サブタイトルは話の中のセリフなどから取っているので楽なのですが。
まあそのおかげで、なんかよくわからんサブタイトルが並んでいますが。
章名は割と大事だと思うのです。その章全体の事なので。
それで候補を何個かさらさらっと書いてみてこれかなとおもったのが
「愛情深まる。それが傷の深さになると知らずに」なのですが
なんかポエマー臭いなと思い、目下思案中。
まあSS書いてる時点で、ある意味ポエマーですが。
なので取り敢えず、「女子高生とおなじ空気を合法的に吸えていた夏」に
しようかと思います。
日も傾き大分涼しくなった頃、俺と一色は二人、電車に乗って千葉へと向かう。
そして千葉に着くと、駅に近い書店へと足を運ぶ。
「良かったですね、せんぱいっ。探してた本、すぐに見つかって!」
「お、おう……」
会計を済ませビニール袋に包まれた本を抱えてながら、一色の声に応じる。
確かに俺も一色の言う通りだとは思うのだ。
書店に入り五分も探すと、お目当ての本をすぐに見つけることができた。
だが、ここまで来る道のりを思い返してみると、えらく長かった気がする。
× × ×
「せんぱい。少し見たいものがあるのでちょこっとだけ、ここに寄ってもいいですか?」
書店に入る前、その隣に建つデパートを見上げながら、一色が遠慮がちにいった。
今日は俺の買い物に一色を付き合わせてる手前、断るという選択肢は勿論ない。
まあちょっとならと思い、「おう」と答えデパートに入ったのだが、ここからが大変。
俺はそれから二時間ばかり、一色のウィンドウショッピングに付き合わされることとなる。
服屋や雑貨屋を楽しげに鼻歌混じりで見て回る一色。
その後をてってこ歩きながら俺は周囲をぐるりと見渡す。
どうやらここは、高級ブランド品を扱うエリアのようだ。
それで普段見ることもないグッ〇とかプ〇ダとかを見てみたのだが
なんだいこりゃあ、ぼったくりもいいところ。
ナイロン素材で十五万とか一体どういうナイロンつかってるんだ?
NASAが開発した耐宇宙空間ナイロンとかならわからんでもないが
そんなことは一言も書いてない。おかしーだろこれ。誰が買うんだよ。
などと付けられた値段の上に、あーだこーだ文句を付けていると
一色の背中に付いて行くだけの簡単なお仕事だったそれは
突如、ナイトメアモードへと突入した。
一時間以上、店内をアテもなくふらついていることにさすがに焦れた様子の俺を見て
一色が「せんぱい、次で最後ですから」といって向かった先が、
ランジェリーショップだったからだ。
もちろん俺は「外で待ってるわ」と逃げ出そうとしたが、一色に手首をガッチリ掴まれ
店内へと引きずり込まれてしまう。
客は俺と一色の二人きり。いや俺たちが店に入るまでは十人ばかりお客がいたのだ。
だが、俺が店に入った瞬間、蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
そんな居心地の悪い空間で店員さんの胡乱げな視線に怯える俺を尻目に
一色が明るい声をだす。
「せんぱいせんぱい。これ可愛くないですか?」
「あ、うん。そうだな」
一色から顔を背け目のやり場に困りながら答える。
「せんぱいせんぱい。これなんかすごくキワどいですよ」
「お、おう。すごいな」
「せんぱい~。ちゃんとこっちを見て答えてくださいよ~」
おいおい無茶いうなよ! と思ったが、一色は普段から俺に無茶しか言わない事に気づく。
とはいうものの、一色の要求に応えてそれを見るのは無理すぎる。
いやだってさ、ピンク色のなんかとか紐っぽいなんかを男の俺が見て
どんな顔をすればいいのかわからないじゃない?
あと感想聞かれても、「おっ、いい感じだな、それ!」なんていえねーし。
「こっちのほうが良くないか?」なんて言ったら、通報モノ。
そして、そんな困っている俺の耳に、一色はとんでもない爆弾を投げてきた。
「せんぱいせんぱい。これ、今わたしが付けてるのと同じものですよ?」
えっ! どれ? 思わず振り返りそうになり、はっと慌てて顔を戻す。
う、うーん。一色が履いてるのと同じの? なんでだろう。なんかすごく気になる。
一応、誤解の無いよう言っておくが、俺は別にパンツなどの下着が好きな訳ではない。
いうてただの布だし。
ただそれは女性とセット、合体でもいいが、すると、恐ろしいまでの相乗効果を生み出す。
材木座風(要は厨二)に言い直せば「世界が……変わった!」といったところだろうか。
ゆえに、スカートをそっと持ち上げパンツを見せるエロゲお馴染みのスタイルより、
脱いだパンツを手に持って目の前におずおずと差し出される方が興奮するのでは? と
常日頃から考えている俺がいる。
なので、女性の皆さん。特に女子高生のお嬢さん方。
エスカレータなどで俺が後ろに立ったからといって、睨まないでくださいね。
俺が見てるのは、そして見たいのは、あなたのパンツではありません。
パンツが見えそうで見えない、そのギリギリのラインなのですから。
そんな哲学的なことを考えながら、どうしても気になった俺は
こそっと一色の手に視線を向けてしまう。
がしかし、その小ぶりな手には何も持っておらず、はっと自分が彼女に図られたと気づき
驚いて顔をあげる。
すると視線の先で一色が、にたあっと邪悪な笑みを浮かべていた。
× × ×
そんなこんなで一色にまた新たな弱みを握られはしたものの、目的のモノを手にすることが
出来た俺は達成感に満たされる。これにてミッション終了。くぅ~疲れました。
後は一色の頭にタライなどが落ちてきて、俺の都合良く記憶を失ってくれれば助かるのだが。
まあそこまで求めるのは欲張りすぎるというものだろう。
「んじゃ、帰るか」
いうと、一色は難しそうな顔をする。
「待ってください、先輩。ちょっと大事なお話が」
一色のいう「大事なお話」が良いお話だったことがあっただろうか? いや無い。
なのでそのお話は先送りすることにした。
「わかった一色。今度な、今度聞くから。今日はほら、もう暗いし。はやく帰らないと」
などと、説得という名の逃亡を試みたのだが、一色は許してくれなかった。
「もう、なんでそんなすぐ、帰りたがるんですかっ!」
ぷんすかといった感じで頬を膨らませ俺をじとっと睨んでくる。
いやちょっと待て。本はすぐに買えたけど、ここまで来るのはすぐじゃなかっただろう?
しかもその原因はお前じゃねーか。
と言いたいところだが、一色のおかげでお目当ての本を買うことができたのはまぎれもない事実。
ならばここは一つ、恩には恩で報いなければなるまい。
「まあその、なんだ。なんかあるならいってみ」
いうと、一色はほのかに頬を染め視線を外した。
そして、おそるおそるこちらを見ると、照れくさそうにはにかむ。
「……えっとですね。先輩に私に合った本、教えて欲しいです」
いうと、一色は困ったように目を伏せた。
それでは次回で。