攻殻機動隊 -ヘリオスの棺-   作:変わり種

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第41話

岸田は出血の酷い腹部を押さえながら、懸命に通路を進んでいた。途中で赤蠍の姿を見たものの、彼は驚くことに銃を向けたセキュリティ・フォースを返り討ちにして、そのまま原子炉区画へ進んでいったのだ。その後、後を追うように数人の男たちと青い思考戦車も下に降りていった。

 

赤蠍は原子炉を暴走させるつもりなのだろう。そして、あの思考戦車を連れた連中はそれを止めるために向かったというところか。岸田はそう推測していた。

 

赤蠍にしろ、あの戦車連れの連中にしろ、恨みがあることには変わらなかった。赤蠍は最後の最後で裏切って仲間を皆殺しにし、あの公安の連中は兄貴と大勢の仲間を殺している。どちらにも、死んでもらわなければならない。たとえ自分の命と引き換えであっても、仇だけは討つのだ。

 

彼は含水爆薬の束を体に巻き付けると、電気信管を刺す。通電は良好だ。元々タービンを吹き飛ばすために準備した爆薬だったが、今となっては関係のないことだった。突入した21人の仲間は自分以外、おそらく全滅したのである。ならば自分が生き残っても、何の意味もない。

 

手元のスイッチさえ押せば、爆薬が起爆して自分の体は文字通りの木っ端微塵になるだろう。だが、そのときは赤蠍とあの公安の連中を道連れにしてやる。

 

血走った眼を獰猛に見開いて、岸田は階段を下りる。公安の連中が派手にやり合ったのか、階段の先の通路は所々が破壊されていて天井を通る配管が崩れていた。瓦礫の山に足を取られないよう注意しながら、岸田はなおも進み続ける。

 

炎上する警備戦車の残骸も見えた。図面によると、この先が原子炉区画のようだ。岸田は壁に背中を預けると、肩からベルトで下げていたカラシニコフを構えた。そして、息を殺して歩いていく。

 

そのとき、何か気配を感じた彼は、咄嗟に動きを止めた。

 

扉の前の通路に人影がある。アーマーを着込み、政府が採用しているセブロを構えているところから見て、公安の連中だろう。案の定、奥には青い思考戦車の姿も確認できる。だが、数が1人足りなかった。戦車の方も同様で、1機足りない。

 

赤蠍を追って原子炉区画に入ったということだろうか。ならばちょうどよい。相手の人数は少なければ少ないほど良いのだ。覚悟を決めた岸田は、カラシニコフの引き金に指を掛ける。爆弾のコントローラーも、銃と一緒に左手で握っていた。

 

しかし、突撃しようと思ったまさにそのとき、急に向こうが騒がしくなった。叫び声とともに、しきりに銃声が聞こえる。どうやら警備アンドロイドの襲撃を受けたらしく、彼らはそれに応戦しているらしかった。幸い、注意は完全にアンドロイドたちに向けられていて、今なら気づかれずに原子炉区画に紛れ込めるかもしれない。

 

区画に入れば、ポンプや原子炉の近くでこいつを起爆させることができる。そうすれば、ここにいる3人の公安の連中だけでなく、赤蠍やそれ以外の連中も一網打尽にすることができるのだ。

 

そう直感したときには、岸田は既に行動に移していた。気づかれないギリギリの距離まで無音で近づくと、一気に陰から身を乗り出して扉に向けて走り出す。銃声で足音が掻き消されたため、かなりの距離まで気づかれずに済んだが、残り10メートルほどでついに見つかってしまった。

 

「新手だっ!気を付けろ!」

 

交戦中の公安部隊の真横から走り抜ける形だったので、振り向く時間差だけこちらが有利だった。カラシニコフから火を噴かせて弾幕を張り、応戦しようとした公安の連中を物陰に押し戻す。同時に閃光弾を投げ、自分は目を強く瞑りながら扉に向かって飛び込んだ。

 

