オーバーロード ー 死の女王 ー   作:溶き卵

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 遅くなってすみません
 


ドレスルーム(誤字修正)

 義兄さんの部屋に隣接されたドレスルーム。

 一般的なドレスルームとは違い、異様なまでに広いその空間はナザリックの主人にふさわしいと言えるだろう。

 そこは現在足の踏み場もない状態で乱雑に、多様なモノが置かれていた。

 ローブ、法衣などの義兄さんが装備できるものから、興味本位で買ったものの使い道がなくて放り込んだフルプレートなどの防具、武器はスタッフ、ランス、グレートソードまで無駄に種類がある。

 余談だがユグドラシルでは、自分専用のオリジナルアイテムが無限に作り出せる。モンスターを倒して手に入れるクリスタルを外装に詰め込む事によって作るのだ。故に気に入った外装があれば買い込む人は多い。

 義兄さんもその一人で

 

「兄様!生前、整理整頓はあれほど小まめにしてくださいと言っていたのになんですかこの部屋は!?(翻訳:義兄さん!日頃からちゃんと掃除してって言ってたのにこの部屋の惨状はなに!?)あ~、もう!《魔法三重化:トリプレットマジック》!《道具創造・衣紋掛け:アイテムクリエイト・ハンガーラック》!《道具創造・武器立て:アイテムクリエイト・ウエポンスタンド》!《道具創造・防具立て:アイテムクリエイト・プレートスタンド》!」

 

 買ったが最後、全く整理もせずに散らかす人間だ。

 リアルで私達はマンションの隣同士で別々に住んでる。だけど昔は一緒に住んでいた。

 義兄さんは全然掃除しなかったので必然的に私が掃除スキルを身に付け家の掃除をしていた。これでも家事は得意な方だ。私を拾ってくれて学校に通わせてくれる義兄さんの役にたちたくて始めた料理。少しでも快適に過ごして欲しいと頑張った掃除。少しでも世間様に印象良く見てもらう為に学んだ洗濯。

 義兄さんは仕事でくたくたになりながら帰ってくるのでスーツ等は適当に脱ぎ散らかす。私はお疲れ様といい、笑顔でそれを片付けていた。働きに出て稼ぐのは義兄さんだから私が片付けるのは当たり前。

 しかし、一緒に暮らし初めて一年。義兄さんは味を占めたのか全く掃除しなくなった。私物のある部屋も、食後の食器も片付けなくなった。

 そしてその一年後。当時中学二年になった私の堪忍袋の尾が切れた。

 義兄は語る。あの形相は子供のそれではなかったと。

 ちなみに金銭面だが互いに廃課金ユーザーだったので語るまでもないだろう。二人してお給料日まで残り1週間をもやしと水で過ごしたのはいい思い出だ。

 だけどこれだけは言わせて欲しい。私は“必要”なモノにはお金を湯水のように使う人間です。

 そして現在そんな私は鬼気迫る勢いで片っ端からハンガーやハンガーラック、武器を立てるスタンド、防具を飾るマネキン。小物を展示する棚を創造して整理整頓。供として付いてきたナーベラル・ガンマが涙目でおろおろしているのを無視してこのゴミ部屋を掃除している。あの頃がフラッシュバックしてるのです。

 沈静化?さっきから毎分15回ぐらいのペースで発動してますがなにか?

 

「ナーベラル!貴様達メイドがついていながらなんだこの部屋は!!」

 

「も、申し訳ございません!し、しかし至高の御方の私物に勝手に触ってしまっては・・・」

 

「このゴミ部屋のどこに至高の姿がある!主人の至らない所を影ながらサポートしての配下であろうが!兄様はさぼらず小物を棚に並べる!こら!適当に放り込むな!系統毎に綺麗に並べる!」

 

「はい。すみません・・・」

 

「あぁ!モモンガ様!御身がなさらずとも私が!!」

 

「貴様は箒!!」

 

「ハイイィ!!」

 

 三十分後。

 

「うん。やはり整理整頓した方が見栄えが良いですね兄様」

 

 なんということでしょう。あの足の踏み場もなかったゴミ部屋がまるで一流の武具店のようになったではありませんか。

 ていうか義兄さん以外もこんな惨状じゃないでしょうね?

 

「すまぬなナーベラル。情けない姿を見せた」

 

「いえ、私達こそ本来の役目を疎かにしており、モモンガ様、ムササビ様には大変なご無礼を・・・」

 

 部屋の隅で義兄さんとナーベラルは正座して互いに頭をさげあっている。というかナーベラルは本当に泣きそうだ。

 私はやり過ぎたかと苦笑してナーベラルに習い彼女の横に両膝をつく。怒られると思ったのだろうか彼女ばビクリと肩を震わせて恐る恐る私を見る。

 

「ナーベラル、今回の失敗は次に生かしなさい。いかなること何度失敗しても次に生かす。それがきっと貴女の糧になる。あと私もやり過ぎたわ。ごめんなさいね?」

 

 そんな怯えている彼女の頭を撫でてあげた。《母のオーラⅡ》も発動している私。

 正直私は泣きそうな娘を見るとお母さんしたくなっちゃうんです。だってほっとけないんですもん。

 そんな私に一瞬、ポカンとした彼女は急に顔を赤くして俯き。

 

「はい、ありがとうございます。ナーベラル・ガンマ、今後も精進します」

 

 と、素直にお礼をいってくれた。

 よし、素直にお礼を言えるのはいい娘の証し。

 

「さて、それじゃ武具の検証ですね兄様」

 

 それに満足した私は立て掛けてある武具の中からグレートソードを手に取る。抜き身の白銀の刀身、腹に描かれた記号が光の反射により浮き彫りとなっている。

 

