風邪を引いたらシンフォギア装者が看病してくれた(旧題:風邪を引いたらきりちゃんがデスデス言いながら看病してくれた)   作:リベリオン

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締めは締めてくれる人。


終・風邪を引いたらたやマがお見舞いに来てくれた

 あたし絶対、柄にも無いことやってんよなぁ……。

 オーブンの前に座り込みながら、今更ながらに溜め息をついた。

 背後の作業台にはここまでたどり着くために犠牲になった残骸の数々。何しろ初めてだから何度も失敗した。

 小日向あたりに相談すればもうちょっとマシになったかもだが、そうなると騒々しいバカもおまけについてきてそっから芋蔓式で知れて行きそうだから手は借りられなかった。

 で、こっそりレシピ本を購入して材料をスーパーで買い揃え、案の定悪戦苦闘しまくったわけだが。

 なんにしてもこれでようやく終わりだ。後は出来たものを適当に包んで……。

 ……どうやって渡すんだ? これ。

 

「……………」

 

 作ることばかりに気を取られすぎてて、肝心の渡す方法を何にも考えちゃいなかった。

 はぁ? 『普通に渡せばいいだろ』って? できりゃ苦労しねぇっての。

 こちとら告白どころかプロポーズみたいな言葉を言われた後で、まともに顔も合わせられないんだよ。

 ……まあその直後、あのバカが無理しすぎた結果○ロってうやむやになったんだけどな。あたしの気持ちも。

 あたしも……す――っっっ!!!

 

「~~~~~っ!!」

 

 それを言葉にするだけでも頭が沸騰しそうなほど熱くなって、激しく頭を振り乱して熱を吹っ飛ばそうと試みた。

 これも全部あのバカのせいだ! あのバカに当てられたあたしも大バカだ!

 ほんっとに有り得ねえ! 有り得ねえったら有り得ねえ!

 そんな風に悶々としていたとき、オーブンがピーピー鳴って焼き上がりを報せ、ふぐっとか唸って息を詰まらせた。

 オーブンを開けて、恐る恐る中を取り出してみる。……ちょっと焦げてるのもあるな。

 試しに1つとって味見……アチチッ! アチッ!

 って焼きたてだから当たり前だよな……なんて思いながら1つを摘んで食べてみる。……なんか市販品より柔らかいな。焼きたてだからか?

 けど味は大丈夫っぽいな……ちょっと焦げた奴は避けて、見た目のいい奴だけ選別してと……。こっちのちょいと失敗した奴はあたしが食えばいいか。

 ただ問題は――どうやって渡せばいいかってわけで。

 さっきも言ったとおり当分顔もまともに見れそうにないから、必然誰かに頼むしかない。なら誰に頼むか。

 先輩――ダメだ仕事だ。

 バカ――これは論外。小日向に頼んでもこれが付いてくるから却下。

 後輩たち――月読はともかく暁が不安だ。

 おっさん――なんでだよ。

 となると1人しか残ってない。まあ口は堅いし信頼も出来る。大丈夫そうだ。

 さっそく携帯を取り出して、電話帳リストから目的の人物の番号をタップ。そういやあたしから電話するのは初めてだっけか。

 何回かのコールがしてから、彼女が電話に出てくれて「もしもし?」と声がする。

 

「あ、マリアか? 悪いけど頼みがあるんだ……」

《珍しいわね。あなたが私に頼みなんて》

「いやちょっと込み入った事情があってだな……」

 

 頼み事をする以上あいつとの間に起きた事を話すのは避けられないんだが、マリアなら周りに言いふらすような口が軽い女じゃないから信用できる。

 ただやっぱり、ちょっと恥ずかしい。これでもし周りに知られた日にはあたしは恥ずかしさで首を吊りそうな勢いだ。物の例えだから本気にするなよ。

 

 

 ようこそ我がベルベットルームへ……。

 なんで嘘です。自分です。いい加減名前出てこないのが若干不便だとか何とかって言われて、ネッシーならぬヌッシーで呼んでくれと言われました。未確認生物か何かですか自分は? 流石に嫌なんで自分で良いです。

