攻殻機動隊 -ヘリオスの棺-   作:変わり種

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第37話

「やめてくれ!頼む、命だけはッ!」

 

鋭い銃声が響き、懸命に命乞いをしていた男の体は動かなくなった。銃を撃った男は無言でその亡骸から装備品を奪い、弾倉や手榴弾を背嚢に押し込む。彼の周りには、同じように殺された人間十数名ほどが大きな血溜まりをつくって倒れていた。銃で撃たれた者、爆死した者もいたが、一番多いのは刺殺された人間だった。

 

ある男は頸動脈を深々と抉られ、噴き出した血飛沫が生々しく廊下の壁に飛び散り、赤黒く滴っていた。また、手投げナイフが心臓に突き刺さったまま絶命している男もいる。彼はその男の死体からナイフを力強く抜き取ると、軽く血を拭き取ったのちに鞘に戻す。

 

必要なものを粗方奪い取った彼は、倒れた男たちの死体を軽く一瞥する。黒いボディアーマーに身を固め、高性能義体を装備したセキュリティ・フォースの制圧部隊。傭兵や退役軍人から構成され、警察のSATとも共同訓練しているという話だったが、所詮はアマチュアでしかなかった。

 

誰も本物の死線を潜り抜けてきたことなどないのだ。退役軍人といっても実戦経験があるかないかで天と地ほどの差がある。民間軍事会社にいたような傭兵の方が、よほど骨のある奴だった。そうした企業は、極度に治安の悪い地域において軍が犠牲を恐れるあまり、委託を受けて軍の代わりに任務に就くことが多いからだ。

 

そのような中では、軍のように仲間意識が高いわけでもなく、すべては自己責任のもとで行動しなければならない。武装勢力に捕らえられても味方が救出に来てくれるわけでもなく、また戦場に取り残されても、自ら無事に生き残る手段を考えて実行していかなくてはならないのだ。

 

この連中はそういう意味では、兵隊ごっこに興じているだけの集団であった。突然の奇襲に混乱し、全滅するなど、本物の戦場ではあってはならないのだ。強い者だけが生き残り、弱いものは死に絶えていく。この連中は不運にもそれを身をもって体験したのである。

 

赤蠍は冷たい笑みを浮かべると静かに通路を進み、階段を下りていった。自分を相手に裏切るとはいい度胸だ。途中で亡国の使者から抜け出して2号機の制御系に細工をし、テロリストを分断したのは事前の作戦通りだった。そして、この制圧部隊とともに職員やテロリストの連中を皆殺しにしたのも、あらかじめ下されていた命令に従った上での行動だったのだ。しかし、あろうことかこの制圧部隊の連中は用済みとばかりに、自分にも銃を向けてきたのである。

 

クライアントのシナリオとしては、ここで不安要因はすべて排除するつもりだったのだろう。だが、随分と見くびられたものである。こんな部隊で自分を消し去ろうとするとは。

裏切った相手には容赦しない。たとえそれがクライアントであろうとも。すべてを破壊し、その代償を払ってもらう。その相手が個人だろうと国家だろうと、恐怖を思い知らせてやるのだ。

 

インターフェースを開き、状況を表示させる。主給水ポンプは2台とも停止し、原子炉内は急速に過熱していった。炉内の監視情報は制御AI側で偽装してある。原子炉保護系にはまだ炉心の各種パラメータが安全範囲にあるように見えているので、自動スクラム停止することはないだろう。前世紀のプラントであれば独立した論理回路により保護系が駆動していたのでこうはいかなかったが、最新炉ではAI診断系が保護系の監視入力を補助しており、付け入る隙があった。

 

唯一、炉心冷却材流量低下とそれに伴う減速材密度低下による反応度フィードバックで、原子炉の出力が落ちてしまうのは防げなかったが、それも織り込み済みだった。給水系を無効化した以上、炉心冷却材流量は回復しない。非常冷却系まで封じれば、炉心損傷に至るのは時間の問題だった。そして、いずれはおびただしい量の放射線を解き放つことになる。

 

