どこにでもある学校のどこにでもあるクラス。当然のように男子は男子と女子は女子とグループを作り、中立の人間は慎重に、どこかの派閥にいるならばメインの人間を立てるようにして、表面上は平和なクラスを演出していた。しかし、それはどこにでもあることであり、特筆すべきことではない。それよりも驚くべきことがあるのだ。
「……しっかし、未だに信じらんねぇよな。学校一の美少女と称されているカエデが、お前の彼女だとはな」
「あははっ、まぁ、確かにそうだよね。僕は結構地味だし、この二年間基本的に喋らない主義で通してたし、それにまだこのクラスにしか知られてないんだよね。まぁ、色々と厄介だから無闇矢鱈に話さないでね」
「確かに。アキラとカエデが恋人同士なんて、なんかこう、色々とややこしいことが起きそうだな」
「このクラスのみんなはちゃんと受け入れてくれたけどさ、それでもやっぱり、こう、思うところがあるみたいだし、からかわれたこともあったしね」
「まぁな。何せ――」
「ねぇねぇ、カエデ。カエデはさ、一体アキラのどこを好きになったの?」
「ん~、なんだろうな。ちゃんと私のこと思ってくれてるところかな。アキラって教室じゃ暗いとか地味とか物静かなイメージがあるけど、あれって全部演技なんだよね。私はアキラと中学同じなんだけど、運動神経がどの男子よりもずば抜けて優れててさ、それで嫉妬っていうかなんていうか、虐められてたことがあったんだ」
「そうなの? そういえば、カエデとアキラが通ってた中学校から、この学校に来た人っていないよね。それと何か関係あるの?」
「うん。それで中三の時にアキラに告白されてさ、その中学校からかなり離れたこの高校に二人で入学したの。幸い、私とアキラの両親って結構仲いいから、同棲とかもすぐ許してくれたしね。まぁ、両親にはまだ付き合ってることはまだ言ってないから、それ言ったら変わるかもしれないけどね」
「そうなんだ。それで?」
「うん。それで、一回だけ私、変な人に連れ去られそうになったのよね。その時に一度だけ「カエデに手を出すなら殺す!」って叫んでボコボコにしてくれたことがあったのね。それで、ああ、愛してくれてるんだな」って、あの時は改めて惚れちゃったのよね」
「うわぁ、ノロケないでよ」
「えへへへ、いや、だってやっとこういう話が出来るようになったんだよ? 今まで我慢してた分、数万倍ノロケないと」
「まぁ、二年間も隠し通してたら反動とか凄いだろうね」
「本当だよ。もう、しんどいったらしんどい。けど、隠さないといけない理由は分かるでしょ?」
「まぁね。何せ――」
「意味が分かんねぇ。俺のことを振った理由が、アキラのことが好きだからだと?」
「落ち着けって。カエデがアキラのこと好きなんて、そんなのあり得る訳ねぇじゃねぇか。男避けとか、そういうことなんじゃねぇの?」
「そうだろうけどさ! でもなんでよりによってアキラなんだよ」
「そりゃ、俺にも分かんねぇけどさ、何か縁でもあったんじゃねぇの?」
「まぁ、そうだよな。何せ――」
「えっと、君は確か、隣のクラスのケイスケだっけ? 僕に何のようなのかな?」
「その、えっと。実は……」
「あぁ、待って。待って。ごめん。忘れていた。そういえば、そうだったね。僕はそうだった。あのクラスメイトが特別なだけで、普通はそうなんだね」
「……?」
「ごめんね。何回も何回も謝るね。だけど、僕は君の気持ちには応えられない。僕はね、君が思っているような人間じゃないんだ」
「あの、何を言って?」
「知ってる? キリンって同性愛があるんだよ。カブトムシもオス同士で交尾をするんだよ。同性愛なんてあり得ないとか、性同一性障害なんてまやかしだとか、生物の本質とかなんとか、理論をまくし立てる馬鹿がいるけど、そんなのは理想の押し付けかただの無知でしかないんだ。だから、同性愛とか、そういうのは、僕的にはいいと思うんだ」
「…………」
「だけど、それでも僕は一つ条件が付くと思うんだ。それは、両者が納得しているってこと。逆に言えば、納得していれば物であろうが人であろうが他の動物であろうが、恋愛してもいいんだよ」
「あの」
「まぁ、回りくどくなったけど、ケイスケ。僕は君の想いには応えられない」
「っ、どうしてですか!」
「だから、さっき言ったじゃんか。それに僕には恋人がいるからね」
「カエデさんのことですか? でも、そんなのはおかしいじゃないですか! どうしてカエデさんがアキラさんの恋人なんですか! 何せ――」
――の続きには共通した文章が入ります。
よく考えてみてください。ヒントは全て本文に書かれています。