しかし、閃光弾の炸裂をもろともせず、思考戦車が弾幕を張る。風音を頼りに、身をよじって床を転がり、猫のような動きで弾幕を避けた岸田。それでも避けきれなかった1発が彼の肩を撃ち抜くが、構っている暇はなかった。

 

死にもの狂いで扉に身を滑り込ませると、閉鎖ボタンを叩き、すぐに扉を閉めさせる。動作の遅さに岸田は気が狂いそうだったが、閉まりゆくドアの隙間から破砕型手榴弾を外に向かって投げ込んだ。追いかけようとした公安の男たちはたまらず戦車の陰に隠れ、退避する。岸田が扉の陰に隠れるのと同時に炸裂した手榴弾は、鼓膜が破れそうな爆音を至近距離で轟かせた。

 

そうして、ちょうど扉も閉まる。開閉用端末に銃撃を浴びせた岸田は、手荒にもそれを破壊して動作不能にした。先ほどの爆発で外の端末も粉々になったはずなので、当面、この区画へ入ることも出ることもできない。

 

ひとまず弾倉を入れ替えた岸田は、すぐに後ろにあった原子炉区画のエアロックに取り付いた。だがそこで、銃弾を受けた腹が再び痛み出し、思わずその場にうずくまる。

 

(畜生め。こんなところ撃たれたくらいで何だってんだ)

 

赤黒い血を苦しげに吐き出しながら、岸田はエアロックのハンドルを回して中に入った。そして、開けた方の扉を閉めてハンドルを回し、反対側のハンドルに手を付ける。これで兄貴と仲間の仇を晴らす。たとえそれが大勢の人間を殺すことになっても関係はない。そもそも、このような企業が支配するクソみたいな世界に生まれる方が悪いのだ。

 

岸田は自らにそう言い聞かせると、ハンドルを回して反対側のエアロックを開いた。

 

 

 

 

 

タチコマとバトーは足場の上を駆け抜けていた。制御棒駆動装置に電力を供給する電源盤はこの先の突き当たりに設置されている。中野の話では、それを破壊すれば確実に制御棒が挿入され、危険な状態を脱するということだった。

 

赤蠍と派手に戦った影響で、バトーは体の至る所に痛みを覚えていた。特に、回し蹴りを食らって柵に叩きつけられたのが効いているようで、背中が焼けるように痛む。しかし、だからといって足を止めるわけにはいかなかった。

 

痛みに耐えながら進んでいくと、ようやく正面の壁面に金属製の収容箱が見えてくる。濃緑に塗装されたそれには、高電圧警告標識が描かれた白いプラスチック板が貼られ、電流計や電圧計の表示がガラス窓を通じて見えていた。改めて見取り図から場所を確認したバトーは、配電盤の側面に持ち込んだC4爆薬をセットしようと近づく。

 

その時、タチコマが異変に気付いた。

 

バトーのもとに凄まじい勢いで突っ込む金属の塊。その正体を確認する間もなく、タチコマの体は動いていた。体当たりでバトーの体を巨大な配管の陰まで押し飛ばし、自分はとっさに相手を受け止めようと両腕を伸ばす。

 

だが、迫っていたものの正体を見たとき、タチコマは驚愕した。同時に、正面から凄まじい衝撃が彼を襲う。途端に上がった鋭い悲鳴は、凄絶な破壊音に掻き消された。周囲の足場がまるで針金のように折れ曲がり、千切れた電線が火花を散らせる。舞い上がった埃と粉塵が晴れたとき、突き飛ばされたバトーはタチコマの変わり果てた姿に言葉を失った。

 

タチコマの体を、1本の巨大なアームが貫いていた。ボディの正面から突き刺さった銀色のそれは、反対側まで貫通してそのままコンクリートの壁まで達している。丸みを帯びた青い装甲は大きく潰れ、隙間から潤滑油が流れ出ていた。

 

「タチコマッ!」

 

