風邪を引いたらシンフォギア装者が看病してくれた(旧題:風邪を引いたらきりちゃんがデスデス言いながら看病してくれた)   作:リベリオン

3 / 6
少し遅れて申し訳ないです。その分ボリュームたっぷりですよ!

今回の教訓

「好きな人がお見舞いに来てもはしゃがないで大人しく寝てろ」


続々・風邪を引いたら愛しの女神がお見舞いに来てくれたので丁重にもてなした

 あ、どうも! 最近よくお会いしますね!

 ……なんて前振りはおいといて、自分です。まだ風邪が長引いてます。原因はハッキリしてるんですけどね。

 前回、SAKIMORIさんこと風鳴翼さんがお見舞いに来てくれたんですが、その時色々無茶をして熱がぶり返しました。この事を切歌にメールで伝えたら「治りかけが危ないって言ったじゃないデスかー!」ってぷりぷり怒ってました。ごめんなさいきりちゃん。

 おまけに肉体的(外傷的な意味で)なダメージも大きく…って言うか風邪のピーク時よりも更に酷くなったので、大人しく寝てます。

 あとこれ、余談なんですけど、緒川さんに「風邪が1発で治るような秘伝の丸薬とかないんですか?」って冗談で聞いたら「ありますよ」って答えられてずっこけた。

 ただ――。

 

「強力ですけど、飲めば当分の間味覚麻痺しますけど」

 

 だって。

 あれ目が本気だった。メガネ外して言ったから信憑性は本当に高い。何デスかその人類の味覚に挑戦状を叩きつけたような味覚破壊兵器は。毒を持って毒を制する理論デスか? 忍者パネェデッス。

 流石にそれは勘弁したいので、やっぱりいいですと丁重にお断りしました、はい。緒川さんの作ったおじや、大変おいしゅうございましたデス。なんか口調感染したかな。

 ああそうそう、翼さんと言えば昨日の見ていて思ったけど、一週回って可愛いよねってちょっと思った。あっちもまんざらじゃないのが意外で、少し嬉し――。

 

 ガチャガチャ…ガチャッ。

 

「邪魔すんぞー」

 

 こ…この声は!

 チャイムを押さず、鍵を開けて遠慮無用で部屋に押し入ってきた人物に俺の脳細胞がトップギアに入るッ!

 そしてッ! 姿を見せた可憐な少女はッ! まさに我が天使! 否女神ッ! 否! 断じて否! もはや彼女は唯一神なりッ!!!!

 

「お、なんだ。思ったより元気そうだな」

 

 雪音クリスちゃんキタ━━━(゚∀゚)( ゚∀)(  ゚)(  )(゚  )(∀゚ )(゚∀゚)━━━ッ!!!!!!

 ようこそいらっしゃいませ我が天使よ! このような狭苦しい住処へ降臨していただいてありがとーございますッ!

 

「だっ! 誰が天使だ! つかお前風邪引いてんだろ!?」

 

 はいっ! 昼間に測ったときは38.9度をマークしてました! ちなみに自分の平熱は大体36.4度前後なので立派に高熱ですが、活動に支障ありません!

 

「だったら大人しく寝てやがれってんだ! うわ、顔真っ赤じゃねぇか!」

 

 何を仰る! クリスちゃんが来ているのにもてなさないなんて一生の恥だよ! 人生最大の汚点だよ!

 

「お前は病人だろうが!」

 

 病人だから客人をもてなしてはならないと……誰が決めたのかね?(キリッ

 

「……なら帰る」

 

 ああ、待って! お待ちになって! 無情な言葉に涙目になってクリスちゃんにしがみついた。

 

「なら大人しくベッドに戻るか?」

 

 その前にお茶を用意しなきゃ……紅茶? 緑茶? お菓子はクッキー? それともどら焼き?

