起こす時はまずは互いに連絡をとれと」

 

「ごめんなさい」

 

 ンフィーレア達を外に追い出した後に俺は義妹に説教をした。

 エンリ達はまだしもンフィーレアを陣営に引き込む危険性。

 仮に陣営入りが決定しても人間であるンフィーレアを受け入れる者共が俺の陣営にはほぼ存在しないこと。

 そして仮に俺が庇護して、間違いで殺された時とそのあと。

 それらをいい聞かせた。

 

「ごめんなさい。兄さんの言い分はもっともだよ」

 

「たく、ンフィーレアは今後両陣営に認められて、なおかつエンリに相応しい男にするために俺の弟子にする。アイツのタレントは確かに貴重だからな。建前としてはエンリが恋心を抱いている男を逃がさないためにという叔父バカを俺が見せたというところだな」

 

「本当にごめんなさい! カッコ悪い役やらせて」

 

「まったくだ」

 

 小さくため息をつきながら俺は義妹の頭に手を置く。

 昔からこの動作は説教の終わりの合図として使っていたので義妹は許してもらえたと思って顔を上げた。

 

「それで罰だが」

 

 

 

 世の中そんなに甘くない。

 

 

――――――――――

 

 とまぁ、こんな理由でンフィーレアを弟子にしたのだが。これは一種の賭けでもある。

 我等両陣営が空中分解するか二人を基盤に一層の協力関係を結ぶか。

 それは俺とンフィーレア次第でもある。

 

 

「えっと、ヴィーさんは確かご実家に帰られていて、こちらの方は影武者のシモベの方ですね?」

 

 

 決死の表情で薬草と戦っている義妹を横目にンフィーレアはヴィーの影武者を見る。

 自分がとんでもない立場になったことをまだはっきりと自覚してないだろう姪の婿候補筆頭が見つめる彼女は顔面を真っ青にしながらオロオロとなんとか俺に自分達の女王である義妹の助勢を進言しようと試行錯誤している様子。

 漆黒の剣の面々が離れた場所にいなかったらきっと何があったかと疑われた事だろう。

 とりあえずあちらにはナーベを一応の護衛として行かせてそれとなしにこちらに来ないように仕向けてもらっている。

 

「丁度いい。覚えておけ、ヴィーは本名をピオーネといい、サザビーこと万魔殿の女王ムササビ直系の三女。ムササビの養女となったエンリからは二つ上の姉で、ドッペルゲンガーという姿や使う魔法、技を模倣する異形種だ」

 

 そしてその影武者であるそのシモベもピオーネの近衛であるドッペルゲンガー。

 現段階ではお前よりも格上だとも付け加えておく。

 今は俺達に対しての知識も浅い弟子に少しでも学ばせるためにもしもの時の選択肢を増やすべく俺の知識を教えていく。

 

「はじめまして。栄えあるピオーネ姫殿下直属の近衛騎士の方にお会いできて光栄です」

 

「……私に挨拶など不要です。私は所詮姫様の影。私に取り繕うだけ無駄だとしりなさい。全く、エンリ様の縁者でなければ今この場で引き裂いてやったものの」

 

「まぁ、そういうな。エンリが愛想をつかすか。コイツ皆に認められるか。どちらが早いかだ」

 

「モモンガ様がそう仰られるなら……」

 

 さりげなくフォローを入れつつも分かっていたがこりゃ幸先悪いなと思っていたら。

 

「モモンガさまー!!」

 

 木の上から我がナザリックの守護者の一人アウラが降りてきた。

 

「しばらくぶりだなアウラ」

 

「はい! モモンガ様とムササビ様がこの森に入られたと聞いたのでご挨拶に来ました!」

 

 ボーイッシュな風貌の彼女は太陽のような笑顔を向けた後にキョトンとした表情で義妹に視線を向ける。

 

「ムササビ様どうしたんですか?」

 

「なに、私とゲームをして負けたから罰ゲームの執行中だ。気にするな」

 

「はぁ、それでその人間は?」

 

「彼はンフィーレア・バレアレ。詳細は今晩にでも皆に説明するが今は我が陣営の末席に加わった者だと思っておけばいい。ンフィーレア、彼女は我がアインズ・ウール・ゴウンの幹部で、私の拠点を守る守護者だ」

 

 紹介をしている間に《念話:メッセージ》でンフィーレアはエンリの幼馴染みで彼女の想い人だと伝えておく。

 それを受けたアウラはやれやれといった表情を浮かべた。

 

「モモンガ様? あんまりお戯れが過ぎますとデミウルゴスから小言を受けてしまいますよ?」

 

 それを受けた彼女は細部は把握してないがなんとなく察してくれたようだ。

 カルマ値マイナスの彼女があんまり嫌悪してなくて良かった。

 

「むぅ、アウラからなんとか言っておいてはくれないか?」

 

