大変遅くなりました!
この一話を上げるのに2ヶ月近くかかるなんて……
私の持論だがユグドラシルもそうだがVRMMORPGプレイヤーには大きく分けて二種類のタイプが存在する。
一つ目は直感的、本能的に行動するタイプ。
前衛職に多いこのタイプのプレイヤーは最低限の情報を持って己の感性で立ち回り、直感で危機を脱し、本能で攻め立てる。
二つ目が膨大な情報の下、計算し、論理的に行動するタイプ。
こちらは後衛職に比較的多いタイプで緻密な計算の下、魔法や支援を駆使する。
例えば七姉妹次女、LOVE&デス御姉様は盾役のカウンタータンク。
絶対領域と謳われた彼女は直感的に危機を感知して姉妹の盾になり、遠距離攻撃や魔法を打ち返し、また大魔法を妨害する。
例えば七姉妹長女オーオバー御姉様は補助、回復をこなすヒーラー。
ケアルマシンガンと言われる程に回復、補助魔法を乱射してはいるがその実綿密な計算の下、パーティーである姉妹全員のステータスを管理、私達の体力や魔法、スキルのクールタイム含め自分も計算に入れて行動している。
今のは極端な例だがもちろん例外も存在する。
ギブ・ミー姉様は前衛職だが計算し、論理的に行動するタイプでがんばるヤンデレ御姉様は本能的に魔法をぶっぱなすタイプだ。
同じく持論としてユグドラシルの上位プレイヤーはこの二つのタイプのどちらかが異様に秀でてるか完全に突出したプレイヤーが占めていると思う。
要するに天才肌的なヤツだ。
ちなみに義兄さんは完全に後者のタイプで私は前者と後者それぞれ三対七の混合タイプ。
個人的に義兄さんはロールプレイをしてなかったら間違いなくマジックキャスターとしてその名を轟かしてたと思う。
それはさておきタイプの比較的似ている私と義兄さんは思考をフル回転させて自分の持つ情報から森の賢王に該当するであろうモンスターの情報を模索している。
どのモンスターならどういった攻撃をするかどういった動きをするか、使う魔法、スキル、などを生息する環境などをもとに割り出していくのだ。
ユグドラシルでは挑戦権が一回きりのイベントクエストも少くなかったので僅かな情報から相手の種族などを推測する場面があったからこそ自然ととる行動なのだ。
まぁ、何が云いたいかというと計算タイプの私達は全く計算外の出来事にはすこぶる弱い。
私達はその賢王の語尾により身体を硬直させてしまったのだ。
は?ござる?
現実世界で時代劇のテレビぐらいでしか聞かないその語尾。
まさかこの場所で聞くことになるとは思わなかった。
「へ?」
完全予想外の出来事にできた致命的な隙。
その隙を突かれ顔木々の隙間から飛来した何かは私の顔面を直撃した。
「はうっ!?」
「ムササビ!?」
首だけが完全に仰け反った私。
金属製の仮面の甲高い音が森に響き渡る。
「む、ムササビ?」
「………」
首が仰け反ったまま硬直している。
義兄さんが大丈夫かと声を掛けてくるがは動かない。
「………ふふ、うふふ」
少ししてだらんと姿勢を直した後に不気味な笑い声を洩らした。
あー、痛かった。
開幕そうそう顔面を持ってかれたのっていつ以来だろ?
あぁ……、胸糞悪い戦乙女のギルドとやりあった時以来だったっけ?