 

「…っ」

 

 その時、ブチッ――と、クリスちゃんから何かが音を立てて切れる音が聞こえた。

 

「“Killiter Ichaival tron...”」

 

 あれ。このパターンは……。

 嫌な予感を覚える間もなくクリスちゃんが光に包まれ、間近で光を見てしまい思わず手を離してしまう。

 目が、目がぁー! なんてムスカっていたら、ガションガションと何かが展開する音。

 眩む目でなんとか確認すると、クリスちゃんはギアを身に纏い、両手にマシンピストルを握り締め、展開した腰部アーマーからは無数の小型ミサイル弾頭が顔を覗かせていた。

 

「今すぐベッドに戻って寝るか、今すぐあたしに蜂の巣にされて永眠するか……どっちか選べ」

 

 ごめんなさい。調子に乗りすぎました。氷河のように、それでいて内側は噴火する火山のような声音で呟くクリスちゃんに即座にベッドに飛び込んで毛布を被る。

 それを見届けて、クリスちゃんははぁ~…と疲れたように息を吐くと纏っていたギアを解除してくれた。

 

「ったく……お前あのバカと同じレベルでバカだよなぁ」

 

 あのバカ? ああ、響のことね。

 確かにあの子もスキンシップが激しい。挨拶代わりに抱きつこうとするたびに、クリスちゃんにぶっ飛ばされるのがお約束になりつつあるとか。いいないいなー。

 

「いいなー、じゃねえっ! 毎度されるあたしの身にもなれ!」

 

 えー、抱きついてくるのがクリスちゃんならもうご褒美ですけど。

 きっぱりと答えたら、クリスちゃんはジトッと半眼で見下ろしてくる。

 

「ヘタしたらあのバカよりも大バカだよ、お前は……」

 

 いやいや、こんな風になるのはクリスちゃん限定ですよ。普段は案外普通なの知ってるでしょ?

 そう答えたらクリスちゃんは黙り込んで、それまでの事を振り返るようだった。

 自分でも言ったとおり、他の相手ならここまで過激な事はしない。そんなのを誰彼構わずやりまくってたら確実にお巡りさんにしょっ引かれてブタ箱行きだからね。

 え? 前回のSAKIMORIさんへのラッキー☆スケベ? ワケガワカラナイヨー。

 

「なんであたし限定でそこまで過激な行為に走るんだ!?」

 

 だってもう世界一大好きだし。訂正、宇宙……否、全次元レベルで。

 

「……なんだろう、そこまで言われると普通は嬉しいのかもしれないけど、普段の言動のせいで全然嬉しくねぇ……」

 

 なら普通にすれば付き合ってくれるということですか!?

 

「そういう問題じゃねえっ!」

 

 うがーっ、と吠えるクリスちゃんに、えぇー…と不満たらたらで唇を尖らせた。

 酷いよ、こんなにも君への愛に溢れているのにっ! ワテクシとのことは遊びだった……あ、ごめんなさいふざけすぎました。だからイグナイトまで使うのは勘弁してください。反省しますこの通り。

 

「よろしい」

 

 今度こそ自分が大人しくなるのを確認すると、クリスちゃんは頷いてベッドの横に腰を下ろした。

 そしてほら、と来た時から持っていた小箱を突き出す。

 

「土産だ。クラスのとも……れ、連中が美味しいって評判のスイーツの店で買ってきたんだよ」

 

 説明の途中で「友達」と言いかけて、慌てて言い直したクリスちゃん。

 いい加減「友達」って言えばいいじゃないか。まだ恥ずかしいの? って突っ込むと、かあーっと顔を赤らめる。

 

「べ…別に恥ずかしいわけじゃねぇよ! 友達…とか」

 

 恥ずかしがってるじゃん。可愛いなーもう。

 

「うっさい! 可愛いとかゆーな! あと何度も言うが、あたしは年上で先輩だっつの! いい加減先輩とか使え!」

 

 えぇ~……そこまで言うなら仕方ない、クリスちゃん先輩って呼ぼう。

 

「なんでわざわざ変な呼び方にすんだよ……」

 

 クリスちゃんはゲンナリしながら呻く。けど「きねクリ先輩」よりはマシだと思うけどなぁ。

 それにクリスちゃんはクリスちゃんだし、今更先輩も後輩もないと思う。後輩(しらきりs)たちは良い子だからきちんと先輩とか敬語使ってるけどね。

 けど自分、堅苦しいの息が詰まるから、敬語とか使わなくて良いよって伝えてる。年上としての威厳? 要らない。そもそもないし(きっぱり

 だって先輩後輩とかじゃなくて普通に友達だし、そういう壁とか作って遠慮とかされたくないもん。

 

