10年前に書いていた作品の供養

1 / 1
短編集

ある日、ある汽車でのお話。

 

混んでいる車内で老婦人に席を譲ってあげた青年がいました。

 

「まあ、ありがとう!あなたはとても紳士なのね」

 

「それは違いますよおばあさん。私は紳士などではございません」

 

青年は丁寧な口調で続けます

 

「私は単なる野蛮人です。常に紳士のフリをして生きているのです」

 

おばあさんは不思議そうに言います

 

「あら、ではなぜ紳士なフリをしているのかしら?」

 

青年は満面の笑みで答えます

 

「それは野蛮人と他人に知られたくないからですよ」

 

---------------------------------------------------------------------------------------------

 

世界がまだまだ暗い雰囲気に満ちていた時のお話

 

塹壕内では重苦しい空気が漂っています。

 

なんといっても冬になったこの時期に隣のB国が宣戦布告をしてきたからであり、

 

自分達の祖国、A国を守るために兵士達は国境付近の塹壕内で今か今かと待ち構えているからです。

 

しかし、この塹壕には畑や家畜を育てる施設があるため、食料には困ることはありません。

 

兵士達はA国を守るために塹壕内で今か今かと待ち構えています。

 

ある時、一人の兵士が言いました

 

「もしかしたら戦争は既に終わっており自分達はもういらないのではないか?」

 

将校が答えます

 

「それを伝えるのはA国だ。私たちの役目はここでB国の兵士を待ち構えることのみである」

 

兵士達はA国を守るために今か今かと待ち構えます。冬は過ぎ、花が咲き、太陽が高くなり、葉っぱが色

 

付き、雪が降り、そしてまた花が咲くことをおおよそ8年ほどたったある日のA国の新聞記事

 

『奇跡の無血勝利!B国境界線に知らぬ間に急造されたC国との戦争は我々の完全なる勝利であった!』

 

『C国兵士の全てを我々は捕虜にし、xx日の午後処刑する!』

 

A国を守るために塹壕内に居た兵士は平和なA国で思います。

 

「あぁ塹壕というのはなんと平和な世界だったのか……」

 

----------------------------------------------------------------------------------------

ある子どものお話

 

世界中の子どもは思います。

 

どうして悪いことをしてはいけないのだろう?

 

それはきっと

 

お父さんやお母さんに怒られ

 

お父さんやお母さんに痛いことをされ

 

お父さんやお母さんが怖いからです。

 

世界中の大人は思います。

 

どうして子どもは人の言うことが聞けないのかしら?

 

それはきっと

 

怒るからであり

 

痛いことをするからであり

 

それをみた子どもの恐怖の逃げ口だからです。

 

--------------------------------------------------------------------------------------------

ある平和のお話

 

ある国Aでは他国に攻め入ることをしないことと中立であることとを約束しました。

 

それは過去に戦争で負けたことがあり、その過ちを二度と犯さないようにしようと考えたからです。

 

なのでAは軍隊を持たないことを決めました。

 

もう一方の国Bでも他国に攻め入ることをしないことと中立であることを約束しました。

 

Bは永遠にどこのグループにも属さない中立を保つと回りに告げたので、他国に攻め入る必要がないのです。

 

なのでBは強力な軍隊を持つことに決めました。

 

Aの住民は聞きます

 

「なぜ軍隊を持つんだい?君は中立なんだろう?」

 

Bの住民は聞き返します

 

「なぜ軍隊を持たないんだい?君は中立なんだろう?」

 

Aの住民は言い返します

 

「銃を持つと回りの国が襲ってくるからさ!だから軍隊は必要ないんだ。」

 

Aの住民はさらにいいます

 

「しかも僕の国にはとてもすごい法律があって平和を主張しているんだ!

国家も政治家達もこれを保障してくれている!だから戦争は起きっこないさ!」

 

Bの住民は言います

 

 

 

 

 

「なるほど、君の国はもう侵攻が始まっているんだね」

----------------------------------------------------------------------------------------------

ある研究所でのお話

 

今日もA博士は大忙しです。

 

毎日毎日研究をしていて休む暇などありません。

 

A博士はもう一人の自分を作る研究をもう10年間続けているのです。

 

この研究も終盤に近づいており、今が一番大変な時期です。

 

しかしA博士は不思議と辛い顔をしません。

 

それはこの事が自分の当たり前であり、常識であり、役割だからです。

 

それに彼には気づいた時からずっとそばにいる助手ロボットがいます。

 

それは一切喋りはしないし、手伝いも一切しない役立たずです。

 

しかしA博士は近くに動くものがいるということだけで十分なのです。

 

しかしA博士はふと思いました

 

「いったいなぜ私はもう一人の私を作っているのだろう?」

 

A博士は必死に考えました。研究の時間の合間もそのことにしか頭がいっていません。

 

そうしてもう一人のA博士が完成したその日に博士は叫びました

 

「そうか!私は私の頭脳を持ったもう一人を作ることによって『なぜ私をもう一人を作っているのか』という疑問を解明するためだったのか!」

 

しかしA博士は言い終わると同時に右隣にいた助手ロボットに首を絞められ殺されてしまいました。

 

今日もA博士は大忙しです。隣には一切手伝わない助手ロボットを携え、自分をつくり続けています。

---------------------------------------------------------------------------------------------

ある旅人のお話

 

「さあ今日はこの場所まで目指そう」

 

彼はこの曲がりくねった洞窟をひたすらに進んで行きます。

 

彼がこの旅をしている理由はよくわかっておりません。しかし、彼はこの洞窟を進まなくてはいけない使命を背負っているのです。

 

この旅人は最初とても硬い岩が20もある渓谷を乗り越えた後にひたすら道を進み、酸の池を乗り越えたのです。

 

旅人は今、この曲がりに曲がっている場を進んでいます。

 

しばらく進むと旅人は気づきました

 

「おや?熱くもないのに喉が渇いてしまった」

 

しかしこの道のりには水があるという話は一切ありません。

 

諦めて道を進んでいく旅人は時たま休憩をしながらも少しずつ少しずつと道を歩んでゆきます。

 

そうして2週間がたったある日

 

「お!光が見える!これでやっと外に出れるんだ!」

 

旅人は外に出ると同時に水に落ちやがて流されて行きました

 

 

 

 

 

「1週間ぶりのお通じが済んでよかったわ…」

 

----------------------------------------------------------------------------------------------


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。