問題なのは、ここに来て現れた新たな勢力の存在だ。制御室内に紛れ込んだネズミを駆除するため、セキュリティ・フォースに指示して送り込ませた警備戦車を返り討ちにするということは、余程の手練れに他ならない。最も警戒すべきは、彼らであろう。

 

赤蠍は自分の電脳内に所内各所の監視カメラ映像を表示させる。セキュリティシステムは完全に掌握し、全てが自分の電脳に直結されているので、所内の出来事は全て把握できていた。表示させた映像には、青い思考戦車4機と数人の男たちの姿が映っている。その中のひとり、白い義眼を埋め込んだ大男の姿を見て、赤蠍は薄く笑った。

 

(レンジャーか)

 

彼はそう直感した。今度の相手は少々手強い相手だろう。あの連中は剣菱の演習場や本社など、計画の至る所で邪魔をしてきた公安当局の特殊部隊だ。ほかの3人もそれなりに腕は立つ人間と思われる上、彼らは思考戦車を4機も連れている。見た限り武装はチェーンガンとグレネードだが、そのうちの1機はグレネードでなくガトリング砲を装備していた。

 

彼らの向かう先はおそらく原子炉区画だ。制御室からの制御ができない以上、何としてでも炉の暴走を食い止めようとするはずだ。だが、みすみす邪魔される訳にはいかなかった。

 

セキュリティサーバーに介入した彼は、彼らを最優先目標としてマーキングした。動員可能な警備戦力で足止めを食わせ、可能であれば数を減らしたい。そして、原子炉区画に入り込んだところで叩くのだ。

 

久々に気分が昂ってきた。張り合いのある相手を求めていた自分にとっては、好敵手になる。特にあの義眼の大男とは、もう一度戦ってみたかったのだ。

 

彼は装備を整えると、足早に階段を下りていく。

 

その様子を密かに見つめる人影があったのを赤蠍は薄々気づいていた。だが、あえて手を出さなかった。わざわざ時間を割くほどの価値はないと、判断したからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒巻課長は考えあぐねていた。少佐と通信できたものの、伝えられたのは芳しくない内容だった。既に保安区画内の職員の多くが殺され、今のところ生き残っているのは少佐が押さえていた現制御室長の中野だけだという。

 

他の生存者も可能な限り見つけ出すよう指示したものの、おそらく生存は絶望的だろう。侵入路の爆破からは既に一時間が経とうとしている。その時間があれば、区画内の職員を掃討することは容易だと思われた。

 

(証人はひとりか…)

 

そうつぶやく彼。しかも同時に分かったのが、中野も実際にテロリストの犯行に加担していたということだった。おそらくこれは政務官たちですら予想外のことだろうが、より事態が悪化したのは言うまでもない。

 

一縷の望みは、彼らの捏造した証拠の綻びだろう。だが、向こうも中野が犯行にかかわったことを知れば、即座に辻褄を合わせにかかってくる。時間との勝負だった。偽装工作がなされる前にその証拠を見つけ出し、連中の犯行を暴き出さなければ勝ち目はない。かなり厳しい戦いだ。

 

《課長。四葉銀行に問い合わせたのですが、確かに彼の秘書名義で貸金庫が契約されていました。福岡本店です》

 

アズマからの報告が入る。そんな中で先ほど届いたのが、一通のメールだった。

 

差出人の欄にはヘリオスとあり、自分宛に直接送られてきていた。もちろん、念入りにセキュリティスキャンをかけたものの、ウイルスが仕込まれている様子はない。開いてみたところ、そこには銀行名と貸金庫の番号だけが書かれていたというわけだ。

 

自分のメールアドレスをどこから入手したのかすら見当もつかないが、驚くのは逆探知ができなかったことである。少佐並みとまではいかないが、余程スキルがなければ逆探知不能なメールを送ることなどできない。

 

それらの点から何かを感じ取った課長は、アズマに最優先で書かれていた貸金庫について調べるよう指示を出していたのだ。そして案の定、それは当たりだったのである。

 

《すぐに金庫を開けさせ、中身を確認しろ》

 

《あの、もう開けさせてしまいましたけど》

 

申し訳なさそうに彼はそう言った。新人ながら、良い働きをするものだ。課長は感心しながらも、すぐに内容物について訊き出す。

 