「んなもんかぁ……?」

 

 つらつらと並べたこちらの言い分にクリスちゃんは首を傾げる。

 まあ、個人的な意見だからね。そう答えて彼女の持って来たお土産を開けた。

 中に入っていたのはプリンで、上に生クリームがたっぷり掛かった物と表面を軽く焼いた焼きプリンの2種類が2個ずつ。

 これ、確か駅中にある今女子校生たちに人気のスイーツ専門店のプリンじゃないっけ。しかもその店の人気メニューがこのプリンだったはず……。

 

「ま…まぁな。よく知ってるじゃねぇか……」

 

 評判は結構聞いてるからねーと答えて、そう言えばと思い出す。

 このプリンは連日品切れになるほど人気が高くて、中々手に入らないレア物だったはずだ。

 買うのかなり大変だったんじゃない?

 

「べ…別にそこまで苦労はしてねぇよ。あたしも興味あったから……」

 

 目を逸らしてボソボソ言うクリスちゃんに、じゃあはい、と箱を差し出す。すると彼女は目を丸くし、じーっと箱を見つめていた。

 食べたいならどうぞ。

 

「こ、これはお前の見舞いに買ったんだぞ? あたしが食べれるわけ……」

 

 慌てて箱を押し返そうとするクリスちゃんに、いやいや、興味あるなら食べちゃっていいよ。と返して更にぐいっと押し返す。

 

「そう言うわけにもいかないっての! いいから、これ全部お前にやる!」

 

 そう反論してクリスちゃんは更に力を込めて箱を押し返してきた。このままじゃ箱が潰れそうだから大人しく引き下がったけど、本当は食べたいくせに意地っ張りなんだよなぁ。

 よし、ならそれを逆手に取ろう。もしかしたらクリスちゃんが悲しむかもしれないから本当はしたくないけど、彼女にも食べてもらうためだ。

 

「え…?『じゃあやっぱり要らない』……? な、なんでっ!?」

 

 さっきと打って変わってキッパリ拒絶したこちらに、クリスちゃんは本当にショックを受けて目を見開いた。

 だってクリスちゃんが食べてくれないから。クリスちゃんが食べてくれないなら別にいいや。後で捨てておくね。

 

「そ……そんな……」

 

 口にしなかったけど、多分自分のために時間をかけて買ってきてくれただろうそれを拒否されてしまい、クリスちゃんは顔を伏せてしまう。

 ああ、もう。やっぱりこうなった! だからいやだったんだよなーこれ。とにかくすぐリカバリーしなければ!

 

「――『だから、一緒に食べよう』って……? あたしと、お前で?」

 

 沈んでいたクリスちゃんにそう言うと、俯かせていた顔が上がり自分を見つめてくれる。

 4つもあるのに1人占めなんて出来ないよ。クリスちゃんも一緒に食べてくれたら、こっちも嬉しいし。

 

「本当に……本当にそれでいいのか?」

 

 嫌なら捨てちゃうけど?

 

「っ……分かったよ! 食べりゃあいいんだろ、食べりゃあ!」

 

 最初からこれを狙っていた事にようやく気づいたクリスちゃんだったが、今更撤回できず恥ずかしさを隠すように膝に乗せていた箱をふんだくると、ゴソゴソと中を漁り焼きプリンを取り出すとこっちに投げてきた。

 自分の望み通りになって、顔をほくほくさせながら投げられたプリンを見事にキャッチ。ついでにクリスちゃんが店から貰ったプラスチックの小さなスプーンも貰うと、2人で食べ始める。

 

「…………!」

 

 1口食べた瞬間、クリスちゃんは大きく目を見開いた。

 うん、こっちも中々に絶品なプリンで内心おお、と関心を示す。巷の女の子たちが夢中になるのもこれなら納得かもしれない。

 

「そっちはどうなんだ? 美味しいのか?」

 

 うん。絶品だよ。そっちはどう?