 恒例の前回の出来事なんですが、簡単にするため3つに纏めてみました。

 

 1つ、愛しのクリスちゃんがお見舞いに来て脳細胞がトップギア。

 

 2つ、勢い余って告白した上にプロポーズ。

 

 3つ、無理が祟ってシャングリラシャワーした結果フラグバッキバキ。

 

 ……自分で纏めていて悲しくなってきたよ。人生お先真っ暗だ。これが真の絶望なのか……。

 

 ピンポーン。

 

 クリスちゃんに嫌われたよなぁ、間違いなく。もう顔も合わせてくれないかも。これからは何を糧に生きていけばいいんだ……。

 

 ガチャガチャ…カチャ。

 

 いっその事エルフナインに錬金術学んで、想い出を燃やしてしまおうか……。

 ああでも、やっぱりクリスちゃんとの想い出失いたくないぃぃ!

 

「お邪魔するわよ」

 

 どうしよう……自分はどうすればいいんデスかぁっ。

 そんな風に絶望の底に沈んでいた時、シャッとカーテンが開く音と共に日差しが差し込んできて、部屋を照らし出した。

 誰デスか人が絶望に沈んでいる時に……などと心の中で突っ込みながら勝手に上がってきた相手に顔を向ける。

 

「なんだ、起きていたの。けど随分酷い顔をしているみたいね」

 

 反応したこっちを、呆れと同情を込めた目で見下ろすその人。

 世間一般では翼さんに並ぶ歌姫などと呼ばれているが、良く知る自分たちとっては歌姫っていうよりオカン。

 マリア・カデンツァヴナ・イヴさん。どうしてここにいらっしゃるんですか。

 

「どうしてとはつれないわね。あなたが風邪で寝込んでいるって聞いたからお見舞いに来たのよ。私は今日オフだったから……その様子だと、風邪以外のことで重傷みたいだけど」

 

 見ての通りですよー、と力なくマリアさんに答える。

 風邪もさらに悪化、クリスちゃんへの告白大失敗のダブルコンボで身体も心もボロボロです。なのでほっといて下さい。

 

「クリスに告白したんですって?」

 

 ……え。なんで知ってるんですかそのこと。

 

「本人から聞いたのよ。あなたに告白されたけど色々あってうやむやになったって」

 

 あーはい、デッスデーッス。それを聞いてさらにSAN値が減ってしまい、もう何もかもどうでも良くなってきた。いーや、風邪治ったらエルフナインに錬金術教えてもらおう。それで真理の扉みたいなの開いてみよう。きっとこの辺の記憶がくべられそうだから。

 そんな自分の様子を見て、マリアさんは大きく溜め息交じりに肩を落とす。呆れるなら呆れてくださいよ。自分ですら呆れてるんで。

 

「それで不貞寝と言うわけね。気持ちは……分からないでもないけど」

 

 気休めな同情は要らんのですよ。そう言ってぷいっとそっぽを向く。

 けどマリアさんは怒ったりなんてせず、わざわざ身を乗り出して反対を向いた自分の前に何かをおいた。

 水色のフィルムを赤いリボンで口を縛った、両手に収まるくらいのサイズの包み。いかにもプレゼント用と言った感じで、包み方や縛り方がちょっと不恰好っぽいのを察するに手作りの類だろうか。

 

「クリスからのお見舞いよ」

 

 その一言に、一切の力が通っていなかった全身に瞬時に力が通って跳ね起きる。

 ク、クリスちゃんから? クリスちゃんがこれを自分に? ほんとっすかそれ!?

 

「ええ。私がここに来たのも、あなたにそれを渡して欲しいって頼まれたからだもの。開けてみたら?」

 

 クスリと、こっちの変わり様に微笑するマリアさんに突っ込む余裕なんて無くて、がくぶるしながら頷いてリボンを解く。

 中に入っていたのはクッキーだった。形はシンプルな丸い奴で、見た目からしてプレーンクッキーっぽい。

 感動に打ち震えていた自分だったけど、ちょっと待って欲しい。このお見舞い品やマリアさんの言葉から察するに、もしかするともしかしなくてもクリスちゃんの手作りクッキーじゃないだろうか。

 クリスちゃん……料理してたっけ。見た目や匂いからして大丈夫みたいだけど。

 でも……っ! クリスちゃんの手作りクッキー! 食って死ねるなら死んでもいい!