あの時は不意討ちで顔面持ってかれたのよねぇ…。
まぁ、いいや。
一歩で何かが飛んできた方向へ踏み出し、錫杖を一閃。邪魔な木々を纏めて薙ぎ払う。
轟音を立てて薙ぎ払われた木々の後ろから姿を現したのはでっかいハムスター。
目を点にして此方を見ているそのネズミを見て私のボルテージは更に上昇。
あぁ、こんなワケわかんないネズミに顔面入れられたんだ。完全武装ではないにしても戦闘体勢の私の顔面にだ。
これでも一応女性ギルド最強の一角のギルドマスターとして、最前線で戦う戦士職としてのプライドがある。
同じ最高レベルの上位プレイヤー同士のPVPならいざしらず。顔面なんてまず入れられるほど弱くはない。
それがよくわからない、見るからに弱い、強さの欠片のない、全く可愛くないでっかいハムスターに顔面に一撃を入れられた。
「丁寧なご挨拶ありがと。まさか顔に入れられるなんて思わなかったわ」
よりによってアウラや遠見の鏡で見ているであろう娘の前で。
仮面を外し投げ捨て私はそのデブネズミに告げる。
「まぁ、とりあえず。一発には一発で返すけど」
「いいわよね?」
死ね
ーーーーーーーーーーー
「兄様退いてください。ソノデブネズミコロセナイ」
十分後周囲はしっちゃかめっちゃか、と言っていいぐらいに荒れ果てていた。
木々は木材にもならないぐらい砕かれ、その辺にあった岩は掘り起こされた状態で転がっている。
義妹がもっている錫杖は耐久が限界に来たようで半ばからポッキリと折れてしまっていた。
その原因も魔法の使用によるものではなく打撃武器として使っていたからというのがなんとも言えない。
そして錫杖が折れたことにより撲殺から即死魔法連発に切り替えようとしたところで慌てて俺が止めに入って今に至る。
「やめんか。この者には私達の名声を高める為に生きていてもらわねばならぬのだ」
「でしたらピューレにドラゴンでもケロベロスでも召喚させます。森の賢王という名が必要ならそのネズミの首で十分でしょう」
その者はよりによって戦闘で妾に恥をかかせたのです。と白骨化している片目を憤怒で輝かせながら睨み付ける。
「む、ムササビさま。どうかお、お怒りを沈めてください!」
「なぁに?別に怒ってなんかないわよぉ?」
「ヒッ!?」
アウラもなんとか宥めようとするが義妹の全く笑えてない表情を普段向けられない言葉使いで返された彼女は乾いた悲鳴を上げてしまう。
俺は直ぐに下がらせると義妹に歩み寄り小さく頭を下げた。
「ムササビの女王としての誇りが傷つけられたことについては後衛職である私にはわからぬ思いであろう。だがこの者を殺したい気持は痛いほど伝わった。だかここは私の顔に免じてどうか抑えてはくれぬか」
暫くの間、義妹は沈黙を貫く。
そして……。
「その者の処遇は任せます。命拾いしたな…」
折れた錫杖の柄を投げ捨て掘り起こされた状態の岩に腰かけた。
離れた場所でムッスリとした表情の義妹に恐る恐る脱ぎ捨てた仮面をアウラが渡すのを横目に改めて不意討ちとはいえ、義妹の顔面に一撃をいれた森の賢王に向き直る。
森の賢王。
カルネ村、エンリ達の間では数百年を生きる伝説の魔獣と言われるモンスター。
その実態はやたらドデカイジャンガリアンハムスターだった。
「そ、某は殺されないでござるか?」
「それは貴様しだいだな。私の陣営に下るとするなら安全は保証しよう」
「く、下るでござる!殿の配下になるでござる!!」
すがり付いてくる賢王を見て正直ハズレだと思ってしまったが義妹にああいった手前仕方がない。
俺が小さくため息をついたときアウラが表情を歪めて賢王に詰め寄った。
「ちょっとアンタ!モモンガ様の配下になるのはモモンガが認められたからいいけどさっさとムササビ様にお詫びを入れなさいよ!ムササビ様はモモンガ様の妹でアタシ達の同盟ギルドのトップなのよ!?よりによってそのお顔に一撃いれるなんて!!」
「と、殿の妹君であらせられるでござるか!?ああっ!申し訳ございませんでござる女将!知らぬとはいえなんたるご無礼を!!」
「……よい。妾の未熟だと思っておく」
ムササビが俺の妹と知って賢王は直ぐ様彼女の側にいって土下座しだした。
よかったな、姪達が見てたら今頃万魔殿から飛んできて八つ裂きにされてたぞ?