 

「あたしのも……ま、まあ悪くねーな」

 

 素直に美味しいって言えばいいのに。このツンデレ娘め。

 

「誰がツンデレだ、誰がっ!?」

 

 クリスちゃんに決まってるでしょーと言いつつ、もう1度プリンをパクリ。ねっとりとして柔らかくて、濃厚な味わいだが特に卵黄が強く主張しているような気がする。それに微かに良い香りがするし、表面を焼く時に酒でも使ってフランベしたんだろうか。

 なんにしても美味美味。そもそも自分プロの評論家とかでもなんでもないんで、そんな上手く表現できないですから!

 しかし……先ほどからちらちらとこちらの焼きプリンをちら見しているクリスちゃんや、これがそんなに興味あるのかね?

 

「なわけあるかっ!? 何を根拠に言ってんだ!」

 

 だって食べたそうだし。とあっさり言って、食べたい? と聞いてみる。

 

「ま……まあ、興味はあるけど……」

 

 じゃあ食べてもいいよ。と答えると、えっと意表を衝かれたようなクリスちゃん。

 だって買ってきたのクリスちゃんだし、そんな気になってるとこっちも気になるし。と言いながら、自分が食べていた焼きプリンをスプーンで掬って、はいと差し出した。

 

「えっ……あの、これって……」

 

 顔を赤らめて、戸惑ったように自分と自分が差し出してるスプーンを交互に見るクリスちゃんにどうしたの? と首をかしげた。

 なんで戸惑ってるか理由が分からず、早く食べちゃってよ、落ちちゃったら勿体無いし。と催促をする。

 

「~~~っ!」

 

 戸惑いを振り切ったのか自棄になったのか、クリスちゃんは声にならない声を上げつつプリンが乗ったスプーンをぱくり。

 スプーンをゆっくり引き抜いた所でどうだった? と聞いてみると、固まっていたクリスちゃんははっと我に返り、口をもごもごしてから飲み込んだ。

 

「……美味い」

 

 顔を真っ赤にして、こっちとは目を合わさないでボソリと一言。クリスちゃんが苦労して手に入れてきたんだから、美味しさもひとしおって奴だろうなぁ。

 などと考えながら自分の焼きプリンに手をつけようとして、ちょっと待てとクリスちゃんに止められてしまう。

 どうしたのさ? と顔を向けると、顔はこっちを向いていないが目はしきりにちらちらこっちを見るクリスちゃんにはて、と首を傾げる。

 

「こ……こっちのプリンも興味あるか?」

 

 そりゃまあ、一応。質問の意図が読めないけど素直に応じる。

 

「だったら……食べていーぞ」

 

 えっ。でももう1個あるし、後で食べるよ。

 そう答えると、こっちに向き直ったクリスちゃんは顔を真っ赤にして逆上しだした。

 

「いいからこっちの食え! 今食え! すぐ食え!」

 

 その剣幕に圧倒されてしまい、は…はひっ! と変な声で返事をしてしまう。

 なんでそんなに怒るのか分からず、内心首を傾げたつつクリスちゃんの持っていたプリンにスプーンを伸ばした所で、ひょいと。なんでか避けられた。

 な ん で さ 。

 

「い…いいから、大人しくしてろよな」

 

 プリンを遠ざけつつ言うクリスちゃんに、内心釈然としないものを抱きながら大人しくスプーンを引っ込める。

 すると彼女はプリンを引き戻して、自分のスプーンで掬った。

 なんやねん、自分が食べるんかい……なんて関西弁で内心突っ込んでいると――、

 

「ほ、ほら……あーん」

 

 自分のやっていることに相当恥ずかしがりながら、クリスちゃんはプリンを掬ったスプーンをおずおずとこっちに運んでくる。

 え……?

 えぇっ……?

 う゛ぇええっ!?!?

 クリスちゃんからの予想の遥か斜め上を行く行動に思わず変な声が出てしまったよ! ナニソレイミワカンナイ!

 

「は…早く食えよ」

 

 恥ずかしがりながら、クリスちゃんはずいっとスプーンを突き出してくる。

 いやいやいや、食えって! 食えって!? こここkkれrrこれこれをですかっ!?