声の限りにバトーはそう叫ぶが、タチコマからは返事がなく微動だにしない。一方、アームを伸ばした主は無惨に潰れたタチコマからアームを手荒に引き抜くと、バトーに向けて殴りかかる。すぐに伏せて配管の陰に隠れるが、あまりの衝撃で配管が押し潰されてマッチのようにへし折れた。

 

顔を出したバトーは、配管の陰から見えた相手の正体に驚きを隠せなかった。白を基調に塗装され、淡い緑色のラインがいくつか描かれた巨大なアームスーツ。高さは10メートル近くあり、伸ばされたアームには2本指のカニを思わせるマニピュレータが付いている。おそらく、格納容器周辺の大型保守レーンで重量物を扱うための機体なのだろう。その大きさは並みの戦闘用アームスーツをも抜き去っている。

 

タチコマを突き刺したのは2本の指のうち片方だった。もう片方はちょうど一階層下の鉄製フェンスを薙ぎ倒し、同じくコンクリートの内壁にぶつかっていたらしい。

 

バトーはすぐにその場から逃れようとするが、相手は巨大なマニピュレータで彼の走る足場を挟み込むと、力づくでもぎ取った。空中に放り投げられた彼は、何とか姿勢を整えると鉄棒のように渡されていた細い鉄骨を両手でつかみ、そのままぶら下がる。そこで、彼の眼にあるものが映った。

 

何と、アームスーツの操縦席に座っていたのは他でもない、赤蠍だったのだ。

 

電脳錠を差し込んでいたはずなのに、なぜ奴は自由に動けるのか。そんな疑問が浮かんできたものの、悠長に考えている暇はない。空中でぶら下がっているバトーに気づいたアームスーツは、彼の掴む鉄骨にその巨大な腕を振り下ろした。

 

たまらず飛び降り、コンクリートの床に着地する。直撃を受けた鉄骨は根元から折れて叩き落とされ、バトーの真上から襲い掛かった。気づいた彼が何とか避けるものの、落ちたそれは床の一部を粉々に砕く。コンクリートの粉塵が舞い、空気が灰色に淀んだ。

 

「赤蠍ッ!」

 

そう叫ぶものの、操縦席の彼はまるで反応している様子がない。その顔には感情という感情が浮かんでいなかった。無表情のまま目を見開き、人形のような有様だったのだ。

 

一体どうなっているのだろう。先ほど戦ったときはあれだけ感情を剥き出しにして、自分を切り刻もうとしてきたはずだ。だが、今はまったく違う。まるでロボットのように、ただただ自分を殺そうと迫ってきていたのだった。

 

不気味な無表情を貫く赤蠍は、右腕を伸ばしてバトーを圧し潰そうとする。全力で駆けて足場の陰に隠れ込んだ彼は、操縦席に向かってセブロを放った。ガラスが蜘蛛の巣のようにひび割れて、瞬く間に粉々になる。何発かが赤蠍の体にも命中したが、表情一つ変えなかった。

 

再びアームを伸ばして、バトーの潜む足場を挟み込む。金属が軋み、耳障りな甲高い音がその場に響いた。おもちゃのように足場が折れ曲がり、電線が千切れ、配管がもげる。凄まじい破壊音の中、バトーは辛うじて足場から抜け出し、上に向かって階段を駆け上り始めた。

そんな中、不意に電脳通信が入る。

 

《バトー、無事か?》

 

少佐の声だった。バトーは必死の思いで、今の状況を伝える。

 

《少佐か!タチコマがやられた。赤蠍の奴、電脳錠を刺したのに動き回ってやがる。しかも、アームスーツまで乗っ取りやがった》

 

《時間がない、バトーよく聞いて》

 

真剣な少佐の声に、バトーは口を止める。

 

《赤蠍の正体はここの元制御AIだ。何らかの原因で自我を持ち、暴走した》

 

《何だと?じゃあ、俺らはAIと戦っていたのか!?》

 

《そういうことになるわね》

 

