とある魅惑の抑制解離《バーサーカー》【完結】   作:ちひろん

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御坂美琴

 白井黒子は、学生寮の自室で、自分のベットに体育座りで、同室の御坂美琴の帰りを待っていた。

 既に時刻は21時を回っている。当然のことながら、門限は既に過ぎている。

 

 こんな夜を何度過ごしただろうと、白井はため息をつきながら思う。

 御坂美琴はこの学園都市第3位、超電磁砲《レールガン》と呼ばれる超能力者《レベル5》である。

 学園都市は都市レベルで超能力の開発を行っている。その中でも上位にいる同室の女の子に、白井は想いを寄せていた。

 その想いは、友達の域を超え、既に愛情に足を踏み入れている。同性という枠を超えて。

 ただ、白井黒子は御坂美琴が好きだった。

 

 白井は知っていた。御坂が門限までに帰らない理由を。

 具体的な内容までは知らない。だが、なんらかの問題を解決するために奮闘しているであろうことは容易に想像できた。

 御坂は、見て見ぬふりをすることができない人間だった。

 

 見て見ぬ振りをすればいいことも、関わるべきでないことも、無視できない。

 白井はそんな御坂が好きだった。

 

 だが、白井は頼って欲しかった。一緒に来て欲しいと言って欲しかった。

 昔のなんでも自分で解決しようとする姿勢は改善されたものの、それでも自分だけで解決できることに誰かを巻き込むことはよしとしない。白井はそれでも支えたいと思ってしまっていたが、それは望まれていないと、自分をどうにか抑えていた。

 

 「ほんと、どこにいらっしゃるんでしょうか」

 

 窓の外をぼんやりと眺める。窓に切り取られた風景には、満月が写っていた。

 

 「無事であることが分かるだけでも、いいのですけれど」

 

 白井はそう言って、もう一度ため息をつく。

 そして、御坂のベットの上に座りなおす。綺麗に敷かれたシーツに皺が入る。それを白井はゆっくりと撫でながら伸ばしていくが、やがてその手を止めて、そのまま横に倒れた。

 

 『すこし、お姉様の匂いがしますわね』

 

 その匂いをもう少し嗅ごうと体を動かした時に、カサリと、微かな音がした。

 首を傾げてシートを捲る。そこには、一枚の紙が挟まっていた。

 

 白井は首を傾げて、そこに書かれた文字を見る。そこには、とある研究所の名前と住所が書かれていた。それを見た瞬間、体が少し震えた。

 

 『ここに、お姉様が、いる?』

 

 白井の何かに火が灯る。

 

 白井は、来ていたパジャマを脱ぎ捨てると、制服を取り出して着替える。

 そして風紀委員《ジャッジメント》の腕章を見る。

 白井は風紀委員《ジャッジメント》に所属していた。風紀委員《ジャッジメント》とは生徒によって構成される治安維持機関である。生徒で構成されるため、治安維持とはいうものの、重要な、危険な任務につくことは少ない。そういった類ものは、教師によって構成された警備員《アンチスキル》が対応することになる。

 だが、白井は独断で、担当校区以外のパトロールかつ治安維持行為を行い、始末書が書くことも多い。大能力者《レベル4》の空間移動《テレポート》であるため、危険な目に会うことは少ないが、全くないわけでもなかった。

 それでもそれを続ける理由は、白井の中に確固たる何かがあることは想像に難くない。

 

 『今日は必要ありませんわ』

 

 手は出さない。ただ無事なことを確認するだけ、それだけが分かればすぐに帰ると、自分に約束する。

 

 白井は端末でその住所がそれほど遠くないことを確認すると、空間移動《テレポート》を数回繰り返して、ビルの屋上に降り立つ。その住所にある研究所らしきものを確認すると、再度十数回の空間移動《テレポート》を繰り返す。そして、その研究所の近くのビルに降り立った。

 

 「あそこですわね」

 

 研究所の照明は消えていた。だが、微かに内部の光が漏れているように見える箇所があった。

 気をつけて見なければ分からない程度の光である。

 

 白井は再度数回の空間移動《テレポート》を繰り返して、その箇所の入り口と思われる場所へ降りた。

 窓ガラス越しに中の様子を伺う。

 

 『通路の照明は消えてますわね』

 

 と、そこで光の正体が分かった。

 入り口からすぐの部屋、その部屋から光が漏れている。

照明が点いているということは誰かがおり、通路のセキュリテイは切られている可能性が高いと考えた。

 再度、空間移動《テレポート》で中に入る。やはり警報は鳴らない。

 

 白井はドアのセンサー部分と思われる場所に数度手を当ててみたが、開く様子はない。

 ロックされているのか、と再度、空間移動《テレポート》しようと思ったが、念のため、ゆっくりと手動でその扉を開けてみると、その扉が動くことが分かった。どうやら、自動扉の電源は切れているらしかった。

 

 そのまま、ゆっくりと扉を開けていくと中の全容が分かった。

 そこは部屋ではなく、通路だった。

 そして、その通路の奥に、予想だにしない人が座っていた。

 

 「あ、白井さん、やっほー」

 

 そこには、白井の友達の、佐天涙子が座っていた。

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