 

「ん…」

 

 ずいっと、さらに突き出されるスプーン。

 これは夢ですか? 夢なら醒めないでくれ! いややっぱリアルでもやって欲しいから醒めてくれ。

 頭の中が糸が絡まったみたいにぐっちゃぐっちゃになり、なんかもう世界もぐるぐる回ってる気がしてきた。まわってまわってまわってまわーるー!

 ……よし、現実逃避終了。これは間違いなく現実だった。

 そしていい加減クリスちゃんが痺れを切らしそうで、顔を真っ赤にして待っているのを見ていい加減決意を固める。

 あ…あーん……。

 

「……………」

 

 恐る恐る口を半開きで開けると、開いた空間にクリスちゃんはスプーンを滑り込ませた。

 流石に口をあけて食べるのは行儀が悪いので、そのまま口を閉じてプリンを口の中に入れると、ゆっくりとスプーンが引き抜かれる。

 もにゅもにゅ……。

 

「ど、どうなんだよ?」

 

 ハイ、オイシイデス。ちゃんと租借して飲み込んでから、やっとの思いで答えた。

 でも実際の所クリスちゃんのしてくれた事で頭が一杯で、味なんか一切入る隙間がない。多分美味しいんだろうけど、もうね、一杯一杯です。

 まさかクリスちゃんがはい、あーんってやってくれるなんて思いもしなかったよ。やっぱこれ夢じゃない? 夢じゃない? ああもうリピートされたら自分嬉しさと恥ずかしさで昇天する自信ある。

 

「自分だってあたしにやったくせに……なんで恥ずかしがってんだよ」

 

 まさかクリスちゃんもやってくれるとは思わなかったし……。

 そもそも良かったの? これって間接キs

 

「いちいち言うなバカ! 大バカ! 宇宙一バカ!」

 

 言いかけた言葉は顔が真っ赤なクリスちゃんが手で口を塞いで遮られて、その上バカバカ連呼される。

 照れ隠しなんだよなあこれ。ああもうほんとに可愛い。おまけにクリスちゃんとの位置がすっごい近くなってて良い匂いがするし。

 

「っっっ!」

 

 こっちとの距離の近さに気づいたクリスちゃんははっとなって、慌てて飛びのいた。

 危ない危ない……もう少しで理性が吹き飛ぶ所だった。

 

「今も十分飛んでんじゃねぇのか……?」

 

 呆れたように突っ込むクリスちゃんに、いやいや、ちゃんと理性働いてるよと反論する。

 そもそもこういった危険行為の数々は、他の人にやろうものなら問答無用でぶっ飛ばされるに違いない。

 でもクリスちゃんの場合は律儀に行動や言葉で突っ込んでくれるから、こっちも安心してやれるんだよね。その辺も響は分かってるのかも。

 ああでも、本気で嫌がるようなことはしないつもり。こういうのも自分とクリスちゃん流のコミュニケーションと言うか、漫才みたいなものだし。

 もし、もしもだけど……クリスちゃんが本当は、こういう事されるのがいやだって言うならやめるけど……。

 

「なんで……なんでそこまであたしに構うんだよ?」

 

 心底分からない、というようなクリスちゃんの顔。

 それに、だって大好きだからと、迷い無く答えた。

 でもその好きは、響たちがクリスちゃんに向けている『好き』とは似ているようでちょっと違う。

 

「……どう違うんだ?」

 

 響たちの『好き』って、友達とか仲間とか、そんな意味での『好き』なんだと思う。……まあ、響はもしかしたらガチかもしれないけど……それはさておいて。

 でも自分のクリスちゃんへの『好き』は、1人の女の子として、異性としての『好き』だ。

 だから…えーっと、自分は雪音クリスちゃんのことを愛してますっ!

 

「………はっ!?」

 

 数秒間を開けたあと、一瞬にしてクリスちゃんの顔が真っ赤になり、沸騰したヤカンみたいに蒸気を発した。

 いや、それはこっちも同じなんだけどね。こんな真面目に話した上に好きって言ってしまってもうどうしよう! 言っちゃったよ! しかも愛してるとまで言ってしまったよ!

