流星のロックマンV Angel×Daemon 作:kaira
展望台から帰ってきたミソラは何のあわただしい様子もなくただ、普通に、平然と学校の制服へと身を包む。
半袖にカットされたワイシャツに袖がワイシャツよりもさらに短いカーディガンを羽織る。
ミソラの通う、市立天の川中学校は至って普通の中学校。
特別な人に待遇された学校でもなく中高一貫性の学校でもなく、ごくごく普通の学校。
簡単に言えば、コダマ小学校の次期校にあたる、とも言っても過言ではない。
そんなわけで身だしなみをしっかりとしたミソラは鏡の前でチェックする。
いつも来ているパーカーの無い服とはいえ、それでもミソラの綺麗なえんじ色の髪の毛は煌びやかにまとっている。
中学生にとって夏らしい服なのかはこう見えて分からないけれどどうあれ彼女は一介の大スターだった。
そう、大スターだった。
ミソラはかつて夢にまで見ていたアーティスト、更には女優までと数々の仕事がここ数年舞い込んできたが小学校の卒業と同時に芸能界を引退。
理由は学業専念。
学業専念とあれど、高校生あたりから復帰できるのではないかという批評らしきものが飛び交ったのだが、彼女にとって、歌を歌い続けることや、役を演じ続けることはもう困難であった。
精神的にも、心体的にも。
マネージャーであるハープと相談をした結果、そのようなことになった。
ちなみに引退ライブは開催されず、ニュース報道で締められた。
「お母さん!!行ってくるね!!」
「気を付けるのよ!!」
母であるあかねに声をかけたミソラはいつもの集合場所へと行く。
集合場所とは言っても星河家のすぐ前なんだけれど。
朝、展望台に行く時に履いていったスニーカーをはき、勢いよくドアを開けた。
そして、ドアを開けたすぐそこにはお馴染みの面々が。
「あら、ミソラちゃん。おはよう」
「おっす、ミソラちゃん」
「おはようございます」
まずは金髪でツインテールと行った今どきの髪形で先がカールとなっている少女、白金ルナを先頭に大柄な男子、制服がいかにも似合いそうにない牛島ゴン太におそらく校内では一番背が低いが学力に関しては校内では有数のトップにいるであろうメガネの少年、最小院キザマロ。
「ミソラちゃーん」
「おはようー」
更にもう二人、最初にミソラに声をかけてきた人物は鳴無ミオ。
ミソラと共に戦ってきた親友であり、音楽の事なら唯一話しあえる人物。
その横には実体化された彼女の相棒、アクアス。
もう一人は西蓮寺ハルト。
今は亡き星河スバルの親友でもあり、ライバルだった彼。
いまじゃ遊撃隊の隊長としてメンバーでもあるミソラ達を勇猛に率いる頼もしい人。
そして後ろにはむすっとした顔でいるハルトの相棒、スコルピ。
「さぁーて、全員揃ったところで行きましょうか」
「ミオ、一時間目って体育?」
「あれ?ゴン太君また太った?」
などの会話がまちなかで弾むという事は今日も一日が始まるという合図だった。
衛星イオ
そこには六人の人らしき人物が立っていた。
人、という事ではいくら電波技術が発達した現代の地球の技術ではいくらスペースコロニーの外はといえど、宇宙服を着ていなければ肺に酸素が送り込まれず死んでしまう。
それに、その六人はまた姿も普通の人間とは違かった。
単純に言えば、悪魔。
黒い翼を帯び、黒くまた鋭利となっている爪がむき出しになっている。
中には鎌を持っていたりする者も。
「あーあ、これじゃ鼬ごっこじゃねえかよ。めんどくさいからパパッとやちゃおうぜ」
鎌を持った小柄な人物が言う。
しかし他の五人は黙ったまま。
「焦るな。どうせ、天空界のやつらもいずれはネプチューンを抹殺するだろう」
先頭に立っていた人物が口を開く。
図太い声も聞いただけでぞくりとするような声だが誰一人としてひかない。
「ハデス様の言うとりよルシファー。私たちは星を一個ずつ破壊すればいいのよ」
「でも惑星を破壊されたらそれこそじゃねえのかよ」
「どのみち標的は地球だがな」
「あーあ」とため息を吐きながらルシファーと呼ばれた悪魔は空中で胡坐をかく。
「さて、始めるとしよう。アモン、頼む」
「はい、ハデス様」
さきほど、ルシファーに仲介の言葉を入れた女悪魔、アモンはスッと、ハデスの目の前に立つ。
そして、右手を掲げると同時に、炎が噴射された。
真っ黒炎は衛星イオを包み込んだ。
炎が消えると、先ほどあった衛星イオは跡形もなく消えていた。
「さて、ここから天空界がどう動くかが重要となるな」
ハデスは先ほどとは逆方向を向く。
その先には青い惑星が。
唯一生命体が存在する地。
「さあ、異次元電波生命体(エクシード)の力をとくとご覧いただこうか地球人よ」
地球に向かってそう叫ぶのであった。
「やっぱりイオが破壊されたか」
玉座らしき場所で頬杖とついていた一人の人物が言う。
この人もまた、人間とは違う体型だった。
白い羽根に華奢な体つき。
「近々地球に侵攻するようです」
「となると、我々もか」
すっと、立ち上がり閉じていた眼を開く。
「ミカエル、すぐさま突撃の準備を」
「ゼノス様、ワルキューレの方は・・・・・」
ゼノスと呼ばれた先ほどの人物は外の景色を見る。
「構わん。後程探せる」
「・・・・・・・・わかりました」
ミカエルは云われるまま、部屋を出ていく。
「地獄界か・・・・・・」
全面そうになりそうな。そんな気持ちでゼノスは再び玉座へ座った。
放課後、ミソラは急いで学校を出て、ある場所へと行った。
何としても行きたかった場所。
家とは反対方向にある道を行き、山へと入ってく。
片手にはミネラルウォーターが入ったペットボトルに朝花屋で買った花を持っている。
階段を上ると麓はすぐそこ。
汗びっしょりなのも忘れてミソラは目的地の場所へとついた。
一目のつかないその場所。
誰もが寄り付かないその場所。
そこには星河スバルの墓と綺麗に彫られていた。
「やっと・・・・・・来れた」
息を荒くしながらもミソラは言う。
「・・・・・あちっ!!」
墓石に触ると日が当たっていたせいかとても熱かった。急いでミネラルウォーターをかけてやろうとペットボトルのふたを開ける。
そこに花も添え、ミソラは手を合わせた。
今日で二年・・・・・いろいろあった。
笑う事しかなかった気がする。だってあれ以降、彼女は泣いていないから。
「やっぱりここにいたか」
声をかけられ、合わせていた手をほどくとそこには遊撃隊指揮官の暁シドウと、クインティアがいた。
「話がある」
ミソラはただ黙りこくりと頷くだけであった。