「また使いもしないものを・・・。必要なモノに金をかけるのなら分かりますが」

 

「私の趣味だ。許せ」

 

「まぁ、兄様のお金の使い道には口をだしませんよ。私が口を出すのは整理整頓清掃清潔の4Sです」

 

「しかし、流石ムササビ様。そのグレートソードを片手で軽々と」

 

 驚嘆しているナーベラルを横目に私は部屋の中央にあるスペースへと移動する。

 そこは義兄さんの希望により素振り等ができるようになっている。

 

「・・・ヤアッ!!」

 

 一声の後に剣を奮う。想定は一対複数。剣閃を周囲に煌めかせ、私は近接PvP戦の為に勉強した型を二人に披露する。

 

「流石魔導騎士、見事なものだな」

 

「ムササビ様はパラディンだったのですか」

 

「そして私と同じ《死の支配者・オーバーロード》だ」

 

 私達、地獄の七姉妹はたった7人のギルド。それで上位に食い込むにはただロールプレイをしているだけでは無理だ。

 

 だから各々がゲーマーの意地にかけて徹底したガチなロールプレイキャラを作り上げた。

 

 七姉妹三女にして最強のギブ・ミー。ほぼ防御不可能な状態異常スキル、魔法を振り撒きながらのガチ近接戦闘を得意とする通称《ウエディング・ドS》

 

 変則攻撃で相手を翻弄。戦闘相手をバカにしながら己の術中に嵌めていく双子。四女、昼の幼女。五女、夜の幼女。

 通称《幼女詐欺》

 

 無駄に多いMPとアホみたいな速度の自動MP回復スキルにモノを言わせた防御、支援、回復を行う守りの要。

 私達の長女、オーオバー。大昔のゲームの魔法から取って

 通称《ケアルマシンガン》

 

 魔法による航空爆撃を高笑いしながら行うヤンデレ。

 ゲーム時代唯一の救いだったのがフレンドリーファイアがなかったことだろう。

 大昔のアニメからいただいた決めセリフ《少し、頭冷やそうか?》の後に極太ビームを撃ってくる七姉妹魔法最強の六女

、がんばるヤンデレ。

 通称《無差別爆撃精霊》

 

 盾役なのに下着みたいな外装の意味不明なガード。

 世の男どもは躍起になって装備破壊を目論んだがすべて撃沈。

 何故運営どもは彼女を見逃したのか。

 七姉妹随一の痴女にして次女、鉄壁のガードを誇るLOVE&デス。

 通称《七姉妹の絶対領域》

 

 そして唯一の良心とも言えるパラディン。

 魔法と実戦を想定した近接をバランス良く織り混ぜてくるが。しかし、一度キレたら目の前で死ぬまで即死魔法を連発しながら槍を奮ってくるじゃじゃ馬。装備にオーオバー仕込みのMP回復スキルをつけているのでなかなかガス欠にならない七姉妹の末妹ムササビ。

 通称《デス・パラディン》 

 

 剣を振っているうちに思い出した姉たちの姿に私は自然と笑みを浮かべる。あぁ、あの頃はたのしかったと。

 最後の一振りを終えた私は少しだけ名残惜しくも義兄さんにグレートソードを差し出す。

 

「私の方は問題ありませんね。むしろ以前より調子がいいです」

 

「お見事ですムササビ様」

 

「デス・パラディンの名に恥じない演武。流石だな」

 

「その名前、娘達の前であまり言わないでくださいね。多分怖がられてしまいますから」

 

 義兄さんは私からグレートソードを受け取ると入れ替わりに部屋の中央へと移動する。義兄さんは大剣を軽く持っているがそれは剣が軽い素材でてきているのではなく、義兄さんの筋力が優れているからだ。魔法職の義兄さんは肉体に関する能力値が低いが、それでも100レベルともなれば積み重なった筋力値がある。

 雑魚ならスタッフで高笑いしながら撲殺も可能だ。

 しかし、義兄さんが剣を構えると同時に異変が起きた。

 甲高い金属音と共に床に剣が墜ちたのだ。

 ナーベラルが直ぐ様拾い上げるが私と義兄さんは剣を持っていた手を凝視していた。

 もみじ達がこの世界をゲームでないと思わせるなら、義兄さんが剣を落としたように肉体の縛りがゲームの世界のようにかんじさせる。

 ユグドラシル内なら分かる。グレートソードを装備するなら戦士系統のクラスを取らないといけないから。

 しかし、ここが現実ならば装備できない筈がないのだが。

 

「片付けておけ」

 

 思考の海に堕ちる直前に義兄さんは考察を放棄したようで部屋の一面にある大きな姿見の方を向く。

 そこに写るのはナザリックの主人にして私の義兄である骸骨の姿。

 そして何を思ったのか腰の辺りを見て

 

「実戦使用しないで・・・なくなっちゃったか」

 

 なんてのたまった。

 

『義兄さん、ここにはナーベラルもいるの。下ネタは止めて。てか、私なんてもう子供産めないんだから』

 

『・・・そう、だったな。悪い』

 

『まぁ、私には可愛い娘達がいるから別に大丈夫よ』

 

 そう、鈴木沙織がアバター“ムササビ”となった瞬間。私はアンデット、死体となったのだ。それは子供が産めないという事を意味する。

 それもそうだ。死体が魔法無しでその身体に新しい命を宿せるわけがない。

 けど、私には七姉妹の創造した可愛い娘達がいる。あの子達がいるからその事は全然苦にはならなかった。

 

「《上位道具創造:クリエイト・グレーター・アイテム》・・・・

ムササビ、少し外に出るか」

 




 魔法の使い方は合ってるのかな?
 感想お待ちしてます。


 一話に続いて修正しました
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