やはり俺の数学教師が一色というのは間違っている   作:町歩き

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三章は秒速の「コスモナウト」がそうだったように、いろはす視点で書きたいなと思い
今回は練習がてらにめぐり先輩視点で書いてみました。

んー微妙かなあ……。


はるさんとの電話

7月26日(日) 快晴。っと。

ペンを握って日記帳に日付と天気を記入する。

今日のことを書く前に、夕べ、日記を書いてお布団に入ったあとのことを書いておこう。

 

日記を書き終え布団に包まりうつらうつらしていると携帯にはるさんからのメールが届いた。

あちらでする手続きに必要な書類の件で言い忘れたことを知らせてくれたらしい。

お礼の言葉を書いて返信しようとしたとき、そういえばはるさんは比企谷くんと

仲が良かったことを思い出す。

 

高校の頃のはるさん。

今もそうだけど当時から男女年齢問わず誰からも好かれており、皆の人気者だった。

ただ、はるさん自体は自分に好意を寄せてくる相手でもそのお眼鏡にかなわない相手には

無視とまではいかないけど無関心だったように思う。

傍からみればそうは見えないかもだけど、関心のある相手と無い相手では

その対応に天と地ほどの差があった気がする。

それに気付いたのは、私がはるさんに憧れてその一挙一動をよく見ていたからかも知れない。

 

その関心を持つ基準も、私たちくらいの年齢の女の子特有の見た目や周囲からの評価などではなく

もっと別の、深いなにかだったように思う。

例えば、私が生徒会長だったとき副会長をしてくれていた木村くんは、ぱっと見、

のんびりした感じの男の子だけど、実務能力に優れていた。

それに気付いたはるさんに、生徒会長に立候補した私の手助けをして欲しいと頼まれた彼は

わざわざ役員に立候補してくれて、不慣れな私を一生懸命支えてくれた。

そんな感じで出来る人を見抜く力が、はるさんには備わっているんだと思った。

だからこそ、他人に自慢できるようなものを何も持っていない私が

はるさんに目を掛けてもらえるのか不思議ではあったけれど。

 

ただそれでも、関心を持つ相手の見た目がはるさんのお気に召さないと

「見た目は一番外側の内面なんだから、もうちょっと気を使いなさい!」

と冗談めかして言ってはいた。私もいわれた口だしね。

 

「見た目に気を使わないのは、相手に対してはもちろん自分に対しても失礼だよ」と

はるさんに言われ、それではるさんにおしゃれを教わりしてみたら、女の子には一目おかれ

すぐさま男の子に遊びに誘われたのだから、その言葉には重みがあると思う。

 

そんなはるさんに目を掛けられる男の子。

比企谷くんは一体どういう子なのか聞いてみたいと思い

その旨をメールに書いてはるさんに送ってみた。

すると、すぐさまはるさんから電話が掛かってきた。ど、どうしよう……

なんであの人、メールに電話で返事を返そうとするんだろう。ちょっと怖い。

 

「めぐり~、こんばんは」

 

「こ、こんばんはです。はるさん」

 

「声が上擦ってるけど、もしかして寝てた?」

 

「い、いえ。えーっと、お布団には入っていたんですけど、起きてましたよ」

 

「うん、なら良かった。明日にしようか迷ったなんだけどね。忘れないうちにって」

 

「ほんと助かります。わたし、ぼーっとしてますから」

 

「まあそこがめぐりのいいところでもあるからね。

そういうところに惹かれる男子もいるだろうし。眠り姫ならぬめぐり姫ってやつで」

 

「やっ、そんなモテないですよ、わたし……」

 

「そんなってことは、それなりにはモテてったってことだよね?

今まで何人くらいに告白されてたの? いってみ~ 五人? 十人?」

 

「えっ、えーーっと、じゅ、十五人くらいですかね……」

 

「おー、やっぱりモテるねー。さすがはめぐり姫!」

 

「い、いえ、そんな」

 

いらない見栄を張ってしまった……反省。

 

「で、そんなモテモテなめぐり姫は比企谷くんに興味があると。

でもどうしたの急に。彼のことをめぐりが口にするのって、確か初めてだよね」

 

「えーっと、実はですね……」

 

そうして私は、比企谷くんと図書館で再会したこと。そして彼が勧めてくれた本を読み

そこからの流れで、明日彼の家に遊びに行くこと。

そして今日、本を買いにいった帰り道。

駅で偶然彼と出会い、お茶をして色々なお話をしたことなどを口にする。

 

「それでなんですけど、ずっと彼に対してもっていたイメージとまったく違うんで

それで比企谷くんって一体どういう子なんだろうなって思って……」

 

「気になった訳だ?」

 

「やっ、そんな気になったというか…… そうですね、多分、気になってます」

 

「そかぁ~ ついにめぐりにも比企谷くんの魔の手が伸びてしまったのか」

 

「えっ、比企谷くんって色んな女の子に手を出すタイプなんですか?」

 

「んー、どちらかというと手を出されるタイプ? 

あの子ビビリだし自分からどうこうしようとはしたくてもできないと思うよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「めぐり。あんた今ほっとしたでしょ?」

 

なぜバレた…… やっぱりはるさん怖い。

 

「そ、そんなことは……」

 

「まあいいけどね」

 

慌てて言うと、はるさんは笑みを含んだ声でそういってきた。ううっ、バレバレだ。

 

「ただねえ、めぐり。比企谷くんのことは自分の目でよく見てみる、その方が良いと思うよ。

あの子の良いところは、誰にとっても良いと思われるようなものではないし。

合わない人には本当に合わないと思うからね」

 

「そうなんですか?」

 

「どうなんだろうね。まあ明日、一色ちゃんも一緒とはいえ

それなりに同じ時間を過ごすんだから、近くでよーく見てみるといいよ。

一応いっておくと、あの子、かなりめんどくさいよ?」

 

「そ、そうなんですか」

 

「うん。まあ進展あったら教えてね。楽しみにしてる。じゃ、おやすみ~」

 

「あっ、はい。おやすみなさい、はるさん」

 

「はいはいー」

 

明るい声を耳に残してはるさんからの電話は切れた。

ちょっと疲れた吐息を吐いて、お布団に戻る。

 

布団に包まりながら、明日のことを思う。

同じ時間を過ごすか……なんかちょっとドキドキしてきたような……

ま、まあ、とりあえず明日。

比企谷くんにもいったように、明るく楽しい日になるといいな 

そう思って、私は目を瞑った。

 

× × ×

 

そんなことをつらつら思い出していると、手がまったく動いていなかったことに気が付く。

いけないいけない。まだ日付と天気しか書けてないや。

まあ日記だからって、なんでもかんでも書けばいいってもんでもないけどね。

 

よし、じゃあ今日のこと書きますか! 楽しかったし一杯書く事があるなー

と思ったら、一階からお母さんの声が聞こえた。

 

「めぐり~。ごはんよー」

 

「は~い。いまいく~」

 

ペンを置きノートを閉じる。

なにかをやる気になったときの、ごはんよ~率は異常。

まあご飯を食べてお風呂に入ってさっぱりしてから書こうかな。

そう思って椅子から立ち上がり、部屋から出る。

廊下に出た私の鼻に階下から美味しそうな匂いが届いた。

 

 

 




それでは次回で

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