 ぱくっ……。

 

「どう――ってなにぃ!?」

 

 沈黙したままの自分に感想を聞こうしたマリアさんから驚きの声。

 うぐっ…えっぐ、えっぐ……美味しい、お゛い゛し゛い゛よ゛お゛ぉ゛ぉ゛!

 感動と感激の余り涙が止まりません! 鼻水も止まりません!

 

「な…泣くか食べるかどっちかにしたらどうなの……?」

 

 若干引き気味のマリアさんにそれが出来たら苦労しないんだよぉっ! とガラガラ声で叫んだ。

 味は普通に美味しくて、サクサクの食感に微かにはちみつの甘さを感じる。何よりクリスちゃん手作りクッキーと言うのがもう、嬉しくて嬉しくて……うぉぉぉぉん!

 

「ちょっとあなたまだ熱があるんでしょう!? そんな事してるとまたぶり返すわよ!」

 

 それでも……それでもこのあふれ出す感情は塞き止められないんですよ! こんな40度程度の熱なんて涙と共に流れてしまえ!

 

「程度ってレベルじゃないわよそれ! 大人しく寝てなさいっ!」

 

 いやだ! いくらオカンの命令でもそれは聞けないっ!

 

「誰がオカンよっ!」

 

 ズビシッ!

 ひでぶっ!

 

 

 ずびび~っ。散々目や鼻から色んなものを流しすぎたせいで、呆れたマリアさんがタオル持ってきてくれました。

 

「落ち着いた?」

 

 はい。お手数おかけしました。疲れたような表情を浮かべるマリアさんに頭を下げながらお礼を言う。

 散々泣いたおかげでなんかすっきり出来た。ちなみに自分が泣いている間、マリアさんが持って来たお見舞いの花(こっちがマリアさんのお見舞い品だった)を花瓶に活けてくれたり、散らかった部屋を片付けてくれたり、洗濯物とか干してくれたり……。

 もうマリアさんオカンすぎて誰かお嫁に貰ってあげてください。こんなに良い人なんだよ。

 

「……今、妙な事を考えてないでしょうね?」

 

 ジロッ、とジト目で睨むマリアさん。いえそんな事ないです。マリアさん良い人だなって思ってただけですよ。

 

「そう……まあそう言うことにしておくわ。あなたも元に戻ったみたいだし」

 

 いや、本当に重ね重ね申し訳ないです。なんか今日はマリアさんに迷惑かけまくっちゃったなぁ。

 

「確かにそうね。まあ、F.I.S時代に比べたら軽いわよ。あの頃は節約したり大変だったから……」

 

 そう言って遠い目をするマリアさん。けどフロンティア事変からまだ1年も経ってないんだけどなぁ。

 けどあれ以前からマリアさんは苦労していたそうで、せっかくケータリングで仲間たちに料理を持ち帰っても偏食家の大人たちが好き嫌いしたり、色々と苦労が絶えなかったらしい。

 ……ああ、だからこんなオカンな性格になるのか。納得だわ。

 そう言えばクリスちゃんから告白された事を聞いた……って言ってたけど、他に何か言ってなかったのだろうか。

 

「特に何も聞いてなかったわよ」

 

 ……そう、そうですか。

 はぁ~……やっぱり嫌われたかもなあ。嫌われても仕方ないよなぁ……。

 

「あのねぇ……」

 

 またもブルーになりかけていた自分を、やれやれと頭を抑えて溜め息をつくマリアさん。

 

「少し被害妄想が過ぎるんじゃないの?」

 

 被害妄想? どこがですか。完全に嫌われる要素しかないですよ。

 

「少しは考えてみなさい、もし本当に嫌いになったらわざわざ人に頼んでまでそんな差し入れを渡そうとしないじゃない」

 

 ……………。

 言われてみれば確かに。しかも時間をかけて手作りまでしてくれて。

 でででっ、でもあんな盛大に失敗したし!