おそらくたまたま母親の様子を覗いてなかったからだろう。
なんとも運のいいヤツだ。
「殿。殿達はもしや人間ではないでござるか?」
「そうなだな。私の姪に二人人間がいるが私達を含めて皆人間ではない。くれぐれも人間共にはしゃべるなよ?」
先程義妹が見せた容姿から察したのか賢王は恐る恐る聞いてきたので釘を挿すついでに肯定してやる。
ブンブンと首を縦に振って了承するのを横目にあることを思い出した。
「森の賢王よ。貴様に名をくれてやる。いちいち森の賢王と呼ぶのは面倒だからな」
理由としてはこんななりのハムスターを王と呼ぶのはなんか癪に触るからである。
「まことにござるか!?是非とも付けていただきたいでござる!」
「いいんですか?名前まであげちゃって。配下にしたのでも十分だと思うんですけど」
はしゃぐハムスターに呆れ顔のアウラ。
「冒険者として連れて歩くからな」
「ハムスケでいいのではないですか?ござる言ってますし」
「そんな適当でいいのか?」
「せっかく女将が付けてくださったのでござるからハムスケがいいのでござる!」
「いいのかよ…」
まぁいいか。と義妹のことを女将呼びで定着している森の賢王の名前がハムスケに決定し、さて漆黒の剣達のところに戻ろうと呼びかけた時。
「ご多忙のところ失礼致しますモモンガ様。お久しぶりにございますムササビ様」
倒壊した木々の影からアルベドが姿を現した。
手に小さな小包を持った彼女はにこやかな笑顔を浮かべながらハムスケに目もくれず俺達の所に駆け寄り小さく頭を下げた。
「どうしたアルベド。そなたが単身ナザリックから出てくるとは珍しいではないか」
義妹の顔が少しばかり笑顔になりおいでおいでと手招きしながらきいた。
「はい。実はエンリ様より講師のお約束をしておりまして私の作業が一段落付きましたのでこれからカルネ村へと向かう所にお二方が近くにいらっしゃるとデミウルゴスから聞き、ご挨拶に参りました」
それを聞いてそういえばとエンリが万魔殿の宴会の際、俺に頼みに来ていたのを思い出す。俺はアルベドが了承するなら問題ないと返したがどうやら姪の頼みは無事に聞き届けられたようだ。
そのあと守護者達に姪を傷付けないことと自分の業務に支障がなかったら己の判断で頼みを受けるなどしてもよいと言っておいた。一応問題が起きそうなら直ぐに報告しろとも言ってある。
「エンリが?もぅ、あの子ったらお姉ちゃん達に頼めば皆快く引き受けてくれるのに。すまぬなアルベド。妾の娘の我が儘を聞いてもらって。兄様も申し訳ありません」
「気にすることはない。私の配下達のいい息抜きだと思っているからな」
「実は言いますと私だけではないのです」
「統括殿!いくら父上と叔母上がいらしてるからといえ、私を置いていくのは如何なものですかな!?」
アルベドが出てきた場所から声を上げながら俺が出てきた。
「パンドラ!?」
正確に言えば俺の姿をした我がむ、息子…パンドラズ・アクター。
姿を見せるなり変身を解いて元の姿に戻った息子に義妹は仮面を外して満面の笑顔を見せるとパタパタとまるで親戚のおばちゃんのように掛けよっていった。
「久しぶりねぇパンドラ。元気だった?ちゃんとごはん食べてる?兄様から自由に外出する許可をもらったのは聞いてるわ。今度ウチに遊びに来てね?みんな喜ぶから!!」
「ご無沙汰しております叔母上。義妹達からもまたくるように念を押されてましたので今夜にでも顔を出そうかと」
「ホント!?ぜひいらっしゃい!あ、そうだ。まずはエンリとネムのところに顔を出してあげてちょうだい。二人とも喜ぶから!!」
さっきまで不機嫌だった義妹はハムスケのことなどもうどうでもいいらしくキュキュッとパンドラズ・アクターの頭を撫でている。ハムスケがパンドラズ・アクターの事を聞いてきたので俺の息子だと教えてやると『若でございましたか!』と目を輝かせた。
「丁度いい。お前達にも紹介しておくとしよう」
その際だからとナザリックに周知しておくための意も含めてアルベドとパンドラズ・アクターに新しく末席に加わった森の賢王ことハムスケの紹介と役割を話す。
我が息子は先人としてまた、俺の息子としてハムスケにこれから宜しく頼むとにこやかに握手を交わす。
「・・・アルベド?」
アルベドだけが固まって動かない。
何事かと皆が彼女の顔を覗き込んだ瞬間言葉を失った。
「あ、ぁあ……な、ん…で」
血の涙を流していたから。
「その、なまえ……わたしの…め、の」
何かを呟きながら一歩、一歩、ゆっくりとハムスケに近付いていく。
それにあわせてハムスケも一歩、一歩とゆっくり後ずさっていく。
多分その時、ハムスケの野生の危機本能は警報を鳴らしまくってただろう。
一難去って、また一難。哀れハムスケ。
その名前はワタシの娘のだあああぁあ!!!!
ある意味我がナザリックで一番手の付けられない存在が襲いかかった。
とりあえずアルベドのどうでもいい伏線にもなってない伏線回収。
というか漆黒の剣の存在が(涙)
文才欲しい!
創作意欲がもっと欲しい!
そして更新が遅くなって本当にごめんなさいです