《入っていたのは、札束と携帯端末が4台。金はざっと400万くらいでしょうか。端末はどれも古い機種ばかりです。中古品でしょうかね》

 

《それは恐らく、非合法で入手した他人名義の端末だ。札束は通し番号を控えて照合しろ》

 

《全部ですか?》

 

《当たり前だ。画像認識を使えばすぐだろう。大至急だ》

 

やや戸惑う彼に構わずにそう言った彼は、電通を切った。まさに、棚からぼた餅といったところだ。あれほど証拠に行き詰まっていた篠原政務官と一連の隠蔽工作とを結ぶ線が、これでようやくはっきりと繋がったのである。拍子抜けするような事の成り行きに課長も半ば信じられないような思いだったが、一つ気になることがあった。

 

ヘリオスの正体である。この情報を伝えた彼は、いったい何者なのか。それだけが、彼を困惑させていた。殺された安藤開発部長が遺したメッセージや、加賀室長の記憶の入ったファイル。それらにも、ヘリオスは確実に関わっている。

 

だが、これほど事件と密接にかかわっているにも関わらず、肝心の正体だけが見えない。中野という線もあるが、一介の職員にここまでの電脳工作ができるとは思えなかった。加賀室長のファイルにしろ、逆探知不能なメールにしろ、高度な電脳スキルがなければ成し得ないことなのだ。

 

ある意味、このヘリオスと名乗る人間こそが篠原政務官よりも事件のカギを握る重要参考人であるかもしれない。荒巻課長は、そう考えていたのだった。

 

内務省を訪れていた彼は玄関を抜けると階段を下り、車のもとへと向かう。ここでも有用な情報は得られなかった。先ほどから複数の官庁を回っているものの、一向に政務官に繋がる手掛かりは得られていない。そんな中、広い駐車スペースを抜けて自分の車に乗り込んだ時、再び連絡が入った。

 

《紙幣の照合が完了しました。全ての一万円札の記番号が剣菱重工裏金事件で所在不明となっていた現金と一致。端末は暗号化されていて解読に時間がかかりますが、数件の通話記録が残っています。剣菱総務部の日下部長や先端技術開発部の安藤次長など、いずれも裏金や武器流出にかかわった人間でした》

 

《よし。ヤノを連れて合流しろ。篠原政務官を押さえる》

 

《了解》

 

そう指示した荒巻課長は、自らも車のエンジンを掛けるとアクセルを踏み込んで発進させた。連日の激務で疲労がたまっていたが、ここで自分だけ立ち止まっている訳にはいかない。

 

無数の街路灯が煌めく摩天楼の谷間を抜け、彼が目指すのはエネルギー省の合同庁舎だ。相変わらずの交通量の多さに気が滅入りそうだったが、何とか潜り抜けるとようやく建物が見えてくる。信号待ちの列の中から数ブロック先に見える官庁街。その奥に位置しているのが、エネルギー省だった。

 

35階建ての庁舎には、まだ多数の明かりが灯っていた。その頭上を1機のヘリがホバリングしていたが、ヘリポートに向けてゆっくりと降下しつつある。アズマとヤノが乗る9課の中型ヘリだろう。間もなく信号が青に変わり、課長は再びアクセルを踏み込む。

 

結果的に出発からは20分ほど掛かってしまったが、交通量の割には早く到着できた。機動隊員が固めるゲートを再び抜けた彼は、来客用駐車スペースに頭から車を停めるとすぐに降りる。

 

さすがに警備員も先ほど訪れたばかりの人間を詳しく再検査することはなく、不愛想に「お疲れ様です」とだけ言うと許可証を手渡した。エレベーターのボタンを押しながら、彼はそれを首から下げる。

 

到着したエレベーターに乗り込んだ彼は、すぐに扉を閉めて大臣政務官室のある23階に向かった。高速エレベーターの急激な加速度の変化に、疲れていた彼は一瞬だけ立ちくらみを覚えるが、息を深く吸い込んで気を静める。

 

ドアが開くと、ちょうど隣のエレベーターからアズマとヤノの2人が姿を現した。2人とも、準備は万端の様子だ。アズマから証拠品を写した写真を受け取った彼は、そのまま立ち止まることなく政務官室まで直行する。ノックもそこそこに、彼は躊躇せずドアを開いた。