 

「それがどうしたのよ。少なくともあなたの気持ちはあの子へきちんと伝わったでしょう?」

 

 うっ……だと、思いたいけど。けどなんだよなぁ。

 

「私はあの子じゃないし、恋愛も…………その、まだ経験したことだってないけど、少なくともあなたの失敗は気にしないわ。むしろ無理してまで言ってくれるって事はそれほどまでに相手のことを想っていると言うことだし、素直に嬉しいと思うから」

 

 そう言って、まるで母親のような顔をするマリアさん。ほんとにオカンだこの人。

 けどそれ以上に、マリアさん恋した事ないんですか。それが特に気になります。

 

「しっ…仕方ないじゃない! 施設にいたときは回りは女の子ばかりだし、男は年上の研究員くらいだったのよ!? 外に出られてもアイドルをしたり、逃げ回ったりして恋愛する暇なんて……うぅぅ」

 

 あ。なんか変なスイッチ入ったっぽい。

 

「事件が収束した後は監視したり監視されたりの毎日……プライバシーはあっても自由なんてほとんど無かったのよ! 周りはガタイのいい年上の男だらけ! おまけにことある毎に厭味を言ってきて好意を抱けると思う!? 私にも出会いが欲しいわよお!」

 

 酒も入ってないのに泣き上戸スイッチが入って泣きながら愚痴を漏らすマリアさんに圧倒され、え…はい、お気の毒ですね。と相槌を打つ事しかできない。

 が、これがいけなかった。

 

「みんなの為にー…って頑張れば、なんか「オカン」って呼ばれるようになって……知ってるのよ? あなたも私を「オカン」って呼んでること。前に翼たちと海に行った時に親切心でサングラスを貸してあげたら、『母親みたいな顔をしているぞ』って……私まだ21なんだけどなぁ。確かに装者の中では最年長だけど、まだ20代入ったばかりなんだけどなぁ……」

 

 ふふふっと暗い笑み。

 なんてこった……マリアさんがダークサイドに落ちてしまった! 彼女にコイバナは地雷だとでも言うのか!?

 

「良いのよ、仕事一筋でも……この身は恋など許されないって言い聞かせてるから……。でも周りが同性(!?)異性問わずイチャイチャイチャイチャしてるのを見ると……あー、私って恋も経験してないのに何やってるのかなーって……そう思うのよねぇ。

 ああでも、断っておくけど私はノーマルよ? 変な趣味趣向は持ってないから勘違いしないでね。念のために」

 

 怖い! 今のマリアさんすっごい怖いよ! リア充たちへの羨望と嫉妬で不吉なオーラ漂ってる!

 考えてみれば彼女もただの人で、1人には有り余る色々なものを背負わされてきてるのにそれを捨てる事もできず溜め込み続ければ……こんな風に爆発してもおかしくないよなぁ。

 

「だけど近くに歳の近い異性なんて……異性なんて……」

 

 こっちを見ながら言っている内にどんどん声が小さくなり、じーっと無言で見つめるマリアさん。

 な……なんでしょうか? 顔に何かついてますか?

 

「……年下、か」(ボソッ

 

 はい?

 

「顔は……まあ普通。でも私たちの事情を知っているから隠し事なんてする必要も無い。むしろ将来有望で今から私色に染め上げてしまえば……?」

 

 ブツブツ不穏な事を口ずさむマリアさんに、猛烈に嫌な予感が警鐘を鳴らす。

 まるで豹が獲物に狙いを定めたような、そんな目にあっと全て察した。

 

 食われる。性的な意味で。

 

 これが…これが喪女に陥りかけている者の執念とでも言うのか……!? 怖いよマリアさん! ただのやさしいマリアさんはいずこへ行ったんです!?

