やはり俺の数学教師が一色というのは間違っている   作:町歩き

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次回、一つの話で視点を変えてみるというのをやってみようと思います。
いろは⇒八幡⇒いろは、みたいな感じで。
まあ書けなかったらいつもの一人称になるので、一人称だったら
あーこいつ書けなかったんだな、と思ってください。


今年の俺は一味違う

七月末。終業式を終えた夏休みの前日。

俺は稲毛海岸駅前のロイヤルホストで大変な目に合っていた。

 

「せんぱいっ。いい加減観念してくださいよ~」

 

「一色。そう言うけどね……。ていうかお前ら、マジで手ぇ離せよ……」

 

「じゃあ、比企谷。手を離したら、一緒に鴨川に行ってくれるか?」

 

「いや、行かないし。あれだぞ葉山。鴨川はアニメの町おこしで失敗したからな。

そんな場所に色々と失敗している俺が行ったら相乗効果で大変なことにだな……」

 

いやホント大失敗。お礼を兼ねて一色に飯を奢ったらこんな事態になろうとは。

それにどうせ行くならさ、大洗か高山がいいかなって、八幡思うの。

ガルパンも氷菓も面白かったしね。

てかこいつら、なんでこんなに力強いの? ビクともしないんだけど……

 

なぜ俺がこんな目にあっているか? 事の起こりはこうだ。

ファミレスにて一色に、こいつが企画した合宿について話を聞いた。

もちろん俺は「いってらっしゃい」とお見送り態勢に入ったのだが、

一色は許してくれずあーだこーだ文句を言ってくる。

それを右から左に聞き流していると、一色はぷんすか怒ってどこかに電話を掛けだす。

すると電話をして五分も経たずに葉山が現れた。

いつのまに葉山は一色のサーヴァントになったんだ? と驚きぽかーんとしていると

葉山まで俺に合宿に参加するよう熱心に促してくる。

めんどくささMAXに達した俺が席を立って逃げようとすると、俺の右手を葉山が

左手を一色が握り締め、説得しようと口々に言葉を重ねだす。

 

「なあ、比企谷。今年も一緒に夏を過ごそう」

 

「おい、葉山。そういう言い方は他の皆さんに誤解されるからヤメろ」

 

ほんとやめて。店員さんや他のお客さんがびっくりした顔でこっちを見てるから。

つーか、お前アレだぞ。この状況をもし万が一海老名さんに見られたら、

俺とお前の薄い本が書かれる危険性があるんだぞ? わかってんのか。

てか葉山の手、大きくて力強いな。頼れる感じがする。

はっ! いかんいかん。危うくうっとりしかけた。

このまま握られていたらその内、抱かれてもいい……とか思ってしまいそうだ。

そんな危険を感じた俺が一生懸命葉山の手を振りほどこうとしていると

一色が横から不満げに頬を膨らませぶーぶー言ってくる。

 

「そうですよ~、せんぱいっ。去年行ったんなら今年も行きましょうよ~」

 

「いいか、一色。去年いったから、今年はいかないんだ。

もう充分。俺の心がそう告げてるんだな、これが」

 

「せんぱいっ、それ幻聴ですよ。わがまま言わないで皆でいきましょうよ、鴨川」

 

自宅から出たくない。俺の望みはただそれだけなのに……

そんな小さな願いすら叶わないこんな世界なんて、いっそ。

などと言い出すと黒八幡化待ったなしなので止めておくことにする。キャラじゃないし。

つーか、一色。俺の意見を全否定してるお前はどうなんだよ……

 

「比企谷。俺といろはだけじゃない。皆も、比企谷が来ることを楽しみにしてるんだぞ」

 

うっそだあ~。もし嘘じゃないにしても、あれでしょ? 

実際現地では居ても居なくても同じ扱いされるやつでしょ?

それにさ、もし仮にそうだとしてもそれ、ヒキタ二くんとかヒキオくんのことだよね? 

俺、ヒキガヤだから別人なんだよな。

 

などと思いつつも、誰が来るのか気になったので聞いてみる。

 

「葉山。来るメンバーって誰と誰なんだ?」

 

「えっと、去年の林間学校サポートボランティアに参加したメンバーだよ。

それに今回は陽乃さんも参加する形かな」

 

「ちょっと待て。つーことは、戸塚も来るのか?」

 

「ああ、もちろん。戸塚も凄く楽しみにしてたよ」

 

葉山は言うと、にっこりうさんくさ笑顔を浮かべる。

一色もその隣でにやっといやな笑みを浮かべていた。

ハハ、こいつら。戸塚が来れば俺も釣られてくるだろうと思ってんだろうな。

まあアレだ。去年までの俺なら確かにそうかも知れんがな、今年の俺は一味違うんだ。

それを今から証明してやる!

 

「おいおい、お前ら。それを先に言えよ。で、いつだ? なんなら今から行くか?」

 

「比企谷……」

 

「せんぱい……」

 

二人に呆れた顔をされたが、俺としては至極当然のこと。

これはあれだな。安らぐという意味では戸塚は自宅と同義といってもいいかも知れない。

そうするとあれか。「戸塚(いえ)に帰る」とか「マイ戸塚(ホーム)」なんて言うのもありか。

思いつつ、気になったことを口にする。

 

「そういや、何泊の予定なんだ?」

 

尋ねると、一色が前のめりになって答えてくれた。

 

「えーっとですね。八月二十四から二十九までの五泊六日の予定なんです。

それぞれ不得手な教科が違うんで五日間日替わりにして各教科勉強する感じですかね」

 

ふむう、五日も共同生活をするのか……

パーソナルエリアが他人より広いぼっちの俺には、戸塚が居てもちと厳しいような。

それに夏アニメもそろそろ終盤。

オーバーロードと監獄学園のラストを生放送で見れないのはきついよなあ……

まあアニメを見ないであろう葉山と一色にこの気持ちは分かるまい。

なので言い方を変えて思ったことを口にする。

 

「そうだな。不得手なものは人それぞれ。つーことはだ。

俺は数学の日だけいくから他の日はいなくていいよね?」

 

「ダメですよ! ただでさえ先輩は数学が人より苦手なんですから。

数学の日以外でも数学の勉強をしてもらいます。もちろん私も国語の日以外も国語勉強しますし。

教えてくれる先輩がいないと困るじゃないですか!」

 

「お、おう」

 

いやそこは葉山に教われよ。と思ったが、葉山は葉山で三浦や戸部の世話で大変か。

雪ノ下は由比ヶ浜の面倒で手一杯だから、そうするとやっぱり俺になるのか。

 

「う、うーん。でもなぁ。小町とそんなに離れると、俺死ぬかもしれないし」

 

「……比企谷。それはないだろう」

 

「ああ、葉山。そういやお前、一人っ子だったな。

千葉の兄妹はな、半径五キロ以上離れると死ぬ身体なんだ。覚えとけ」

 

「せんぱい、なにしれっと嘘教えてるんですか……」

 

「嘘じゃねーよ。まああれだ。ホントかどうかちょっと微妙なだけで。

でもよ、下手に試せないじゃない? 死ぬかもしれんし」

 

「分かりました。じゃあ小町さんにも来てもらえばいいんですね」

 

「えっ、いや、小町はあれであれだから」

 

言ってる間に一色は小町へとメールを打ち始める。

そうして暫くすると、令呪という名のメールで呼び出された小町や他の参加メンバーも

続々とこの場に集結して来たのだった。

 

 




それでは次回で

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