 可愛い、すっごい可愛い、可愛すぎてもうヤバすぎるんだけど、こっちもこっちで反動大きすぎて顔見れないよぉー! うあー! うぁーあーあー!!!!

 もう頭が熱い。風邪なのか告白したせいなのか、それとも両方なのか分からないけれども、タイプデッドヒートだよ! タイヤがバーストして制御できないレベルだよ! 今ならタイプフォーミュラやアクセルフォームも真っ青な速度でかっとビングできそうな気がする!

 ところでそういった凄く速いフォームとか、能力使って速くなる奴よりもすっごい速い奴がいるの知ってる?

 その人はただ本読んだだけで、地球1周を海の上だろうと何であろうと、約8秒で走って回ってくるとんでもない人なんだよ。(システム上は多少ステータス上げる事もできるけどね)

 しかもスタート地点まで正確に戻ってきて、右フック決めたら大爆発とかもうね、あなた本当に人間なのかと。しかもノーリスクとか、(連携前提だけど)連発可能とか。

 だぁっっっもう! なんかもうイミワカンナイ!

 

「――んで」

 

 ポツリ、と。

 顔を合わせられず俯いていたら、クリスちゃんが何かを呟く。

 

「なんで……あたしのこと、す……好きなんだよ」

 

 なんで?

 ……何がきっかけで、彼女の事が好きになったんだろう。

 彼女のどこを好きになったんだろう?

 う~ん…と考え込む自分の姿に、クリスちゃんは眉を潜めた。

 

「なんだよ! 好きだって言うなら……なにかあるだろ!?」

 

 いや、そうなんだけどね。そう答えてさらに考え込む。

 クリスちゃんを好きになった理由。クリスちゃんを今でも好きな理由……。

 考えて考えて考え抜いて、ふと閃いた。ああ、なんだ。こんな簡単なことだったのか。

 それは――。

 

「はぁ? あたしの『全部が好き』……って、なんだよそれ。大雑把だな」

 

 出てきた答えを聞いたクリスちゃんは目を丸くし、呆れたように呟いた。

 だって仕方が無いじゃないか。良い所も悪い所も、全部ひっくるめて好きなんだから。

 良き先輩として立ち振る舞おうと頑張ってる姿も、素直になれない性格も、強すぎる責任感も、案外映画の影響を受けやすい所も、テーブルマナーが悪くて食い散らかす所も……色々ありすぎて上げきれないや。

 あ…でも、これだけは絶対外せない。歌うことが大好きだ、と言うこと。

 歌っている時のクリスちゃんは本当に楽しそうで、こっちにも楽しい気持ちが伝わってくるようで。

 多分そんな色んなクリスちゃんを見ていたら好きになったんだと思う。

 

「……良くそんな恥ずかしい台詞を並べられるよな。聞いてるこっちも恥ずかしくなる」

 

 あはは……自分でもめっちゃ恥ずかしいんだけど、クリスちゃんには知ってもらいたいし。と笑って恥ずかしさをごまかそうとする。

 もうね、こんな事いつもなら恥ずかしすぎて言えないんだけどね。風邪で思考鈍ってるからつい言っちゃったよ。

 

「けど……ありがとな」

 

 い、いえどういたしまして……。お礼を言うクリスちゃんに何と答えればいいのか分からず、なんかズレた返しをした気がしなくもない。

 ただ、あのー……こうして勢いで告白したわけなんで、なんと言うかその……催促するようで申し訳ないんですが、お答えをいただけないでしょうか?