バトーは少佐の言葉に、思いのほか衝撃を受けていた。人間だと思い込んでいたあの赤蠍の正体が、実はAIだったのだ。何かの間違いではないかと思うほど、信じがたいことではあったが、少佐が言うからにはそれが真実なのだろう。

 

《奴を止めるには、方法は一つしかない。奴の入り込んだ電脳を破壊するんだ。ただ…》

 

《何だ、少佐?》

 

《奴はプログラムベースのAIだ。普通、ニューロチップAIはハードとソフトは不可分なのは、お前でもわかるわよね》

 

《ああ、もちろん》

 

ニューロチップAIのハードとソフトは不可分である。言うなれば、人間と同じく脳に当たるニューロチップと、それが生み出す自我は切っても切れない関係にあるということだ。タチコマにしろ、バックアップを取っているとはいえ彼らのニューロチップが完全に破壊されてしまったら、その自我を取り戻すことはできない。

 

だが、少佐が話したのは赤蠍がそれとは違うということだった。詳しくは彼女に聞いてみなければ分からないものの、赤蠍がプログラムベースのAIであるということは、奴の自我を司る電脳を破壊しても再生する可能性があるのだ。データとしてしか存在しないプログラムの形であれば、際限なく増殖し、たとえ一つの電脳が破壊されてもまた別の電脳から活動を再開することができる。

 

バトーははっとした。

 

以前、姫路港で陸自の戦車とやり合った時、少佐は赤蠍の電脳に確かに攻撃を叩き込んだと言っていた。後でタチコマにも聞いた話だが、身代わり防壁の断片すら検出されていなかったのだ。しかし、逆探地点には赤蠍の姿がなく、逃亡した後だった。

 

これがもし、少佐の言うように赤蠍がプログラムベースのAIであったのなら、すべての辻褄が合う。確かに少佐は赤蠍の電脳を攻撃し、奴を焼き殺したのだ。しかし、コピーされた別個体が活動を再開して、電脳死した方のボディをどこかに遺棄したのだと考えれば、納得できる。

 

ふと、南米の麻薬王だったマルセロのことが頭をよぎった。彼も自分という個体の死ではなく、自分という存在自体を守りたかったためにゴーストダビングをして替え玉をつくり、数々の暗殺事件から逃れていたのだ。最終的には、ゴーストダビング装置は押収され、残された最後の1体が日本を発っていったが。

 

赤蠍の場合だと、ゴーストのないAIであるため、ゴーストダビングのように情報劣化が起こることもない。そう考えると、完全な形で次世代への引き継ぎができる分、赤蠍の方法は生存術としては完璧といえるだろう。だが、そもそも赤蠍はAIに過ぎず、ゴーストはないのだ。そんな存在がいくら生存を欲したからといっても、所詮は生きていない非生物に過ぎない。生存欲求を働かせたコンピュータウイルスと、さして違いはないのである。

 

《赤蠍が自身を他の電脳にコピーし、逃げ延びないように今から私が防壁で奴の周りを固める。今のところ、コピーされた他の個体は確認されていないから、今あなたの前にいる赤蠍を殺せば、奴の存在は消えてなくなるわ…》

 

そう話す少佐の口調は、どこか思い悩んだものにも感じられた。バトーは《了解》とだけ答えると、電通を切る。

 

階段を上り切ったバトーは、改めて赤蠍に振り向いた。すべてに達観したかのような無表情と、見開かれた黒々とした瞳。目の前にいるこいつが、矛盾に満ちたこの世界がつくり出した怪物なのだとしたら、自分はどう戦えば良いのだろうか。

 

そんな考えが浮かんだとき、バトーはふっと笑った。まるで少佐が考えそうなことだ。9課で行動を共にするうちに、彼女の考え方が移ったのだろうか。

 

バトーはセブロを構えると、引き金を引いた。この怪物を倒すのは、自分の仕事なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少佐は電脳空間にいた。赤蠍にアクセスした際、アドレス情報を保存しておいたのが功を奏して、赤蠍の居場所はすぐに分かった。問題は、防壁を展開できるかどうかである。