 にぃっと口角を三日月みたいに釣り上げたマリアさんがベッドに上がってきて、ひぃっと小さく悲鳴を上げながら離れようと試みる。けど狭いベッドの上に逃げ場なんてなく、すぐに掴まれて押し倒された。

 

「ふふふ……今ならまだ間に合うわよね……」

 

 やめてぇっ! こんな形で初めて失いたくないですよ自分! って言うかマリアさんほんとにキャラ変わりすぎィっ!

 自分があなたに何をやったと……色々やりましたねすみません! だからってこんな仕打ちはないよぉっ!

 涙目でがくぶるしている自分に、マリアさんがはぁはぁ荒く息をしながら迫ってくるんですけど! もう形振り構ってられないんですか!?

 ああ、さらばクリスちゃん。さらばDT。こんな形で卒業したくなかった……マリアさん嫌いじゃないけどそれとこれとは別なんだよぉ。

 

「……………」

 

 ぎゅぅっと目を閉じて事が過ぎるのを待ち続けていると、いつまで経ってもそれ以上何もなくてあれっとなる。

 恐る恐る目を開けると……目の前にはマリアさんの顔があった。

 改めて彼女の顔を見ると、普段凛々しいのにちょっとした所で可愛い所を見せるよな。マリアさんのことは嫌いじゃないというか好きだけど、当然クリスちゃんに抱いている好きとかではないから。

 

「……けどダメよね、こんなのって」

 

 静かに、どこか寂しさを含んだ呟きと共にマリアさんが離れる。

 そのままベッドを降りると垂れた髪を後ろに梳いて、何事も無かったかのように元のマリアさんに戻った。

 

「ごめんなさい、どうかしていたわ」

 

 こっちに背を向けたまま謝るマリアさんにはあ…と状況が掴めず気の抜けた返事を返す。

 なんで気が変わったんだろう? さっきまであんなに襲う気になっていたのに。

 

「確かにそうだけど……もしここであなたと強引にしてしまったら、あの子が怒り狂ってここら一帯を更地に変えかねないじゃない」

 

 それに寝取りなんて私の趣味じゃないから。と冗談交じりに付け加えるマリアさん。

 ……確かにクリスちゃんならやりかねないなぁ。最大火力においてはイチイバルが圧倒的にアドバンテージあるし。くわばらくわばら……。

 

「そう言うことよ。私もそれはゴメンだし……やっぱりクリスがかわいそうだから」

 

 良かった……なんにしても踏み止まってくれて本当に良かった。まだ卒業しなくて済んだ事にほっと一安心。いや、未遂といえば未遂なんだけど、やっぱその……ねえ? 初めては好きな人とって何言わせるのもー!

 

「はいはい、ごちそうさま」

 

 肩を竦めながら呆れて返すマリアさんはすっかりいつものマリアさんに戻ったらしい。あー良かったぁ……けど今後マリアさんにコイバナは禁句だな。

 けどマリアさんって結構溜め込んでるんだなぁ不満。元々気苦労耐えない人だけど。

 

「え?『自分でよければ愚痴くらいならいくらでも付き合う』……?」

 

 ええ、まあ。マリアさんにそう言うと意外そうに驚いて振り向いた。

 別に何が出来るってわけでもないけど、話を聞くくらいなら自分にだって出来るし。周りに話しづらいことだって言うなら、幸い自分は1人暮らしだから時間さえ都合が合えばいくらでも付き合える。

 何より何もしないで溜め込むのが1番良くないからね。ガス抜きくらいなら付き合いますよ。

 

「……ふふっ」

 

 あれ、何ですかマリアさん。自分変なこと言いました?