 

「篠原政務官殿。失礼ですが、少しお話があります」

 

何の前触れもなく突然、部屋の中に入ってきた公安9課の荒巻課長に、篠原政務官は少しのあいだ唖然としていた。しかし、すぐに我に返ると太々しい態度で答える。

 

「何かね、荒巻君。例の件に関する証拠が得られたかね」

 

「ええ、もちろん。ですが、出てきたのは貴方が今回のテロ事件に深く関わったことを裏付ける証拠でした。任意同行をお願いできますかな」

 

その言葉と同時に、部屋の扉を開けてアズマとヤノが入ってくる。それを見た政務官は、途端に態度を豹変させて生々しい怒りを露にした。

 

「貴様、何様のつもりだ!貴様のような人間が何を言う!」

 

激しく憤慨した政務官は机に両手を叩きつけるとそう怒鳴った。しかし、荒巻は怯む様子を一切見せずに、彼の前に数枚の写真を置く。それを見た彼は、食い入るような様子でそれを睨んだ。

 

「情報提供がありましてな。貴方の秘書の貸金庫を調べさせてもらいました。これは歴とした犯罪ですぞ、政務官殿」

 

写真に映し出されていたのは、金庫の中に保管されていた多額の現金と数台の携帯端末だった。眉毛を痙攣させるかのように小刻みに動かした政務官は、口をわなわなと動かしながら言葉を詰まらせている。

 

「照合したところ、こちらの現金の出所は剣菱重工で消えた裏金の一部だそうですな。端末にも、通話履歴がいくつか残っておりました」

 

課長は同じくアズマから受け取っていた通話記録の一部を印刷したものを彼の目の前に置く。載っていたのは端末に残された記録のうちすぐに解読できたものに過ぎないが、それでも相手の番号などは筒抜けで、政務官が誰と話していたのかは明白だった。

 

「端末の登録番号から照会を掛ければ、より詳しい情報が得られるでしょうな」

 

「貴様ぁ…」

 

丸い顔を真っ赤に染め、怒りに燃える政務官。しかし、もはや逃げ場はなかった。フンと息を吐き出すと、椅子から立ち上がって外を見つめる。その眼差しはどこか遠くに向けられていた。早くも観念したのだろう。

 

「恩知らずめ…」

 

彼が最初に話したのは、その言葉だった。課長はぼんやりと外の景色を眺めながら口を開く彼に目を向ける。

 

「…国益のためだよ。何千億という金がかかる一大プロジェクトだ。フランスや中国に抜かれるわけにはいかないこの状況の中で、事件でもあってみろ。全てが水の泡だ」

 

「それが正義のために動いた制御室長とジャーナリスト、それに罪もない大勢の職員たちを殺害する理由になるとお考えか、政務官殿」

 

強い口調でそう糾弾する荒巻課長。政務官は悪びれる様子もなく振り返るとこう答える。

 

「ああ、そうだとも。たとえ数十人の人間が死のうとも、それだけの価値はあるだろう。これまでもそうだよ、荒巻君。成果を得るためには、多少の犠牲は致し方ない。戦後のこの世界で資源小国の我が国が勝ち残るためには、技術に頼るほかないのだ」

 

課長ははらわたが煮えくり返るかのような思いをこらえながら、黙って彼の話を聞いていた。確かに、彼の話していることには一理あるかもしれない。第3次核大戦と第4次非核大戦で疲弊した現在の世界情勢の中で生き残るためには、持ちうる利点を最大限に引き伸ばして武器とする以外に手はない。

 

「おかげでインドへの売り込みも成功しつつある。数千億円の金が我が国に流れ込むのだ。感謝はされても、恨まれる筋合いはないと思うがね」

 

「何だと!」

 

その言葉に、ついにアズマが声を上げる。課長は冷静に彼を制すと、口を開いた。

 

「例え国益にかなおうとも、全てが許されるわけでない。篠原政務官、それは貴方とて同じだ」

 