 

「あたしだって……お前の事は嫌いじゃない。好きって言ってくれて、正直に言えば嬉しかった……」

 

 言って、まだ少し何か言いたげなクリスちゃんに頷いて、彼女が続きを言うのを待った。

 

「でもさ……あたしなんかで良いのか? あたしは色んなものを壊して傷つけてきた。今こうしているだけでもこんなに幸せで、夢なんじゃないかって思ってるのに、これ以上幸せになっても良いのか……?」

 

 そう吐露するクリスちゃんの目にはうっすら涙が滲んでいた。

 自分が今日まで歩いてきた道と、クリスちゃんが今日まで歩いてきた道は違う。言ってしまえば光と影みたいな物。

 ……けど今は違う。同じ光が差す道を歩けてるじゃないか。

 涙を堪えているクリスちゃんの手に、そっと自分の手を重ねる。ピクリとクリスちゃんは反応したけど、拒みはしなかった。

 別に遠慮する必要は無いと思うんだ。少なくとも自分はクリスちゃんに幸せになってほしい。そして出来るなら自分がそうしたい。多分今クリスちゃんが感じているのは、ごく普通の幸せなんだよ。

 

「ごく普通の……幸せ?」

 

 聞き返したクリスちゃんに、うんと頷く。

 普通に学校に行って友達と話したり、美味しいものを食べるとか……色んなことをして楽しいとか、面白いを感じるのはどこにでもあるありふれた事だから、当たり前すぎてみんな忘れているだけなんだ。

 ありふれた事も大事だと思うけど、クリスちゃんはもっと幸せになってもいいと思う。だって今まで辛い事を経験してきたんだから、その分もっと幸せにならないとダメだ。

 それをもっと体験して欲しいし、自分も傍でそれを感じたい。だから――。

 

 もっともっと、自分に君を幸せにさせてください。必ずしてみせます。

 

 面と向かって言う2度目の告白。1度目のノリで言ったような事ではなく、一言一言に気持ちを込めてクリスに伝わるように言葉を紡いだ。

 もうこれ、告白どころかプロポーズだよね。しかも風邪引いてるのに。ムードも何もないなぁ……んん?

 

「……………。お前、ほんっとにバカ。そんな恥ずかしい台詞平然と言えるなんて」

 

 あれ……なんだろう。なんか胸の内側が変な感じが……。

 

「でも……ありがとな。そんな風に言ってもらえて、本当に嬉しいんだ」

 

 うっ……このこみ上げてくるのはまさか……! や、ヤヴァイ……!

 

「あのさ、あたし――っておい、どうしたんだよ。急に口を押さえて……顔も青いし……は? なに……気持ち悪い――吐きそうだぁっ!?」

 

 い、いぇす……どうにか吐き気を堪えながらクリスちゃんに説明すると、彼女は素っ頓狂な声を上げた。

 あと直前まで何か言っていた気がするんですが、ごめんなさい。正直それどころじゃないので頭に入ってこなかったです……!

 

「こっ……! せっかくあたしが大事な事を言おうとしてるって時にお前なぁ! ま、待て吐くな! 絶対吐くなよ!? 今風呂桶かなんか持ってくるから絶対耐えろ! いいな!?」

 

 が…がんばりマス……。喉の奥辺りまでこみ上げてきたやばい感じのものを何とか堪えている間に、クリスちゃんはバタバタ慌しく洗面所に向かっていく。

 なんで真剣に決めたこのタイミングでぇ……っ。いや、考えてみればこうなる原因多々ありますけど。はしゃぎすぎたり頭デッドヒートしたり。

 

「ほら! 持って来たぞ桶!」

 

 慌てて向かった時と同じく、慌てて戻ってきたクリスちゃんが風呂場に置いてあった風呂桶を渡してくる。

 

「なに? 『まことに申し訳ないんですが、今からシャングリラシャワーするので出来れば見ないでください』……? 誰が好き好んで○ロ見るんだよ! 言われなくても見るかバカッ!」

 

 真っ赤になって怒ったクリスちゃんは、そのまま洗面所に駆け込んだ。

 よし……流石にもう、これ以上は限か――うっ!!!

 

 

 

 

 

~大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください~

 

 

 

 

 

 あぁ……地獄だった。なんかもう胃の中を空っぽにしたような、そんな感じ。

 

「……………」

 

 そして、むっすーとむくれて、頬杖突いてこっちを半眼で睨むクリスちゃんが怖いです、はい。

 えっと……おかげで助かりました。

 

「それほどでも」

 

 あの……何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか?