 

生き残ったタチコマから受け取ったのは、1つのメッセージと圧縮された防壁迷路だった。それもかなり特殊なタイプであり、電脳戦に精通している少佐でも初めて見たほどだった。一方、メッセージの方にはその防壁の使い方と、自分にアクセスしてくれたことへの礼が書かれていた。

 

『君のような人間と話すことができて、本当に光栄だった。私はこれから旅に出る。君たちがネットの海に溶け込み、新たな世界へ足を踏み入れる時が来たら、また会えるだろう』

 

その言葉に、少佐は何とも言えない複雑な感情を抱いた。AIでありながらこれほどまで卓越した思考を持っていたという驚きと、彼を失った喪失感。そして、自分が何もできなかったという無力さ。そんな感情が彼女の心の中で混じり合い、淀ませ、せめぎ合っていた。

 

だが、無情にも時間は残っていない。

 

彼女はそんな感情を心の奥底に封じ込め、大きく息を吸って気持ちを落ち着かせる。最初に始めたのは、防壁の解凍作業だった。

 

「防壁解凍開始。もうすぐ終わります~」

 

タチコマがそう報告する。その間に、彼女はヘリオスから伝えられたこの防壁の情報について目を通していた。どうやら、これは赤蠍のためだけに組まれた相当特別なものらしく、既存のどの防壁にも当てはまらない特徴を備えていた。普通の防壁なら不特定多数のアクセスに対応するために汎用性が重視されるが、これにはまったくそのような傾向が見られなかったのだ。

 

考えてみれば、もともと自分がまいた“種”から生まれた赤蠍は、いわばヘリオスの同位体とも呼べる存在だった。ならば、自分と共通する要素を利用して防壁をつくることは、彼にとって難しいことではなかったのかもしれない。最後にヘリオスが遺したこの防壁を使って、彼の身内の横暴を止める。それこそが、彼へのせめての供養になるかもしれなかった。

 

「防壁解凍終了!準備完了しました、少佐」

 

タチコマの声に、少佐は意識を集中させた。ここから先は少しも油断できない。一瞬の油断が命取りになるのだ。

 

自衛用の防壁を展開し、赤蠍のもとへと向かう少佐とタチコマ。原発所内のネットワークは所々が寸断され、通信障害を起こしている部分もあった。元々爆破などで回線の一部が破壊された上、あれほど派手な電脳戦をしていれば残った回線にも負荷が集中するため、ある意味当然ともいえた。

 

「目標確認!ルートアレイ3軸展開します」

 

「攻性防壁スタンバイ!」

 

赤蠍を表す球体に近づいた少佐たちは、すぐに作業に取り掛かった。

 

「アンカー設置開始。相手側の防壁ゲートアレイに取り付きます」

 

「敵攻性防壁反応なし。アンカー設置は順調です」

 

「ポート確認完了。防壁展開最終段階!」

 

タチコマたちが目にも止まらない速さでコンソールを展開し、赤蠍のゲートアレイに取り付いて防壁の展開準備を進める。アンカー設置が終わり、防壁への設定も大部分が終わった。後は、少佐自らが手元のコンソールを操作して防壁を起動させるだけだ。

 

「少佐?」

 

すぐに起動操作をしない少佐を怪訝に思ったのか、タチコマが彼女の方を振り向く。コンソールは展開され、後はキーを一つ叩くだけで防壁は起動する状態だった。だが、彼女はその指を止めて思い悩んだ顔で赤蠍の電脳を見つめている。

 

「少佐、早くしないと勘付かれます!」

 

切迫したタチコマの声に、少佐は一度躊躇った指を再び動かすと、複雑な思いの中で防壁を起動させた。たちまち、赤蠍の電脳の周りに眩いばかりの光のカーテンが現れ、その球体を覆い尽くす。少佐はその様子を、宇宙の深淵を見つめるかのような空虚な眼で見つめていた。

 




2018/10/1 一部加筆修正
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