そう。たとえ何千億という金が動き、国益になるという強い理由があろうとも、何の罪もない人間を殺す免罪符は得られない。荒巻課長はそう強く感じていた。少なくとも自分の眼が黒いうちは、そのような行いを見過ごすわけにはいかないのだ。

 

「政務官、貴方はこのあと厳正かつ公正な裁判により裁かれることになる」

 

「覚悟はできている。受けて立とう」

 

そう答えた政務官は、まもなく2人に連れ添われて部屋を後にした。一人残された荒巻課長は、机に置いた写真を手に取る。

 

全てはヘリオスのおかげだった。

 

証拠を捏造され、真実が永遠に闇に葬られるかもしれない危機的状況の中で、突然送られたあのメール。あれがなければ、ここまで容易に政務官の身柄を押さえることはできなかっただろう。だが、果たしてヘリオスとは何者なのか。彼は今も自分たちの様子を遥か遠くから傍観し続けているのか。

 

課長は深く考え込みながら、部屋の中を歩き回る。ふと、政務官のデスクの引き出しに目が行った彼は、証拠保全のための白い手袋をはめると慎重にそれを開けた。

 

中に入っていたのは、万年筆とメモ帳である。そのほかに印鑑や多数の文房具があったが、どれも事件とは無関係だった。他の引き出しも確かめたものの、特に手掛かりとなるようなものは入っていない。

 

次に彼の目に映ったのは、背後に飾られていた色とりどりの花々だった。派手過ぎず落ち着いた部屋の雰囲気と調和しているその魅力を引き立てていたのは、深い碧に染まる花瓶である。だがよく見ると、僅かだが動かされた跡があった。埃が不自然に拭われ、置かれていた台には擦れたような跡がついていたのだ。

 

課長は注意深く花瓶を持ち上げる。案の定、中には水が入っていなかった。すぐに花々を取り除くと、底の方からチャック付きのビニール袋に入った一枚の紙が見つかった。丁寧に折りたたまれていたそれを開けた課長は、すぐに中身に目を通す。

 

思わず目を疑ったものの、書いている内容に偽りはない。課長は神妙な面持ちで、読み進めていく。

 

それは脅迫状というよりも、告発状だった。ファックスで送信されたとみられ、時刻はちょうど今日の5時頃。まさに、テロリストたちの犯行予告があった時間と同じだった。どうやら、エネルギー省や剣菱にファックスが届いていたというのは、事実だったらしい。だが、政務官はその内容を捏造し、自分たちに有利となるよう単純な脅迫状に書き換えていたようだ。

 

告発状の内容は剣菱重工製の原子炉に関する欠陥だった。また、それを隠蔽するために加賀制御室長のほか、数名が殺害されていたことにも言及がある。送信者は例に漏れず、ヘリオスとあった。

 

ここでも、ヘリオスが関わっていたとは。深い驚きに満ちる荒巻課長だったが、そのときオペレーターから連絡が入った。

 

《新浜県警より、占拠されていた新浜大ヘプトンケイルの制御室を制圧したとの連絡が入りました。報告によると、実行犯5名は既に死亡していたとのことです》

 

《死亡?どういうことだ?》

 

《死因は窒息と推定。消火設備が起動し、室内には二酸化炭素が充満していたようです。なお、奪われた原発制御AIのコントロールは既に何者かに転送され、奪還はできませんでした》

 

それを聞いた課長は、事態が予想だにしない方向に進んでいることを察知した。すぐに部屋を飛び出した彼は、全力で廊下を駆け抜けて政務官を連行していた2人に追いつく。あまりの様子に驚きを隠せない2人に構わず、課長は息を整えると政務官を問い詰める。

 

「どういう計画を立てた!今すぐ詳細を教えろ」

 

「なに…?私が命じたのは、爆破テロにかこつけた関係者の処理と欠陥の隠蔽だけだ。雇った傭兵の後始末も、公安に任せてある」

 

「公安だと!?どこの組織だ!」

 

「外務省条約審議部だよ。赤蠍を雇ったあと、突然私のところに押し掛けてきたんだ。連中は奴の暗殺を狙っているようだからな」

 

それを聞いた課長の中で、全ての線がつながった。

 




2018/9/29 一部加筆修正
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