 怒っているクリスちゃんが怖くて、つい恐る恐る訊ねてしまう。

 

「知るかバカ。アホ。オタンコナス」

 

 な…なんだか物凄いご機嫌斜めでいらっしゃる……。

 聞きたいとは思うんだけど、正直今はそこまでの体力は残ってない。シャングリラシャワー()で根こそぎ持っていかれた。

 あ゛ぁ゛~……冷たいタオルが心地いい……これだけはクリスちゃんがやってくれたんだよ。

 そんな時、ピピピッと脇に挿した体温計がなって計測を終えた事を知らせてくれた。

 朦朧としながら取り出そうとしたけど、その前にクリスちゃんが取って表示された結果に眉を潜める。

 

「40.2度……上がってるな」

 

 デスね……原因なんて考えるまでも無く、クリスちゃんも見当はついていたから何も言わない。

 はぁ…と溜め息をついて、クリスちゃんは体温計をケースに仕舞い、薬箱に戻すとバッグを手に立ち上がった。

 

「帰る。あたしがこれ以上いると、お前まだバカ騒ぎしそうだからな。土産の残りは冷蔵庫に入れておいてやる」

 

 プリンの入った箱を持って、台所に向かうクリスちゃんへ何から何まで申し訳ない……と弱々しくお礼を言っておいた。

 こんな自分に呆れ果てたのか、クリスちゃんは何も言ってこない。

 ああもう、これは完全に嫌われたかなぁ……みっともない所見せたからなぁ……と凹みに凹みまくってると、台所からクリスちゃんの声が掛かる。

 

「なぁ…お前って自分で料理とかするのか?」

 

 唐突な質問に一瞬えっと戸惑って、まあ一応はと答えた。

 ごらんの通り1人暮らしだし、あまり手の込んだものは作らないがそれなりに料理はする。ごくたまーに、ちょっと頑張って手の込んだものを作るときもあるが。

 

「ふーん……そっか」

 

 なんでそんな事を聞くんだろう? 気にはなるがなんだか聞きづらくて、投げやり気味に返すクリスちゃんにうん、まあ…と頷いておいた。

 

「じゃ、あたし帰るわ。邪魔したな」

 

 そう言ってそのまま玄関に行った気配がして、靴を履く音がしたけどなぜか出ていく気配が無い。

 どうかした? と聞いてみるが、何の返答もない。

 

「あたしも――――きだから」

 

 何か言ったような気がして、え? と聞き返す。

 けれどクリスちゃんは何も答えず、そのままドアを開けると出て行ってしまった。

 ご丁寧に外で鍵まで掛けて、コツコツと厚底ブーツの靴音が遠ざかっていく。

 …………最後に何を言ったんだろう、クリスちゃん。

 考えても今の状態では答えなんてまったく浮かんでこなくて、とりあえず寝て体力を回復しようと目を閉じるのだった。




てなわけでお見舞いシリーズ3人目はクリスちゃんこと雪音クリスちゃんでしたー。

ああもうクリスちゃん可愛い。可愛すぎて辛い。抱きしめたいなぁクリスちゃん!!!!(by我らがグラハム・エーカー上級大尉風

ちなみにここ最近はツイッターでクリスちゃんクリスちゃん連呼していて、落ち着いて振り返ってみるとどん引きするレベル……だけどクリスちゃん大好きなんだもん、仕方ないよね。

ってことで、好き過ぎるあまり大暴走しまくりでした。主人公(って言うか主に自分がですが)。

おまけに今回、色々ネタ突っ込んでますねぇ……ちなみに劇中で触れた約8秒で地球一週をひとっ走りしてくる奴、最終幻想8作目のキャラです。あの作品の最終技はもう、色々おかしい。でも面白い。

まあ、多く語っても仕方ないのでこのくらいで終わっておきましょう!

次回お見舞い編の最後を飾るのは、もちろんあの人ですよ。

あ、司令とかOGAWAさんとか、真実の人とかましてやマムやオートスコアラーとかじゃないんでね! 変に深読みしないでね! むしろ誰得だよマムやオートスコアラーって!


なお読んでブラックコーヒーが必要になった方はさっさと自販機なりコンビニなりスーパーへ行きましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。