「善処はしますがあんまり期待はしないでくださいね? 何せ相手はあの石頭ですから」

 

 ケラケラ笑った後にアウラはンフィーレアを観察し。

 

「ま、モモンガ様の決定ならアタシは意見しないけど末席に加わった限りモモンガ様に恥をかかさないようにしておきなさいね。エンリやネム達を除いてウチや万魔殿では人間の地位は極端に低いから認められるかはアンタ次第。まぁ、慣れるまでアタシも目をかけてあげるからがんばりなさいな」

 

「は、ハイ! よろしくお願いします!」

 

 ポンポンと肩を叩いてやった。

 それを受けて深々と頭を下げるンフィーレア。

 思わぬ進展に少しばかり呆然とする俺。

 弟のいるアウラからしたら年端の近い新しい弟分ができたから受け入れられたのか?

 

「兄様! ノルマ達成しました! これでいいですよね!?」

 

 そこへ薬草山盛りの籠3つを俺達の前に叩き付けた義妹。

 アウラと影武者ヴィー、ンフィーレアはお疲れ様ですと彼女を労う。

 

「よほどあの部屋に入りたくないようだな。残念だ」

 

「誰がGの巣窟に好んで入りたがりますかね!?」

 

 それがいるんだなぁ。しかもウチのメイドに。

 

「御苦労。よく短時間でこれだけ集めた」

 

 もう一刻ほど掛かるかと思ったがそれほど嫌だったのだろう。

 俺の労いでホッと安心した義妹。

 

 

 

 

 

 

「さて、使い物になるかジャッジの時間だ」

 

 

 だが安心するのはまだ早い。

 

 

――――――――――――

 

 

「……お母さんがんばったよね? もう、ゴールしてもいいよね?」

 

 ジャッジを終え、無事に罰ゲームから解放された義妹が

その生涯を終えようとしているのを横目に俺は今後について思考を巡らせる。

 これで形とはいえ、無事に冒険者としての一歩を踏み出した。あとは冒険者プレートのランクを上げて各都市の要人との繋がりをつくる算段なのだが。

 いかんせん地道にいくとなるとそれこそ年単位の時間がかかってしまう。

 

「ンフィーレア。この森に森の賢王とかいう魔物が住んでいると聴くがどうだ?」

 

「数百年を生きる伝説の魔獣と言われてます。噂によれば挑んで生きて帰った者はいないとか」

 

「ふむ…まぁ、最高位天使でもなければ後れを取るつもりはないが。ムササビがいる今なら問題ないだろう」

 

「あの……どうされるおつもりで?」

 

 ンフィーレアか引きつった笑顔を向けてきたのでヘルムの下でニヤリと笑う。

 

「いいのではないですか? 伝説の魔獣がいかほどかは知りませんが伝説と謳われる存在です。箔付けには十分かと」

 

 義妹は俺のやろうとしていることを看破したようでケラケラと笑いながら準備運動を始めた。

 

「え?…え?」

 

「鈍いわねぇ」

 

 未だに状況についていけてないンフィーレアにアウラがしょうがないなぁと呆れながら教えた。

 

「お二人はこれからその魔獣を指揮下に置くために屈服させにいくのよ。さ、アンタはやることがあるでしょ? ボヤボヤしてないで動く!」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「さぁ、張り切っていきましょう!」

 

 俺の後ろで義妹が迫り来る地響きをBGMに錫杖をフルスイングしながら楽しそうな声を出している。

 義妹的には久しぶりの討伐(?)戦なのが楽しみなのだろう。ここ最近はいろいろありすぎてるのでこの機会に少しでも発散してもらいたい。

 ちなみに今この場にいるのは俺と義妹だけ。

 他の面々には漆黒の剣のメンバーを森の外に避難させるための動いてもらった。

 その際ンフィーレアが森の賢王を討っては森の中のパワーバランスが崩れてしまい村が襲われかねないと進言してきたがアウラが心配ないと彼を落ち着かせた。

 今、村の周りの森は完全に支配下に落ちてるし、仮に村が襲われる事になってもあの村には(ンフィーレア達にとって)ヤバイのが住んでるし、それ抜きでもエンリ達の姉(もっとヤバイの)が飛んでくるから大丈夫だそうだ。

 それを聞いたンフィーレアのホッとしたような、引きつったようななんとも言えない表情を思い出しつつ俺は義妹に指示を出す。

 

「最初は縛りで遊ぶのも構わないが少しでも危険と判断したら指示を出すから換装の準備をしておけ」

 

「はい♪」

 

 殴れる魔法詠唱者プレイでやろうとしている義妹にやれやれと肩をすくめながら地響きが大きくなってきていることに気付く。

 

 そろそろだな。

 

 背中の大剣を引き抜き、さてやろうかと身構えた直後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソナタ達にござるか。拙者の眠りを妨げるのは。

 

 

 

 

 

 ソイツは姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ござる?

 

 

 





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