 

「ご、ごめんなさい……別に変だとかそういうことじゃなかったのよ」

 

 何がそんなおかしいのか、クスクスと笑いながらマリアさんは目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら謝る。

 じゃあなんで笑ったんですか。こっちはマリアさんに気を遣って言ったのに。

 

「ええ、そうよね。そんな風に言ってくれたのが嬉しくてつい、笑えて来ちゃったのよ……。けど良いの? そんなこと言ったらクリスが妬くかもしれないわよ?」

 

 えー…それはそれで嫌だけど、マリアさんの心の安寧を保たなきゃ(色んな意味で)やばそうですし。

 それに、別にマリアさんに特別な感情を抱いていると言うわけじゃないですし……いや、マリアさんに魅力が無いと言ってるわけじゃないですよ? ただ自分にはクリスちゃんが居てですね……。

 

「はいはい分かってるわよ、あなたのあの子への気持ちはうんざりするくらい知ってるわ」

 

 ですよねー。みんなの前でも散々アピールしていたし。

 ……でも大丈夫かなぁ。どうしても不安なんだよなぁ。「やっぱない。お前なんて嫌いだ」なんて言われた日にはどうしたら……どうすればいいんだっ!

 

「ああっ、もうっ! いつまでもくよくよ悩んだりしないの!」

 

 煮え切らない自分に苛立ったマリアさんが、バッシーン! と。自分の背中を平手で思いっきり引っ叩いてきた。いったい! それかなり痛い! マリアさん本気で叩いてきたでしょ!

 

「いつまでもうじうじしているから悪いのよ。仮に玉砕しても骨は拾ってあげるから、男なら真正面からぶつかりなさい!」

 

 励ましてくれるのは嬉しいですけど、もう少し他に方法なかったんですか……いえ、これでいいです。アガートラームまで使ってもらわなくても結構ですから。

 真正面から、かあ……だけどマリアさんの言う通りかもしれない。あそこまで言った手前、後がどんな結末でも玉砕するしかないか。

 

「それでいいのよ。そのためにもまず、そんな風邪さっさと治してしまいなさい」

 

 うん、マリアさんの言うとおりですよね。いい加減治さなきゃ授業にもついていけなくなるし。

 ちょっとは前向きになった自分を見て、マリアさんは微笑を浮かべる。またあの母親みたいな……いややめよう。

 なんかマリアさんには励ましてもらってばっかりで、感謝の言葉も無いんだよなぁ。

 

「そんな事ないわよ。私だってあなたに励ましてもらっているから。思わず勘違いしてしまいそうな程度には、ね」

 

 ……へ? どういう意味ですそれは。

 意味深な呟きに思わず聞き返すが、マリアさんは微笑んだまま何も言わない。

 そして彼女の荷物を持つと立ち上がって、そのまま玄関まで歩いていった。

 

「そろそろ帰るわ。お大事に」

 

 そう言い残して、パタンとドアが閉じられる音を残してマリアさんは帰ってしまった。

 あの言葉は冗談なのか本気だったのか……どっちなのか分からない。

 ただインパクトだけはかなりあって、しばらくの間玄関の方角を見つめたまま呆けていた。




と言う事で最後にお見舞いに来てくれたのはただのやさしいマリア、略してたやマさんでした。

と言いつつクリスちゃんちょっと出て来てるけど、前回があれだから出さないわけには行かないよね!

最初からオカンな彼女が来てくれれば全部解決だったんじゃないかと思った人、それは言わない約束だ。

あとマムやオートスコアラーやウェル博士とかに看病されたいと思った人はセルフサービスでお願いします。ハードル高いんだよ! そもそもこれシンフォギア装者がお見舞いに来てくれる話なのに関係ないじゃん!?




ってーことで、お見舞いシリーズそのものはこれにてひと段落です。え? まだオチが付いてないしクリスちゃんとはどうなるんだよだって? その辺は……まあ追々。

少なくとも「お見舞い」されることは終了ですよ。だって風邪完治したし! そりゃこんな冷え込んできたのに2箇所ある窓の内の1箇所全開で毎晩寝てれば風邪引くわ!(白目

こんな思いつきで適当に書いていた話をここまで読んでくださった方、そして評価を浸けてくれた方、お気に入りに登録してくれた方々に、改めて感謝を。

一昨日にはデイリーランキング1位と2位もなったようで、ここまで人気が爆発するとは予想外でした。

結構プレッシャーや過大な期待には弱い性分なので、取り扱いには丁重に扱ってくれると助かります(笑)

ま、長くて面倒な話はこれぐらいにして、ありがとうございましたっ!
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